ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

次に動き出したのは

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次に動き出したのはノアであった。


ボッ『パァンッ!』

ヒュボ『パシンッ!』


静止した状態からノアが単発のジャブを放つ。
だが、 スタックは『魔装・破城槌式鉄甲』の効果を恐れ、放たれたジャブを手首を叩く事で潰していた。


「うぉお…見えねぇ…」
「肘から先、掻き消えてんじゃん…」
「それを迎撃するスタックも流石だぜ…」


と、周囲の観客はノアが放つジャブの速度、それを弾くスタックに驚きを隠せずにいた。


「どぉよ少年、小手調べの方は終わったかな?」

「そうですね。スタックさんの反応速度はやっぱかなりの物ですね。」

「はは、褒めても何も出ない、ぜっ!」ボッ!

バシッ!ヒュボッ!パパッ!シュパァッ!


スタックが徐に右のジャブを放つと、ノアはそれを手でガードし、即座に上段蹴りを放つ。

スタックは蹴りに打撃を打ち込む事で迎撃しつつノアの顔面目掛けて裏拳を放つ。

ヒュッ、ボッ!ゴッガガガガガッ!「くっ…」

が、僅かに下がる事で回避したノアが一気に距離を詰めつつ拳を放つ。
スタックがそれを迎撃してしまった事でその後の拳撃の嵐に呑まれ、防戦一方となってしまった。

ガガッ!ガシッ!

「しま『ズムッ!』うげぁっ!?」


迎撃していたスタックだが、僅かに生まれた隙を突かれ、手首を掴まれた。
それに反応してしまった為、スタックの腹部目掛けて放たれた拳に後れを取ってしまった。

結果、ノアが放った"やや強め"の拳を諸に受けてしまったのであった。


「かは…ぐぅっ!!」


直後、スタックは追加発生の連撃を耐え凌ぐべく腹筋に力を込める。

ゴゴンッ!「ぎ…!ごぁっ…!」

腹部に強烈な連撃が走るも何とか耐え凌いだスタックは、次の策を練っていた。


(駄目だ…やはり力じゃ勝てねぇ…こうなりゃ持ち前のスピードを生『ブンッ!』

ドボッ!「げはっ!!」


と、考える間も無いまま既に背後に回っていたノアが、拳をスタックのノーガードの右脇腹に深々と突き刺さした。

(重…息が出来『ゴッゴンッ!』

"強め"の拳を食らい、くの字に曲がったスタックの体に、重めの追撃が炸裂した所で、スタックの意識は完全に刈り取られてしまった。





「いやー、負けた負けた。やっぱ強いなぁ少年は。」

「…スタックさん、自分で"スピードタイプ"と言ってたのに何でその長所を生かさなかったんですか?」

「こんな手狭な試合場じゃ、動きが制限されて、どころか短所になっちまうよ。」


確かに直径20メル位の試合場では縦横無尽に駆け回るのは難しいだろう。


「スタックさん<縮地>とか持ってないんですか?」

「<縮地>?何それ美味しいの?」

「…持ってないんですね。
<縮地>は、短距離を高速で移動するスキルです。
鍛えていって熟練度を上げていけば、こ『ドッ!』う『ドッ!』やっ『ドッ!』て『ドッ!』  相手を翻弄する事も出来ますよ。」

「「「「「「おー!」」」」」」パチパチ。


<縮地>を知らないスタックの為、ノアは<縮地>を連続発動して前後左右に高速移動を行うと、周りで見ていた観客から拍手が巻き起こる。


「ほぉおお…」


そして<縮地>を初めて目の当たりにしたスタックはと言うと、目をキラキラとさせ


「少年、今度教えて貰っても良いかな?」

「えぇ、良いですよ。
スタックさんが使いこなせば、恐らく敵無しです。」


という訳で今度教える事になった。






「そんじゃ、次は俺だな!
やっぱ闘いの本質は力よ!なぁ坊主!」


と、次にノアの前に現れたのは、筋骨隆々で、厚い胸板に掻きむしった様な傷痕が数多く刻まれたゴリラ獣人(完全にゴリラ)だった。


「はぁ、はぁ、あぁ…傷が疼く…
なぁ坊主、先の闘いでもう体は温まってんだろ?早い所やっちまおうぜ!」


と、ゴリラ獣人は既に滾っている様で、目をギラ付かせている。

(見た所如何にも戦闘狂と言った感じだね。)

