ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~森の番人~

おはよう

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「おはよう。」

「おはようございます。」

《おはようございます。》

「「「おはようさん!」」」モワッ。 

「おは…うわっ!酒臭っ!?
どんだけ飲んだらそんなに体から臭いを発するのよ!?」

「「「取り敢えず1人1樽は飲んだかのぅ。
なに、ワシらにとっちゃ燃料じゃ燃料。」」」


空が薄らと白み始めた早朝、示し合わせたかの様に南門に7人が集結した。

確かに酒臭いドワーフ3人だが、目を見る限り酔っている様子は無く、漂わせている雰囲気はフリアダビアの時と同様、静かに、だが戦いたくてウズウズしていると言った感じだ。

既に臨戦態勢である為か、背中には変形機構を備えた斧を背中に、ガントレットを両腕に装備していた。

エスメラルダはそんなドワーフ3人に嘆息しつつも雰囲気は真剣そのもので、真緑色の軽鎧を身に纏い、背中には大弓とコンポジットボウの2つを装備。

腰にあるポーチには多種多様な薬瓶がセットされていた。

マドリックは、冒険者稼業を引退する際に獣人国の貸し倉庫に預けていた専用武器『爪弾(つまはじき)』を両腕に装着していた。

恐ろしく鋭い爪が付いた鉄甲で、切れ味は木に刃を押し当てただけで両断出来る程だと言う。

今は刃に革で出来た被せ物を着けて仕舞っている状態だ。

ノアは通常装備のままで、腰に荒鬼神を装備し、背中には弓を担いではいない。

これは後々【一神同体】を発動した際に『対巨獣兵装・機兵中立国(ネウトロメカニコ)製98式魔装鉄甲』を直ぐに展開出来る様にする為らしい。

グリードは相変わらず<人化>状態のまま、静かにノアの背後に佇んでいた。

ちなみに今回、ヴァンディットとラインハードは、ノアの足下の影の中で待機している。
ヴァンディットは回復役で、ラインハードは魔装鉄甲が故障した場合を想定して同行するとの事だ。

だが、戦闘時は危険の為、絶対に外に出ない様に言い聞かせている。


「さて、皆さん。
分かってるとは思いますが、特にエスメラルダさんには注意しておいて欲しいのですが、僕は適正上、援護・共闘・協力関係を取ると弱体化してしまいますので、僕に対してそういった行動は取らない様にして下さい。」

「おう。」

《いつも通りに、ですわよね。》

「「「おぅよ。」」」

「相手に攻撃を仕掛ける時はノア君を狙う様に、でしょ?
…何回聞いても難儀な適正ね…」


エスメラルダには、夜中に街の中で会った際にノアの適正を伝えた時も、驚いたり困ったりと言った事はせず、寧ろ聞いた事の無い適正の為、訝しんでいた位である。


「まぁ確かに出来る事と出来ない事があって僕も当初は悩んでましたが、こういった有事の際に力になれるので、最近は有り難く思ってますよ。」


自然な笑みでエスメラルダを見やるノア。
どうやらこの言葉は本音の様だ。


「そうだなぁ。
適正の儀を終えた直後、近所に住むラニの倅に"万年ボッチ"と言われた時は膝から崩れ落ちてたもんな。」

「ちょ、マドリックさんその話はしなくて良いでしょ…」

「はは、すまんすまん。」







「さて、それでは私は一足先に『滅びの森』に向かってるよ。」

「えぇ、気を付けて。」


そう言ってマドリックは駆け足で東門へと向かっていった。


「それじゃあ僕らもそろそろ行きましょうか。」

「「「おぅ。」」」

《はい。》

「了解。」


各々武器を手に南門直ぐ近くまで向かうと、『犬姫』のハナと、ギュラドスカル、ラーベ、ラベルタの4人が待っていた。

どうやら変に騒ぎになると宜しくないので、必要最低限の人員が来ていた様だ。

だが、4人の表情は芳しくない。
前日に何も出来ずにいた4人である為、"頑張って"の一言を言う事すら躊躇われた。

ニッ。

そんな4人の心情を察したのか、ノアは軽く微笑むのみに留めた。








〔きた。〕
〔きたわね。〕

〔きのうよりすくない。〕
〔でも"こい"わ。ひとり"きけん"なのもいるし。〕

〔まじめにやろう。〕
〔そうね。まジ目に殺りましょう。
さぁ、皆も行きましょう。〕

ギャギギッ!ギギィッ!

