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獣人国編~中級冒険者試験~
パルディック・ロスト
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「それじゃあ昼頃に獣人国に戻りましょうか。」
「え?良いの?
少し休んだ方が良いんじゃない…?(クロラ)」
「大丈夫!
何てったって僕の『VIT 体力』は最上級冒険者並みだからね。」
「…″そう言う事″じゃなくて…(小声のクロラ)」
″そう言う事″は勿論ノア自身の体力の事であるが、クロラが心配しているのはノアの寿命の事だ。
今すぐにどうこうなる訳では無い、と伝えはしたが、分かってはいても心配なものは心配になってしまうらしい。
″自分の事ですから自分が一番よく知ってます。
僕の場合適度に動いてた方が丁度良いんですって。″パクパク…
「…もぅ…(クロラ)」
<読唇術>を持つクロラとポーラにだけ分かるよう口パクで伝えるノア。
まだ思う所はあるが、一先ず納得してくれた様だ。
その後ノア以外の一同は帰る準備の為に宿に戻り、ノアは遅めの朝食を摂ろうと街を彷徨く事に。
すると
「あ、ノア君!(ミダレ)」
「んぉ?」
朝別れたハズのミダレに声を掛けられた。
その胸元にはラインハードが作ってくれた装飾品がキラリと輝く。
早速使用してくれている様で作成者冥利に尽きる事だろう。
そのミダレの隣には40代位の男性が立っていた。
指には幾つか宝石が填められていた事からそれなりに地位の高い人物なのだろう。
「何かなぁ、このブローチ造ってくれた人を紹介してくれっちゃ言われて…(ミダレ)」
「あぁ、それで僕の所に…」
「おぉ、君がこの素晴らしいブローチの製作者かね!
…あぁ、済まない、名乗るのが先であったな。
私、は……っ!?(40代位の男性)」
「ん?」
と、40代位の男性はノアの方を見るなり目を見開き、口をポカンと開いたまま固まってしまった。
「…は…っ…あぁ…(40代位の男性)」
「???」
すると40代位の男性は徐々に目を潤ませ、声にならない声を上げる。
ミダレからは「知り合い?」と問い掛けてきそうな表情をされるが、ノアは首を振って否定した。
ノアはこの40代位の男性に見覚えが一切無い。
1度見た顔であればある程度は覚えているハズなのだが全くである。
(『俺も…無ぇな…誰だこのおっさん…』)
鬼神も覚えが無いらしい。
と、ここで漸く40代位の男性に動きがあった。
「…いや…すまない…
突然こんな事になって…驚かせてしまったね。
君は確か…ノア「あ、はいそう」ール君だったね。「ぬぅうっ!惜しいっ!」
生まれてこの方ノアは″ノアール″などと名乗った覚えは無い。
どうやらこの40代位の男性はノアの名前を間違って覚えていたらしい。
と、ここで
ズズズ…
「お久し振りです″ロスト様″。
まさかこの様な場所でお会いするとは思ってもみませんでした。(ヴァンディット)」
「え?″ロスト様″ってさっき話してた人の事?」
「…お、おぉ、ヴァンディットさん。
…という事はこの子が君の…?(パルディック・ロスト)」
「はい、主様でございますわ。(ヴァンディット)」
ノアの影の中から日除けの帽子を被ったドレス姿のヴァンディットが姿を現し、40代位の男性(パルディック・ロスト(以下ロストと呼称))に挨拶をした。
「ははは、商会に居た時より実に晴れやかな表情をしているじゃないか。
実に楽しい日々を送っているようですな。(ロスト)」
「えぇ、毎日大忙しですが、楽しく日々を過ごさせて頂いております。(ヴァンディット)」
ヴァンディットの明るい表情を見て感慨深そうな様子で頷くロスト。
「…そうか…そうか。
もう2人は主従になって長いのかな?(ロスト)」
「いえ、まだ2ヶ月程でございます。(ヴァンディット)」
「ふむ…(ロスト)」
ヴァンディットと他愛の無い話をしていたロストだが、突然顎に手をやってぶつぶつと呟く。
<…2ヶ月…か…あれは…
…半年…つまり彼……やはり………考え……ないか…>
<聞き耳> でもあまり聞き取れない位の声量の為、呟きの内容は定かではない。
が、流石に初対面の相手の呟きに<聞き耳>立てるのは如何なものかと思い、ノアは<聞き耳>を解除した。
