ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~中級冒険者試験~

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「野盗役の職員と″お話″して聞き出した所、この森林エリアに居る野盗役はあと15人位居て、襲撃タイミングは完全に野盗役任せだから分からないみたい。」


野盗役の職員を解放した後3人に報告するノア。
その足下にはわ人1人がスッポリと収まる位の穴と、小指程の太さの竹筒が用意されており、尋問に使うつもりであったのだと予想される。


「私の方でミダレさんの誘惑香を分析してみました所、大きく分けて5種類の香料で構成されている事が分かりました。
その香料を打ち消す効果のある香料を作製し、クリームの様な物を体の分泌箇所に塗布すれば誘惑香を抑えられるでしょう。(ヴァンディット)」

「おー凄い、流石ヴァンディットさん。
それでその獣脂、何か先程の物と比べると大分着色されてるみたいですけど、どうなったのですか?」


ミダレの直ぐ近くに置かれたガラス容器内の獣脂は、何故か桃色に変換していた。


「これは獣脂に<吸収>が付与された魔石を埋め込んだ事で、誘惑香を吸収し浸透した物になります。
これで獣脂蝋燭や香油等を精製すれば淫靡な香りを漂わせる品へとなる事でしょう。(ヴァンディット)」

「なる程、抑制するだけで無く有効活用しようとした訳だね。
それでは次にラインハードさんの方はどうでしたか?」

「えっと、ミダレさんの誘惑香を魔力から魔石へと変換する事が出来ました。
精製機構を備えた装飾品を身に付ければ、密着されない限りは、周囲の人やモンスターに影響を及ぼす事は無いよ。
魔石はどこ行っても需要があるからミダレさんの小遣い稼ぎにも良いと思うよ。(ラインハード)」

「そう言えばラインハードさんは【彫金加工】技術も持ち合わせてましたね。
では装飾品の作製も合わせてお願いします。」

「らじゃ。(ラインハード)」

『『ズズズ…』』


報告を終えたヴァンディットとラインハードは、次なる作業に取り掛かるべく、1度影の中へ戻るのであった。


「良かったですねミダレさん、誘惑香の方は何とかなりそうで。」

「は、はひ…良かったですぅ…(ミダレ)」


2人の分析が終わった後のミダレは、何故かぐったりとした様子で座り込んでいた。


(さて護身術を身に付けさせるのは良いとして、僕に触れられると″急性精気中毒″に陥る問題をどうするべきか…
いや、ああなるのは僕だけだから別に直さなくても良いか…?)


と、ノアが思案していると、中に居る鬼神がある事を思い出す。


(『そーいや主、昨日この嬢ちゃんと初めて会った時に抱き付かれたろ?
そん時は急性精気中毒になってなかったけどもしかすると…』)

(あ、確かにそう言う事かもね。)


鬼神に言われてハッとなったノアは、早速試してみる事にした。





くたっ…

「は、はひぃ…(ミダレ)」

ザッ!

「ミダレさん、ちょっと試したい事があるので肌に触れますね?」

「へ…?ふぇえっ!?(ミダレ)」


未だ艶っぽく肌を紅潮とさせ、地面に突っ伏して火照った体を冷ましていたミダレの下にノアが近付く。


(えっ!?″肌″に触れる!?
…待って、さっきので色々と敏感になっちょっとるに、今ノア君の精気を注がれたら…
だからと言って別に嫌じゃない…寧ろ頭の中が真っ白になる位気持ち良…じゃなくて…と、兎に角色々と恥ずかしい事になっちゃうから駄目…
あ、体が上手く動かない…)

ガッ。


と、色々な思考が頭の中を巡るが、その間ミダレは動けず、結局そのままノアに腕を掴まれてしまった。


「はぅぅぅん……あれ?何とも無いっちゃが…?(ミダレ)」


迫りくる快感の波が襲ってくる物だと覚悟したミダレだが、そんな物は襲ってこず、ゴツゴツとした手で掴まれた感触だけ伝わってきた。

直後ミダレが振り返ると、そこには如何にも頑強そうな籠手を装着したノアが居り、その手でミダレの腕を掴んでいた。


(鬼神の思惑通り、肌が触れ合っていなければ精気を相手に送る事は出来ないみたいだね。)

(『【鬼鎧殻】は防御性能に優れてるし魔法も効き辛い。
相手からの攻撃を通さねぇって事はこちらからの精気も通さねぇだろう、って思ったんだよ。』)


