ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
524 / 1,117
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

口が滑った

しおりを挟む
(馬上の暴坊将軍も、下に居る馬どちらも重装甲…
馬の脚を斬り飛ばし、転かして首を撥ね飛ばそうかとも考えたが、厚さが戸板位あるぞ…
こりゃ装甲を突破するだけでも骨だな…)


死合いを挑まれたノアは早速馬上の暴坊将軍を睨め回して攻略法を模索。
だが暴坊将軍の鎧は厚く、幾らノアの膂力と超重量の荒鬼神を以てしても突破は容易では無い。


[むっふっふ…良いぞ良いぞぅ、その眼。
大抵の者は我を前にすると臆し、逃げる算段を図るモノだが少年は違う!
我にどう挑み、どう打ち倒すかを分析しておる。
それで少年よ、良い攻略法は見出だせたかな?]


ノアの視線を受けた暴坊将軍はニンマリと笑みを浮かべ、早く戦いたそうにウズウズしている。


「いや、なーんも。
取り敢えず剣を交えてみてから考える事にしますよ。」スラッ…

[ふふ…策を練らずに剣で語るか…良い良い。]

ブゥンッ!パシッ!ブォンブォンブォンッ!


ノアは腰に差していた荒鬼神2本を抜き、暴坊将軍は頭上に手を掲げると、3メルはあろう長さの薙刀が姿を現し、頭上でブンブンと振り回す。

膂力が凄まじいからか、その回転力に周囲の砂埃や火の粉が吸い寄せられていた。


「そう言えばこちらから名乗ってはいませんでしたね。
僕は新人冒険者で二つ名【鬼神】のノアと申します。」

[ほほぅ、【鬼神】か。
【鬼神】の二つ名に恥じない戦いを所望するぞ。
そして金成様の言い付けである"城下の復興"を阻止させて貰うぞ!]








「…え?"城下の復興"?…何の事です?」

[え?…知らんのか?]

「はい、初耳です。」

[え?"時"を使い〈将軍。〉城下の者達や〈将軍。〉兵、重要施設の復興を〈おい将軍!〉成す為に時羽軍を〈聞けぇ将軍っ!〉屠り続けていたのではないのか?]


後ろで待機していた地均明王が声を荒げ、幾度と無く止めに入るが、暴坊将軍は聞く耳持たず、全部喋ってしまった。


「"時"を使って復興?
そんな事出来る訳が…あ。」


暴坊将軍の言葉を頭の中で反芻しつつノアの後方で待機している老齢の男性に目をやり、"時"を使って回復した時の事を思い出す。


「お爺さーん、"時"を使って街を復活させる事って出来ますかー?」

「は、はい、今の今まで言えずにすみませぬ。
この様な多勢の状況ではお伝えしない方が良いと思い…」


 どうやら出来るらしい。
後に老齢の男性から聞いた所によると、皆がずっと戦い通しだった為、"城下の復興"に関して言い遅れていたとの事だ。


「それじゃあ皆さんは、やり方を聞いて復興に務めてて下さい!
この方達の相手は僕の方で承るので!」

「は、はい!分かりました!(ハナ)」


ハナに指示を飛ばし、一行には"城下の復興"とやらに努めて貰う事に。
だが、相手方も黙って見ている訳にはいかず


〈チッ、将軍が喋っちまったから仕方無ぇ。
女子供相手に手を上げるのは気が引けるが、止めに行くぞ闇蜘蛛。〉

〔クケケ。〕


後ろで待機していた地均明王が頭を掻きつつ闇蜘蛛と共にハナ達の元へ向かおうとする。




ドズンッ!

「させる訳無いでしょう?
あっちへ行くなら僕を倒してからにしてくれません?」


地均明王の足下に荒鬼神をぶん投げて足止めをするノア。


〈俺らは構わんが、幾ら強者である少年とて我ら3対1では流石に手に余るのではないか?〉

〔クケケケ…〕

「さてね。
僕はまだ3人の実力がどれ程のモノか測りかねますし、僕の手に余るかどうかは皆さんの頑張り次第ではないですかね。」


この状況でも敢えて3人を煽るノア。
こうやって煽る事で、後方に居る一行へと敵視を向けさせない目的である。


[がははっ!
言ってくれるなぁ少年よ。]

〈まぁ多少復興したとしてもどうにでもなる。
それに、さっきも言ったが女子供、それと弱者に手を上げるのは本意では無い。
その点については安心して欲しい。〉

〔ケケケ。〕


3人、特に地均明王はノアの意図を察知していたらしく、一行へと向けていた体をノアの方へと向け臨戦態勢に入った。


[〈それじゃあ開戦といこうか!〉]ダンッ!

