ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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再びアルバラスト編

全員が勢揃い

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アルバの私室を出て街へと繰り出すと、クロラのパーティの面々とヴァモス、ベレーザ全員が勢揃いして外で待っていた。


「あれ?皆待っててくれたの?」

「そりゃパーティの財布番が居なきゃ買い物に行けないからな。」

「そーそー。」


パーティのリーダーであるジェイルが全幅の信頼を置いている辺り、クロラの財布番の地位は確り確立されている様だ。


「あら、買い物は私とクロラでやっておくからジェイルとロゼの2人は街でデートしてても良いのよ?
夜中に敢えて部屋を空けてたのに何も"仕出かして"無かった様だしね。」

「お、おいポーラ…」

「ポーラっち、しーっ、しーっ!」


そう言えばいつぞやか、2人が良い仲だと言うのを聞いた気がする。
クロラ以外の3人は同郷らしいが、ポーラはそっち方面の話には疎く、あくまで傍観者の立ち位置(事ある毎に介入)でいるのを好む様だ。


「と、取り敢えず先ずは武器の手入れやクロラの矢の補充、ポーション類の買い出し何かに向かおう!」

「そ、そーしよー、そーしよー!」


ジェイルが顔を赤くして無理矢理話題を反らすと、ロゼも話に乗っかって歩き出す。

以前はポーラと共にノアの色恋沙汰に絡んできたが、いざ自分の事となると沈静化した様に思う。

その代わりポーラの箍が外れた様に思うが。


「あ、そうだ、その前に"例の場所"に寄らない?」


と、ポーラが提案してきた。
この言葉にノア以外の全員がピクッと反応する。

この反応に何か嫌な予感を感じるノア。


「あ、少年は顔を隠して、剣は仕舞っておいた方が良い気がするわ。」

(…嫌な予感しか無い…)

が、断るのもなんだったので、ポーラの指示通り顔を【鬼鎧殻】で隠し、荒鬼神2本を仕舞って皆の後を付いて行く事にした。







~冒険者ギルド・銅像前~


メラァ…

火の妖精がフゥっと息を吐くと、空中に火の海と化した大地が出現し、少年の銅像が火に飲み込まれていく。

バヂヂッ…

少年の銅像が合った位置から少し離れた位置に雷鳴と閃光を迸らせながら雷で形作られた9本の大蛇が出現。
口の辺りの光が強まっていき、少年へ一斉発射を仕掛ける様だ。

シュバッ!

放たれた光は真っ直ぐ少年へと突き進んで行き、消し飛ばされる寸での所で少年の目の前に漆黒の壁が現れる。

それは壁ではなく、9本首の大蛇よりも更に長大な漆黒の龍が出現。
放たれた光を動じる事無く吸収。
それ所か、火の海と化していた大地の炎まで全てを吸収し、口に収束していく。

その光は宛ら太陽の様に光輝き、見る者の目を眩ませる程の光量を放つ。

9本首の大蛇は怯えたかの様に震え、体を構成している表面の雷が徐々に霧散していく。

『ゴッ!』

9本首の大蛇をそのまま飲み込む程の大きさの光が龍から発射され、何の抵抗も無く蒸発していった。

その後龍は天高く咆哮を上げる動作をすると、火炎混じりの竜巻、周囲に舞う氷の粒を伝う稲光で落雷を演出した。

その後、全てを終えた漆黒の龍は霧散し、少年の像へと戻っていった。


「「「「おおーっ!」」」」パチパチパチ

「「「「えー、本日から追加して演じております『ヒュドラ殲滅戦』御覧頂き有り難う御座います。
午後2時の回は以上になります、今回付与させて頂いた全体効果は、防御力上昇(小)と攻撃力上昇(小)になります。
次は2時間後の午後4時頃に『野盗200人殲滅戦』を演りますので、良ければまた見に来て下さいね♪」」」」


