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再びアルバラスト編
アルバ私室にて
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現在正午頃のアルバの私室にて。
ガチャ「お呼びですか、アルバさん。」
「おお、ノア君お疲れの所済まないな。」
「いえ、たらふく食べてぐっすり寝たのでもう大丈夫です。
それで聞きたい事と言うのは…あぁ、そう言う事ですね。」
ノア達がアルバラストの街を一望出来るアルバの私室に入ると、応接用の長椅子にヴァリエンテ・ルルイエとカルル、ミミカが座っていた。
ノアが3人に視線を向けると、ルルイエはニコリと微笑み、ミミカは目礼、前日に思いっ切りぶん殴ったカルルは体を強張らせて身震いしていた。
「昨日の今日でもう万全とは、やはり君は強いな。」
「健康状態を診てくれる腕の良い従者が居ますし、短い時間で体力を戻すよう両親から訓練を受けてますので。」
「ほぅ、どの様な?」
「簡単な事です。
疲労困憊になるまで訓練を行い、2時間程休ませてまた訓練。
これを1ヶ月程続けて体の方を強制的に慣れさせれば自然と治癒力や回復力が上がります。
ルルイエさんの方でも導入しますか?」
「息子にはこれから兵士として厳しい訓練を受けて貰う予定だ、そう言った訓練を取り入れるのも一考に値するな。」
「ちょ、父上…!?」
大雑把に聞いただけでもとんでもない内容の訓練がサラッと追加されそうになり、慌てふためくカルル。
「…が、厳しい訓練に身を置かせるのはカルルを改心させるのが目的だ。
行く行くは立派な『貴人』として成長を遂げて欲しいからであって『鬼神』になって欲しい訳では無い。
この話は見送るとしよう。」
「父上…」
前日に頭の痛い大事を仕出かした愚息ではあるが、後々家を継いで貰いたい息子である事に代わりは無い。
親心の一端を垣間見たカルルだった。
が
「まぁ改心しない様ならそれまでよ。
たまに感情任せになる所があるが、しっかり者のミミカが居るから家督の心配も無いしな。」
「ち、父上…!?」
要約すると、『改心しなければ捨て置く』と言う事だ。
言葉の意味を察したカルルが再び脂汗を流す。
そんなカルルを尻目にノアが口を開く。
「それで?世間話をする為にここに来た訳じゃないのですが…」
「済まないなノア君、詳しい事情や事の経緯は冒険者ギルド長やカルル殿から聞いた。
ノア君には色々と報告する事があるので来て貰ったんだ。
まず始めに、北門の外は戦闘で滅茶苦茶になったが、弁償費用等はルルイエ殿が支払うので気にしなくて良い。」
「えぇ。
それを見越して大暴れしましたし、以前の時に比べれば復旧は早いでしょうね。」
「あぁ、前回と違って土壌汚染が無いから2日で元通りだよ。」
前回は討伐したヒュドラの血液や体液の問題もあり、復旧が長引いたが今回はそう言った問題も無いので早急に解決するとの事だ。
「あと今回の騒ぎに際して、こちらからちょっとした仕掛けを施させて貰った。」
ゴトッ…
「何ですか?この置物は。」
アルバが徐に机の上に置いたのは、金細工で作られた1メル程の像で、顔の無い人間が胸に魔石を抱いているポーズを取っている。
「これは私が昔現役だった頃にある組織から盗ってきた魔導具でね、強力な『忘却・認識阻害・沈黙』効果が<付与>されている魔石が嵌め込まれているんだ。」
「ほー。」
「この魔導具の特徴は記憶に干渉する事でね、起動状態の像から離れれば離れる程、ここで見た出来事が頭の隅に追いやられ、記憶はあるのだけど声に出す事が出来ないという物だ。
ほら、旅先で見た景色や出来事は普段殆ど忘れているけど、またその場に訪れたら記憶が呼び起こされる事があるだろう?
