ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
531 / 1,117
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

欠点

しおりを挟む
ゴチュッ!

〈ひゅ…〉ガララ…


"暴坊将軍を討伐、報酬として"200分"を獲得しました。〟
"地均明王を討伐、報酬として"150分"を獲得しました。〟


鈍い音と息絶えた声の後に、2体死亡のアナウンスが流れた。


「…何と言う戦闘力だ…
何だその装備は…やはり貴様は"外なる者"…
今この場で討ち倒しておかねばならぬ存ざ「なぁ金成さんよ。何故さっきみたいに"減速(ディザ・セレラッセオン"を使わなかった?」

「…何?」


金成の言葉を遮ってそう言い放ったノアに対し、怪訝な表情をする金成。


「てっきり突っ込んでくる僕に対して、落下している暴坊将軍のどちらかに使うかと思ったが…
ははぁん、さては連続使用が出来ない仕様だな…?」

(こ、こいつ…今の1回で"神々の恩恵(ベネフィシアル)"の欠点を察しやがった…)


ノアにそう指摘された金成は、苦虫を噛み潰したかの様な表情をしたのであった。



神々の恩恵(ベネフィシアル)…この世界に太古に存在した第一階層の人類(ほぼ神の領域)が創造した導具。

元々は滅び行く自らの末路を察し、時空を飛び越えて過去に戻り、原因となった事象を改変させる為に造られた物である。

だが完成したものの、開発者が死してしまった為、悪用を恐れた者達の手により機能の一部を"時"に還元されて現世に残る事となった。


『第1段階…加速・減速・回帰の恩恵を得られる。(効果時間5分内、クールタイムは各々半日)

第2段階…上記の恩恵に対して効果時間2倍、クールタイム半分。
 
第3段階…上記の恩恵に対して効果時間そのままに、クールタイムは30分。
但し、致命傷レベルの攻撃を受けた場合、日に3回まで回帰が自動的に発動します。
追加の恩恵で"時"を消費して生命の創造・還元が可能。(効果時間1日、クールタイム1日)

第4段階…上記の恩恵に対して効果時間はそのままに、クールタイムは10分。追加恩恵については不変。
更に追加の恩恵として『時空召喚』が使用可能。
自身が時空に干渉する事は出来ないが、別時空の無機物・有機物を召喚する事が可能。
(効果時間30分、クールタイムは無機物:10分、有機物:1日)

第5段階…恩恵・追加恩恵全てに対して無制限使用可能。
更に追加の恩恵として『時空流離』が使用可能。任意の時空に移動する事が出来る為、実質的に不老不死となり、【神】と同様の能力を得る事になる。』


尚、神々の恩恵(ベネフィシアル)が所有者の手から離れた場合、"恩恵"の一切を行使出来なくなります。

また破壊された場合、所有者含め今まで生み出した創造体全てを別時空へと飛ばし、抹消されます。



現在第4段階目までの"恩恵"を使用出来る金成であるが、クールタイム10分の"減速"を使用し、先程ノアに首を撥ね飛ばされている為、致命傷レベルの攻撃を後2回までしか受けれない。

その上、クールタイムが1日の『時空召喚』を使用して大部隊を召喚したものの、ノアが行った超速の突進により足軽兵の1/5が倒され、暴坊将軍、地均明王、闇蜘蛛の3人は速攻で撃破された。

しかも金成は、第4段階の"恩恵"を得る為に自身の命を"1時間"まで削っているのだ。

つまり何が言いたいかと言うと、金成は開幕直後から手詰まり状態なのである。






スッ…

「ん?…一体何を…」


次の一手をどうするか思案していた金成だが、目の前に居たノアが徐に手を上げた。

すると


ドン…ドドン…ヒュオ…

ドカッ!ドドォアッ!ドガガガッ!

「「「うあぁあああっ!?」」」
「「ぎゃぁあっ!!」」
「「「ぐぁああああっ!」」」


遠くから火薬の爆ぜる音が聞こえた後、金成側の足軽兵の元に大砲の弾や銃弾が到達する。


ダンッ!ダダンッ!ダァンッ!

