ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
438 / 1,117
獣人国編~救出作戦~

つかえるキノコ

しおりを挟む
『つかえるキノコ』…アイテムボックスという限定空間内で生まれた新種のキノコ。

~発生条件~

①アイテムボックスの1つの枠に『無限キノコ』が上限値の999個存在している事。

②アイテムボックスの中に『歩く茸』等の自我を持つキノコが最低1人いる事。

③"100本毎に1本別種のキノコが発生する"特性を持つ『無限キノコ』から発生した別種のキノコがアイテムボックス内に最低10本ある事。

である。

これ以上増殖する事が出来ない環境下を鑑みた『歩く茸』が、普通のキノコのままでは生き残れないと"勝手に"危機感を感じ、多種多様なキノコの特性を統合した結果の産物である。
うまいよ。



「……。」

「……。」

「「「「「「……。」」」」」」


アイテムボックスから"つかえるキノコ"を取り出してみた所、ノアの目の前には手足が生えた身長2メル程の見た目エリンギが立っていた。

デカいエリンギの着ぐるみを着てるのでは無いか、と思わされる程シュールな見た目をしていた為、一瞬言葉が出ず、呆然としてしまった。


「…えっと、君(?)が"つかえるキノコ"で良いのかな…?」

「如何にも。私は"つかえるキノコ"と申します。」

「「「「「「うわっ!喋った!?」」」」」」


顔所か口すら無いのに流暢に喋る"つかえるキノコ"は、人間で言う胸の辺りに手を当て、自己紹介を始めた。


「私は"つかえるキノコ"のクリストファー。
気軽にクリストフとお呼び下さい。」

(名前格好いいな…)

「貴方が生産者様で御座いますね。
名を何と申されるのでしょうか…?」

(生産者…)

「ノ、ノアと言います。」

「おぉ、ノア殿ですな。
貴方様によって生み出されたこの命、貴方の剣となり盾となって尽くしましょうぞ。」

「ど、どうも…」


と、見た目でっかいエリンギに言われたノア。
ぬぅっと迫って来ると中々に圧が凄い。


「…いやはや…永い事生きてきたがこの様なキノコは初めてじゃわい…」

「見た目が大分シュールなのに口調が騎士みたいだよね…」

「何処と無く振る舞いも君主に仕える騎士っぽ…あ。」

(((((("つかえるキノコ"の"つかえる"って"仕える"って意味だったのでは!?))))))


見た目に反して騎士らしい口調から連想し、そう言った考えに思い当たる一同であった。







「それにしてもノア殿、これはどう言った状況ですかな?」

「ん?あぁ、話すと長くなるんだけど、取り敢えずかくかくしかじかあって…」

「ほぅ、我が生産者様は大義を成されたのですね。」

「あまり公には言えないけどね。
それで今は子供達の世話をしている所だよ。」


いつも通り説明省略呪文『かくかくしかじか』を詠唱して説明を大幅に省き説明したが、クリストフはキッチリ理解してくれた様だ。


 


「おーい!誰か来てくれ!子供が酷い呼吸困難に陥ってるんだ!」


奥の方から助けを呼ぶ声が聞こえる。
良く見ると辛そうに踞っている子供の姿が見える。


「僕が行きます。ヴァンディットさん、直ぐに対応出来る様に準備を。」

「はい。」

ダッ!

と、脱兎の勢いでその場から駆け出したノア。
するとその後ろから


のっし、のっし、のっし、のっし…

「って、あれ!?クリストフも着いて来ちゃったの!?」

「生産者様の御仕事を拝見しようと思いまして。なに、邪魔は致しません。」


一応足がある為、歩けるとは思っていたが、まさか走れるとは思わなかった。
手足は人と比べると短いので走り辛そうな気がしていたのだが、ノアのスピードに遅れる事無く、のっし、のっしと足音を響かせつつピッタリと後を着いてきていた。

但し、でっかいエリンギが人間同様の走り方をしている為、更にシュールな絵面になっていた。




 
タッタッタ「だいじょーぶですかー?」

「すまない!我々では対処が…って、何だその後ろのでっかいのは!?」

ズザザッ!

