ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
326 / 1,117
王都編

【魔法拳士】

しおりを挟む
【魔法拳士】…【拳士】の上位適正。
保有している属性魔法にもよるが、自身に補助魔法を掛けつつ近距離戦闘を仕掛けるのが基本であるが、単体で魔法を放つ事も可能な為、遠・近両方での使い分けが重要な適正である。

人にも寄るが、近距離戦闘を仕掛けて爆裂魔法を炸裂させると言う自爆攻撃を仕掛ける者も居る。



「お疲れ様。
どう?感覚的には何か変わったかな?」


【適正】の儀を終え、呆然としながら壇上を下りる2人に近寄って声を掛けるノア。


「はい、戦闘などあまり経験した事もありませんが、体の動かし方等の情報が頭の中に流れ込んできました…」

「それと…【獣化】?とか言う【固有スキル】を覚えました…」

コッコッコッ…

「ほほ。それは獣人なら誰でも持つ事が出来るスキルじゃ。
獣人が一時的に"獣"となり本来の能力以上の力を得る事が出来るらしい。
私は人間だからその辺りは分からないがね。」


後ろ手を組んだ教会の神父がそう言いながらノア達の元へ歩み寄る。


「神父さんありがとうございます。
急な話に対応していただいて…」

「ほっほっ、大した事では無いよ。
それよりも【適正】を授かったんだ、どこかのギルドで試合場でも借りて、体を動かしてくると良い。」

「はい、そうします。」

「「ありがとうございました。」」


ノアとヴァモス、ベレーザの3人は、神父に挨拶をすると踵を返して教会を後にした。

ガコン。

「試合場か…【弓】ギルドにでも行ってみるか。」







ガチャリ「すいませーん、失礼しまーす。」

「ん?お!【鬼神】君じゃないか?
どうしたんだい?」

「今日って下の試合場って使えますか?」

「試合場?あぁ、今皆昼行ってるから好きに…壊さなければ使って良いよ。」

「壊しませんて。」


【弓】ギルドマスターから快く(?)試合場が使える事になった。
一応ギルドマスターが見届け人となって結界などを張ってくれるそうだ。







「さて、【魔法拳士】って事はもう魔法は使えるのかな?」

「えっと…ボクは雷と氷の補助魔法を覚えてます。」

「私は…火と風の補助魔法が使えるみたいですにゃ…」


~ざっくり補助魔法効果(現段階)~

雷属性…反応速度がパリッと上がる。
氷属性…防御力がパキッと上がる。
火属性…攻撃力がジワッと上がる。
風属性…移動速度がフワッと上がる。


「あ、凄い、お互いの補助魔法を掛ける事も出来る。」


ヴァモスが自身の指を弾く動作をすると、紫電が走り、体に纏っていく。
同様の動作をした直後にベレーザの体に触れるとベレーザにも紫電が纏わり付く様になった。

2人はその後も補助魔法を掛けたり、掛けられたりを繰り返した。


「そんじゃ暫くは1人、又は2人で動作の確認をして貰おうか。
前にも言ったけど、自分の出来る動き、出来ない動きを確認する様にね。」

「「はい、分かりました!」」


そう言って2人はまず試合場内を走り回る所から開始した。
補助魔法のお陰で僅かながら体が軽くなった様で、途中3回宙返りを行ったり4段蹴り等も行っていた。

その動作の合間に虚空に向かって拳を打ち込んだり、回し蹴り等を挟んでいる。
元々身軽な種族である為、直ぐ様人間離れした動きも可能になった。




「よし、一旦集合。大分体が慣れてきた様だね。」

「はい、効果は僅かですが、それでも動きに幅が出来ました。」

「よろしい。
攻撃や防御系の補助魔法は戦闘時で良いとして、移動速度や反応速度を上げる補助魔法は普段も発動しておく事。
さて、実戦に入る前に受け身の練習をしよう。
きちんと受け身が出来れば、さっきのベレーザみたいに頭にコブ作んないで済むからしっかりと覚えましょう。」

「はい!」
「はいですにゃ…」さすさす…


ベレーザは先程打った頭の辺りを擦りつつ、恥ずかしそうに答える。

一先ずその場に座って貰い、前後の受け身を教え、慣れてきたら立った状態で、それも慣れてきたら軽く投げたり転ばしたりと段々と難易度を上げていった。

20分後には咄嗟の判断で、適した受け身を取れる様になったので遂に実戦となった。


「さて、実戦と行こうか。
と言っても防御はするけど、最初は僕から攻撃はしない。
取り敢えず好きに打ち込んで欲しい。
勿論パンチ、キックだけじゃなく搦め手を使って良い。
2人同時に掛かって来ても良いからね。」

「「はい!」」


チラリと試合場の外を見るとギルドマスター以外に3人の冒険者が立っていた。
腹を擦っている辺り、昼飯を食べて帰って来た直後といった所だろうから直ぐに試合場を使うという事は無いだろう。


「それじゃ行きますにゃ!」ズダッ!