それと同じ事だ。」
「それは、中々便利な魔導具ですね。
つまり昨日の出来事に関して記憶はあるけど、この街意外で話す事が出来なくなるのですね?」
「あぁ。君の事だ、余計な噂は立てられたくないだろうからね。」
「助かります。
ここでの噂が発端で厄介な貴族がまた来られでもしたら大変ですよ。」
と、苦笑いをしながらカルルに対して遠回しに悪態をつくノア。
「くっ…」
悪態をつかれている事に何も言えないカルルは苦虫を噛み潰していると
「ノア君、悪態をつきたい気持ちは分かるけどこういった場では抑えないとダメだよ。」
「あ、ご、ごめんなさい。」
ノアの付き添いで来ていたクロラが注意を入れる。
「貴族の大半は執念深い人達ばかりだから、余計な事は言わず、聞かれた事や言われた事に応える位で良いよ。(小声)」
「は、はい、分かりました。(小声)」
しっかり手綱を引いている様だ。
「今回私の息子が本当に迷惑を掛けてしまった。
これで謝罪になるとは思ってないが、少しばかり受け取って欲しい。」ジャラリ。
と、ルルイエが懐から金貨の入った小袋を取り出す。
が、ノアはそれを手で制する
「申し訳無いですが、それは受け取れません。
あなたは今重要な任務に就いてると聞きました。
維持には莫大なお金が掛かるでしょうからそれに充てて下さい。
取り敢えず食うに困らない稼ぎはありますので。」
「ふ…
こういう時は受け取って置いた方が良いぞ。
だが君の言っている事も確かだ、なのでいつかまた会う時にでも持て成しをさせて貰うよ。」
軽く微笑んで取り出した小袋を再び懐へと仕舞うルルイエ。
すると話を聞いていたアルバがルルイエに話し掛ける。
「ルルイエ殿、任務の件だが厳しそうか?」
「あぁ、今回の『氾濫』は対応を誤ればマズイ事になるかもしれん。
魔素の量が多く、出現しているモンスターの傾向も過去最悪な物が予想されている。
…が、発生予想時期が4~6ヶ月なのが不幸中の幸いだよ。
そろそろ冒険者らに応募を掛ける予定だが場所が場所だけに多くは集まらないだろうな。」
ルルイエが苦笑いを浮かべながらそう答える。
するとクロラがルルイエに問い掛ける。
「あの…『氾濫』が起こるんですか?」
「あぁ、間違いなく起こる。
まぁ時期が近付いてきたら各国に報せを出すから西の方には向かわない方が良い。」
「"過去最悪"と仰ってましたが、どういったモンスターが出現すると予想されているのですか?」
「今回は"虫"だな…」
「"虫"…ですか…」
「虫系は厄介この上無い、繁殖力が尋常では無いし痛点が無いから文字通り死ぬまで襲って来る。
しかも昨今、各地の魔素上昇の影響が西の大地でも現れて来ているから強化個体が出現するかも知れん。
ノア君が以前戦った事のある『女鏖蜂』や『鎧蜂』何かも現れるだろう。」
と、ここでノアからも質問が上がる。
「先程、場所が場所だけに冒険者の募集が集まらないだろう、と仰ってましたがそれは何故ですか?」
「西の大地は周囲を山に囲まれており、街からも大分離れている。
本当なら前哨基地を建て、兵を入れておきたい所だが期間が無さ過ぎる。
出来る事と言ったら近隣の住人達を避難させる事位だな…」
「ちなみにその地は『氾濫』終結後にどうする予定ですか?」
「特には決めて無いが、自然豊かで資源も豊富だから村を置いて畜産、農業でも開こうか、とね。」
「そうですか…」
手を顎にやり、思案顔のノア。
何か妙案がある様だと察したルルイエが聞き返す。
「何か良い考えがあるのかな?」
「案は一応『ポンッ』「ノア君、ちょっと待ちなさい。」
「あ。」
背後から肩をポンと叩かれたノアは、ハッとなって後ろを振り返る。
ブニョッ
後ろにはニッコリと笑顔のクロラが立っていた。
振り返った所でクロラの人差し指が頬に突き刺さる。