「それではロスト様、改めまして私の主様を紹介させて頂きます。
こちらが私の今のご主人様、名をノアと申します。
本日より中級冒険者と成られましたが、それ以上の強者であられます。(ヴァンディット)」
「あ、あはは…先程は済まなかったな。
知人の名と間違えてしまった様だ。
それでは私も改めて…
私はパルディック・ロスト。
一応南にある辺境の地で伯爵の地位に就いておる。
が、政務等の難しい事は頭の良い者達に任せて日夜珍妙な物を探し、放浪の旅に出とるのだよ。(ロスト)」
「あ、ご丁寧にどうも…」
(何か今まで会ってきた貴族とは雰囲気からして違うなぁ…)
(『威圧的な態度じゃないし、特に隠している様子も無ぇ。
この感じは素なんだろうな。』)
今まで出会った貴族は、矜持をやたらと重んじ、高圧的な態度だったり我が儘な態度な者が大半であったが、このパルディック・ロストはそこらに居る一般人と変わり無い物腰柔らかな人物であった。(ちょっと変わってるけど。)
「この方は凄いお方なのですよノア様。
今現在広く世間一般に流通している″ケバブ、ラーメン、そば、もつ煮込み、ハンバーグ″等の食品の産みの親で御座います。(ヴァンディット)」
「え!?そうなんですか!?」
「いや、産みの親は言い過ぎだ。
昔とある人物がくれた味が忘れられなくてそれをそのまま真似て作ってみただけだよ。(ロスト)」
パルディック・ロスト…元々貴族の出では無かったのだが、10年程前に斬新な食品を開発し、売り出した所莫大な利益を産み出し、一般人ではあったが貴族の仲間入りを果たす。
奇妙、奇天烈な物を求め、日々放浪の旅に出ているが、現在でも3ヶ月に1品の割合で新商品を開発し、悉く売り上げを伸ばしている為、誰も文句を言わない。
ちなみに商品名は、この世界に来た異世界人が「これケバブじゃん!」と言った為、それをそのまま使用している。
ついでに言うとパルディック・ロストは異世界人では無い。
「あ、そうだ、ここへ来たのは彼女のブローチを作成した者と話がしたく連れてきて貰ったのだった。(ロスト)」
「ミダレさんのブローチですか?」
「あぁ、彼女のブローチは素晴らしい。
一見ただのブローチに見えなくも無いが、魔力の流れに違和感を感じて確認してみたら魔力を魔石に変換させる機構を備えているではないか。
恐らくブローチ型にしたのは、魔石を形成した後装飾の一部として普段使いも兼ねる様にしたのではないか、と思ってな。
無自覚で申し訳なかったが、彼女の体臭を香ってしまい、彼女がサキュバスと知ってしまった。
つまり彼女の放つ誘惑香を抑えつつ、香り成分を魔力から魔石に変換しただけでは無く、彼女を彩る装飾としての機能を兼ね備えた一石二鳥、いや三鳥もある素晴らしい品なのだよ!(ロスト)」
ズズズ…
「ふぉおおっ!分かってくれましたか、この機能美をっ!(ラインハード)」
「ぬおぉっ!?(ロスト)」
ラインハードが盛り込んだ機構を初見で見抜いたロスト。
そこに気付いてくれたのが嬉しかったのか、ノアの影の中から勢い良くラインハードが飛び出してきた。
「うわぁ、凄…ラインハードさんの思惑を全部見抜いてる…」
(『味の再現に、魔力の流れ、体臭を嗅いだだけで種族を当てる鼻の良さと知識量…
教養もそうだが、恐らく五感がかなり研ぎ澄まされているんだろうな。』)
とか何とか考えている間にもラインハードとロスト間では既に値段交渉にまで話が進んでいる。
ロストは「1つ最低でも50万ガル払う。」と言ってきていて、ラインハードは無言で親指を立てている。
無償で貰ったミダレは、明確な額が飛び出してきて露骨にガクガクと震えていた。
と、そんな時であった。
コッコッコッ…
「困りますなぁロスト殿。
警護の為に我々が居る事をお忘れですかな?
こんなどこの馬の骨とも取れんガキ共と戯れていてはパルディック家の名が廃れますぞ…
…おや、久しい御方が居られますなぁ。
ヴァンディット嬢、元気でおいでですかな?」
「…ゴーマン様…(ヴァンディット)」
通りから屈強そうな輩5人程を連れた50代位の白髪の男性(どうやらゴーマンと言うらしい。)が一行の下にやって来る。
腰には無駄に装飾の施された剣を帯刀し、指には剣を振るう時に邪魔じゃない?と思われそうな程の宝石類を付けていた。
「え?良いの?
