ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

蛸の弱点

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(蛸の弱点って何処にあるか分かる?)

(一般的な締め方は、目と目の間の急所を突けば良いんじゃなかったっけかな?) 

(なる程ね、了解。)


ズシャァアアアアッ!

ダンッ!「っそいっ!」ゾバッ!

キュロロロッ!?


凄まじい速度で滑り込んでいたノアは、飛び上がりつつ速度を乗せた剣撃を軸にしていた触手に叩き込む。

ドガガガガガガガッ!

すると、軸足を失った『魔蛸』は回転力が乗ったまま、地面へと突っ込んだ。

キュロロロロォッ!!!

バヂンッ!ビダンッ!バチュンッ!

『魔蛸』は触手を周囲に勢いよく叩き付けたり這わせたりして何とか体勢を整えようともがく。



ズブゥッ!!

ギュロロロロロロロッ!? 


大きく跳躍していたノアが落下と共に『魔蛸』の眉間に荒鬼神を深々と突き刺す。

ギュォオオオオッ!バシッ!ガシッ!

『魔蛸』は眉間に立つノアを引き剥がそうと、胴や足に触手を巻き付ける。



ズォオオオッ!

『暴れんな!表面ヌルヌルして体固定し難いんだからよ!』

ズブッ!ドブッ!ズブブッ!

赤黒いオーラを纏わせたノアが生成した腕を『魔蛸』の体に食い込ませつつ荒鬼神を更に付き込んでいく。

ギュァアアアアアッ!ズンッ!ズズンッ!

『魔蛸』は悲鳴を上げながらも体を地面に叩き付けて何とかノアを引き剥がそうとするが


『仕上げだ!火ぃ通すぜ!』

ジュボォアアッ!

ギュォオオオオァァッ…


荒鬼神に魔力を流し、『魔蛸』の眉間内部にて超高温に発熱。
表皮が煌々と光輝いた直後、『魔蛸』の眉間から黒煙が上がった後にだらりと力が抜け、動かなくなった。






「つ、強ぇ…」
「嘘だろ…あの『魔蛸』を1人で討伐しやがった…」
「しかも一切被弾していないじゃない…何者なのよ、あの子…」


ノアと『魔蛸』の死骸から少し離れた場所に居る他のパーティの面々は、ノアの後ろ姿を見やり、ただただ呆然としていた。

但し、ノアはと言うと

     
「あ、火入れたからか少し香ばしい。
見た目はアレだけど、何とも食欲をそそる…」

(『だろう?』)


平常運転であった。






その後『魔蛸』の血抜き方法が分からなかった為、即座に回収。

まだ見ぬ『発火ネズミ』『ランス・ラビット』『トン豚』の捜索をすべく、『滅びの森』に入る事にした。


「さーて…あ、暗っ。」ガサガサ…


と、森の中に1歩足を踏み入れると、そこら中に生えている木々の為、辺りはまるで夜の様な暗さであった。

暗さの割に木々の間隔は4~5メル程離れている為、戦闘に不自由はなさそうだ。
但し先程の『魔蛸』並みの巨体であれば外に誘い出す必要があるだろう。

直ぐに<夜目>を発動して視界を保つと、<気配感知>で索敵をしつつ、森の中を進む。

カチッ!

「おや?」


と、森の奥で一瞬光が灯った。
他の冒険者かと思ったが人の反応は無く、<熱感知>に反応があった。


ここで初出となる<熱感知>だが、これがあるお陰で気配が希薄な王都の諜報部の者や、商人のジョーがしれっと現れても特に驚かなくなったのである。(但し本人達に伝えると、次回何かしら対策をされそうなので言うつもりは無い。)

ちなみに獣人は体温が人より高い為、体を装束で隠した位では種族までは隠せないので直ぐ分かるので便利だ。



パチッ、パチッパチチッ…

チリ、チリチリ…

コソ…


<熱感知>に反応があった場所まで<気配遮断>と<忍び足>を発動して近付いて確認してみると、体長1メルはある割と大きめなネズミが枯れ木を集めて焚き火を行っていた。

しかも焚き火の側にはやたら角が長いウサギの死骸が地面に突き刺さり、火に炙られていた。

恐らくこの長い角を持ったウサギが『ランス・ラビット』で、焚き火を行っているのが『発火ネズミ』なのだろう。

(…もしかしなくても…あれ調理してるよね…)

(『火ぃ通した方が美味いとは言え、森ん中で火ぃ使うかね…』)

ガチッ!ミヂィィイイッ…

と、そんな調理風景を眺めていると、『発火ネズミ』が『ランス・ラビット』の毛皮に噛み付くと、器用に皮を剥ぎ始めた。

ガチンッ!シュゴォォオッ!