「はいよー!」


ベレーザは元気な声を発し、真っ直ぐノアの元へ駆けていく。
補助魔法のお陰で接近してくる速度が体感1割増しといった所だろうか。

「うにゃあっ!」ズダッ!ブォンッ!

ノアの3メル手前で飛び上がったベレーザは、素早く腰を捻り、右の後ろ回し蹴りを繰り出す。

ズッ…

ノアは10セメル程後退し、ベレーザの蹴りが空を切る。

ズザザッ!「お?」

ベレーザの蹴りに遅れる事僅か数瞬、飛び上がっているベレーザの下を高速で移動してきたヴァモスが滑り込んできた。

ヒュババッ!ボッ!「うりゃっ!」

手足や腰の捻りを利用して膝立ちの体勢になったヴァモスの拳がノアの腹部に迫る。が

トッ!

その場で前宙を行ったノアは、ベレーザをも飛び越えて2人の後方に降り立つ。

スタッ。

「うん、良い動きだ。
ただ2人共、今の連携を取る為にお互い手数を減らしたからか避けやすかったよ。
出来ればもう一手増やしても良かったかな。」


<<<<いやいや…(試合場外の一同)>>>>


ズダンッ!「おおっ!」
ズドンッ!「にゃっ!」

「シッ!」ブォンッ!バヒュッ!

高速でノアの前まで移動してきたヴァモスが屈んだ体勢から右の拳を繰り出して来た。

だが先程同様僅かに後退ったノアはコレを回避。
待ってましたとばかりに後ろ回し蹴りを行って来たヴァモスだが、ここからノアの対応が変化する事になる。

ガシッ!「うぇっ!?うわぁっ!?」

蹴りを避けるでも無く、足首を掴んで止めたかと思うと、ポイっと後方へぶん投げた。

「にゃにゃにゃにゃっ!」ズバババババッ!

ぶん投げられたヴァモスを横目に、ノアの元に到達したベレーザが自身の爪で6連引っ掻き攻撃を仕掛けてきた。

ガガガガガガッ!「うににっ…!?」

全ての攻撃を出だしで潰したノアに可愛らしい焦りの声を上げるベレーザ。

ダンッ!「にゃにゃっ!」バッ!バッ!

痺れを切らし、引っ掻き攻撃を中断したベレーザがその場で飛び上がって二段蹴りを繰り出す。

ガッ!ガシッ!

ポイッ。「うにゃー!!」

一段目は弾いたノアは、二段目を受け止めると腕を回し、後ろに向かってぶん投げる。

「はぁあああっ!」ボヒュッ!

ガッ!「うん、良い蹴りだ。」

ベレーザを投げた直後、既に起き上がり急速に肉薄してきたヴァモスが強烈な上段蹴りを繰り出す。
しっかりと腰が入っていた為、まともに食らえばかなりのダメージを与える事だろう。

だがその上段蹴りを防がれたヴァモスは、直ぐ様軸足を入れ替えて上・中・上と3連撃の蹴りを放ってきた。

コレを顔を引き、腹を引っ込めて回避しつつヴァモスの軸足を強目に刈る。

バシッ!「くっ…!」

強目の足払いでヴァモスの体勢が逆立ちの様な状態になった。

が、咄嗟にヴァモスが地面に手を付きつつ回転を加え、4連撃の蹴りを繰り出した。

コレも僅かに顔を引く事で回避するノア。

その隙に距離を取ったヴァモスは、受け身を取って立ち上がったベレーザと共に再度攻撃を仕掛けようした時だった。


「あっ…」

「にゃ…?」

「あれ?どうしたの?2人共。」

「「何か新しく魔法覚えました」にゃ。」


実戦形式で行っていたからか、経験値の様な物が早く溜まったのだろう。

ヴァモスは新しく『サンダー』を、ベレーザは『ファイア』を覚えた。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...