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獣人国編~森の番人~
力の代償
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〔行かせるかぁっ!〕
ブ『ゴキッ!』ォンッ『メキメキッ!』!
ノアを捕らえたレントは、引き戻しつつ『封牢の種(カデイア)』で未だ拘束中の鬼神に向けてぶん投げる。
その際嫌な音が聞こえたが、ノアとしてはどうしようも出来なかった。
ドゴッ!「がっ…!」『うおっ!?何だ!?』
ノアは『封牢の種(カデイア)』で出来た球状の根の塊に激突した為、樹冠上からの落下は回避出来たものの、代わりに拘束中の鬼神が押し出されてしまった。
「くそっ!?…うぎっ!?」
慌てて掴み掛かろうとしたノアだが、脇腹に穴が空き、左足はぐしゃりと折れ曲がってしまっていた為、碌に動く事が出来ずにいた。
『主!外の状況がイマイチ掴めんが、滅多な事じゃ俺は死にはしない!
兎に角"核"の破壊を最優先するんだ!』
樹冠から落下し、重力に従って地面へと向かう『封牢の種(カデイア)』の塊から鬼神の檄が飛ぶ。
「了…解…っと…」
足場に手を付いて何とか上体を起こす。
腹に穴が空けて以降、足元の影の中からヴァンディットとラインハードが中へ引き入れようとする手が延びているが、絶好の機会なので手で制する。
ズ、ズズ…
〔惜しかったなぁ…一瞬ヒヤッとしたぞ…〕
右半身を溶解させ、脚を引き摺りながらノアに接近を図るレント。
語気からしてもかなり頭に来ている様子。
ザッ!
〔もう策は無い様だな。〕ヒュッ!
ノアの目の前までやって来たレントが徐に触手を振り翳した。
ヒュォオオ…
『ちょっと待て!これ今落下していってないか!?』
片や拘束され地面に向けて落下中の鬼神は、落下開始2秒後にして漸く自分の置かれている状況に気が付いた。
『マ、マズイ!!このままじゃ主との距離が離れ過ぎて【一神同体】が解除されちまう!』
落下に気付いた鬼神は、自身の身の事を案じるでもなく戦闘開始以前から発動中の【一神同体】が解除されてしまう事に焦りを感じていた。
ドゴッ!ボゴッ!ドガッ!ドゴッ!
『クソッ!頑強にも程があるだろうがっ!
…時間的に見てももうそろそろだと言うのにタイミングが悪過ぎる!』
スゥウ…
と、鬼神を構成していた赤黒いオーラが、徐々に霧散し出したのであった。
ヒュボッ!
ゾリッ!「シッ!」
ゾブッ!〔ごぉっ!?〕
レントの振り下ろしをギリギリの所で回避したノアは、大きく頬を裂きながらも巨腕を振り、グズグズに溶解したレントの胸辺りに腕を突っ込んだ。
〔策だぁ?ンなもん始めっから無ぇよ!
強いて言うなら時間稼ぎって所だ!アンタが余裕ぶっこいてこうして接近してくれるのを今か今かと待ってたぜ!〕
〔!?〕バッ!
メキッ!グルルルルォァアアアッ!
レントが何かを察して後方にある"核"へ振り返るのと、その"核"の直下から通常状態のグリードが大樹を突き破って姿を現したのはほぼ同時であった。
「グリード!そのまま"核"を食っちまえっ!」
《了か『ゴギギギギギギンッ!』い…?》
通常の龍形態のグリードが凄まじい光量を放つ"核"に恐ろしく鋭い牙を突き立てるも、硬質な音を響かせながら全て弾かれてしまった。
「くっ…!?"やはり"マドリックさんの言う通りグリードでも破壊は無理か!
なら飲み込め!グリード!」
《了〔させるかぁっ!!〕ヒュボボボッ!
「こっちのセリフだくそったれがっ!」
バッ!バシュッ!バシュゥウウウッ!
ノアから嚥下せよ、との指示に直ぐに実行に移すグリード。
レントは慌てて触手を延ばして阻止しに掛かるが、ノアはレントに抱き付いた状態でスラスターとブースター、<渾身>や<縮地>等のスキル総動員して引き離しに掛かる。
ザシュッ!ドシュッ!ドッ!ドスッ!