((『うわぁ…』))

『発火ネズミ』が自身の歯を打ち鳴らしたかと思うと、口から炎を吐き出して肉の表面を炙り始めた。

てっきり『発火ネズミ』と言うから炎を体に纏わせて戦うのかと思ったが、火を発射するとは思わなかった。

チチッ!ザスッ!

『発火ネズミ』は、器用に表面を満遍なく炙った後再び焚き火近くに刺して待ち始めた。

流石に食事中を襲う趣味は無かったので、気付かれない様にその場を後にして更に森の奥へと向かっていった。




フーッ…フーッ…

(うっわぁ…怖…)

森の中を散策していると、ほぼ真っ暗な森のあちこちに直立不動の人型が10体程居た。
但し防具等は装着しておらず、所々筋繊維が剥き出しで、目にあたる部位が存在していなかった。

微動だにしない代わりに呼吸は荒く、何かを待ち構えている様であった。

チッ、チチチッ…

すると、先程とは別個体の『発火ネズミ』が地面に鼻を擦り付けて何か獲物を探している様だ。



フゥッ!!
フゥァアッ!
ォオオオッ!!
ゲェエアアッ!

謎の人型が一斉に動き出し、その『発火ネズミ』目掛けて襲い掛かってきた。

しかもその挙動がまた不気味で、まるで何ヵ月も何も食べていなかった者が突然獲物を見付けたかの様な謎の必死さがあった。

ヂッヂヂッ!?ガチンッ!シュゴォォオッ!

フゥォオオオッ!ボファッ!!

ガシッ、ブチッ!ミチッ!ブチブチッ!ズルッ!ボキッ!メチッ…

『発火ネズミ』は人型の挙動に驚き、口から火を発射したが、肌を焼きつつも人型の波が止まる事は無く、そのまま10体が1匹の『発火ネズミ』に襲い掛かり、即座に解体が行われ、一瞬の内に20のパーツ分けられ食い散らかされた。

(うおお…最初っから最後まで怖ぇよ…何だよあのモンスター…)

(『あれがギルドにあった『暗人』って奴じゃねぇか?
目が無い代わりに聴覚が異常に発達しているって言う…』)

(かもね…取り敢えずこのまま<気配遮断>と<忍び足>を発動したまま先を進もう。
あんなのとやり合いたく無いし…)

と、ノアが気配を殺しつつ先を急ごうとした時である。


ミーン、ミ、ミ、ミー…


と、何処からともなく
蝉の羽音が聞こえた。すると途端に


「う、ぐっ…!?」ぐらっ…


隠密を決め込んだノアが声を出してしまう程の強烈な睡魔に襲われた。

ガリッ…

一応<睡眠耐性>持ちだった為、眠りに落ちる程では無かったが、下唇を僅かに噛み切って正気を保つ事にした。

(この音はマズイな…7徹してたら落ちてたな…)

(『あぁ…だが丁度良い。
見てみな『暗人』が落ちてるぜ。』)

『鬼神』に言われて『暗人』の方を見てみると、聴覚が発達しているお陰で皆一様に地面に倒れ伏していた。

これで少しは気を緩められる。
そう思ったのだが


ズンッ!ミシッ、ミシミシ…

ハーッ…ハーッ…グルルルルッ…


「な、何で滅っ茶苦茶怒ってんの…」

(『知らんが友好的になれそうに無い事だけは確かだな…』)


 森の奥から足音を響かせながら、特に何もしていないのにも関わらず、犬歯剥き出しで表情は鬼の形相。
如何にも殺意剥き出しな体長4~5メル、胴長の大きな犬と目が合ってしまったのだ。 
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