ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

まぁこうなりますわな。

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まぁこうなりますわな。


ビョルルルンッ!

「危ねっ!?」ダンッ!ズドォオオオオッ!

ガルルルルォアッ!

「ちょっ!?」ズザッ!ガヂンッ!

バッ!バババッ!

「くそっ!何で『ランス・ラビット』を探しに来たのに『魔蛸』と『ダックス憤怒』の縄張り争いに巻き込まれちゃうんだよっ!?」

(『宿命じゃない?』) 

「何のっ!?」


『ランス・ラビット』を探しに『滅びの森』までやって来たノアは、森の中で『魔蛸』と『ダックス憤怒』が縄張り争いをし、壮絶な戦いを繰り広げているのを目撃。

これも自然の摂理だ、と割り切り、邪魔しては悪い(というか戦いたくない)ので<忍び足>を発動してその場から立ち去ろうとした。

だがうん悪く見られてしまった為、巻き込まれてしまう形となったのであった。
ただ、さっきまで争っていた2体が共闘してノアに攻撃を仕掛ける事だけが解せない所である。


『ヴォオオオ"オ"オ"ンッ!』ズォアッ!

キュロロロロオ"オ"オ"ッ!ズォアッ!

「うぇっ!?『魔蛸』も強化しやがった!?」


『ダックス憤怒』が咆哮を上げると、自身と『魔蛸』の体が赤く光り、何やら鳴き声もドスが利き始めた。

どうやら『ダックス憤怒』が攻撃力上昇の支援魔法を行使した様だ。

グォルッ!オ"オ"オ"オ"オ"オ"ッ!

「ねぇ、何かあの『ダックス憤怒』からの殺意が凄まじいんだけど…」

(『主、奴の腹見てみ?』)

「腹?」


『鬼神』からそう言われて見てみると、腹の辺りの体毛がボロボロで、少し変色している。
どうやら内出血を起こしている様だ。


(『この間戦った奴だ。だから人一倍殺意が高いんだろうな。』)

「あー…なる程ね…
それにしても流石に2対1は少し厳しいかな…」

(『じゃあまた"アレ"やるか?』)

「そうだね。準備に取り掛かるとするよ。」

(『おぅ。』)

キュロ"ロ"ロ"ロ"ォッ!バヒュッ!


ノアが準備に取り掛かろうとすると、『魔蛸』が咆哮を上げつつ伸縮性のある触手をノアに向けて放ってきた。

スッ…   ドゴォオオオッ!

ノアは放たれた触手をしゃがむ事で回避。
後方に着弾した触手は轟音を響かせ、土煙を、上げた。


(僕は『ダックス憤怒』に行く。
『鬼神』は『魔蛸』をお願い。荒鬼神使う?)

(『いらん、自前の腕(かいな)があれば十分だ。』)

(了解。)

グルルオ"ア"ア"ッ!ガパァッ!


しゃがみ込んだノア目掛け、大口を開けた『ダックス憤怒』が迫る。


(【鬼鎧殻】を両腕に展開、そんでもって【鎧袖一贖】を発動!)

ズオオッ…

ガギッ!ガヂンッ!ズズンッ!ヴォオ"ッ!?


【鎧袖一贖】を発動したノアは、迫り来る『ダックス憤怒』のノコギリの様に鋭く尖った牙を掴み、動きを止めた。


『おい、犬っころ…』ギギギ…

ミシミシ…ヴ、ヴォオ"…

『こっちは今作戦会議中なんだ、少し大人しくしてて貰えるかなぁっ!!』

ボギンッ!ブチィッ!ヴバァォオオッ!?

<渾身>を発動し、上下の片側に生えていた牙を根元からへし折ると、『ダックス憤怒』は悲鳴と口から血を垂らしつつその場を離脱。

たたらを踏みつつ少し離れた場所で転倒した。


『うわぁ…『フシュッ…』こんなので咬まれたら一溜まりもないぞ…
…えーっと、『憤怒の鋸牙』か…後で素材屋にでも持っていくか…」


【鎧袖一贖】を解除したノアは、手元に残った『ダックス憤怒』の鋭い牙を見つつそう呟いた。



ズドンッ!!

