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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~
意識が消失
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「恐らくですが、彼女の意識が消失し掛かっているのかも知れません…」
『消失?』
「はい…
元々機兵に自身の意識を移すと言うのは非常に難しい事です。
先程彼女の言った事から推測するに、私という宿主を介して動力源である魔石を利用し、機兵を操作していたのでしょう。
ですが私が居なくなった事で、意識のみの存在の彼女が、高純度の魔力の塊である魔石に常に当てられ続けているのです。
人間で言えば業火に身を焼かれている様なもの。」
『じゃあ、このまま意識が消失するまで放置してれば良いのでは?』
「そう上手くいけば良いのですが…
勿論こんな事誰も試した事が無いので、彼女の意識が魔石を凌駕するかも知れませんし、私に仕込んだという毒薬が変な作用を生むかも知れません。
それに消失はしても、消滅はしない恐れがあります…何と言いますか、焼き付けを起こす…みたいな…」
『あぁ、フライパンの焦げみたいな物か…』
「そ、そんな感じです…」
と、あくまでも想定の話をしている間も奥の壁に磔にされているマディアは苦悶の声を上げ続けている。
〝アアアアッ!
カラダガアツいッ!ソ、ノオンナを寄こセぇエッ!〟
ズゾゾゾッ!
動けないマディアは、金属製の触手を伸ばしてラインハードを取り戻しに掛かる。
『『シュリィインッ!』』『『スラッ!』』
ノアは太腿からカランビットナイフ、刺突武器を2本ずつ取り出し、それぞれの手に持つ。
『"アツい"か…
どうやらお姫さんの予想が当たってるかも知れないな…
取り敢えず暫く放置してみて様子を見るとしよう、俺の後ろから動くなよ?』
「は、はい…」
背後のラインハードを守る様に迎撃体勢を取ったノアに、素直に応じる事にした。
ゾゾゾッ!
ザンッ!ズバッ!ドスッ!ズダンッ!ブチッ、ブヂィッ!
ガシッ!ゾバッ!ゾリッ!ブチッ!グシャッ!メキメキッ!
〝クソォッ!何故ダ!ナゼシノイデいラレルノダァアッ!〟
速度に緩急を付け、上下左右から、フェイントを掛けたりと手を変えて触手を放って来てはいるものの全て受け止められ、切断され、動きを止められ、瞬く間に破壊されていく。
「…す、凄い…」
『ふ、この程度でお姫さんを奪えると思うな。
戦闘経験不足の【呪術師】と毎日訓練漬けの俺とじゃ年季が違うんだよ。』
バキッ!ブチッ!ビキッ、ベキッ…
その後もマディアから50を越える攻撃が繰り出されているが、未だノアという壁を越えられずにいる。
ノアの両脇には金属製触手の残骸が散らばっていた。
すると
ピタッ!〝…ガァ、うッ!?〟
『ん?限界が来たか?』ガシッ!ブチッ!
金属製の触手が動きを止めた直後、マディアから苦悶の声が上がる。
〝あぁ…アァアァアッ…〟シュゥウウウ…
それに加えて機兵の身体から音と共に紫色の煙も上がり始めた。
〝熱い…カラダガもエルゥウウウ…ッ!〟ジュゥウウッ…
すると機兵の胸の辺りから紫色の液体が血管の様に走り、まるで動力源である魔石から逃げているかの様である。
『さて、鬼が出るか蛇が出るか…』
ノアは迎撃体勢を取ったままマディアの動向を注視している。
〝ハァアああっ!ヌケロッ!抜けテクレぇっ!〟
マディアは苦しみもがきつつも、ノアによって手を削ぎ落とされた腕で何とか突き刺さっている荒鬼神を抜こうとするも、そんな簡単に抜けやしない。
少し冷静になって再び新しい腕に換装すれば良いだけなのだが、今のマディアにそんな冷静さはあるハズも無い。
〝がァああっ!アッ…………〟ズシャッ…
今の今まで悲鳴を上げて暴れていたマディアは、突然日が消えたかの様に静かになり、腕や触手を力無くだらりと垂らして動かなくなった。
『…どうやら事切れたみたいだが…』
「…そうだと良いのですが…
後は元々の機能が復活すれば確定と見て良いでしょう…」
そう言った直後、動きを止めていた機兵に動きが見られた。
ガシャッ!