「皆の者!突撃じゃあっ!」

「「「「「「「おぅっ!」」」」」」」


時雨の檄と共に時雨側の足軽兵が突撃を開始。
ノアの攻撃に呆気に取られていた金成側の足軽兵達は混乱の渦の中に居た。


「おいおい金成さんよ。
今は戦中だぜ?何思考止めてんだよ。
そんなんじゃサックリと仕留めちまうぞ?」

「チッ、ガキが!調子に乗るな!
おい!足軽共!主らに"恩恵"を授ける!近う寄れ!」

「「「「「は、ははぁっ!」」」」」


金成の両脇に突っ立っていた各50人ずつの足軽兵が金成の前に立ち塞がる。


「"加速(アセレラッサオ)"!」

『『『『『『ブァッ!』』』』』』


金成が再び"恩恵"を行使すると、足軽兵達の体に青いオーラが立ち昇る。
何処と無くノアの【一鬼呵成】に似ている気がする。


「「「おおおっ!これが金成様から賜った"恩恵"!」」」
「「体が羽の様に軽いっ!」」
「「奴らが歩いている様にすら見えまするぞ!」」


どうやら"恩恵"の効果は身体面だけでは無く、思考能力も"加速"されている様だ。


「今より我は準備に入る!暫し時を稼ぐのだ!」

「「「「おぅっ!」」」」

『『『『シャキィインッ!』』』』


金成の指示を受けた足軽兵達は猛り声を上げつつ刀を抜き、ノアへ駆け出した。

のだが


(【鬼鎧殼】発動。)


ノアは【鬼鎧殼】を発動し、その場から1歩も動く事無く、魔装鉄甲を装着した状態で両手を振り上げたままの体勢になった。


バシュッ!バシュンッ!フィイイイイッ…

((((((あれは…マズイ……!))))))


ノアが先程超速の突進を仕掛ける際に行った予備動作を開始すると、金成含め"恩恵"を受けた足軽兵達ですら動揺を隠せず、色めき立ち始めた。


「な、何をしておる!急ぎ奴を殺せ!
アレを放たせては無らん!」

「「「「「は、ははぁっ!」」」」」ダンッ!


金成からの檄を受けた足軽兵達が一斉にノアへと群がる。


ガガッギギギィンッ!ガンッ!ギンッギンッ!ガガッ!ゴッ!ギャリィンッ!

「「だ、駄目です!全く刃が通りませぬ!」」
「まるで鉄の塊を斬り付けている様だぁっ!」
「「「金成様ぁ!如何致しましょう!?」」」

「刃が通らぬなら身動きを取らせぬ様に集れぇっ!」

ブゥンッ!


金成は足軽兵達に指示を飛ばしながらも、眼前に半透明のウィンドウを出現させて何かを選択していた。

どうやら先程言っていた"準備"に入った様だ。


「「「「「「はっ!」」」」」」

『『『『『ガバッ!』』』』』


足軽兵達はチャージ中のノアの身動きを封じようと、次々に覆い被さり、団子の様に積み重なっていく。

こうなっては先程金成から受けた"恩恵"が何の意味も成していない。


「よし、コレにしよう!」

ブゥンッ!ビキビキビキッ!


金成が"何か"を選択し、半透明のウィンドウが消えたかと思うと、今度は金成の右隣の空間に亀裂が走る。

その瞬間に


(<渾身><自棄糞>発動!)

「オラァアアアアアアアッ!」

ズゴッ!ドガアァアッ!

「「「「「がぁあああああっ!!?」」」」」


魔装鉄甲内部で溜めた力に<渾身>と<自棄糞>を乗せて攻撃力を上乗せした叩き付けを地面に解き放つ。



<自棄糞>…技術を伴わない、力任せの攻撃に対して1.5倍の攻撃力が上乗せされるスキル。



半径10メル内の地面は捲り上がり、金成側の足軽兵諸とも、悉く粉砕していった。 


"足軽兵1体を討伐、報酬として"4分"を獲得しました。〟×82


ボファッ!

「オオオオオオオオッ!」ブォンッ!


足軽兵達のキルログが流れる中、立ち込める土煙の中から真っ黒い槍を携えた金成が突きを放ちながら突っ込んできた。


「ぬぅっ!」ガッ!

(<刃断ち>発動!)


ノアは向けられた槍の穂先を掴みつつ武器破壊スキルの<刃断ち>を発動した。




ガキュッ!「ぁ危ねぇっ!!?」


槍の穂先は、強固に造られた魔装鉄甲を易々と貫通し、ノアの眼前に迫る。
だが、持ち前の反射神経で首を捻り、何とか回避した。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...