また新たな事に首を突っ込み掛けているノアを直前で止める形となった。
「深入りし過ぎだよ。」
「ご、ごめんらふぁい…」
ルルイエの件はまだ冒険者の募集を今後掛ける予定である為、まだ多少時間があるので当人達に任せる事にし、ノアが考えている案は、どん詰まりになった場合に聞く事になった。
その後、聞き取りを2、3程した後、その場は解散となった。
ガチャ「お呼びですか、アルバさん。」
「おお、ノア君お疲れの所済まないな。」
「いえ、たらふく食べてぐっすり寝たのでもう大丈夫です。
それで聞きたい事と言うのは…あぁ、そう言う事ですね。」
ノア達がアルバラストの街を一望出来るアルバの私室に入ると、応接用の長椅子にヴァリエンテ・ルルイエとカルル、ミミカが座っていた。
ノアが3人に視線を向けると、ルルイエはニコリと微笑み、ミミカは目礼、前日に思いっ切りぶん殴ったカルルは体を強張らせて身震いしていた。
「昨日の今日でもう万全とは、やはり君は強いな。」
「健康状態を診てくれる腕の良い従者が居ますし、短い時間で体力を戻すよう両親から訓練を受けてますので。」
「ほぅ、どの様な?」
「簡単な事です。
疲労困憊になるまで訓練を行い、2時間程休ませてまた訓練。
これを1ヶ月程続けて体の方を強制的に慣れさせれば自然と治癒力や回復力が上がります。
ルルイエさんの方でも導入しますか?」
「息子にはこれから兵士として厳しい訓練を受けて貰う予定だ、そう言った訓練を取り入れるのも一考に値するな。」
「ちょ、父上…!?」
大雑把に聞いただけでもとんでもない内容の訓練がサラッと追加されそうになり、慌てふためくカルル。
「…が、厳しい訓練に身を置かせるのはカルルを改心させるのが目的だ。
行く行くは立派な『貴人』として成長を遂げて欲しいからであって『鬼神』になって欲しい訳では無い。
この話は見送るとしよう。」
「父上…」
前日に頭の痛い大事を仕出かした愚息ではあるが、後々家を継いで貰いたい息子である事に代わりは無い。
親心の一端を垣間見たカルルだった。
が
「まぁ改心しない様ならそれまでよ。
たまに感情任せになる所があるが、しっかり者のミミカが居るから家督の心配も無いしな。」
「ち、父上…!?」
要約すると、『改心しなければ捨て置く』と言う事だ。
言葉の意味を察したカルルが再び脂汗を流す。
そんなカルルを尻目にノアが口を開く。
「それで?世間話をする為にここに来た訳じゃないのですが…」
「済まないなノア君、詳しい事情や事の経緯は冒険者ギルド長やカルル殿から聞いた。
ノア君には色々と報告する事があるので来て貰ったんだ。
まず始めに、北門の外は戦闘で滅茶苦茶になったが、弁償費用等はルルイエ殿が支払うので気にしなくて良い。」
「えぇ。
それを見越して大暴れしましたし、以前の時に比べれば復旧は早いでしょうね。」
「あぁ、前回と違って土壌汚染が無いから2日で元通りだよ。」
前回は討伐したヒュドラの血液や体液の問題もあり、復旧が長引いたが今回はそう言った問題も無いので早急に解決するとの事だ。
「あと今回の騒ぎに際して、こちらからちょっとした仕掛けを施させて貰った。」
ゴトッ…
「何ですか?この置物は。」
アルバが徐に机の上に置いたのは、金細工で作られた1メル程の像で、顔の無い人間が胸に魔石を抱いているポーズを取っている。
「これは私が昔現役だった頃にある組織から盗ってきた魔導具でね、強力な『忘却・認識阻害・沈黙』効果が<付与>されている魔石が嵌め込まれているんだ。」
「ほー。」
「この魔導具の特徴は記憶に干渉する事でね、起動状態の像から離れれば離れる程、ここで見た出来事が頭の隅に追いやられ、記憶はあるのだけど声に出す事が出来ないという物だ。
ほら、旅先で見た景色や出来事は普段殆ど忘れているけど、またその場に訪れたら記憶が呼び起こされる事があるだろう?