少し休んだ方が良いんじゃない…?(クロラ)」
「大丈夫!
何てったって僕の『VIT 体力』は最上級冒険者並みだからね。」
「…″そう言う事″じゃなくて…(小声のクロラ)」
″そう言う事″は勿論ノア自身の体力の事であるが、クロラが心配しているのはノアの寿命の事だ。
今すぐにどうこうなる訳では無い、と伝えはしたが、分かってはいても心配なものは心配になってしまうらしい。
″自分の事ですから自分が一番よく知ってます。
僕の場合適度に動いてた方が丁度良いんですって。″パクパク…
「…もぅ…(クロラ)」
<読唇術>を持つクロラとポーラにだけ分かるよう口パクで伝えるノア。
まだ思う所はあるが、一先ず納得してくれた様だ。
その後ノア以外の一同は帰る準備の為に宿に戻り、ノアは遅めの朝食を摂ろうと街を彷徨く事に。
すると
「あ、ノア君!(ミダレ)」
「んぉ?」
朝別れたハズのミダレに声を掛けられた。
その胸元にはラインハードが作ってくれた装飾品がキラリと輝く。
早速使用してくれている様で作成者冥利に尽きる事だろう。
そのミダレの隣には40代位の男性が立っていた。
指には幾つか宝石が填められていた事からそれなりに地位の高い人物なのだろう。
「何かなぁ、このブローチ造ってくれた人を紹介してくれっちゃ言われて…(ミダレ)」
「あぁ、それで僕の所に…」
「おぉ、君がこの素晴らしいブローチの製作者かね!
…あぁ、済まない、名乗るのが先であったな。
私、は……っ!?(40代位の男性)」
「ん?」
と、40代位の男性はノアの方を見るなり目を見開き、口をポカンと開いたまま固まってしまった。
「…は…っ…あぁ…(40代位の男性)」
「???」
すると40代位の男性は徐々に目を潤ませ、声にならない声を上げる。
ミダレからは「知り合い?」と問い掛けてきそうな表情をされるが、ノアは首を振って否定した。
ノアはこの40代位の男性に見覚えが一切無い。
1度見た顔であればある程度は覚えているハズなのだが全くである。
(『俺も…無ぇな…誰だこのおっさん…』)
鬼神も覚えが無いらしい。
と、ここで漸く40代位の男性に動きがあった。
「…いや…すまない…
突然こんな事になって…驚かせてしまったね。
君は確か…ノア「あ、はいそう」ール君だったね。「ぬぅうっ!惜しいっ!」
生まれてこの方ノアは″ノアール″などと名乗った覚えは無い。
どうやらこの40代位の男性はノアの名前を間違って覚えていたらしい。
と、ここで
ズズズ…
「お久し振りです″ロスト様″。
まさかこの様な場所でお会いするとは思ってもみませんでした。(ヴァンディット)」
「え?″ロスト様″ってさっき話してた人の事?」
「…お、おぉ、ヴァンディットさん。
…という事はこの子が君の…?(パルディック・ロスト)」
「はい、主様でございますわ。(ヴァンディット)」
ノアの影の中から日除けの帽子を被ったドレス姿のヴァンディットが姿を現し、40代位の男性(パルディック・ロスト(以下ロストと呼称))に挨拶をした。
「ははは、商会に居た時より実に晴れやかな表情をしているじゃないか。
実に楽しい日々を送っているようですな。(ロスト)」
「えぇ、毎日大忙しですが、楽しく日々を過ごさせて頂いております。(ヴァンディット)」
ヴァンディットの明るい表情を見て感慨深そうな様子で頷くロスト。
「…そうか…そうか。
もう2人は主従になって長いのかな?(ロスト)」
「いえ、まだ2ヶ月程でございます。(ヴァンディット)」
「ふむ…(ロスト)」
ヴァンディットと他愛の無い話をしていたロストだが、突然顎に手をやってぶつぶつと呟く。
<…2ヶ月…か…あれは…
…半年…つまり彼……やはり………考え……ないか…>
<聞き耳> でもあまり聞き取れない位の声量の為、呟きの内容は定かではない。
が、流石に初対面の相手の呟きに<聞き耳>立てるのは如何なものかと思い、ノアは<聞き耳>を解除した。
「それではロスト様、改めまして私の主様を紹介させて頂きます。
こちらが私の今のご主人様、名をノアと申します。
本日より中級冒険者と成られましたが、それ以上の強者であられます。(ヴァンディット)」