「いやー実を言うと、こんな子供がこんな事するかねー、って思ってたんだが…」
「あぁ、実際に見ちゃうとなぁ…」
「商人達が"当時の方が凄かった"って興奮混じりに言って気持ちが分かったぜ…」
「あのおにーちゃんすごかったよね、人間がゴミの様だったね。」


前日の『"野盗200人殺し"の討伐依頼』を終え、午前6時から新たに『エレメンタル・フェアリーズ』によって演じられる事になった『ヒュドラ殲滅戦』。

これは『エレメンタル・フェアリーズ』の4人が、以前ノアとグリードがアルバラストでヒュドラと戦った時の状況と、実際に戦って得たイメージを盛り込んだらしい。

ノアは適当な理由付けだと思っていたが、4人が戦う前に『演じる上で実際に戦って補完したい』などと宣っていたが、強ち嘘ではなかった様だ。


見世物も終わり、見終わった一般人やステータス上昇効果を受け、急ぎ依頼を行いに街の外へと歩を進めて行く冒険者達がその場から掃けて行くと、そこにはキラキラした目で銅像を見詰めるヴァモス、ベレーザと、連れてきたは良いもののあまりの派手さに困惑気味のクロラ達。

そして少し離れた所に【鬼鎧殻】を装着したノアが項垂れていた。


「かっこいいにゃぁ…」
「うん、かっこいいなぁ…」

「この間寄った時は銅像が立つ、って事しか聞いて無かったが…」
「こーんなド派手な演出が付くなんて…」
「…にしてもえらく精巧に作られてるわね、銅像って少し不恰好になる物だけど、少年と全く変わらないじゃない。」
「うん…かっこいい…」

「もうやだ…(泣)」


など、感想は人それぞれであった。


「ハッハッハ、どうだね?
なかなか精巧に作られているだろう?」

「んぇ…?」


項垂れるノアの元にアルバが歩み寄ってきた。


「銅像製作が決まった時に、知り合いの商人を募ったりしてノア君の顔を忠実に再現したんだよ。
最初は顔無しの案もあったんだが、顔無し1に対して顔有り101の大多数で決定したんだ。」

(超大多数じゃん…)

「それに昨日君が戦った最上級冒険者『エレメンタル・フェアリーズ』の皆さんに1ヶ月限定で演じて貰ってるんだよ。」

「「「「やっほー、【鬼神】くーん観てくれたー?」」」」


銅像の上で舞っている妖精4人がノアに手を振っている。


「直視出来ませんでした…」


4人の演じる見世物には何ヵ所か見せ場があるのだが、その都度自分の精巧な銅像が視界に入る為、目移りしてしまいマトモに見れないのである。 


「アルバさん…お願いですから顔無しか、せめて赤の他人に変えて貰えませんか…?」

「まぁそう言うな、これからはさっきの魔導具の効果で銅像の件を外で言わない様に設定するからそれで許してくれ。」

「ぐぬぬぬ…わ、分かりました…」


折れた。





「そう言えばノア君達は獣人の国に向かうのだったな。
もうそろそろ発つのか?」

「早ければ今日の夜には出ようかと…」

「そうか、ではノア君またな。」

「えぇ、また。」


そう言ってアルバは元来た道を戻っていった。


「少年よ、幾らなんでも別れの挨拶に"また"は無いんじゃないか?
もしやあれか?銅像の件を根に持って…」

「いやいや、別にそう言う訳ではありませんよ。
近い内にまた会うから"また"、と答えただけです。」 

「あら、また会う用事があるのね。」

「えぇ、ちょっとね。」ニヤリ

「何よ、その含みのある笑顔は。」

「いーや、何にも。
さ、僕の用事も済んだので買い出しに行きましょ、買い出しに!
この像の前は落ち着かないので、早く向かいましょう!」

「何その露骨な話の反らし方は…まぁ良いわ。
皆行きましょ。」

「「「「「はーい。」」」」」


顔を隠しているにも関わらず、像の前だと落ち着き無くソワソワしているノアを見ているのも何なので、ポーラは一同に声を掛けて買い出しに向かう事にした。
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