ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~中級冒険者試験~

興奮通り越して発狂

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~1時間程前~

「″視線誘導″…ですか?(ミダレ)」

「そ、視線誘導。
ミダレさんみたく戦闘に慣れてない人は野盗に襲われた際準備に手間取ると思います。
そこで相手の視線を誘導して時間を稼ぎ、その隙に準備を済ませるんです。
例えば…」


そう言ってノアはミダレから少し距離を取りつつ、アイテムボックスから輪っかが付いたロープを取り出す。


ヒュンヒュン…
 
「今からこのロープを投げるので避けて下さい。」

「え?あ、うん、分かった。(ミダレ)」

ヒョイッ。

「ほいっ。」


ヒュンヒュンと回して勢いを付けたロープをミダレに投げ付けるノア。
一応ミダレでも避けられる様、ゆっくりと放る。


ヒョイッ。


ミダレはロープの落下地点を予想して言われた通り避ける。


「これで良い?ノ『スポッ。』アく『ギチッ。』んにゃぁあああっ!?(ミダレ)」


ミダレが避けた直後、頭上から輪っかが降ってきてノアがロープを締め上げて吊り上げる。

実は1投目は囮で、投げた直後の動作のまま緩やかな放物線を描く様に2投目を投げたのである。

この間ミダレは1投目を注視していた為気付く事は無く、そのまま捕獲と言う形になったのであった。


「今みたく視線を誘導してあげればこの様「あ、あの、ノア…くん…ぅ…その前に降ろし…てぇ…」…え?」

ギチッ…ギチチ…

「ロ、ロープが色んな…所に食い込んで、はぅぅ「え!?な、何でっ!?そんな風に投げたつもりは…」

「ノア様?(ヴァンディット)」
「ノア君…(ラインハード)」

「いや!僕はそんなつもりは…と、兎に角降ろしますからね!」


何故か胸やら股やらにロープがギチギチと食い込み、ミダレを艶かしく締め上げていた。

取り敢えず2人の目もあったので、急いで降ろす事にした。





「そ、それでは改めて…
さっきみたく視線を誘導してあげれば色々と仕込む事は出来ます。」

「うぅぅ…それは理解出来たっちゃが、それはノア君にテクニックがあったからよ…
あっち、そう言ったテクニック持って無いよぅ…(ミダレ)」

「何も視線誘導の方法はテクニックだけじゃありません。
ミダレさんの場合、その魅力的な体があるじゃないですか。
それを駆使すれば簡単に視線を誘導する事が出来ますよ。」

「ほ、本に?(ミダレ)」

「えぇ、本当です。例えば…」


そこからノアは視線誘導の方法を伝える。

わざと転んで僅かに肌を見せたりとか、潤んだ瞳で助けを乞うたり、誘惑香を用いて相手をその気にさせたりと色々とである。

僅かばかりノア自身の趣向を含めそうになったが、ヴァンディットとラインハードの視線にハッとなり、押し留める事になった。





『ポワッ…』

「うん、大分良くなったと思いますよ。これなら合格貰えると思えますよ。」ケロッ。

「ほ、本に?(うーん、あっちの睡眠魔法割と効果高いハズなのにノア君に効いてる感じがしない…)」

「えぇ、
睡眠耐性が低ければ即眠ってしまうでしょう。
ですがもう一押し欲しいですね…」

「え?これでも足りないっちゃが!?(ミダレ)」

「これはあくまで野盗が全て″男性で、女性好き、睡眠耐性が低い″方向けの対応策に過ぎません。
これに当てはまらない方の対処法も身に付けておきたい所。何か良い方法無いかな…」


