ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

閑話 ヤバイ奴らによる【魔王】殲滅戦(上)

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時は遡り、ノアが王都で御前試合を行っていたまさにその日、大陸の南方にある『滅びの森』では轟音や悲鳴があちこちから聞こえていた。

『滅びの森』とは、この森の近くに、昔一夜で滅んだと言われている超大国の廃墟(通称『廃都』)がある為こんな薄気味悪い名前が付いている。

その森の中を息を切らしながらただひたすらに駆ける集団がいた。


「ガ、ガルディアッ!残存兵力はぁっ!?」

「我々を含め!残り300程かとっ!
今はトラディグマが殿となって『奴ら』を押さえ込んで


ポゥッ


どがぁああああああああああああああああああっ!!!!

「ぐぉああっ!?」
「キャァアアアアアアッ!?」


戦況を話していた2人と300に及ぶ集団の遥か後方で淡く光が灯った矢先、直径500メルに及ぶ大爆発が発生。

衝撃波だけで周囲の木々が根刮ぎ倒れ、集団は吹き飛ばされる。

残存兵力の大半が手足を骨折し、戦闘不能状態に陥った。


「今のはトラディグマの隊がいる辺り…まさか…」

「考えている暇は無い!急ぎ無事な兵と共に『廃都』へ向かうぞ!」

「は、はい【魔王】様!」


そう、今現在『奴ら』から逃げ続けているこの集団こそが【魔王】軍である。

僅か1週間程の間に四天王を2人も失い、そしてつい先程3人目の四天王が"蒸発"した。

最後に残ったのは、四天王の中でも"最弱"と言われている女性魔人のガルディアである。

最弱と言っても強さで言えば、フリアダビアで猛威を振るったシエストラバードに匹敵する強さを誇っている。

何故恐怖をもたらす象徴的存在である【魔王】が逃げているのかと言うと、『奴ら』が強襲を仕掛けて来たのだ。






この日の朝方、6000にも及ぶ兵を動員して魔王城を築城していた所、天空から7つの影が飛来。

一筋の光が発射されたかと思うと、その一撃で400にも及ぶ兵が"蒸発"。
二撃目の光が発せられると、築城中の城が両断され倒壊、200の兵が下敷きになる。

次に、万にも及ぶ赤黒い槍が降り注ぐと、それだけで300の兵が貫かれて命を落とす。
それだけに止まらず、池の様に形作られた夥しい量の血が1ヶ所に集まると、長大な大蛇となって辺りに居た兵を蹂躙した。

その後7人が降り立つと、1人の人物が残った死体に触れていき、何やら呟くと、息を吹き返したかの様に起き上がり、生き残った兵達に襲い掛かってきた。

6000も居た兵が、僅か10分程で4000にまで減った事で、残った四天王2人は【魔王】と兵を率いて逃げ出した。



逃げた先は『滅びの森』。
昼間でも真っ暗な程木々が生い茂り、モンスター所か上級冒険者ですら手を焼く強さの魔獣がうじゃうじゃと生息している。

更にここに生息している魔獣は【魔王】が手懐けているモノばかりの為、戦力が大幅に上がったのだ。

『奴ら』に背を向け、闇雲に逃げたと思わせて誘い込み、一転して攻勢に出る。
狩られる側が狩る側に回る番である。


『奴ら』が普通であれば、の話であるが


「ま、【魔王】様!『奴ら』に向かって行った魔獣の反応がどんどん消失していきます!
それに比例して2つの反応が徐々に増大しています!?」

「ふざけるな!上級冒険者が最低3パーティは居ないと倒せん魔獣がうじゃうじゃ居るんだぞ!?
何故たかだか7人に殺られるのだ!」


そう言い放つ間も2つの反応がどんどん増大していき、森の奥から途轍も無い殺気が放たれている。


「きゃははっ!見付けたわよぉ【魔王】ちゃん!」

ギュルルッ!ブヂィッ!

