ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
439 / 1,117
獣人国編~救出作戦~

増えとる…

しおりを挟む
「増えとる…」

「いつからここはキノコの栽培所になったんじゃ?」

「クリストフと比べて半分位の大きさなんだね。可愛いー。」


夜が明け、日が少し見上げる程の高さまで昇ると、林の中に腰を据えていた"つかえるキノコ"のクリストフの周囲に新たに4人(?)のエリンギが生えていた。

但し大きさはクリストフの半分位、身長1メル程しかなく、一時的に保護している子供達より少し小さい位である。

この位のサイズであれば見た目のシュールさも相まって可愛らしく思えてくる。


キュポンッ!

「…ふぅ、この短時間では4体が限界ですね。
さぁ君達、そこに居られる黒い二刀の少年、ノア殿の前に整列するのだ。」

「「「「はーい。」」」」

キュポッ、ポンッ、キュポ、ポコッ!

『『『『ぽてぽてぽてぽて…』』』』

「いち。」
「にー。」
「さん。」
「よん。」

「「「「ぜーいんそろいました。」」」」

((((((可愛い…))))))


4人の小さなエリンギ達は身長に見合った子供の声で返事をし、木々から自身の体を抜き取ると、ぽてぽてと可愛らしい足音を響かせてノアの前に並び始めた。

相変わらず何処から声を発しているのか分からないが、ハッキリとした声で人数確認をしている。

何処と無く子供のごっこ遊びに見えなくもない。


ズリズリ…

「よっこいしょ…っと…
この者達は私より小さいですが、先程の私同様の働きを見せてくれるでしょう。」


自身の傘を木々に引っ掛けながら林より出てきたクリストフは、小さなエリンギ達をそう評している。


「…と言う事なんですけど、ちょっとこの子達に少し子供達の対応をさせてみても良いですか?」

「あ、あぁ。
こちらとしても対応して貰えると助かるからな…」


デミに了承を貰い、実験的な意味で小エリンギ達に子供達の対応を任せてみる事にした。

と言う訳で


「げほっ、ごほっ、ごほっ…はー、はー…」

「きみ、せきがひどいけどだいじょーぶ?」

「え…?げほっ!…だ、誰…?げほごほっ!」

「うーん…つらそうだね。
ちょっとまってて、うむむむむ。ほいさ。」

キラキラ…

「な、何…?この光…けふっ…こほっ…
あ、あれ?…息が楽に…」

「のどがえんしょーしてるみたいだったから、らくになるようにほうしをまかせてもらったよ。
それと『ポコッ』はい、これ。
のどがかんそーしなくなるからしばらくくわててるといーよ。」

「ど、どうも…」モゴッ。


小エリンギは自身の体の一部を切り取ると、子供に咥える様に勧める。
どうやら傷めた喉を癒す為の薬効成分を含ませているのと、喉を乾燥させない為の処置の意味合いがあるらしい。




ぽてぽてぽてぽて…

「はい、おばちゃん、せんたくおわったよ。」

「あら、こんなに綺麗に。
ありがとう、重くなかったかしら?」

「だいじょーぶ。ぼくこーみえてちからもちなのだ。」

「あら頼もしい。」


子供達約50人分の服が入った洗濯かごを頭に乗せた小エリンギがご婦人方の元へとやって来た。

中々な重量のハズだがそれを気にせず運んでいる辺り力はそれなりにある様だ。





「あぅっ!?」ドサッ!

「きゅうにはしったらあぶないよ。
ほらひざにすりきずできてるよ。」

「痛た…ご、ごめんなさい…足が縺れちゃって…」

「いーよ。すこしジッとしててね。
"いたいのいたいの、とんでけー"。」

ホワワ…シュウウ

「す、凄い…傷が治ってく…」

「たいりょくはもどってきたみたいだけど、きんりょくがおちてるからあしもとにきをつけてね。」

「あ、ありがとうございます…」


小エリンギは自覚無い様だが"いたいのいたいの、とんでけー"と言いながら回復魔法を掛けていた。

おまじない的な意味で無く、彼らの中では呪文詠唱みたいな物なのであろう。





「ねぇ、僕達。
さっきから動きっ放しだけど休憩しなくて大丈夫?」

「だいじょーぶなのだ。
いっしゅうかんくらいならやすまずうごけるのだ。
つかれてもちかくにあるきのしたですこしえいようをわけてもらえばだいじょーぶなのだ。」

「あらー、最近の子(?)は元気なのね。」


どうやらこの小エリンギ達は非常に燃費が良いのか、ノアみたく何日も連続で活動出来るらしい。

彼らの言う栄養も木だけでは無く、栄養のある大地でも十分補給出来るらしい。






「滅茶苦茶有能じゃないか。」

「勿論ですとも。多種多様なキノコの特性を併せ持っていますので子供達の御世話のみならず、冒険者としてやっていく事も可能ですよ。」

「え?戦えるの?あの子達も?」

「えぇ。通常の戦闘方法では御座いませんが、モンスター等と戦う事は可能です。」


こんなずんぐりむっくりな体型でどう戦うのだろうか、と気にはなったが、何れ見せて貰う事にしよう。

すると、隣でずっと小エリンギ達の働きを見ていたデミがクリストフに質問を投げ掛けてきた。


「すまないクリストフ…と言ったな。
君達は手足が生えているが、亜人なのか、モンスターなのかどちらなんだい?」


周りにいる『新鋭の翼』やローザ、お婆らも気になるのか、クリストフの返答を待っている様だ。


「…どうなんでしょう、生産者殿?」

「んぇ!?そこで僕に振るの!?
…まぁオードゥスに居た『歩く茸』何かも一応モンスターだったから一応モンスターの類いに入るんじゃないかな…?
でもデミさん、何で急にそんな質問を…?」

「いやだってさ、俺らはクリストフ達の事を"つかえるキノコ"だって知ってるから良いけど、初見でこの姿を見た人からすれば得体の知れない存在だぜ?」

「「「「「まぁ、確かに…」」」」」


長さ2メルもあるでっかいエリンギだけなら、まだそう言う品種だろうと言う事で片付くが、手足が生えてる上に滅茶苦茶喋るのだ。

怪しさ満点で下手すれば害のあるモンスターと思われてしまうだろう。


「得体の知れないとは失敬な。
何処に出しても恥ずかしくない、清廉潔白で高潔なる立派なキノコですぞ。」

キラキラキラ…

舞台役者の様に両手を広げ、自身の周りに細氷の様に胞子を振り撒き、まるでスポットライトを浴びてるかの様な演出をし出したクリストフを見た一同は


「これは確かにマズイな…下手すりゃ捕獲されるでしょうね…」ヒソヒソ

「普通に『滅びの森』に居そうだもんああいうの…」ヒソヒソ

「俺なら外でばったり出会したら…多分迎撃すると思うな…」ヒソヒソ

「まぁ食用にはし難い見た目ではあるな。」ヒソヒソ

「全部聞こえてますぞ。」


と、皆一様にこのままではモンスター判定を下されてしまうと言う意見になった為、早急に対処しなければならなくなった。

という訳でクリストフと生産者(?)のノアは、獣人国に戻り、身分証明代わりに冒険者登録をしに行く事になった。

尚、小エリンギ達は残って仕事の続きである。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...