と、呟きつつ思案していると


「これなど如何でしょう?(ヴァンディット)」

「ん?」


そこにはヴァンディットが立っており、手には先程<吸収>効果を付与した魔石を埋め込んで作られた″誘惑香がたっぷり染み込んだ獣脂″であった。


「…これを?」

「えぇ。
獣脂蝋燭や香油に加工する前の段階ですが、このままですと濃度が高いので本来は薄めたりするのですが、これを使用してみては如何かと…(ヴァンディット)」

「これをねぇ…『ズニュッ…』…お?」


差し出された獣脂に取り敢えず指を突き入れてみるノア。

すると


「わ、わ、わ!
…え?何これ?耐性持ってる僕でも何かぞわっと来たよ?」

「でしょう…
私もさっき少し手に取って驚きました…(ヴァンディット)」

「うーん…多分匂いを吸収させるのって難しいと思ったから効果の高い魔石を使ったからかも…(ラインハード)」


各々そう言った感想を口にし


「こんな物に仕上がるとは…(ヴァンディット)」

「「うーん…(ノア、ラインハード)」」


と、一瞬考え込む場面もあったが


『『『うずうず…』』』

「出来てしまった物は仕方ありませんよね?(ヴァンディット)」

「取り敢えず(職員に)使ってみてからどうするか考えましょう。」

「そうしましょう。(ラインハード)」

(あわわわ…これって止めた方が良いっちゃがか…(ミダレ))


元は自分の体から出た分泌物故、危険な代物では無いと信じたい気持ちはあるが、真っ黒な笑みを浮かべてうずうずしている3人を見て、やはりとんでもない代物に仕上がったのでは、と感じざるを得ないミダレであった。





結局の所野盗役が来た時にそれとなく使ってみる事になったのだが

その結果


「お″ぉお″お″お″お″お″お″お″っ!!
う″お″ぉお″お″お″お″お″お″お″っ!!
熱い″!がらだが燃える様にあ″つ″い″ぃっ!(※職員4)」


異常な発汗、異常な心拍数、異常な震え、焦点の合ってない目、赤く染まる皮膚、浮き出る血管、屹立する職員の″職員″。


「がぁあ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″っ!
痛い″っ!い″だい″ぃい″っ!!」

ゴリッ!ゴリリッ!


森林エリア全体に響き渡る程の声量で未だ叫び続け、苦しいのか辛いのか定かではないが、素手で地面の岩を掻き毟っていた。

目は血走り、虚空を見詰めている。
まるで悪魔にでも取り憑かれたかの様な形相で叫びつつ股間を押さえて″痛い″と咽び泣いていた。

その後10秒程叫び続けた後


「あ″あ″あ″あ″あ″あ″っ………っ…」ドサッ!


突然火が消えたかの様に静になり、白目を剥いて気絶。地面に倒れ込んでしまった。


ジャリ…

「…濃い誘惑香の成分を取り込んだ事で激しい興奮状態…この場合は発狂状態かな?
に、陥ってしまった様ですね。」


気配と姿を消していたノアが倒れた職員に近付き、そう考察した。


「ヴァンディットさん、この獣脂を取り扱う際は注意して下さいね?」

ズズズ…

「はい…(ヴァンディット)」

「じゃ、もう暗くなってきたので今日はこの辺にしときましょう。
両親直伝の熊の丸焼きご馳走しますよ~。」

「「わ~い。(ヴァンディットとラインハード)」」

「ちょ、うぇえっ!?それだけ!?
職員さん、白目剥いて気絶してるっちゃよ?(ミダレ)」


″誘惑香がたっぷり染み込んだ獣脂″の効果と、白目剥いて倒れている職員について特段触れる事無く、ノア達は野営の準備を始める。

対してミダレは倒れ伏す職員を心配している様子。


「まぁ安心して下さい。
さっきの悲鳴を聞き付けて周辺に他の野盗役の職員さん達が集まって来ました。
一部始終を見ていた者も居りましたし、回収してくれるでしょう。」
 
『『『ザザザッ!』』』


その言葉通り、直後に他の野盗役の職員が駆け付け、睡眠魔法でぐっすり眠っている職員と、″誘惑香がたっぷり染み込んだ獣脂″を食らってぐったりして気絶している職員を抱えて回収していった。

余談であるが、 ″誘惑香がたっぷり染み込んだ獣脂″を食らった職員は、その反動からか5日間″不能″になったらしい。
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