ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
525 / 1,117
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

復興の兆し

しおりを挟む
「お、おい…流石の少年でも3対1は厳しいだろう、加勢に行かなくて良いのか…?」

「…なりません。
心苦しいですが、私達が加勢に行ってしまえば彼の【適正】上、却って足手まといになるだけです。」

「それにあなた、奴らの攻撃目で追えているのですか?」

「そ、そりゃあ…」



[ふははははっ!
ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!]

バォッ!ボッ!ボボッ!ババボボッ!

ガガッ!スッ!ババッ!ゴギンッ!ババッ!


暴坊将軍が追加で取り出した大太刀による連撃を、荒鬼神による受け流しと、自前の動体視力で避けるノアの光景を見やる。



「い、今のは8連撃だろう?」

「10連撃です。(ハウンド)」

「惜しい、11連撃よハウンド。(ハナ)」

ズザザッ!

「残念っ!15連撃だっ!(ノア)」

[はっはっはっ!御名答っ!まだまだ行くぞっ!]

ズドンッ!









「…ね?私達が加勢に行っても足手まといになるだけでしょ?
素直にノア君から指示された事を遂行しましょ…(ハナ)」

「「はい…(アーク、ハウンド)」」


どう足掻いても太刀打ち出来ないと言う事をまざまざと思い知らされた3人は、城下の復興に着手する事となった。








「それでお爺さん、城下の復興ってどうすれば良いのでしょうか?」

「は、はい。
それでは手短に行いたいと思いますので、今まで通り私に"時"をお渡し下さいませんでしょうか?」

「えっと…こちらで足りるでしょうか…?」ヂャラ…


ハナは、仕留めた足軽兵から出てきた"時"の詰まったガラス玉数個を老齢の男性に手渡す。


「ふむ…
…何とか"1回分"は可能ですな…それでは始めましょう。」

ガション!チキチキチキ…

ハナから受け取ったガラス玉の数々を自身の胸元に近付けていくと、再び男性の前に文字盤が現れて針がぐるりと一周していく。



ガション!

""時"が一定量に達した事で『復活の兆し』を達成致しました!
今より"農民兵"又は"足軽兵"のどちらかを選択する事が出来ます。
達成ボーナスとして最初に選択したユニットは無償で出現可能です。
どちらを配置致しましょうか?"



再び周辺に聞こえる様にアナウンスが流れたかと思うと、男性の前に半透明の板が現れた。
そこには"農民兵"と"足軽兵"の簡略図が表示されていた。


「うむむ…状況的には直ぐにでも戦力を整えたい所だが、数で言えば"農民兵"、質で言えば"足軽兵"…
うむむ…どちらを選択するべきか…」

「「「「…?(ハナ、ハウンド、アーク、ヴァンディット)」」」」


男性が半透明の板(ウィンドウ)を見てウンウン唸っている光景を、4人は訳も分からずポカンと見詰めている中


「お爺さん、ここは質の高い"足軽兵"を選択しましょう!
細かい設定は分かりませんが、先程ノア君が大部隊を蹴散らした時の"時"がありますので、直ぐにでも実戦可能な者達を結集させた方が懸命かと。」


男性の持つウィンドウを見て何かを察したラインハードが直ぐに助言を出してきた。


「今は敵幹部が出張って来ていると言う事で、追加の大部隊を要請はすれど手を出す事は考え辛いかと。」

「うむ、そうしよう。
余裕が出来次第"農民兵"を出現させ、生産面を確保するべきじゃな。」

ピッ、ピッ、ピピッ!