「ぐ、ぬぬぬぬぬっ…」バシュゥウウウウッ
レントは触手をノアの鎖骨や肩、足等に刺し、裂き、どうにか逃げ出そうとするが、<苦痛耐性>に<激痛耐性>、<痩せ我慢>等の耐性スキルも同時発動してただひたすらに耐え、尚も引き離す。
あと1秒程押し込めば地上へ向け落下させられる、と言う所で問題が発生した。
発端はノアと鬼神とが一定距離以上離れた事により、【一神同体】が完全に解除されてしまった事から始まった。
スゥウ…
『封牢の種(カデイア)』により拘束されていた鬼神が霧散してノアの体に戻る。
「ぐぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」
〔え?〕
突如ノアが血反吐混じりの悲鳴を上げ、レントの拘束を解いた上にその場で地面に突っ伏した。
半ば諦め掛けていたレントも訳が分からず、素っ頓狂な声を上げて呆然としてしまっていた。
影の中からこの光景を見ていたヴァンディットとラインハードも、一瞬何が起こったのか分からず呆然としていたが、このノアの異常に最も反応したのはグリードであった。
《!?主様!?》
"核"を呑み込め、と言うノアからの指示を受けていたのだが、ノアに発生した異常により、一瞬その指示が頭から抜け落ちてしまった。
ズギュルッ!バギィンッ!
《…ッ!》
その僅かに生まれた隙と時を同じくして、"核"から脚が発生してグリードの顔面に強烈な一撃が放たれた。
だが
《主様!?》シュルルッ!
〔おお…遂に…〕
そんな一撃など気にも留めずに一目散にノアの元へ向かうグリード。
対してレントは嬉しそうにゆっくりと"核"の方へと歩み寄って行った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」
《あ、主様!主様!?》
ズズズ…
「ノア様!お気を確かにっ!」
「ノア君!聞こえるっ!?落ち…『カッ!ガカッッ!』『ガショッ!ガシャガシャッ!』落ち着いて下さ…な、何これ…?」
《ヴ、ヴァンディット、急いでち、治療を…》おろおろ…
未だ苦しみ続けるノアに、影の中に居たヴァンディットとラインハードが飛び出してきた。
皆一様に心配する中、ラインハードは魔装鉄甲の製作者権限で装備を解除すると、装備で守られていたハズのノアの体からは血が吹き出し、痛々しい光景が広がっていた。
流石のグリードもおろおろとしていると
『ま、待て…』ズルッ…
「あ"あ"あ"っ…」ガクッ…
ノアから赤黒いオーラが抜け、鬼神が転がり出てきた。
するとノアはそのまま意識を失った。
『…よし…皆落ち着け…と言っても無理だろうが手短に話す。
今主に起こっのは【一神同体】が強制解除された事で、反動が一気に襲ってきたのが原因だ。』
先程ノアから【一神同体】の解除を提案され、鬼神が頑なに拒んだ理由がこれである。
【一神同体】は【ソロ】としての力の根源である鬼神を出現させ、擬似的なパーティとして戦う事の出来る【固有スキル】である。
ただそれ故に反動はとても重い。
回数をこなし、徐々に慣れさせていけば軽減されていくが、ノアは獣人国に着いてから初めて使用し、何度か発動したが、実戦で使用するのはこれが初めてであった。
しかも発動してから最低でも2時間は経過してしまっている為、解除する際は段階を踏み、時間を掛けて解除する必要があった。
にも関わらず強制解除されてしまった為、反動が一気に押し寄せてきたのである。
その反動は凄まじく、あらゆる耐性スキルが意味を成さず、全身の筋肉が絞り切られる激痛と、全ての内蔵が潰される様な圧痛に、全身の血液が瞬時に沸騰したかの様な苦痛が持続的に襲い続け、気を失えば楽だっただろうが、気を失っても痛みで直ぐに覚醒して苦しみ続ける事になっていた。
なので鬼神が自発的に飛び出し、ノアはその苦痛から漸く解放される事になった。
『ヴァンディット、主を頼む。
ラインハードは共に影に戻って今すぐここから離れろ。
グリードは俺とここに残ってアレを処理するぞ。』
「は、はい!」
「分かりました。」
《畏まりました。》
ズズズ…
ヴァンディットとラインハードは意識を失ったノアを連れて影の中へ。
気配の感じからして、鬼神の言う通り急ぎこの場から離れて行っている様だ。
『主には無茶させちまったな…
だがこれで本当の意味で"本気で"殺れる。
獣人国の王からもここら一帯を焦土にして良いって言われてっから徹底的にやるぞ。』
《はい。》
今2人の視界には、"核"から誕生して嬉しそうに宙を舞うレントの子供と、それを嬉しそうに眺めるレントの姿が映っていた。
鬼神とグリードは、その光景を冷めた目で見つつ、2人の元へと駆け出していった。
ブ『ゴキッ!』ォンッ『メキメキッ!』!
