ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~

はい残念でしたー

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「…やっぱこれ扉開けたら終わるんだろうな…
止めてよ?開けたら中に木人居て「はい残念でしたー」とか。」

ガチャ…

恐る恐ると言った様子で扉を開けると、中は一定間隔でランプが設置されている薄暗い通路の様で、特に罠等は見当たらなかった。


カシャン…ガラガラ…

「ん?」

〝はは、あなたはお強いですな…あなたなら女王様…を…〟


木人はそう言い残し、次々と自壊していった。


(『…どうやら終わったみたいだな。』)

「その様だね。
…あぁでも、宝石回収しに行きたいけど下は毒ガスがなぁ…」

(『息止めて行けば良いだろう?
整えて無くても主なら10分位訳無いだろ?』)

「10分は流石に整えないと無理だよ。
…仕方無い、その手で行くか…ス、スー、ハー…」


と、ノアが息を整えて毒ガスの中に入っていこうとした時であった。


ユラァ…ヒュォオッ!


「ん?」

(『何か毒ガスが迫ってきてないか?』)


下に滞留していた毒ガスが、徐々にノアが立つ場所までせり上がって来ていた。


(『どうやら毒ガス自体は排出されない様だな。』)

「…と言うか…何か1ヶ所に集まって来てない?」


ノアが言う様に、せり上がって来た毒ガスがノアの目の前に集まってきたかと思うと、徐々に塊を形成していく。

この段階で気付いたが、このガスは色こそ毒々しいが、非常に細かな粒子の様であった。


パキパキパキ…


「おお…色が毒々しい紫から鮮やかな紫に…」

(『これ自体が宝石の様だな。』)


パキ…ポトッ…

「おっとっと…」


部屋中に満たされていた紫色のガス全てが収束し六角形に形成し終えると、落下し掛けた為慌てて掴み取る。


「…綺麗だね…何て名前の宝石だろう。」

(『お、何か説明文が出て来たぞ。』)



『錬金石ディジントキシ』…昔、機兵製作に長けたとある国の女王が劇毒に侵された際、国中の【錬金術】の者達が総力を挙げて製造したとされる錬金石。

身に付ければ毒に侵される事は無く、体に取り込めばあらゆる毒を解毒すると言われている。

だが皆の奮闘虚しく、この錬金石が完成したのは、女王が息を引き取った直後だったと言う。



「…曰く付きの代物…って訳でも無さそうだね。」

(『説明文にあった"機兵"ってのは、あの木人の事だよな…?』)

「多分そう…ん?何だこれ。」


ノアは自壊した木人を見てある事に気付く。


「うわ、凄いよこれ。
ガワは木だけど、中は小さな歯車や金属の紐何かがびっしりだ。」

(『…胸の辺りにある石は魔石か…?
恐らくそれが動力源にでもなってるんだろうな。』)

「そう言えば、さっき木人が自壊する前に"あなたなら女王様を…"とか言ってたけど、その女王って説明文にあった人の事かな…?」


(『……。』)

「……。」


(『主、さっさと宝石やら回収して次の階に行ってみよう。
何か先が気になってきた。』)

「奇遇だね、僕もだよ。」


そう言ってノアは、自壊した木人達を回り、嵌め込まれていた宝石を回収。
この際に判明した事なのだが、木人に嵌め込まれていたのは宝石では無く、属性魔法が込められた魔石の様であった。








コッコッコッ…

回収を終え、扉を出たノアは、通路を道なりに進む。

常に周囲の気配を探り、罠がいつ発動しても対処出来る様に気を張っていた。




「なーんも無いね。」

(『思わせ振りな石畳の目地とかを、敢えて触ってみても何も反応無いのな。』)

「本当にただの通路みたいだね。
…あ、でもこの通路を曲がった先に広間みたいのがあるね…」

(『お、本当だな。
さて次はどんな仕掛けが…』)


〝貴様らだな?
施設に侵入し、我等が女王への治療薬を盗み取った侵入者とやらは!〟


通路の先から、明確にノアへ向けた声が響く。


(気付いてるね。)

(『気付かれてるな…
まぁ、あちらからすれば俺らは侵入者だわな。』)


〝どうした、さっさと出て来い。
安心しろ、そこからこの広間迄に罠等は無い。
大人しく出てくれば楽に殺してやる。〟


((『楽に殺すとは…?』))


何はともあれ、先に進まない事には話が始まらないと感じたノアは、声のヌシの言う通り通路を進み、広間へと歩を進めて行った。








「え?」

(『え?何だ、この部屋…』)


薄暗い通路を進み曲がった先にあった広間は、どこぞの王城か、と言う程きらびやかな装飾や調度品が置かれた部屋であった。

天井には豪華なシャンデリアが設置され、部屋を明るく照らしている。
そしてこの広間、中々奥行きのある部屋で、奥まで30メルはあるだろう。

今まで歩いてきた通路との差に少し困惑しつつ、奥を見やると、フードを目深に被った人物が佇んでいた。


〝侵入者よ、この先は我等が女王の私室、そして女王は毒に侵され床に伏している。
ここから先に進ませる訳には行かぬ故、ご退場願おう。〟

パチン!


ガシャンッ!

「!?」

(『げっ!?通路を塞がれちまったぜ!』)


フードを目深に被った人物が指を弾いたかと思うと、この広間へと繋がる通路を鉄格子で塞がれてしまった。


「…んの!」ズドンッ!

ズズン…「駄目だ!これも壊せないぞ!」


咄嗟にノアが<渾身>と<剛脚>を乗せた後ろ回し蹴りを鉄格子へ放つも、部屋が揺れる程の衝撃を受けてもびくともしなかった。


〝ふ、この部屋に入った時点で貴様は籠の中の鳥も同然。
この場所を知られてしまった以上、ただで帰す訳には行かない。
先程も言ったが楽に殺してやるから安心しろ。〟

バサッ!

被っていたフードを剥ぎ取って投げ捨てたかと思うと、その下から金属骨格の機兵が姿を現す。
如何にも頑丈そうな金属骨格の下には、先程の木人同様小さな歯車やよく分からん部品がびっしりと配置され、人間同様の滑らかな動きを再現している。


その姿を見たノアは思わず


「かっこいい…」

(『分かる。』)


※忘れがちですが、ノアはお年頃な男の子です。


そんな見た目に見とれていたノアだが、手に提げていた、人1人分はありそうな大きさの大砲を見て固まってしまった。


ガションッ!フィイイイ…


その大砲の様な物を機兵が構えると、何かの作動音が部屋中に響く。

この段階でノアは、その大砲の様な物に見覚えがあった事を思い出す。


「あれ…何か少し前に見た気がするんだけど…」

(『奇遇だな、俺もだ。』)

「何だっけ、フリアダビアでドワーフが改造してた奴だよね…確か…」

(『何つったっけな…あ、思い出した。』)

((『ガトリング砲だ。』))
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