「よし、これでどうじゃな。」


男性がウィンドウにある"足軽兵"の項目で数度操作をすると、何やら決定したのか項目が光り、"決定"の文字が現れた。

すると


ズズズ…カタカタカタ…

「「「「!?」」」」


一行の後方にある焼け落ちた家屋の下から土台や柱、壁が次々に現れ、ものの数秒で家屋が完成した。


""足軽兵・兵舎"が完成致しました。
"兵舎"からは、30秒毎に3ユニット、上限は300ユニットまで出現します。"


「「「「?????」」」」


とアナウンスが流れるが、未だハナ、ハウンド、アーク、ヴァンディットの4人は理解が出来ずに困惑の表情をしていた。


「助言をありがとう、お嬢ちゃん。」

「いえいえ、私も現役の頃は今出ていたウィンドウの様な物を使って兵達を配置したりしていましたので。」


ラインハードが機兵中立国で女王をやっていた時と似た技術を用いていた為、直ぐに理解が及んだ様子。

と、そんな事を話していると、完成した兵舎からガシャガシャと言う音が聞こえ


ガラッ!

「「「足軽兵、参集致しました!」」」


と、兵舎から刀を帯刀した足軽兵と、槍を装備した槍兵と、弓を装備した弓兵が現れた。

するとその中の1人が


「と、殿っ!?よくぞ御無事で!」

「え?(ハナ)」
「ん?(アーク)」
「殿?(ハウンド)」
「こちらのお爺さんが…ですか?(ヴァンディット)」


足軽兵が発した言葉に理解が追い付いていない様だが、残りの足軽兵も


「殿っ!また生きて会えるとは…!」
「殿!息災で何よりです!」


と、喜びを露にしていた。


「私もまた生きてお主達に相見えるとは思ってもみなかった。
それもこれも皆、ここに居られる方々と、彼処で勇猛果敢に戦っておる少年のお陰じゃよ。」


殿と呼ばれた老齢の男性も、足軽兵達に会えて喜びに目頭を熱くしていた。

だが、直ぐに表情を真剣な物に変えて一行に向き直る。


「皆様、改めて御紹介をさせて貰います。
私はこの辺りを治めております"時雨"と申し、皆からは"殿"と呼ばれております。
今見て頂いた通り、この世界では"時"を用いて兵や民を生み出す事が可能。
普通は生きとし生ける物から"時"を頂き、己の糧にするモノですが、時羽軍はそんな我らから強奪しに参ったので御座います。」


頭を深々と下げながらそう説明する時雨。
するとその説明に付け足しするかの様に時羽軍の暴坊将軍がやって来て


ガガッ!

[そう言う事だ!
この世は"時"が全て!この地は"時"の生産に長けていた故に我ら時羽軍が丸ごとかっ攫いにやって来たと言う訳よ!]

ズズン!

〈近場にこれ程条件の良い土地があるのだ、奪い取るのは必然と言えよう?〉

シュタッ!

〔クケケ!〕


地均明王と闇蜘蛛も集まってそう宣う。
そこにアークが割って入る。


「さ、さっき女子供に手を上げるのは気が引けると言っていたじゃないか!?
だったら何故こんな事を…」

[ふははははっ!確かに気が引けるぞぅ!
だがこれも我らが生きる為じゃ。
お主は自身の生き死にに関わる事になってもそんな綺麗事を貫き通せる自信があるのかぁ?]

〈それにこの世界での生死は外に比べれば幾分軽い。
生き残りが居れば新たな生者を産み出す事も出来る故、片っ端から殺してもそこまで心は痛まらん。
まぁその生き残りが何処ぞで街を興してくれればまた奪いに行くがね。〉

〔ヒヒヒ…〕

[じゃが安心せい!主らは襲わん!
何てったってお主らを襲っても"旨味"が無いからのぅ。]

「は?」


暴坊将軍の言う"旨味"に反応するハナ。


["時"も落とさんし、見るからに弱い。
唯一時羽様の脅威となり得るのはそこの少年位じゃしの。]


暴坊将軍は、後方にある瓦礫の山を見てそう告げ、続けて地均明王が


〈この世の者達が死んだとて砕けて霧散するだけだが、外なる者達はその場に残り、誰かが処理せねば悪臭を漂わせ続けるだろう?
旨味も無く、処理の面倒な者を誰が相手にするか。〉 


何らかの矜持で"襲わない"と思っていたが、"襲う価値も無い"と言う理由であった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...