ボゴッ!ボゴボゴッ!

『滅びの森』内から獣人国側を見ていたレント・レアナが行動を開始。

こちらへ向けて歩いてくる一行に合わせ、休眠していたドーピングマッシュルーム達を引き連れて2人は張っていた根を引き抜きつつ外へと向かう。






「…ねぇ、昨日見た時より少し形状が変化してない?」

「あぁ、背中からウネウネしたもん出しとるのぅ、気色悪い。」
「何じゃ?胸の辺りにある発光体は。」
「まさかと思うが、あれ全部魔石じゃないだろうな?」

《あの発光体から高濃度の魔力を感じます。
恐らく魔石で間違いないでしょうね。》

「…こっちの狙いがバレたか?」


視線の先にいるレント・レアナは、前日に見た時よりも所々に変化が見られていた。

背鰭の様に背中に生えていた木々は、触手の様に変化しウネウネと宙を舞い、人間で言う胸板と腹筋にあたる部分に、青く輝く発光体(魔石)が 配置されていた。

前日まで人間同様の腕だったのが、パイルバンカーの様な形状に変化し、明らかに攻撃性を増した見た目になっていた。






〔来たね。待ってたよ。〕

「「「「「!?」」」」」


前日よりも流暢に喋っているレントに驚く一同。
両者の距離は30メル程離れているが、周囲には他に誰も居ないのでハッキリと聞き取れる。


〔君はまたやって来ると信じて色々と準備して待っていたよ。〕

「それがその体の変化ですか。」

〔より戦い易い様に、より楽しめる様に、より殺り易い様に変化させただけだ。〕

〔私達の領域を脅かすあなた達を排除する為に自己進化させたの。似合うかしら?〕

「"脅かす"だぁ?脅かされてんのはこっちの方だがなぁ。」


レアナの発言に食って掛かるバト。


〔自分達の庭に害獣が入ってきたら排除するのは当たり前の事でしょう?〕

ガサガサ…

「度が過ぎるんだよ。」


後方の『滅びの森』からマドリックが姿を現す。


「お前らは誰かが伐採しなければ際限無く勢力を拡大し続ける。
出る杭は打たれる、どの分野でもそれは変わらん。
それ故お前らは"危険害獣"に分類されている。
俺らがやっているのは謂わば環境保護だ。
ここまでの勢力に拡大した貴様らは伐採せにゃならん、土に還れ。」

〔拒否したら?〕

「その為に俺らが来たんだ。」


ボゴォアッ!ドゴォアッ!


「「「「「「!?」」」」」」


レント・レアナを中心に半径50メルの地面が捲れ上がり、まるで貝の口が如く急速に閉じていく。

ダンッ!

「各々で回避行動を取れ!行くぞグリード!」

「「「おぅよ!」」」「えぇ!」

《畏まりました。》ドンッ!


捲れ上がる地面に一同臆する事無く、ノアとグリードはレント・レアナに、ドワーフ3人とエスメラルダは素早く動き、回避行動に出る。


「いぃいやぁあっ!」ゴバァッ!


マドリックは向かってくる地面に爪弾を振るい、勢いそのままに反対側に突き抜けた。

宙を舞うマドリックは、地面に落下しつつも


「ノアッ!相手の形態が想定よりも著しく変化している!
十二分に注意し事にあたれ!」


「了解っ!」

ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

辺りに土石が降り注ぐ中、ノアはレントに荒鬼神をぶん投げ、グリードはレアナに対して超高速移動を仕掛けた。
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