『っ!?』
咄嗟に身構えるノア。
だが
〝ご安心下さい、ラインハード。
私の体を支配していましたマディアの消滅を確認。
排除シーケンスを解除、通常状態に移行します。〟
先程部屋に入ってきた時と同様の、抑揚の無い機兵の音声に戻る。
「お…終わった様ですね…」ヨロッ…
すると安心したのか、ラインハードがよろめきながらもゆっくりと立ち上がる。
だが、何故かその表情が優れないのが何処と無く気にはなったが…
フッ…
「その様ですね。
…それにしても相手が戦闘経験皆無のド素人、その上勝手に自滅してくれて助かった…」
「私としては、この場に居たのが貴方様であった事を神に感謝しなければなりませんね。」
「はは、そんな大袈裟な。
僕もここに来たのは偶々ですしね…」
「そう言えば『 』まだお名前を聞いて『ブツッ!』え…?」
ピシャッ!ピチャチャ…
突如ラインハードの顔に鮮血が迸る。
その後足元にも纏まった量の血が滴り、血溜まりが形成される。
「"どうして…?"」
ラインハードが目の前で起こった事が信じられない、と言った様子で目を見開いていた。
「…痛てて…予備動作と殺気が殆ど無かったから、勘頼みだったぞ…」ビチャチャ…
そう言うノアは、ほぼ無音でラインハードへ向けて放たれた機兵の攻撃を、寸での所で掴み取っていた。
その手からは血が止めどなく流れており、放たれた攻撃の威力を物語っている。
ザシュッ!「くっ、痛ででっ!」
「だ、大丈夫ですか、冒険者さん…」
金属製の触手を荒鬼神で断ち斬ったノアはたたらを踏む。
その手を見てみると指の第2関節辺りが皮1枚で繋がってるだけ、という状態であった。
「えぇ大丈夫…こういうのは慣れっこなんでね…
それよりもそこのデカブツ、まだ中にマディアが居るだろ!」
ノアからそう問われた機兵は忌々しげに声を上げる。
〝何故だ…不意打ちで放った攻撃だぞ…
それを何故受け止めた…〟
「てか最初からお前がくたばったとは思ってなかったよ。
この場に始めて来た時、機兵はこのお姫さんを"ラインハード様"って呼んでたのに、さっきは"ラインハード"と呼び捨てにしてたからもしや、と思ったんだ。」
〝ぐ、くそっ…〟
「粗いんだよ、やる事が。
だが攻撃はさっきよりもかなり鋭くなっていた。
もしかしてお前…」
ノアの脳裏にある考えが浮かび、答え合わせをするかの様にマディアへ呼び掛ける。
〝あぁそうさ、私は人間に戻る事を止め、この機兵の動力源である魔石に私という存在を付与させ完全に融合させたのさ。〟
元々毒薬に自身の意識を"煮溶かして"ラインハードの体内に潜んでいたマディアは、ラインハードを殺した後に体を利用し、復活する予定であった。
だがノアの手でラインハードを奪われたマディアは、高純度の魔石に当てられ消滅寸前であったが、死ぬよりはマシ、とばかりに人間を止め、機兵を寄り代にする事を選んだ。
機兵の動力源がある位置からは紫色の光が放たれている。
しかも厄介な事に
「うぐっ!?」ズグンッ…
「だ、大丈夫ですか…?」
「えぇ…今の攻撃で毒を貰った様です。
それなりに耐性を持ってるハズですが、痛みを伴うと言う事はかなり強い毒。
くれぐれも僕には触れない様に、良いですね?」
意識を"煮溶かし"、ラインハードの体を蝕んだ毒薬も共に動力源に付与された様で、機兵での攻撃全てに毒が付与されてしまう事になった。
「…ぃしょっと…
お姫さん、そこで待ってて下さい、今度こそ完全に破壊してきますので。」
「は、はい。」
「それと、何と無く察してはいますが、さっき言ってた"どうして…?"の真意も聞かせて貰いますよ?」
「…はい…」
ラインハードが物悲しそうな顔をしているのを横目に見つつ、ノアはマディアへと歩きだして行った。
『消失?』
「はい…
元々機兵に自身の意識を移すと言うのは非常に難しい事です。
先程彼女の言った事から推測するに、私という宿主を介して動力源である魔石を利用し、機兵を操作していたのでしょう。
ですが私が居なくなった事で、意識のみの存在の彼女が、高純度の魔力の塊である魔石に常に当てられ続けているのです。
人間で言えば業火に身を焼かれている様なもの。」
『じゃあ、このまま意識が消失するまで放置してれば良いのでは?』
「そう上手くいけば良いのですが…
勿論こんな事誰も試した事が無いので、彼女の意識が魔石を凌駕するかも知れませんし、私に仕込んだという毒薬が変な作用を生むかも知れません。
それに消失はしても、消滅はしない恐れがあります…何と言いますか、焼き付けを起こす…みたいな…」
『あぁ、フライパンの焦げみたいな物か…』
「そ、そんな感じです…」
と、あくまでも想定の話をしている間も奥の壁に磔にされているマディアは苦悶の声を上げ続けている。
〝アアアアッ!