「あ、あはは…先程は済まなかったな。
知人の名と間違えてしまった様だ。
それでは私も改めて…
私はパルディック・ロスト。
一応南にある辺境の地で伯爵の地位に就いておる。
が、政務等の難しい事は頭の良い者達に任せて日夜珍妙な物を探し、放浪の旅に出とるのだよ。(ロスト)」
「あ、ご丁寧にどうも…」
(何か今まで会ってきた貴族とは雰囲気からして違うなぁ…)
(『威圧的な態度じゃないし、特に隠している様子も無ぇ。
この感じは素なんだろうな。』)
今まで出会った貴族は、矜持をやたらと重んじ、高圧的な態度だったり我が儘な態度な者が大半であったが、このパルディック・ロストはそこらに居る一般人と変わり無い物腰柔らかな人物であった。(ちょっと変わってるけど。)
「この方は凄いお方なのですよノア様。
今現在広く世間一般に流通している″ケバブ、ラーメン、そば、もつ煮込み、ハンバーグ″等の食品の産みの親で御座います。(ヴァンディット)」
「え!?そうなんですか!?」
「いや、産みの親は言い過ぎだ。
昔とある人物がくれた味が忘れられなくてそれをそのまま真似て作ってみただけだよ。(ロスト)」
パルディック・ロスト…元々貴族の出では無かったのだが、10年程前に斬新な食品を開発し、売り出した所莫大な利益を産み出し、一般人ではあったが貴族の仲間入りを果たす。
奇妙、奇天烈な物を求め、日々放浪の旅に出ているが、現在でも3ヶ月に1品の割合で新商品を開発し、悉く売り上げを伸ばしている為、誰も文句を言わない。
ちなみに商品名は、この世界に来た異世界人が「これケバブじゃん!」と言った為、それをそのまま使用している。
ついでに言うとパルディック・ロストは異世界人では無い。
「あ、そうだ、ここへ来たのは彼女のブローチを作成した者と話がしたく連れてきて貰ったのだった。(ロスト)」
「ミダレさんのブローチですか?」
「あぁ、彼女のブローチは素晴らしい。
一見ただのブローチに見えなくも無いが、魔力の流れに違和感を感じて確認してみたら魔力を魔石に変換させる機構を備えているではないか。
恐らくブローチ型にしたのは、魔石を形成した後装飾の一部として普段使いも兼ねる様にしたのではないか、と思ってな。
無自覚で申し訳なかったが、彼女の体臭を香ってしまい、彼女がサキュバスと知ってしまった。
つまり彼女の放つ誘惑香を抑えつつ、香り成分を魔力から魔石に変換しただけでは無く、彼女を彩る装飾としての機能を兼ね備えた一石二鳥、いや三鳥もある素晴らしい品なのだよ!(ロスト)」
ズズズ…
「ふぉおおっ!分かってくれましたか、この機能美をっ!(ラインハード)」
「ぬおぉっ!?(ロスト)」
ラインハードが盛り込んだ機構を初見で見抜いたロスト。
そこに気付いてくれたのが嬉しかったのか、ノアの影の中から勢い良くラインハードが飛び出してきた。
「うわぁ、凄…ラインハードさんの思惑を全部見抜いてる…」
(『味の再現に、魔力の流れ、体臭を嗅いだだけで種族を当てる鼻の良さと知識量…
教養もそうだが、恐らく五感がかなり研ぎ澄まされているんだろうな。』)
とか何とか考えている間にもラインハードとロスト間では既に値段交渉にまで話が進んでいる。
ロストは「1つ最低でも50万ガル払う。」と言ってきていて、ラインハードは無言で親指を立てている。
無償で貰ったミダレは、明確な額が飛び出してきて露骨にガクガクと震えていた。
と、そんな時であった。
コッコッコッ…
「困りますなぁロスト殿。
警護の為に我々が居る事をお忘れですかな?
こんなどこの馬の骨とも取れんガキ共と戯れていてはパルディック家の名が廃れますぞ…
…おや、久しい御方が居られますなぁ。
ヴァンディット嬢、元気でおいでですかな?」
「…ゴーマン様…(ヴァンディット)」
通りから屈強そうな輩5人程を連れた50代位の白髪の男性(どうやらゴーマンと言うらしい。)が一行の下にやって来る。
腰には無駄に装飾の施された剣を帯刀し、指には剣を振るう時に邪魔じゃない?と思われそうな程の宝石類を付けていた。
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