「うおっ!?…何…うわっ!『魔蛸』が飛びやがった!?」


轟音と共に地面が揺らいだかと思うと、10 メルはあろう『魔蛸』の巨体が宙に浮いているではないか。

どうやら伸縮性のある触手を用いて跳躍を仕掛けてきた様だ。

単純な質量攻撃でも食らったら堪ったものではないのだが、『魔蛸』は何やら奇をてらった攻撃を仕掛けて来る様だ。

ギュルルル…

全ての触手を螺旋状に巻き、触手の先端をノアへと向ける『魔蛸』。


(『前回地上であの動きをやった時は、独楽みたく回りながら高圧の水刃を発射してきたが…今度は何だ…?』)

ブグググググ…

未だ空中にいる『魔蛸』の触手全てが根元から先端に向けて脈動している。
しかも内部からは液体が通る音が聞こえていた。


「あれは…マズイかもね…」

(『あぁ…水刃なんて生易しい物じゃ無い…
下手すりゃブレスみたいなモンを飛ばしてくるだろうな…』)


と、生半可では無い攻撃を繰り出してくる予感を感じた直後、視界を覆う程の大瀑布が地上に居るノア目掛けて発射された。


ドボボボボボボボボボッ!

(『そら来たぞ!!』)

バチンッ!ボッ!バシュッ!

ドボボボボボボボボボォッ!


ノアは即座に荒鬼神を腰から外し、後方へとぶん投げて即転移。
大瀑布が着弾するのとノアが転移するのは、ほぼ同時であった。

着弾箇所は滝壺の様に地面が大きく抉れ、辺りには泥の雨が降り注いだが、何とか『魔蛸』の大技を回避出来た、ハズだったのだが


バシュッ!ズザッ!

「ふぃーっ…あんなものマトモに食らったら一溜ま『ヴワ"ォオ"オ"オ"オ"ンッ!』ドゴァッ!

「ぅ……ぐっ……!」ゴガガガガガガッ!


転移直後、高速移動して来た『ダックス憤怒』が、ノアの背後から衝撃波を乗せた咆哮を放つ。

反応が遅れたノアは、大半のダメージを防具に吸収されたものの、それでも吹き飛ばされる程の衝撃を受け、地面を転がって行く。

ダンッ!ヒュババッ!ズザザッ!

「ちっくしょう、しくじった…
前回僕と戦ったから手の内は多少知ってるんだったな…」


ズンッ!ズズンッ!ギュロ"ロ"ロ"ロ"ッ!

グルォオ"オ"オ"オ"ッ!


空中にいた『魔蛸』が地上に着地し、その隣には口から血を垂らした『ダックス憤怒』が鬼の形相でノアを睨み付けている。


(『おい主、準備はまだか?』)

(待て…『バチンッ!』『カチャッ!』よし!完了!いつでも良いぜ!)


ノアは腰に差していた荒鬼神をアイテムボックスへと仕舞い、代わりに所々破損してはいるが、戦闘する分には問題の無い『魔装・破城槌式鉄甲』を両腕に装着した。


『ウォオオーーン!』シュパァッ!

ギュロロロロッ!シュパァッ!


『ダックス憤怒』がまた新たな支援魔法を発動した様で、2体の巨体が透き通った青い光に包まれた。


ドシュッ!ヴォオ"オ"オ"オ"オ"ア"ッ!


咆哮を上げながら『ダックス憤怒』がノア目掛け駆け出して来た。
だがその移動速度は先程よりも数段上である。
どうやら先程の支援魔法は速度上昇系等であろう。


(『ッシャァア!来るぞぅ主!気張ってねぇとポックリ逝っちまうぞ!』) 

(戦う前から縁起でも無い事言うなっつーの!)


グォアアアッ!ボッ!


『ダックス憤怒』の巨木の如き前脚がノアの顔面に迫る。
だがノアは、落ち着き払った様子で【固有スキル】を発動した。


【一神同体】発動! 


『邪魔だ!犬っころ!俺の相手はあそこの蛸だ、引っ込んでろ!』

ベギャッ!

ウボァッ!?ズズンッ!

「ちょっとぉ!何で開幕に怒らす様な事してんの!戦うの僕なんだよ!?」


ノアの体から力の根源である『鬼神』が飛び出し、目の前まで迫っていた『ダックス憤怒』を殴り付け、一撃で顎を粉砕した。


『すまんすまん。』

「軽いなぁっ!」

『まぁ待ってな、蛸を締めたら直ぐに戻ってきてやる。
それまで凌いでなって。』

「はいよ。」
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