カラダガアツいッ!ソ、ノオンナを寄こセぇエッ!〟
ズゾゾゾッ!
動けないマディアは、金属製の触手を伸ばしてラインハードを取り戻しに掛かる。
『『シュリィインッ!』』『『スラッ!』』
ノアは太腿からカランビットナイフ、刺突武器を2本ずつ取り出し、それぞれの手に持つ。
『"アツい"か…
どうやらお姫さんの予想が当たってるかも知れないな…
取り敢えず暫く放置してみて様子を見るとしよう、俺の後ろから動くなよ?』
「は、はい…」
背後のラインハードを守る様に迎撃体勢を取ったノアに、素直に応じる事にした。
ゾゾゾッ!
ザンッ!ズバッ!ドスッ!ズダンッ!ブチッ、ブヂィッ!
ガシッ!ゾバッ!ゾリッ!ブチッ!グシャッ!メキメキッ!
〝クソォッ!何故ダ!ナゼシノイデいラレルノダァアッ!〟
速度に緩急を付け、上下左右から、フェイントを掛けたりと手を変えて触手を放って来てはいるものの全て受け止められ、切断され、動きを止められ、瞬く間に破壊されていく。
「…す、凄い…」
『ふ、この程度でお姫さんを奪えると思うな。
戦闘経験不足の【呪術師】と毎日訓練漬けの俺とじゃ年季が違うんだよ。』
バキッ!ブチッ!ビキッ、ベキッ…
その後もマディアから50を越える攻撃が繰り出されているが、未だノアという壁を越えられずにいる。
ノアの両脇には金属製触手の残骸が散らばっていた。
すると
ピタッ!〝…ガァ、うッ!?〟
『ん?限界が来たか?』ガシッ!ブチッ!
金属製の触手が動きを止めた直後、マディアから苦悶の声が上がる。
〝あぁ…アァアァアッ…〟シュゥウウウ…
それに加えて機兵の身体から音と共に紫色の煙も上がり始めた。
〝熱い…カラダガもエルゥウウウ…ッ!〟ジュゥウウッ…
すると機兵の胸の辺りから紫色の液体が血管の様に走り、まるで動力源である魔石から逃げているかの様である。
『さて、鬼が出るか蛇が出るか…』
ノアは迎撃体勢を取ったままマディアの動向を注視している。
〝ハァアああっ!ヌケロッ!抜けテクレぇっ!〟
マディアは苦しみもがきつつも、ノアによって手を削ぎ落とされた腕で何とか突き刺さっている荒鬼神を抜こうとするも、そんな簡単に抜けやしない。
少し冷静になって再び新しい腕に換装すれば良いだけなのだが、今のマディアにそんな冷静さはあるハズも無い。
〝がァああっ!アッ…………〟ズシャッ…
今の今まで悲鳴を上げて暴れていたマディアは、突然日が消えたかの様に静かになり、腕や触手を力無くだらりと垂らして動かなくなった。
『…どうやら事切れたみたいだが…』
「…そうだと良いのですが…
後は元々の機能が復活すれば確定と見て良いでしょう…」
そう言った直後、動きを止めていた機兵に動きが見られた。
ガシャッ!