「うがぁあああああああっ!?」


真っ暗闇の森の中から女性の声と共に湾曲した刃が取り付けられた鞭が伸び、【魔王】の左腕に絡み付くと容赦無く引き千切られた。


「ぐっ…くそっ何処から…!?」

「【魔王】様!兎に角ここから退きましょう!
トラディグマ!鳥獣形態になって【魔王】を遠くに逃がして下さい!」

「あいよっ!
手前ぇら!その間援護頼むぜぇっ!」


トラディグマと言われた男性獣人は四天王最強格の1人で、獣人形態、鳥獣形態、水生獣形態と環境に合わせて形態を変化させる事で四天王全員からも敵無しと言わしめた男である。

そのトラディグマが声を上げると、彼らの周りに控えていた兵や『滅びの森』に棲むモンスターや魔獣が一斉に【魔王】の前に立ち、肉壁という陣形を形作る。

メキメキメキッ!

トラディグマの背中から翼竜の様な翼が生え、飛行形態に入る。が


ドズッ、ドドドッ、ズドッ!

「おごぁっ!?」

トラディグマの背に赤黒い槍が5本突き刺さる。
それらは全て貫通し、体に5ヶ所の穴が空いている状態である。

先程の肉壁となった兵やモンスターの方を見てみると、既に数百を越える赤黒い槍が突き立ち、全員が骸と化していた。


「な!?何故だ!?何故傷が塞がらない!?」

「な、そんなハズ無いでしょ!?その程度の傷なら自己再生能力で治癒出来るハズでしょ!?」


トラディグマが自身の体に起こった違和感に慌てふためいている。
どうやら自己再生能力が備わっているハズなのだが、全く機能していない様だ。

それどころか刺し貫かれた箇所から体色が徐々にどす黒く変色していき、体の自由も効かなくなってきている様である。

周囲の反応を見ると、先程まで4000程居た兵がいつの間にか1000にまで数を減らしていた。


「ま、【魔王】…ここは我が、殿、を務めます故…
ガルディアは空間転移、に秀でております。
共に、『廃都』へお逃げ下され…」


既に言葉を放つ事すらままならないトラディグマは、『奴ら』が居るであろう方向へ向け、歩き始める。

が、そこに立ち塞がる様に、先程骸と化した元兵達より流れ出た血で出来た溜まりから、数百に及ぶ赤黒い人型が現れ、次々とトラディグマへ向け襲い掛かる。





目まぐるしく変わる状況の変化に、【魔王】の頭が付いていかず、ただただ呆然としていると四天王最後の生き残りであるガルディアが残存兵力と共に【魔王】の手を引いて、森の中をただひたすらに駆けていく。

直後、冒頭に起こった大爆発が発生し、生き残りは【魔王】とガルディアの2人だけとなった。

と、そこに

ザッ、ザザザッ、ザザッ、ザッ!

爆炎と爆煙の中から6人の『奴ら』が姿を現す。
が、背後に爆炎が上がっている為表情は伺い知れない。

すると【魔王】は、ガルディアの前に立ち声を荒げる。


「おい貴様らは一体何者だ!名を名乗れ!」


と、良い放った直後に背後に居るガルディアに小声で話す。


「ガルディア、私が時間を稼ぐ。
直ぐに空間転移魔法を練り、逃げる手筈『ドズッ』整え…ゴブッ…え?」


ガルディアに小声で話していた所、背中に鋭い痛みが走る。
今自身の胸からは血みどろの腕が生え、ビクビクと動く何かを掴んでいる。

【魔王】は訳も分からず立ち尽くしていると、その腕が勢い良く引き抜かれ、【魔王】は地面に倒れ伏す。

空っぽになった胸部からは止めどなく血液が流れ出し、急速に力と体温が抜けていく感覚を覚える。


「え…へ…あ…が。」


【魔王】は薄れ行く意識の中振り返ると、自身の心臓を鷲掴みしているガルディアが立っていた。


「ガ、ガルディア…貴様何「おいおい、お前まだ僕の事ガルディアとか言う女だと思ってるのか?」


ガルディアの姿の"誰か"は、自身の面の皮をグニグニと引っ張りながら醜悪な笑顔を【魔王】に見せる。

外面はガルディアの様だが、その下に見える体色と声が全くの別物である。

【魔王】は驚きに目を見開き、倒れ伏した状態で固まっていると


ガヂョッ!


自身の頭蓋が砕かれる音と共に視界が真っ暗になった。


「【魔王】軍殲滅完了、っと。」
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