ノアが手に装着しているのは【鬼鎧殻】の部分展開した籠手である。
モンスターが放ったブレスなんかも一切通さない高い防御性能を誇る為、これでミダレが急性精気中毒を起こす程の精気は注がれる事は無い。


「どうですミダレさん、体調の方は?」

「え?あ、うん…何とも無い…よ…(ミダレ)」

「良かった。
じゃあこれから体に触れなければならない時はこの方法を取りますね。」

「え?(ミダレ)」

「ん?」

「あ、いや…お、お願いします…(ミダレ)」


急性精気中毒を防ぐ手立てが分かったハズなのに何処と無く残念そうなミダレ。

ノアはスルーしたが、真意に気付いたのは1人だけであった。


(『はっはーん、この小娘もしや…(ねっとり)』)


何かに気付いた鬼神だが、その答えは主であるノアにも伝える事はしなかった。





「さて、気を取り直して次の野盗役が来る前にミダレさんに護身術を仕込んじゃいましょう。」

「し、仕込むんですか…?
あっち、戦闘自体苦手で…(ミダレ)」

「大丈夫。
ミダレさんが得意そうな方法で教えてあげますから。」

「ほ、ほいじゃあ…お願いします…(ミダレ)」





~夕方~

ガササ…

「居たぞ。
あれは…ノア君と一緒に居たミダレと言う娘だ。
1人だが周囲に警戒しろ!(職員4)」

「いや、標的はあの娘だけで良いそうだ。(職員5)」

「え?何で?(職員4)」

「ノア君からの要望だ。
ノア君自身合格扱いとなったが、あのミダレって娘に護身術を身に付けさせるからまた来てくれ、との事だ。(職員5)」

「そ、それは良かった…ノア君を相手取るのは心身に悪い…(職員4)」


と、野盗役の職員は安堵しつつ、樹上から降り、1人で森の中を探索しているミダレへと近付く。


ザッ…

「へへへ、お嬢ちゃん1人かい?(職員4)」

「ひっ…!?や、野盗っ!?(ミダレ)」

「大人しくしてれば痛い事はしない、さっさと金目の物を渡しな!(職員5)」

「い、嫌ぁっ!(ミダレ)」ガッ!ズシャッ!


悲鳴を上げながら逃げ出すミダレだが、木の根に躓き直ぐに転倒。
はだけた服の裾から太ももの柔肌が覗く。


「へっ…へへへ、そう逃げ出すこたぁねぇだろ。(うっ、何と艶かしい…じゃなかった、試験試験…)(職員4)」

「あーあ、逃げ出したからもうタダじゃおかねぇぞ?(し、試験と言う名目に託つけて少し位おいたしても大丈夫…だよな…?
つーか何だこの甘い匂いは…)(職員5)」


と、ミダレの扇情的で艶かしい姿を見た職員2人は試験の事を忘れ、少しばかり見とれていた。

すると


ポワッ…

「へにゃ…?(職員5)」ガクン!ドサッ!

「ぬぐっ!?(職員4)」ザッ!


野盗役の職員に急激な睡魔が襲い、そのまま倒れ込んでしまった。

もう1人の職員にも睡魔が襲ったが、何とか踏み止まる。


「くっ…一体何を…
…っ!?これは睡眠魔法か!(職員4)」


フラつく職員が地面に倒れているミダレの手元を見ると、淡く光っており、何かの魔法を行使した事が窺える。

対してミダレはサキュバス故、対象を眠らせる睡眠魔法等も持ち合わせていた為、ノアのアドバイスでこれを取り入れた。

が、職員の睡眠耐性が高かったのかフラつきながらもミダレに迫る。


「くっ…さっき足を引っ掛けて転んだのはわざとで、その隙に睡眠魔法を仕掛けていた様だな…
だ、だが後もう一手欲しい所だったな…
この程度では合格とする訳「て、てーい!(ミダレ)」

ビチャッ!

「うぶっ!?
な、何だこのぬめっとした物は…(職員4)」


気の抜けた声を上げつつミダレ渾身の一手が職員の顔面を捉える。
普段の職員であれば避けれただろうが、不完全とは言え睡眠魔法が掛けられている為動きが鈍っており、避ける事が出来なかった。

ちなみにミダレが職員の顔面に何を塗りたくったかと言うと、先程ヴァンディットと共に作り上げた″誘惑香がたっぷり染み込んだ獣脂″である。
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