それと同じ事だ。」
「それは、中々便利な魔導具ですね。
つまり昨日の出来事に関して記憶はあるけど、この街意外で話す事が出来なくなるのですね?」
「あぁ。君の事だ、余計な噂は立てられたくないだろうからね。」
「助かります。
ここでの噂が発端で厄介な貴族がまた来られでもしたら大変ですよ。」
と、苦笑いをしながらカルルに対して遠回しに悪態をつくノア。
「くっ…」
悪態をつかれている事に何も言えないカルルは苦虫を噛み潰していると
「ノア君、悪態をつきたい気持ちは分かるけどこういった場では抑えないとダメだよ。」
「あ、ご、ごめんなさい。」
ノアの付き添いで来ていたクロラが注意を入れる。
「貴族の大半は執念深い人達ばかりだから、余計な事は言わず、聞かれた事や言われた事に応える位で良いよ。(小声)」
「は、はい、分かりました。(小声)」
しっかり手綱を引いている様だ。
「今回私の息子が本当に迷惑を掛けてしまった。
これで謝罪になるとは思ってないが、少しばかり受け取って欲しい。」ジャラリ。
と、ルルイエが懐から金貨の入った小袋を取り出す。
が、ノアはそれを手で制する
「申し訳無いですが、それは受け取れません。
あなたは今重要な任務に就いてると聞きました。
維持には莫大なお金が掛かるでしょうからそれに充てて下さい。
取り敢えず食うに困らない稼ぎはありますので。」
「ふ…
こういう時は受け取って置いた方が良いぞ。
だが君の言っている事も確かだ、なのでいつかまた会う時にでも持て成しをさせて貰うよ。」
軽く微笑んで取り出した小袋を再び懐へと仕舞うルルイエ。
すると話を聞いていたアルバがルルイエに話し掛ける。
「ルルイエ殿、任務の件だが厳しそうか?」
「あぁ、今回の『氾濫』は対応を誤ればマズイ事になるかもしれん。
魔素の量が多く、出現しているモンスターの傾向も過去最悪な物が予想されている。
…が、発生予想時期が4~6ヶ月なのが不幸中の幸いだよ。
そろそろ冒険者らに応募を掛ける予定だが場所が場所だけに多くは集まらないだろうな。」
ルルイエが苦笑いを浮かべながらそう答える。
するとクロラがルルイエに問い掛ける。
「あの…『氾濫』が起こるんですか?」
「あぁ、間違いなく起こる。
まぁ時期が近付いてきたら各国に報せを出すから西の方には向かわない方が良い。」
「"過去最悪"と仰ってましたが、どういったモンスターが出現すると予想されているのですか?」
「今回は"虫"だな…」
「"虫"…ですか…」
「虫系は厄介この上無い、繁殖力が尋常では無いし痛点が無いから文字通り死ぬまで襲って来る。
しかも昨今、各地の魔素上昇の影響が西の大地でも現れて来ているから強化個体が出現するかも知れん。
ノア君が以前戦った事のある『女鏖蜂』や『鎧蜂』何かも現れるだろう。」
と、ここでノアからも質問が上がる。
「先程、場所が場所だけに冒険者の募集が集まらないだろう、と仰ってましたがそれは何故ですか?」
「西の大地は周囲を山に囲まれており、街からも大分離れている。
本当なら前哨基地を建て、兵を入れておきたい所だが期間が無さ過ぎる。
出来る事と言ったら近隣の住人達を避難させる事位だな…」
「ちなみにその地は『氾濫』終結後にどうする予定ですか?」
「特には決めて無いが、自然豊かで資源も豊富だから村を置いて畜産、農業でも開こうか、とね。」
「そうですか…」
手を顎にやり、思案顔のノア。
何か妙案がある様だと察したルルイエが聞き返す。
「何か良い考えがあるのかな?」
「案は一応『ポンッ』「ノア君、ちょっと待ちなさい。」
「あ。」
背後から肩をポンと叩かれたノアは、ハッとなって後ろを振り返る。
ブニョッ
後ろにはニッコリと笑顔のクロラが立っていた。
振り返った所でクロラの人差し指が頬に突き刺さる。
また新たな事に首を突っ込み掛けているノアを直前で止める形となった。
「深入りし過ぎだよ。」
「ご、ごめんらふぁい…」
ルルイエの件はまだ冒険者の募集を今後掛ける予定である為、まだ多少時間があるので当人達に任せる事にし、ノアが考えている案は、どん詰まりになった場合に聞く事になった。
その後、聞き取りを2、3程した後、その場は解散となった。
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