ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~森の番人~

~5時間後~

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~5時間後~

ノアの生家がある村ではテンポ良く木を叩き割る音が辺りに響き渡っていた。

その音の出所に目をやると、村の住人の1人である、熊獣人のマドリックが日課の薪割りを行っていた。

そんなマドリックの後方から、フードを目深に被った者が歩み寄って来た。

バカッ!

「…もし、そこの御方。」

「ん?獣人国の暗部の者が私に何か用か?」

バカッ!

「ど、どうしてそれを…いや、話が早くて助かる。手短に話そう、少し時間を貰えますか?」

バカッ!

「あぁ、構わんよ。
だがちょっと待ってくれ。
ミユキ!この薪束をラニん家に運んで行ってくれ!」

タタタ…

「はいよー。あれ?マドリックさん、その人は?」

「獣人国の者だ。
何か込み入った話になりそうだから早く行った行った。
少しでも遅れるとアミ(ノアの母親)から剣の素振り2000本の罰があるって言われてんだろう?」

「へ、へい!その通りで!」

ダダダッ!

薪束2つを脇に抱えた【勇者】ミユキはそそくさと村の奥に駆けていった。





「済まないな、騒がしくて。」

「いや、構いません。
それよりも、今のは【召喚勇者】の…」

「あぁそうだ。
今この村で鍛えてやってる所だが、戦争の為に鍛えてる訳じゃないからな?」

「そ、そうか…それは何より…」

「それよりも本題に入ろうか、私に用とは何処の誰からだ?」

「現在我が獣人国に滞在している新人冒険者のノアという少年からだ。」

「ほぅ?ノアが獣人国にねぇ…
つい最近まではフリアダビアに行ってたと言うのに…
それで、ノアが俺に何の用なんだ?」

「えぇ、それがですね…」







「なる程な。
『滅びの森』に"番人"が現れたのか。
第一陣が返り討ちに遭い、ノアとドワーフ3人、エルフと真っ黒い女の子が第二陣として向かおうと画策していると。
それでノアから俺にも要請が掛かったのか。」

「えぇ。"植物系モンスターに秀でているから大丈夫"と仰ってました。」

「大丈夫て…えらく持ち上げてくれてんなぁ…
分かった、要請に応じるとしよう。」

「ほ、本当ですか!」

「あぁ。だがちょっと待ってくれよ?
村の皆に暫し離れると伝えてくるでな。」

「あ、あぁ。」









「それじゃあ私は1度スロア領に戻ってお婆から有用な薬草やら毒草貰って、ありったけの状態異常矢を作ってくるわ。
大体5時間位で戻ってくるわね。」

「あいよ。
ワシらはここに残り、武器へ換装させる為の火属性魔石の買い出しじゃな。」

「「おぅよ。」」


そう言ってエスメラルダは北門を目指し、ドワーフ3人は通りの中へと姿を消していった。

ノアは【一神同体】状態を解除、魔装鉄甲も装着を解除し、持ち運び可能な鞄状態に戻してアイテムボックスへ入れた。

ラインハードは、「私が持ちますよ」と言っていたが、ずっと担がせているのもなんだったので断りを入れた。





「えー、ギュラドスカルさんやラーベさん、ラベルタさんうは、体の組織を多く痛め、他の箇所から補う形で治療を施しましたので、数日はお肉多目の食事を心掛ける様に。
ラーベさんの場合は骨にも影響が出ましたので乳製品をしっかりと摂って下さい。
それと3日分の活性薬をお渡ししますので、食後にお飲み下さい。」


治療を終えたヴァンディットから皆へ指示を出す。
体に複数の穴が空いたギュラドスカルと腹部に穴を空けられたラベルタは最低3日、顔を潰されたラーベは見た目的には完治しつつも視覚、聴覚が一時的に不調を来しているので、4日は絶対安静となった。

という訳でギュラドスカル含め、クラン『灰塵』の面々は拠点に戻り、ラーベ、ラベルタの2人には"絶対に安静にしててね?"と言い聞かせた上でジョーがしっかり面倒を見るとの事だ。

その後その場に残ったノア、ヴァンディット、グリード、ラインハードの4人は、ヴァンディットの影の中にある個人空間内に移動し、グリードは<人化>後の慣らし運転に。

ノアはラインハードに教えて貰いながら魔装鉄甲の慣らし運転に向かう事にしたのであった。








~再び5時間後~

「よぅ、ノア!元気にやってっか?」

「わ~マドリックさん!久し振りです~!
来てくれると信じてましたよ~!」


3時間程ヴァンディットの個人空間内で魔装鉄甲の使い方を習い、最後には軽く<人化>状態のグリードと共に組手を行い、かなりバチバチに戦った。

その間ヴァンディットとラインハードは揃って「ほぇ~」と呆けていた。

外に出ると、獣人国の暗部の人が直ぐ様声を掛けてきて王城前の広場に誘われた。
ヴァンディットやラインハードらを連れ立って暗部の者の後ろを着いて行くと、ずんぐりむっくりの熊獣人が腕を組んで立っていた。

へにゃっと笑いながらマドリックに駆けていったノアを見て


(わー、こんなノア様見たの初めてかも…(ヴァンディット))

(こうして見ると普通の少年ですね。(ラインハード))

(《あの熊獣人喉越し良さそう…(グリード)》)


1人を除き、あまり素を見せないノアの姿に新鮮さを感じていた。


「はっはー!ノアからの頼みとあっちゃぁ断れないからな。
それに相手はレント・レアナだ、流石のノアでも手に余るだろう。」

「そうだね。でも母さんの波状攻撃に比べれば温いし、父さんみたく予兆無しでは無い分、対応は楽だったよ。」

「本人居ないから言える事だが、あの2人は昔っから化物じみてるからな。」


出会って早々、和気藹々と話し出した2人だが、マドリックがふとノアの背後に立つ3人を見やる。


「…と、済まないな。
私はノアと同じ村に住むマドリック。種族は見ての通り熊獣人だ。
君達は旅の同行者かな?」

「ノア様の健康管理等を担っております、吸血鬼のヴァンディットです。」

「ノア君に命を助けられ、今後は旅に同行させていただきます現ダンジョンマスターのラインハードです。
種族とかではありませんが、私の体は機兵になります。」

《主様の契約獣であるグリードと申します。
今は<人化>しているのですが、種族は龍になります。》


各々簡単な自己紹介をした後会釈すると、マドリックはポリポリ頭を掻いた後


「こりゃまた珍しい種族ばかりだな。
一体どういった経緯で出会ったのやら…」

「ホントにね。」


他にも海洋種とも懇意にしているが、今は不要な情報な為、控える事にした。


「あ、ここに居たのね!」

「「「おーい、遅くなって済まんかったな、坊。
そこのでっかい獣人が例の協力者か?」」」


丁度良い頃合いでエルフのエスメラルダとドワーフ3人が戻ってきた為、自己紹介を兼ねて本格的な作戦会議に移る事にした。
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