ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

来訪

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~街~ 

「よぅ!【鬼神】決勝戦お疲れ様っ!」
「凄い試合だったわ!
見てて終止唖然としちゃったわ!」
「あんな凄ぇ試合見た事ねぇぜ!ほら、お祝いだ、好きな物持っていきな!」
「これで【鬼神】は獣人国代表だな!
2週間後の国交樹立式典での試合楽しみにしてるぜ!」

(そういえばこの試合、獣人国代表を決めるモノでもあったんだ、すっかり忘れてた…)


気を失ったゴフゥが目覚めるのを待っていたが、ゴファンに言われて闘技場を後にして街に戻ったノアは、試合を見た者や聞いた者、それら関係者達からお祝いと労いの言葉が飛んできた。

今更ながらこの決勝戦は2週間後に行われる海洋種との国交樹立式典で行われる御前試合の出場者決めも兼ねていた事を思い出す。


(戦うのはあのクラーケンの親御さんとなんだよなぁ…
山みたいに巨大な相手と果たして試合になるんだろうか…)モグモグ…


とか考えつつ、屋台のおっちゃんからお祝いで貰った巨大トン豚カツ串を頬張るノア。




ヒュゥウ…

「ん?」

「どうしたん【鬼神】、上空なんか見上げて。」

「いや、知ってる反応が空から…あ。」

「ん?空?
…お!?おおおっ!?おい皆!上見ろ上っ!」


突如屋台通りの上空に″誰か″の反応を感知した。
屋台のおっちゃんも上空を見てみると2人分の人影が見えたので、慌てて周囲に呼び掛けた。


「おっ!?え!?人!?」
「え!?何で空に!?」

「落下してきてる…取り敢えず受け止め「あ、ご心配なーーーーく!」

スタッ!


上空に居た″誰か達″はゆっくりと降下してきている様だったので受け止めようとしたが、その当人から声が上がり、ノアの下に深い蒼の鎧を着た人物と薄紅色の髪を靡かせ、髪の色と同じ薄紅色のドレスを着た女性が降り立った。


「ヤッホー、久し振りだねノア君。(ヤン)」

「お久し振りですね、ノア様。(セレイア)」

「『槍サーの姫君』のヤンさんにセレイアさん…
そういえば国王が″海洋種の者がお供と一緒にここを訪れる″と言ってましたが、ヤンさんとセレイアさんの事だったんですね?」

「他にもウチのメンバーのリンとフェイも海洋種の人と一緒に街の何処かに居ると思うよ。
私はセレイアさんの護衛としてやって来たの。(ヤン)」

「ほー「な、なぁ【鬼神】の坊主…今この姉ちゃん、海洋種っつったか…?(屋台のおっちゃん)」

「え?あ、はい、そうですよ。」

「「「「「「「「「「「「「「「おぉおおおおおっ!(街の人々)」」」」」」」」」」」」」」


2人が降りてきてからというもの、周囲はしんと静まり返っていたが、屋台のおっちゃんが恐る恐るノアに確認を取ると、今まで以上に周囲は騒がしくなった。


「「「うわっ、凄ぇ美人だ!」」」
「綺麗な髪…染めて、る訳じゃないわよね…?
光輝いてるし…」
「凄…風も無いのに髪が靡いてる…」
「おー、首の辺りにエラがある…本当に海の人なんだなぁ…」
「陸で呼吸出来るのかな…?」
「綺麗な鎧…スケイルメイル…?にしては軽量そう…」
「お供の人の装備もカッコいいなぁ…いや、綺麗カッコいい…」
「見た事無い色の鉱石を使っているなぁ…
うう、出所を知りたい…」ウズウズ…
「見た目は普通の人族みたいなのね。」
「おかーさん、あの人きれーだね。」
「お、俺、握手してくるわ!」
「「「あ、俺も俺も!」」」