〔ケヒャアッ!!〕ボファッ!

「【鎧袖一贖】発動っ!』ズァッ!


暴坊将軍は大太刀を構えた状態で装甲馬が駆け出し、鉄塊の様な拳を振り上げた地均明王は一足飛びで急速接近し、闇蜘蛛は周囲に留めていた黒いモヤを周囲に飛散させた。

対するノアは荒鬼神を地面に刺して攻撃力特化である【鎧袖一贖】を発動して迎撃態勢に入る。


〈ほぅれご挨拶だ!俺の拳を受けてみろっ!〉ボッ!

『ッラァッ!』バォッ!


『ゴギンッ!!!』

〈おぉっ!?〉メキ…ミシッ…

『ぐっ…』ドゴンッ!


振り下ろされた地均明王の拳と、【鎧袖一贖】で強化された拳に<渾身>を乗せたノアの攻撃が衝突すると、まるでハンマー同士を打ち合わせたかの様な音が響いたかと思うと、体重の軽いノアが吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。


ドガッ!…ガガッ!ボゴゴッ!


地面を二度程跳ねた後、地面に足をめり込ませて停止したノアが顔を上げると


[でぇええええりゃぁああああっ!]

フォンッ!

ガギギッ、『ゾッ!』キィリュンッ!


風斬り音にも似た速度で繰り出された暴坊将軍の大太刀を、オーラを纏わせた腕を剣の代わりに合わせ、背中の丸み等も使って<受け流し>を発動。

その際、僅かに肩の肉を削いだが、何とか流しきり、暴坊将軍の側面を取った。


[おおっ!見事っ!!]


暴坊将軍が感嘆の声を上げるが、ノアの攻撃はまだ続いている。


(『食らえ、<渾身>を乗せた拳を馬の腹『ゴギャッ!』…ぅぐっ!?』)


暴坊将軍の乗っている馬の腹に拳を振るおうとした所、その馬から強烈な蹴りが飛んできた。

だが寸での所でノアは衝撃吸収効果のある防具でガードをした為、大したダメージは無い。




ドガガガガガガッ!バギバギッ!

ガラガラ…ズズン!


馬自体の健脚も凄まじく、風圧でもって押し込まれたノアは焼け落ちた家屋まで吹き飛ばされた。


『くっ…何つー蹴『シャキン!』り…』


瓦礫の中から顔を出したノアの視界には、左右から4本の鋭い刃物が映っていた。


ザシュッ!!

ダガッ!ズザザッ!

〔クケケ…イマノ、ヨケル、カ。〕

『喋れたのか…にしても何だ今の…全く気配が感じられなかったぞ…』


目の前には黒いモヤで何とか人型と分かる形状の闇蜘蛛が長く鋭い爪をダラリと垂らして立っていた。

闇蜘蛛の攻撃を見てから回避したノアは、気配が感じられなかった事に多少焦っていた。


ズンッ!

[闇蜘蛛は己のモヤを周囲に多く存在する影と同調させる事により、そこから攻撃を繰り出すだけでなく完全に気配も消せる。]

〈少年の拳、中々であったぞ。
見てみろ、中指がへし折れてしまったが…〉

『ビキッ!』グッパッグッパッ…

〈問題無い。〉


地均明王は折れた中指を元の位置に戻して数回握り締めると、何でも無さそうに再び構え始めた。


〔ヒヒヒ…オレハフタリヨリバヒリキ。
カゲ、ヤミ、ウラカラネラウノミ。〕シャキン!


闇蜘蛛はモヤのあちこちから鋭い爪を出してノアを見やる。
その見た目は確かに蜘蛛の様であった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...