ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~中級冒険者試験~

見付かってないから大丈夫という謎理論

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~【暗殺】実地試験開始から10分経過~

うわぁああ…
きゃぁあああ…

「お、おい、この声第10地点からだろ…?
まさかもう襲撃受けてんのか…?(職員32)」

「い、いや、幾ら何でも早過ぎる!
流石に『バシュンッ!』まだ『シュルルッ!』こ、こぉおおっ!?(職員33)」

「え?ど『ヒュパッ!』ぉおおっ!?(職員32)」


突如職員33の右足にロープが絡み付き、凄まじい力で引っ張られる。
その声に、職員32が驚き振り向くも、視界にロープしか映らず、直ぐに視界を塞がれた。

すると


「来たぞ!来たぞぉぉおおっ!?(職員34) 」

ボボボボボボボボボッ!

「馬鹿止めろマック!
非殺傷とは言え、街ん中で魔力弾を撃つな!(職員35)」

「マック!対象の姿は見たのかっ!?(職員36)」

ボボボボボボボボボッ!

「いえ!何も!だけど来たんです!
俺ら以外の反応が突然現れた!ヤるなら今しかない!(職員34マック)」


すると


ドサッ!「うもっ!?」

「あああ来たぞ!来たぞぉぉおおっ!?(職員34マック)」

ボボボボボボボボボッ!

「うおおっ!?
あ!マック!止めろ!これは職員26のフンガだ!対象では無い!(職員36)」

「落ち着けマック!『ヒュンッ!』おぉおおっ!?(職員35)」


職員36ブレインと職員34マックの目の前で職員35ダッチが路地裏へと引っ張られ、姿を消した。

その場に残された職員36ブレインと職員34マックは少し恐慌状態に陥っていた。
何故なら、未だに対象の姿を見付けられないまま仲間がドンドンと姿を消していっているからだ。


「くそっ!何処へ行った!?(職員34マック)」

「掛かって来い、ツラァ見せやがれ。(職員36ブレイン)」

「気配だけならまだしも、姿まで見られたら失格になっちゃいますよ。」

「!?(職員34マック)」グォッ!
「っ!(職員36ブレイン)」ブンッ!


背後から対象の少年の声が聞こえ、職員34のマックは咄嗟に裏拳を。
職員36のブレインは、肘鉄を繰り出した。




ヒュバッ!ビシッ!ドササッ!

「「うおぁっ!?」」


繰り出した裏拳と肘鉄にロープを掛けられつつ背後に回られ、そのままの勢いで地面に転がされて身動きを封じられてしまった。


グンッ!「「うおっ!?」」

ジャキッ!

「さて、次の場所を教えて頂いても良いですか?」

「「に、2軒隣の家屋に居る人質役の少女が知っている!」」

「ありがとうございます。それでは。」フッ…


職員2人の首に荒鬼神ノ化身を突き付け、情報を聞き出す。
どうやらここから【義賊】要素が含まれ出す様だ。

情報を聞き出したノアは、縛って身動きの取れない2人を解放してその場から去っていった。







「うわーぉ、扉にゴテゴテとした鍵が付いてる…
恐らく【義賊】と【盗賊】要素なんだろうけど、どうしよっかな…流石に解錠系は教わって無いぞ…」


聞き出した情報通りの家屋にやって来ると、扉には明らかに罠が幾つも付いていそうな仕掛けが施された鍵があった。


キョロキョロ…

(えーっと、この配線はこれに繋がってて、これはこの魔法陣に…
そんでもってこの配線は隣の家屋の…あぁ、あの隙間に何かの射出装置があるな。
ラインハードさんの機械いじりをたまに見てるからか、何と無くだけど構造が分かるぞ。)


最近ラインハードが自発的に受けていた時計や義手、義足修理等の依頼を時たま覗いていたからか、簡単な構造の罠であればスキルを使用しなくとも分かる様になっていた。

もし【暗殺】の実地試験が上手くいったらヨシヨシしてあげよう。


(まぁそれでも解除は出来ないんだけどね。)

(『じゃあどうする?』)

(そりゃ強行突破でしょ。)

ガシッ!バチィッ!