等様々である。

と、ここで注意事項が。


「皆さーん!興味津々なのは分かりますが一旦落ち着いて聞いて下さーい!
彼女達海洋種は長い事深い海で暮らしてきたので熱に非常に弱いです!
下手すると体温の高い獣人さんの熱で火傷してしまうかも知れないので、握手を求めたり、体に触れない様にお願いしまーす!(ヤン)」

「お!?マジか、危ない危ない…」
「なる程な、確かに魚を取り扱う時も素手ではダメって言われてるしな。」
「おい、この情報他の奴等にも言っとけ。」
「「「「「おぅ!」」」」」


ヤンからの注意事項を素直に聞いてくれた様で、伝言ゲームの様にその情報が拡散していった。


「するってぇと、その海洋種の嬢ちゃんにウチの料理振る舞おうと思ったけどそれもダメって事だな?(屋台のおっちゃん2)」

「そうねぇ!
今日は一先ず外や人に馴らす目的やその辺りの調査目的で訪れた様なモノだから、段階を踏んで行くので今日は控えてねー!(ヤン)」

「「「「「あいよー!(屋台衆)」」」」」


今まで暗く、冷たい海の底で暮らしてきたので、いきなり外に出て支障が出ないとも限らない。
直ぐに対応出来るようにと『槍サーの姫君』をお供に引き連れてやって来たのだろう。


「じゃあウチのフルーツジュースを振る舞っちゃうよ!
ウェルカムドリンクってヤツよ!(屋台の姉ちゃん)」


ヤンからの注意事項を聞いて即座に近くの屋台でパーラーをやっている猿獣人の女主人がセレイアにフルーツジュースを差し出してきた。

それ位なら、とヤンは特に口出しする事は無かった。


「フ、フルーツ!?あああ、あの優しい甘味の食物の事ですね!?頂きましょう。(セレイア)」

「セレイアさん、ヨダレ、ヨダレ。」


海洋種に果物を卸している為、セレイアもある程度口にしているからだろうか、もう既に甘味の虜になっている様で果物と聞いた瞬間目の色を変え出した。

大人の人魚であるセレイアでこうなるのだから子供達だとどうなるのだろう、と少し不安になる。

などと考えている間にセレイアは貰ったフルーツジュースをグビグビと飲んでいた。

周囲からは「良い飲みっぷりだ」とか「やべ、エール飲みたくなってきた」とかの声が上がっていた。


「ぷはぁ…甘美なお味…堪りませんね…(セレイア)」

「果物は大分気に入った様ですね。」

「は、はわわ…何とはしたない…(セレイア)」フキフキ…


ノアに指摘され口の周りに付いた果汁を拭うセレイア。その仕草だけで割れを忘れていた事が窺えた。





「す、すいませーん!海洋種のお姉さん!
お姉さんは海洋種の何て種族の方なんですかー?」


少しして人混みの中から質問が飛んできた。


「今は<人化>を施していますが、私は人魚族で御座いますわ。(セレイア)」

「「「「「ににに、人魚!?(一同)」」」」」

「えぇ、この様に…(セレイア)」ポチッ!


お伽噺でしか聞いた事の無い存在である″人魚″という名前が出て来て驚く一同。
するとセレイアは徐に首に着用していたペンダントに触れる。

するとペンダントから水が溢れ出て来て首の周りに浮遊し出した。


ゴポゴポゴポ…

トンッ!

「<人化>解除。
<重力制御><空間固定>。(セレイア)」


その場で軽く飛び上がり、幾つかのスキルを発動・解除を行うとまるで海中を漂っているかの様に宙に浮き出した。


シュゥウウウウ…

「「「「「おおおおおおー…(一同)」」」」」


宙を漂うセレイアの足が徐々に変化していき、大きな尾びれが形成されていく。

 
ヒラリ…

「如何でしょう?(セレイア)」

「「「うわぁあ凄い!感激です!」」」パチパチパチパチ!


人魚の姿を間近で見れた人々は、手を叩いて感激していた。
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