ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

はいどうぞ、次の方

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「はいどうぞ、次の方。」

「あ、あぁ…」

「ふむふむ…この国には商いで来られたのですかな?」

「あ、あぁ…」

「何か反応が芳しく無いが、まさか怪しい物を持ち込んでいる訳では無いだろうな?」

「いや、そんな事は無い…
だが兵士さん…アレを見て貰えればこんな反応になるのも分かってくれるハズだ…」


獣人国西門で入国許可申請を受けていた商人が、待機列後方を指差す。
兵士はその方向を見てみると


人、人、商人、人、エリンギ、獣人、獣人、人


「エリンギだとぉっ!?」

「分かってくれましたか…」


兵士は1発で混乱に陥ってしまった様だ。


「いやぁ、近くで見ると獣人国とはかなり大きな物ですな、ノア殿。」

「そ、そうだね…
ねぇクリストフ?申し訳無いんだけど、もう少し声を抑えて貰って良いかな…?
さっきから周りからの視線が痛いんだ…」

「周りから?
あぁ、傘の上に落ち葉が積もっていて身嗜みが整っていなかった様で申し訳ありません『パサパサ…』。」

「…うん…そういう事じゃ無いんだけどね…」


たまに察しが悪くなる辺り、生産者に似たのかもしれない。





「…はいどうぞ…次の方…
確か君は冒険者だったハズだが、見世物もやってたりするのか…?」

「いえ、れっきとした冒険者です…
後ろのはキテレツな姿をしていますが、従者みたいな者です…
彼の身分証明代わりに冒険者カードを作りに来ました…」

「この国にの兵士だな、宜しく。」スッ…

「あ、あぁ…」キュッ。


クリストフから握手を求められた兵士は、応じる様に握手を交わす。

(あ、握った感触もまんまキノコだ…)

触ってみれば分かるのだが、クリストフの体は、硬過ぎず、柔らか過ぎない何とも言えない感触である。






「すいませーん!冒険者登録に来ましたー!」

「はーい、少々お待ち下さー…い"っ!?」

ぬんっ!

「ほほぅ、ここで登録をするのですな、ノア殿。」

「そ。受付嬢の指示に従ってれば登録までは簡単なハズだよ。
それじゃ受付嬢さん、この人(?)の登録手続きお願いしますね。」

「え!?あっ!?ちょっと待って下さい!
この人(?)一体何なんで「私はクリストフ!生産者であるノア殿に連れられ冒険者登録に来た者である!さぁ手続いてくれ、今すぐ!」

「ひぃぃいっ!顔(?)近付けないで下さい!
怖いですぅっ!」


自身の傘でカウンターに引っ掛かってしまうが、受付嬢に食らいつかん勢いで迫っており、その圧によって受付嬢が怯えていた。






クリストフが冒険者登録を行っている間、ノアは壁に貼り出されている依頼の数々を確認していた。

一昨日来た時よりも紫色の依頼用紙(臨時パーティ募集と依頼の抱き合わせ)が貼り出されている気がするが、ノアは橙色(討伐と採取の抱き合わせ)の依頼用紙を探している。

お目当ては槍の様に長い角を持つ『ランス・ラビット』系の依頼である。

何でも『ランス・ラビット』の角は硬い割に多孔質で非常に軽く、筋力の無い【槍】の新人冒険者でも扱い易いとの事で割と好まれている。

その上対象に刺さると、出血効果を付与させる為、割と手軽にダメージを与えるとしてナイフや刺突武器に加工される事もあるとか。

何ならノアも『ランス・ラビット』の角の有用性を知った時には、投擲武器として何本か作成して貰おうか、とも考えた位である。


「お、あったあった。」ペリッ…



依頼内容:『ランス・ラビットの討伐』
依頼主:武具屋の店主。
期日:1週間以内。
最低条件:対象を最低でも10体討伐(尚、角に大きな傷が入っていた場合カウントしない)。
報酬金:1体に付き2万ガル、角が無傷であれば2万8000ガル。
肉等の可食部は不要なのでお好きにどうぞ。



「すいません、この依頼を受けたいのですが。」

「ガオウ武具屋店主ご依頼の『ランス・ラビットの討伐』ですね。
ノア様はごく最近、同様の依頼を達成されてますのでお受けする事が可能です。」

「それは良かった。」


受付嬢は、ノアが前回受けた依頼結果を確認し、受けれるレベルに達しているかを判断している様であった。

ペタン。

「はい、それでは受理致しましたので頑張って下さい。
依頼にも書かれていますが、対象の角に大きな傷があると達成とみなされない場合がありますのでお気を付けて下さい。」


因みにこの依頼で言う"大きな傷"というのは角本体に人差し指程の斬り傷が付いていたり、欠け、割れがある場合の事らしい。



その後も受付嬢から注意事項を聞いていると、2つ隣のカウンターで冒険者登録の手続きをしていたクリストフがノアの元へやって来た。

てっきり手続きが終わったのか、と思ったのだがそうでは無い様で


「…ノア殿、"血"とは何でしょうか?」

「"血"?…何でまたそんな話に…?」

「何でも、"血"があれば詳細な情報を冒険者カードに記載出来るとの事で、カウンターにあった針に指を当てたのですがそれらしい物が出て来なかったのです。」

(そういえば僕の時も"血"を使っての冒険者カード作成はしてなかったな…)

「…まぁクリストフはキノコだから"血"がある訳無いよね…(あったら怖いよ。)
"血"は…分かり易く言えば体液みたいな物だよ。」

「体液ですか…ふーむ…」


ノアからざっくり説明を受けたクリストフは、顎に手を当てて少し思案していた。(顎無いけど。)

ポン。

「分かりましたノア殿、ちょっと通りにある屋台に行って来ます。」

「屋台?何で?」


何か思い付いたのか、手をポンと叩いて徐に外へ向かおうとする。


「確か我々の様なキノコは火で炙れば体液が滲み出る物だと聞いた事があります。
なので通りの屋台の焼き場を借りてちょっと炙って来ようか「待て!クリストフ!そんな事しても"血"は出ないぞ!それは"血"じゃない"出汁"だ!待てって、あ!力強ぇコイツ!」


因みにキノコの傘の部分をじっくり炙れば、傘の内側に良い感じのエキスが滲み出てくるのでオススメだぞ(ノア談)。


結局、"血"を使わなくても冒険者カードは作成出来るので、取り敢えず作成して貰った。

その後、身分証明代わりの冒険者カードの作成が終わった一行は割と騒がしくしてしまった為、冒険者ギルドを飛び出すと、そのままダッシュでスロア領へと戻る事にしたのであった。
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