ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
528 / 1,117
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

総力戦前の束の間

しおりを挟む
「足軽兵100人、足軽弓兵100人、足軽槍兵100人、ここに参集致しました!」

「火縄銃兵上限の100人到達までに最低でも3時間半は掛かる見込みだとの事です!」

「構わん!それでも猶予まで8時間以上ある!
"火薬庫"、"炭焼き竈"の増設を急ぐ故、火薬を急ぎ増産せよ!」

「「「はっ!」」」




ガィンッ!ガィンッ!

「殿っ!大砲の方は時間までに10門が限界です!」

「少ないが仕方無い!
弓矢制作の方はどうじゃ!?」

「現状、通常矢600、火矢200、毒矢100になります!」

「えぇ、えぇ!出来次第順次配備せよ!
作れるだけ作るんじゃ!」

「「「へぃっ!」」」






「ヒ、ヒナワ…?カヤク…?(ハナ)」

「タイホー…?(ハウンド)」

「…何だ?この黒い粉…(アーク)」

「ちょ、"外"のアンタら!勝手に触らんでくれ!爆発でもしたらどうするんじゃ!?」

「「「ば、爆発…!?」」」


ハナ、ハウンド、アークの3人は、周りで行われている事に着いていけず、途方に暮れていた。

そんな中


「はい、木炭と硫黄の配合終わりましたよー。」

「お、あんがとなぁ嬢ちゃん。」


ヴァンディットは火薬作りの手伝いをし


「ダメダメ、こんな番線の巻き方じゃ櫓が崩れちゃいますよー。(棒)」ギ、ギリッ…

「「「「す、すいません…」」」」


ラインハードは櫓を組んでいる最中の足軽兵達に番線の巻き方を教えていた。

そしてノアはと言うと







「良い?ゆっくりとだよ?」

『分かってる、やってるよ。』ジャリ…

「ゆっく、ゆーっくりだっての!」

『やってるっての!少し動いた位でびびんなって!』


鬼神とノアはお互いに手を合わせ、何やら声を掛け合っている。
周囲の足軽兵達はそのやり取りを遠目から見守っている。

実はこれが【一神同体】本来の解除方法である。

前回【一神同体】を発動した時はお互いが離れ過ぎた事で強制解除されてしまった。
その結果、反動が一気にやって来た為、ノアは5日も寝込む事になってしまったのである。

本来は時間を掛けてジワリジワリと同化すれば負荷は少なくて済むのだそうだ。


~10分後~


スゥウウ…

「ふぅ…漸く終わった…」

「お疲れ様ですノア様。」
「お疲れー、ノア君。(棒)」

「2人もお疲れ様です。
戦いまでまだ時間はたっぷりありますので休憩しましょう。」


同化を終えたノアの下に手伝いを終えたヴァンディットとラインハードが戻ってきた。


タタタ…

「ノア殿、戦の準備着々と進んでおります。
まずは…」


直後、時雨もノアの下に各設備の進捗状況を報告しにやって来た。


「以上になります。」

「了解しました。
各々準備を整えたら休息を取って戦闘に備えて下さい。」

「は、はぁ…」


ノアからそう指示を受けた時雨だが、何やら思う所がある様子。


「…ノア殿…貴殿方には命を救われ、敵方主戦力を潰して貰った上にここまでの戦力を揃える事が出来ました…
元々は我々と時羽間での争いにも関わらず貴方は尽力して下さった。
ここから先、後は我わ「待った。」


恐らく「後は我々の方でケリを着ける」的な事を言う所だったのだろうが、ノアは直前で食い気味に言葉を被せてきた。


「確かに他国間の争いなので、本来であれば僕らが介入するべきでは無いのは確か。
ですが、僕らはダンジョン攻略の一環でこの地を訪れました。
この地での事も幾つかある試練の内の1つとして捉えていますので、しっかり介入させて貰いますよ。」

「…分かりました。」

「まぁもっともらしい事を言ってますが、自分はその辺の線引きが苦手なんです。
多少でも関わった以上、最後まで付き合わせて頂きますよ。」

「御心遣い、感謝します。」


屈託の無い顔で気恥ずかしそうに話すノアに、時雨は頭を深々と下げて感謝を述べた。


「…しかし、先程聞かせて頂いた総力戦の概要ですが、幾ら何でも無茶苦茶では御座いませんか…?」

「実を言うと僕の【適正】はかなり特殊なモノで、"ああいった戦術"を取らないと逆に弱体化してしまうんですよ。」

「ははぁ…"外の世界"には何とも奇天烈な枷がおありなのですな…」


と、時雨と話していると


「あ、あの、ノア君…
私達、総力戦の概要って聞かされて無いけど…?」

「そりゃそうですよ、総力戦にはこの国の方々と僕以外出さないつもりですので。」

「「「え?」」」


ハナ、ハウンド、アークの3人は、ノアの言葉に固まった。
まぁ何も知らせないのも宜しくないので概要だけでも説明し、納得して貰う事にしよう。



~概要説明中~


「「「…………っ…」」」

「という訳で皆さんはヴァンディットさん達と一緒に影の中に退避してて下さい。
万が一外に居ては命の保証はありませんし、人質に取られた場合見捨てなければなりませんしね。」


ハナ、ハウンド、アークの3人は、ノアから概要を説明され青ざめる。

ノアの言う総力戦の戦術というのは至極簡潔で、"兵達が放つ矢や銃弾の雨を掻い潜りつつ金成を討つ"と言うものである。

ノアの【適正】を鑑みれば"協力・連携"は取れないし、かといって相手は時羽軍総大将時羽金成である為、兵達の攻撃だけで仕留め切れるとは思えない。

金成に国を滅ぼされ掛け、復讐の機会を窺っていた兵達を差し置いてノアだけで戦いに赴き、討ち倒せたとして兵達は納得するだろうか。

となれば何をするかは簡単で、兵達が金成相手に矢や火縄 、大砲を撃ちまくり、ノアは先陣を切って金成に肉薄して戦う事であった。


「ば、馬鹿げてる…幾ら何でも無茶苦茶だ…」

「悪いけどこれはフリアダビアで【魔王】の手下相手にやった戦術だ。
まぁこんな戦術を使うのは僕位だろうけどね。」


聞かされた内容に否定的な意見のアーク。

だが"【魔王】"と言う単語を出したからか、ノアの説明を聞いていた周囲の足軽兵達からは「やはり【勇者】なのでは…」とか囁きあっていた。


「それに皆さん、火縄はおろか火薬すら知らない様子。
となれば総力戦では足手纏いとなりますので、申し訳無いのですが、この場は退いて下さい。」

「う…確かに私達獣人は種族柄、聴覚や嗅覚が発達している為か火薬の類は長らく使ってませんでしたね…(ハナ)」

「火薬の臭いで鼻が利き辛く、『ターン!』お、音が『ターン!』な、鳴る度に体が強張ってしまっては、確かに足手纏いにしかならないな…(ハウンド)」


遠くで射撃訓練をしている兵達の銃声が聞こえる度、耳をピンと立ててビクッと体を強張らせるハウンド。


「…だが【勇者】としては何もせずただ成り行きを見守るだけと言うのは「そう言う矜持を持つのは良い事ですが、アークさんは実戦経験に乏しい。
足手纏い筆頭なので、この場は退いてて下さい。」

「足手纏い筆頭…」ガクッ…


足手纏い筆頭と言われたアークはガックリと肩を落として跪いてしまった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

処理中です...