(『…しかし、あいつの胸板の傷は一体何だ?
羽交い締めから逃れる為に付けられた傷とも違うし…うむむ、奴の戦闘スタイルがイマイチ掴めんな。』)


と、ノアと鬼神が相手について思考を巡らせていると、どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「おい、あいつって"生傷"のガザじゃないか?」

「あぁ、獣人国素手喧嘩好き四天王に匹敵する強さを持つと言われている実力派だぜ!」

(あれ?この声…)

(『確か2日前に会った解説のおっちゃんだな。』)


観客の中から聞こえた聞き覚えのある声は、一昨日対戦相手の解説をしてくれた一般市民2人の声であった。


(『この調子で有益な情報とか喋ってくれると助かるな。』)

(傷の事とかね。)




「おい、見てみろよ!ガザの傷、また増えて無いか!?」

((『来た。』))

都合良くゴリラ獣人の傷に触れる解説2人。
ノア(と鬼神)は耳を澄ませて解説を聞く事にした。


「あぁ、持病の肌荒れが悪化の一途らしく、毎晩掻きむしってるらしいぞ…」


「肌荒れの掻き傷かい!」

(『医者行けぃ!』)


どんな曰く付きの傷なのだろう、と少し期待していたノア(と鬼神)だったが、割としょーもない理由に思わずツッコミを入れてしまった。

すると、ノアの反応を見た対面のゴリラ獣人ガザは


「あぁそうさ、この(肌荒れで出来た)傷の疼きを散らすには闘争こそが1番よ!
さぁ、死合おうぜ!」ポリポリ…

「ああ!掻かないで!余計に悪化しちゃう!
ってか医者行って下さいよ!」

「医者は恐い!」

「子供か!」


その後も何だかんだ理由を付けては"勝負!勝負!"の一点張りだった為、ノアの方が根負けして試合を行う事になった。








「さて、仕方無いので試合の方に移らせて貰いますね。」

「待ってましたぁっ!」

「僕に負けたら医者に行って下さいよ?」

「………。」

「ねぇせめて何か言って!?」


医者嫌いは筋金入りの様だ。




「えー、それでは第2試合始め!」

「おぉおおおおおらあぁあっ!!」ズダダダ!

「えぇ…」

(嘘でしょ…真っ正面から突っ込んで来たよ…)


立会人の合図も早々に、ゴリラ獣人のガザは、脇目も振らずに突っ込んで来た。

一瞬困惑するノアだったが、短期決着で済ませられるから別に良いか、と思考を切り換える事にした。


「さっきの威勢はどうしたぁっ!
そんなんじゃ、あっ『ドッ』とい『ズムッ』う間に『ドボッ』ごぁっ!」


突っ込んで来たガザに、ノアは腹部2発、左脇腹に1発拳を打ち込む。
堪らずガザは口から勢い良く息を吐き出した。




「はっはー!」ブォンッ!

「おわっと!」バッ!


ノアの拳を受けたにも関わらず、まるでダメージが入っていないかの様に、ガザは直ぐに反撃として拳を振るってきた。

だがノアは難なくこれを回避した。


「くはは、良い『ドゴゴッ!』拳だな!
だが『ズズン!』まだまだ『ドドボッ!』だな!」

「えぇ…
ガザさん、痛みを無効化する耐性スキルか何か持ってるんですか?」


意気揚々と話すガザに次々と追撃が炸裂しているが、当の本人は全く気にしていない様だ。


「そんなスキルなんざ無い!
痛みなぞ傷の疼きに掻き消され、むしろ爽快な気分だぜ!はっはっは!」


肌荒れの痒さを痛みが散らしてる様で、ガザの表情は試合開始前よりも清々しい物になっていた。


「医者行けよっ!」
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