ノアを捕らえたレントは、引き戻しつつ『封牢の種(カデイア)』で未だ拘束中の鬼神に向けてぶん投げる。
その際嫌な音が聞こえたが、ノアとしてはどうしようも出来なかった。
ドゴッ!「がっ…!」『うおっ!?何だ!?』
ノアは『封牢の種(カデイア)』で出来た球状の根の塊に激突した為、樹冠上からの落下は回避出来たものの、代わりに拘束中の鬼神が押し出されてしまった。
「くそっ!?…うぎっ!?」
慌てて掴み掛かろうとしたノアだが、脇腹に穴が空き、左足はぐしゃりと折れ曲がってしまっていた為、碌に動く事が出来ずにいた。
『主!外の状況がイマイチ掴めんが、滅多な事じゃ俺は死にはしない!
兎に角"核"の破壊を最優先するんだ!』
樹冠から落下し、重力に従って地面へと向かう『封牢の種(カデイア)』の塊から鬼神の檄が飛ぶ。
「了…解…っと…」
足場に手を付いて何とか上体を起こす。
腹に穴が空けて以降、足元の影の中からヴァンディットとラインハードが中へ引き入れようとする手が延びているが、絶好の機会なので手で制する。
ズ、ズズ…
〔惜しかったなぁ…一瞬ヒヤッとしたぞ…〕
右半身を溶解させ、脚を引き摺りながらノアに接近を図るレント。
語気からしてもかなり頭に来ている様子。
ザッ!
〔もう策は無い様だな。〕ヒュッ!
ノアの目の前までやって来たレントが徐に触手を振り翳した。
ヒュォオオ…
『ちょっと待て!これ今落下していってないか!?』
片や拘束され地面に向けて落下中の鬼神は、落下開始2秒後にして漸く自分の置かれている状況に気が付いた。
『マ、マズイ!!このままじゃ主との距離が離れ過ぎて【一神同体】が解除されちまう!』
落下に気付いた鬼神は、自身の身の事を案じるでもなく戦闘開始以前から発動中の【一神同体】が解除されてしまう事に焦りを感じていた。
ドゴッ!ボゴッ!ドガッ!ドゴッ!
『クソッ!頑強にも程があるだろうがっ!
…時間的に見てももうそろそろだと言うのにタイミングが悪過ぎる!』
スゥウ…
と、鬼神を構成していた赤黒いオーラが、徐々に霧散し出したのであった。
ヒュボッ!
ゾリッ!「シッ!」
ゾブッ!〔ごぉっ!?〕
レントの振り下ろしをギリギリの所で回避したノアは、大きく頬を裂きながらも巨腕を振り、グズグズに溶解したレントの胸辺りに腕を突っ込んだ。
〔策だぁ?ンなもん始めっから無ぇよ!
強いて言うなら時間稼ぎって所だ!アンタが余裕ぶっこいてこうして接近してくれるのを今か今かと待ってたぜ!〕
〔!?〕バッ!
メキッ!グルルルルォァアアアッ!
レントが何かを察して後方にある"核"へ振り返るのと、その"核"の直下から通常状態のグリードが大樹を突き破って姿を現したのはほぼ同時であった。
「グリード!そのまま"核"を食っちまえっ!」
《了か『ゴギギギギギギンッ!』い…?》
通常の龍形態のグリードが凄まじい光量を放つ"核"に恐ろしく鋭い牙を突き立てるも、硬質な音を響かせながら全て弾かれてしまった。
「くっ…!?"やはり"マドリックさんの言う通りグリードでも破壊は無理か!
なら飲み込め!グリード!」
《了〔させるかぁっ!!〕ヒュボボボッ!
「こっちのセリフだくそったれがっ!」
バッ!バシュッ!バシュゥウウウッ!
ノアから嚥下せよ、との指示に直ぐに実行に移すグリード。
レントは慌てて触手を延ばして阻止しに掛かるが、ノアはレントに抱き付いた状態でスラスターとブースター、<渾身>や<縮地>等のスキル総動員して引き離しに掛かる。
ザシュッ!ドシュッ!ドッ!ドスッ!