「御心配無く。
私はノア殿に仕える事になりましたクリストフと言う、ごく普通のキノコに御座います。」

「ごく普通のキノコは走ったりせんわい!」


と、多少混乱は合ったものの、直ぐに容態の悪い子供の元へ。
子供は呼吸がままならず、顔色が非常に悪い。


「か……ひっ…けふっ…か、ひゅ…」

「上手く息を吸えていない様なんだ。
どうにかしてくれ!」

「分かりました。ヴァンディットさん、お願いします。」

ズルッ…

と、ノアの足元の影からヴァンディットが姿を現したものの、難しい表情でどうしたものかと動けずにいた。


「これだけ呼吸が荒いと、薬品を摂取させるのは難しいです。
先ずは呼吸を落ち着かせないと…」

「だがさっきから落ち着かせようと擦ったり声を掛けたりしているが、一向に改善しないんだ!」

「ちょっと失礼。私に任せて貰えないだろうか?」

「「「「「はぁ?」」」」」


子供の現状を見たクリストフは、前に出て対応させて欲しいと願い出てきた。

皆「何を言っているんだ?」みたいな表情でクリストフを見る中


「何か策があるならやってくれ。」

「畏まりました。」


ノアだけはクリストフを信じて任せてみる事にした。
するとクリストフは踞る子供に近付き、傘の下に子供が入る様に立ち位置を調整すると

キラキラキラ…

「「「「「な!?」」」」」

クリストフの傘から細氷の様な細かな粒子が舞い、子供の体に降り掛かる。

すると


「ひゅ……っ…はっ…ふー…ふー…はー、はー。」

「「「「おおっ!呼吸が落ち着いたぞ!」」」」


粒子が降り掛かると、あっという間に子供の呼吸が落ち着き、顔色も良くなってきた。


「この子から強いストレスを感じたので、リラックス効果のある胞子を撒かせて頂きました。
少しすれば元の状態に戻る事でしょう。」


そんなクリストフの言う通り、子供は直ぐに落ち着きを取り戻し、対処してくれたクリストフに御礼を言ってきた。


「すいませんでした…お手を煩わせてしまっ……『パチクリ』…え…え?」

(((((((だよねー!)))))))


子供の獣人は、目の前に立つでっかいエリンギのクリストフに目をパチクリとさせ、理解が及ばず、困惑の表情で周囲の者達を見やっていた。
    






「クリストフ…そんな便利な能力を持っていたんだね…
助かったよ。」

「生産者様のアイテムボックスの中で多種多様なキノコの特性を統合しました故、ノア様のお手を煩わせる事は無いでしょう。
それよりも先程から気になっていたのですが、皆様お疲れの様ですが、あまり睡眠を取られていないのでは?」

「そうだね。
この子達の世話で皆付きっきりだったから、それなりに疲れてると思うよ。」

「なる程、人手が足りないのでありますな。
それならば私に案が御座います。
何処か日中日陰になる様な場所はありますでしょうか?」


クリストフから何か手がある様で、要望を聞かれたデミは指を指して場所を指示した。


「それなら直ぐそこの林はどうかな?
ほら、木々が生い茂ってる場所があるだろう?」

「おぉ。すみませんがあの一画を御借りしても宜しいでしょうか?」

「あぁ構わないよ。」

のっし、のっし、のっし…

デミから了承を得たクリストフは早速林に向かって駆け出して行った。

ノアは何と無くクリストフが行おうとしている事の意図を察し、事の成り行きを見守る事にした。



ガスッ!「あ。」

「「「「「「え?」」」」」」

グッ、グググッ…「…すみませんノア殿。」

「な、何…?」

「木と木の間に傘が引っ掛かってしまったので引っ張って貰って良いでしょうか?」

((((((閊える(つっかえる)キノコだ…))))))
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...