ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~森の番人~

【樵(きこり)】のマドリック

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「私は【樵(きこり)】のマドリック。
以前は、対植物系モンスター専門の上級冒険者稼業を行っていた。
適正からして分かると思うが、普段は木の伐採や間引き、植林なんかを生業としている。」

「なる程、レント・レアナ相手に打って付けって訳ね。
私は上級冒険者【薬学弓士(ネイチャー)】でエルフのエスメラルダよ。」

「ワシらは上級冒険者【技士】のバトじゃ。
見ての通りドワーフだ。」

「ルドじゃ。」

「ロイじゃ。
坊とはフリアダビアん時からの付き合いじゃ。」


簡単にではあるが自己紹介を終えた一同は、そのままの流れで作戦会議に移る。


「先程この国に来る際、上空から俯瞰で『滅びの森』を見てみたが、かなりの広大さだった。
正確な規模が分からんが、保有されている魔力量もかなりの物だ。
莫大な魔力量に物を言わせてモンスターを召喚したり、モンスターを創造したりして来るだろうな。」

「創造、召喚されたモンスターの対処は私達に任せて。
…えっと、マドリックさんもノア君と同様に、レント・レアナと戦闘を行うの?」

「いや、自分は条件設定の為、皆とは別行動を取る。
これは植物系モンスター全般に言える事だが、奴等が大地の上に居る以上、地下の根を介して森から魔力や養分を得ている。
つまり私の役目は、その供給根を断つ事だ。
具体的にはスロア領方面から『滅びの森』に侵入し、『根絶椰子(ねだやし)の実』で作った特製の除草剤を撒き、レント・レアナと森とを介している根を腐らして来る。
効果の発現には最低でも30分、持続時間は断定出来ないが、最低でも3時間は持つだろう。」

「「「「おおっ!」」」」


マドリックの出した具体的な作戦に、沸き立つ一同。
だがノアの表情に安堵の表情は現れない。


「マドリックさん、魔力の供給手段は根だけ?」

「良い所に気付いたなノア、確かに魔力の供給手段は他にもある。
根を腐らすのは手段の1つを潰したに過ぎない。
『森の番人レント・レアナ』までであれば根以外にも触手等を介して接触する事で供給が出来る。
これが"現人神(あらひとがみ)"にでも進化したらそういった接触行為が不要になり、周囲に存在する森を焼き払う事しか討伐手段が無くなる。
兎に角、奴等を森に近付けさせない事が大切だ。」

「了解。
と言う訳だグリード、奴等が森に行く様だったら構わずぶっ放せ。」

《分かりましたわ、主様。》


ノアからの指示にコクりと頷くグリード。


「エスメラルダさんとドワーフのお三方はレント・レアナ以外のモンスターを請け負うらしいが、どういった戦法を取るつもりですか?」

「私は腐食性のある毒や、マドリックが先程用意していた『根絶椰子の実』から抽出した成分を用いた矢を駆使して中~遠距離で攻撃を仕掛けるわ。」

「代わりにワシらは接近戦で戦う。
近付かれた場合ワシらに任せちょれ。」

「得物は斧と、このガントレットじゃ。
街で手当たり次第に火属性の魔石を買うて来たからの。」

「これらを駆使してモンスター共を焼き斬ってやるわい!」


ドワーフ3人組は、各々斧とガントレットを取り出して頭上に掲げる。
斧の刃の側面に凹みがあり、そこに火属性の魔石を装着すれば、火属性の斬撃が放てるらしい。

ガントレットも同様に手の甲辺りに凹みがあり、そこに装着するらしい。
だが斧と少し違うのが、ガントレットの場合は魔石を弾丸に見立てて相手の体内に魔石を打ち込み、炸裂させるものだと言う。

通常攻撃は斧で行い、強個体が出現した場合はガントレットによる内部破壊を目的とした攻撃方法を取る様だ。中々にエグい。


「…ノアの戦法は何と無く分かるんだが、そこのグリードとか言う竜人のお嬢ちゃんはどう戦うんだ?
見た所、武器等は持ってない様だが…」

《私にはこの尻尾と拳、後はプラズマレーザーを用いますのでご心配無く。》

「「ぷ、ぷらずまれぇざぁ?」」


グリードがプラズマレーザーを放っている場面を見た事が無いマドリックとエスメラルダ。
ドワーフ達が"ビャッ!"とか"バシュッ!"とかの擬音を口に出して説明しているが、全く理解出来ていない様だ。

なので取り敢えず2人には強力な攻撃です、とだけ伝えておいた。






「そう言えばグリードは<人化>状態だと食事の方はどうなの?」

「あれ?その子お腹空いちゃったの?」

「あ、いや、そう言う事では無く…」


グリードの正体を知らないエスメラルダは、ノアの言う"食事"の意味を普通の食事の事だと思っている。

だがノアに取っては割と重要な事なので、今の内に知っておかないとならない情報なのである。


《食欲自体は元のままで御座います。
ですが、体積が減った分今までの様な食し方が難しいので食事の方法を変える事にしました。》

「方法を?」

《えぇ、この様に…》

シュルリ…ガバッ!

「きゃっ!?」
「な、何っ!?」
「「「ははぁ…これは驚いた…」」」

「おおぅ…」


グリードが尻尾をノアの方に向けると、先端が三股に割れ、中からおぞましい口が現れた。


《ここからならマドリックさん程度の体躯であれば一呑みに出来ますわ。》


つまりは、尻尾の叩き付けと同時に相手を食い千切る・食い破る事も出来る訳だ。
うーん、中々にエグい。







「さて、今日はもう遅いので討伐開始は明日の明朝にしよう。
私はこれから武器や装備を取りに行き、そのままスロア領に向かおうと思う。
皆々方はそれまで英気を養っててくれ。」

「それじゃあ私は一足先に宿に戻って、限界まで薬品調合や矢の製造や武器の手入れをしておくわ。」

「ワシらも武具の手入れをした後、ちょっと一杯引っ掛けておくかの。」

「「だな!ガハハッ!」」


「ちょっとー、明日に残さない様にしなさいよ?」

「「「ドワーフは二日酔いなぞならんわ!
ガハハッ!」」」


ドワーフ3人は意気揚々と、エスメラルダはそんな3人に嘆息しつつそれぞれの目的の為に散っていった。


「さてノアよ、ちょっと付き合え。
お前さんの事だから体力的にはまだまだ余裕だろ?
屋台で何か食いながら、お前さんが村出てからの事とか色々と話聞かせてくれよ。」

「お、良いですよ。」

「嬢ちゃんはそれでも良いかな?」

《私は主様の契約獣ですので、主様が向かう場所に着いて行くまでです。》

「よし、決まりだな。
そんじゃ、行くとするか。」
 

そう言ってマドリックは、ノアとグリードを引き連れて屋台街の方へ歩いていった。
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