「ぐ、ぬぬぬぬぬっ…」バシュゥウウウウッ
レントは触手をノアの鎖骨や肩、足等に刺し、裂き、どうにか逃げ出そうとするが、<苦痛耐性>に<激痛耐性>、<痩せ我慢>等の耐性スキルも同時発動してただひたすらに耐え、尚も引き離す。
あと1秒程押し込めば地上へ向け落下させられる、と言う所で問題が発生した。
発端はノアと鬼神とが一定距離以上離れた事により、【一神同体】が完全に解除されてしまった事から始まった。
スゥウ…
『封牢の種(カデイア)』により拘束されていた鬼神が霧散してノアの体に戻る。
「ぐぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!」
〔え?〕
突如ノアが血反吐混じりの悲鳴を上げ、レントの拘束を解いた上にその場で地面に突っ伏した。
半ば諦め掛けていたレントも訳が分からず、素っ頓狂な声を上げて呆然としてしまっていた。
影の中からこの光景を見ていたヴァンディットとラインハードも、一瞬何が起こったのか分からず呆然としていたが、このノアの異常に最も反応したのはグリードであった。
《!?主様!?》
"核"を呑み込め、と言うノアからの指示を受けていたのだが、ノアに発生した異常により、一瞬その指示が頭から抜け落ちてしまった。
ズギュルッ!バギィンッ!
《…ッ!》
その僅かに生まれた隙と時を同じくして、"核"から脚が発生してグリードの顔面に強烈な一撃が放たれた。
だが
《主様!?》シュルルッ!
〔おお…遂に…〕
そんな一撃など気にも留めずに一目散にノアの元へ向かうグリード。
対してレントは嬉しそうにゆっくりと"核"の方へと歩み寄って行った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!」
《あ、主様!主様!?》
ズズズ…
「ノア様!お気を確かにっ!」
「ノア君!聞こえるっ!?落ち…『カッ!ガカッッ!』『ガショッ!ガシャガシャッ!』落ち着いて下さ…な、何これ…?」
《ヴ、ヴァンディット、急いでち、治療を…》おろおろ…
未だ苦しみ続けるノアに、影の中に居たヴァンディットとラインハードが飛び出してきた。
皆一様に心配する中、ラインハードは魔装鉄甲の製作者権限で装備を解除すると、装備で守られていたハズのノアの体からは血が吹き出し、痛々しい光景が広がっていた。
流石のグリードもおろおろとしていると
『ま、待て…』ズルッ…
「あ"あ"あ"っ…」ガクッ…
ノアから赤黒いオーラが抜け、鬼神が転がり出てきた。
するとノアはそのまま意識を失った。
『…よし…皆落ち着け…と言っても無理だろうが手短に話す。
今主に起こっのは【一神同体】が強制解除された事で、反動が一気に襲ってきたのが原因だ。』
先程ノアから【一神同体】の解除を提案され、鬼神が頑なに拒んだ理由がこれである。
【一神同体】は【ソロ】としての力の根源である鬼神を出現させ、擬似的なパーティとして戦う事の出来る【固有スキル】である。
ただそれ故に反動はとても重い。
回数をこなし、徐々に慣れさせていけば軽減されていくが、ノアは獣人国に着いてから初めて使用し、何度か発動したが、実戦で使用するのはこれが初めてであった。
しかも発動してから最低でも2時間は経過してしまっている為、解除する際は段階を踏み、時間を掛けて解除する必要があった。
にも関わらず強制解除されてしまった為、反動が一気に押し寄せてきたのである。
その反動は凄まじく、あらゆる耐性スキルが意味を成さず、全身の筋肉が絞り切られる激痛と、全ての内蔵が潰される様な圧痛に、全身の血液が瞬時に沸騰したかの様な苦痛が持続的に襲い続け、気を失えば楽だっただろうが、気を失っても痛みで直ぐに覚醒して苦しみ続ける事になっていた。
なので鬼神が自発的に飛び出し、ノアはその苦痛から漸く解放される事になった。
『ヴァンディット、主を頼む。
ラインハードは共に影に戻って今すぐここから離れろ。
グリードは俺とここに残ってアレを処理するぞ。』
「は、はい!」
「分かりました。」
《畏まりました。》
ズズズ…
ヴァンディットとラインハードは意識を失ったノアを連れて影の中へ。
気配の感じからして、鬼神の言う通り急ぎこの場から離れて行っている様だ。
『主には無茶させちまったな…
だがこれで本当の意味で"本気で"殺れる。
獣人国の王からもここら一帯を焦土にして良いって言われてっから徹底的にやるぞ。』
《はい。》
今2人の視界には、"核"から誕生して嬉しそうに宙を舞うレントの子供と、それを嬉しそうに眺めるレントの姿が映っていた。
鬼神とグリードは、その光景を冷めた目で見つつ、2人の元へと駆け出していった。
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