『っ!?』
咄嗟に身構えるノア。
だが
〝ご安心下さい、ラインハード。
私の体を支配していましたマディアの消滅を確認。
排除シーケンスを解除、通常状態に移行します。〟
先程部屋に入ってきた時と同様の、抑揚の無い機兵の音声に戻る。
「お…終わった様ですね…」ヨロッ…
すると安心したのか、ラインハードがよろめきながらもゆっくりと立ち上がる。
だが、何故かその表情が優れないのが何処と無く気にはなったが…
フッ…
「その様ですね。
…それにしても相手が戦闘経験皆無のド素人、その上勝手に自滅してくれて助かった…」
「私としては、この場に居たのが貴方様であった事を神に感謝しなければなりませんね。」
「はは、そんな大袈裟な。
僕もここに来たのは偶々ですしね…」
「そう言えば『 』まだお名前を聞いて『ブツッ!』え…?」
ピシャッ!ピチャチャ…
突如ラインハードの顔に鮮血が迸る。
その後足元にも纏まった量の血が滴り、血溜まりが形成される。
「"どうして…?"」
ラインハードが目の前で起こった事が信じられない、と言った様子で目を見開いていた。
「…痛てて…予備動作と殺気が殆ど無かったから、勘頼みだったぞ…」ビチャチャ…
そう言うノアは、ほぼ無音でラインハードへ向けて放たれた機兵の攻撃を、寸での所で掴み取っていた。
その手からは血が止めどなく流れており、放たれた攻撃の威力を物語っている。
ザシュッ!「くっ、痛ででっ!」
「だ、大丈夫ですか、冒険者さん…」
金属製の触手を荒鬼神で断ち斬ったノアはたたらを踏む。
その手を見てみると指の第2関節辺りが皮1枚で繋がってるだけ、という状態であった。
「えぇ大丈夫…こういうのは慣れっこなんでね…
それよりもそこのデカブツ、まだ中にマディアが居るだろ!」
ノアからそう問われた機兵は忌々しげに声を上げる。
〝何故だ…不意打ちで放った攻撃だぞ…
それを何故受け止めた…〟
「てか最初からお前がくたばったとは思ってなかったよ。
この場に始めて来た時、機兵はこのお姫さんを"ラインハード様"って呼んでたのに、さっきは"ラインハード"と呼び捨てにしてたからもしや、と思ったんだ。」
〝ぐ、くそっ…〟
「粗いんだよ、やる事が。
だが攻撃はさっきよりもかなり鋭くなっていた。
もしかしてお前…」
ノアの脳裏にある考えが浮かび、答え合わせをするかの様にマディアへ呼び掛ける。
〝あぁそうさ、私は人間に戻る事を止め、この機兵の動力源である魔石に私という存在を付与させ完全に融合させたのさ。〟
元々毒薬に自身の意識を"煮溶かして"ラインハードの体内に潜んでいたマディアは、ラインハードを殺した後に体を利用し、復活する予定であった。
だがノアの手でラインハードを奪われたマディアは、高純度の魔石に当てられ消滅寸前であったが、死ぬよりはマシ、とばかりに人間を止め、機兵を寄り代にする事を選んだ。
機兵の動力源がある位置からは紫色の光が放たれている。
しかも厄介な事に
「うぐっ!?」ズグンッ…
「だ、大丈夫ですか…?」
「えぇ…今の攻撃で毒を貰った様です。
それなりに耐性を持ってるハズですが、痛みを伴うと言う事はかなり強い毒。
くれぐれも僕には触れない様に、良いですね?」
意識を"煮溶かし"、ラインハードの体を蝕んだ毒薬も共に動力源に付与された様で、機兵での攻撃全てに毒が付与されてしまう事になった。
「…ぃしょっと…
お姫さん、そこで待ってて下さい、今度こそ完全に破壊してきますので。」
「は、はい。」
「それと、何と無く察してはいますが、さっき言ってた"どうして…?"の真意も聞かせて貰いますよ?」
「…はい…」
ラインハードが物悲しそうな顔をしているのを横目に見つつ、ノアはマディアへと歩きだして行った。
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