解錠スキルを持たないノアは、罠発動覚悟で鍵を鷲掴みにした。
すると鍵から青白い光が一瞬発せられ、ノアの腕には鍵に付与されていた麻痺の<パラライズ>が発動した。


シビビ…

(あ、この鍵に仕掛けられてたのは麻痺みたい。
でもこれ位の強さなら自前の<麻痺耐性>で耐えられるよ。)

(『流石に中級冒険者試験でそんなアホみたいな強さの魔法仕掛けるわきゃ無いだろ。』)

(それもそっか。)





~捕らえられた職員視点~

「…あの少年、<パラライズ>が掛かった鍵触れてんのに平然としてるぞ…(職員30)」

「一応熊を一撃で気絶させる位の威力はあるんだがな…(職員31)」

「…【ソロ】の合否基準、新しく制定した方が良いんじゃないかな…?(職員28)」


翌年以降、この世に居る【ソロ】(居るかどうかは分からないが)の合格基準がより厳しい物になるのは、ノアが原因であった。





メキョッ。

バシュシュッ!ジャキンッ!

パシッ!パシッ!ぐにっ。


その後鍵を力業で外すと、射出装置から矢が飛び、足元から槍が迫る。

矢は手で事も無げに受け止め、槍は足で小突いてひん曲げた。


ガチャ…「人質役の方居ますか?」

「は、はい、人質です。」


家屋の中に入ると、ノアより1つ年下の少女が椅子に座っていた。


「えっと、情報を聞き出した後、君はどうすれば良いのかな?」

「えーっと、お父さん(職員38)からは、″安全な場所まで連れていって貰え″って言ってました。」

「″安全な場所″…なる程。
それではここを出ましょう、そして次の場所の情報を教えて下さい。」スッ…

ギュッ…「はい。」


そう言いつつノアは手を差し出し、少女は手を取って立ち上がる。

すると

ピリリリリリリリリリリリリッ!

「げっ!?」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」


少女が椅子から立ち上がった瞬間、けたたましく笛の音が辺りに響き渡る。

この仕掛けの事を知っていた少女は、ノアに何度も謝っていた。


「こっちからだ!(職員37)」
「リアナ!待ってろ!(職員38)」
「囲め!絶対逃がすな!(職員42)」
「第12~14地点の職員全員来い!大捕物だ!(職員47)」

リリリリリリリリリリッ!

「なる程、椅子から離れたら音が鳴るのか…」

「あ、あの、間も無くここにお父さんや職員さん達が来ます。早く逃げた方が良いのでは…?」

「その前に、君を安全な場所に避難させる仕事が残ってますので。」

「え?」





『『『ダダダダッ!』』』

バンッ!

「リアナ!大丈『バサッ!』ぶぁあああっ!?(職員38)」

ヒュヒュンッ!ビシッ!

「ぐむっ!?うぶむむっ!?」


家屋の扉が開いたと同時に顔に布を掛けられた職員38は、首にロープを掛けられつつ締め上げられ、視界を塞がれた上にノアに盾にされた。


ドンッ!

「どわっ!?(職員37)」
「「おわわっ!?(職員41、44)」」
「むぐぐっ!?(職員38)」

ヒュバッ!


家屋の中に職員達が雪崩れ込んで来るのを察したノアは、盾にした職員38を押して集団にぶつけつつ家屋の窓から飛び出して外に出る。


ゴンッ!ガッ!ガガッ! 

「「「うおっ!?(職員37、41、44)」」」
「むぐぐっ!?(職員38)」

ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュババッ!


<縮地>を発動して高速で集団の背後に回り込みつつ足払いして全員転かす。

即座に<洗練された手業>を発動して4人の腕や首にロープを掛けて縛り上げた。


『『『『『ドドドドッ!』』』』』

「反応はこっちからだ!(職員39)」

ゴッ!ゴゴンッ!

「は、速…路地裏に逃げたぞ!(職員41)」
「全方位から行け!姿さえ確認取れればこちらの勝ちだ!(?)(職員40)」


この試験に参加している職員達の目的が、いつの間にか″試験→姿を確認″にすげ変わっていたが、全員気付く事はなかった。


ズザッ!「残念だったな!もう逃げ場は…え?(職員45)」


兎にも角にも、路地裏に向かって<縮地>を連続発動して逃げ込んだノアを追い掛けて来た職員達だったが、そこで目の当たりにしたのは不可思議な光景であった。


ゴガガガガガガガッ!

「「「「「「「「……?」」」」」」」」


蒼いオーラを纏った謎の物体が、路地裏を縦横無尽に超高速で駆け巡っていた。


「…これは一体…(職員45)」


この謎の物体が【一鬼呵成】と<縦横無尽>を発動した上で<縮地>を連続発動しているノアだと気付く者は誰も居なかった。
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