ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

最後はごり押し

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「オォオアアッ!」ゴガッ!

『シッ!』ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!

「ぅ…ぐ…おぉおっ!」ボッ!

ガゴッ!ドガガガガガガガガッ!


1本の腕で毎秒5発の拳が致命の威力を持って飛んで来る。
それをノアは自前と生成合わせて6本持っている。

つまりゴフゥはこれから毎秒30発の攻撃をノアから受ける事になるのだ。

1発目を顔面に叩き込んだが、構わず30発の拳を叩き込まれ、2発目も顔面に叩き込んだが、全く意に介していない様子。

お返しとばかりにがら空きとなっていた脇の下や脇腹、鳩尾の辺りに叩き込む。
文字通り″攻撃のみ″に専念しているのだ。


ゴゴッ!ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!ガッ!ドバババババババババッ!ゴキッ!ズガガッ!

「がぁ…あああああああっ!!」


1発殴る間に最低5発は拳を打ち込まれる状況となった。
幾ら【獣化】して防御力が大幅に上昇し、ノアからの攻撃を軽減出来たからと言ってこうも断続的に攻撃をし続けられてしまえば流石に反撃出来る訳も無く、遂にゴフゥは防戦一方となった。


ズ…ズリリ…


″『防戦一方のゴフゥが徐々に後退し、観客席方向に押し込まれています!
未だ【鬼神】から苛烈な攻撃が続いていますが止む気配がありません!
攻撃が止む時はこの試合に決着が着く時でしょう!』″


(お、終わる…!?このまま防戦一方で…)

「終われるか『ベギョォッ!』ぶごぉっ!?」


実況の言葉を受けて気持ちが揺らいだゴフゥが反撃に転じようとした時、ゴフゥの顔面にノアの強烈な蹴りが叩き込まれた。


(ま、まだ…『ドン。』…え…?)


今の一撃で大きく上体が崩れたゴフゥの背中に何やら当たる物が。


″『つ、遂に退路を断たれた!
ゴフゥが闘技場の端まで追い込まれました!』″


闘技場の端、つまり観客席とを隔てている魔法障壁に到達したのであった。
だが、ノアの攻撃は止む事は無い。


ドガゴガズガゴガドゴガガゴガッ!

「ぐ、ぉおおおおおっ!!」

ミシ…ビキ…

″『あ…マズイ…
2人が戦っている所に居られる観客席の方々!
多分大丈夫だと思いますが避難の準備をお願いします!』″

ビキッ!ミキビキビシッ!

″『あ!やっぱダメだ!
皆さん魔法障壁がぶっ壊れます!直ぐに避難してぇ!』″

ガガガガガッ!ゴガッ…

(っ!?攻撃が止んだ!?
スタミナ切れか何かか!?いや、それよりもこれは好機!反撃を…)


突如ノアからの攻撃が止んだ。
好機とみたゴフゥは体を起こして反撃に転じようとした。




(…足の、裏…?)

『終わりだ。』

ゴキャッ!バシャァアアアアッ!


腰から下が掻き消える程の速度で加速された後ろ回し蹴りがゴフゥの顔面を捉え、それはそれは深くめり込んだ。
あまりの威力にゴフゥは観客席とを隔てている魔法障壁を突き破り観客席へ叩き込まれた。







「はっ!『ガバッ!』痛だだだっ!?」

「お、目覚ましたか。」

「ゴ、ゴファン…!?
あれ?ここは何処…と言うか試合は…?」

「ここは闘技場の医務室。
つまりここに居ると言う事は、もう分かるな…?」

「…あぁ…」


ゴフゥが目を覚ますと、そこは先程叩き込まれた観客席では無く、闘技場脇に併設された医務室であった。

直前の記憶が飛んでいて状況が理解出来ていないのか、ゴフゥは暫し呆然としていた。


「お前、2時間近く意識を失っていたぞ?
既に決勝戦は終わって観客は街へと戻っていった。
【鬼神】殿は1時間位待っててくれたけど長引きそうだから、って言って帰した。」

「…そうか…そんなに寝てたか…」

「まぁ彼らだけは残ったがな。」

「え?」


ゴファンが医務室の端の方を見やったのでゴフゥもそちらを見てみると、そこにはヴァモスとベレーザが立っていた。


「お疲れ様です。(ヴァモス)」
「お疲れ様ですにゃ。(ベレーザ)」

「いやぁ強過ぎるな、君の保護者は。
2時間も気を失うなんて新人の時以来だよ。(ゴフゥ)」

「だがこれでベレーザちゃんに相手が出来るのはかなり先の事になるだろうな。(ゴファン)」

「あ、いや、その事なんですが…(ヴァモス)」

「「ん?(ゴフゥとゴファン)」」





~回想~

「ヴァモスゥ、元々超犀野人の2人はベレーザ目当てじゃ無かったんだから良かったじゃないか。」

「いえ、超犀野人の2人に勝ってノア様の前で面と向かって言うつもりでしたので…(ヴァモス)」

「強情だなぁ…」

「にゃ、にゃにゃぁ…(照レーザ)」

(『つーかコレ、もう言ってる様なモノじゃね?』)


決勝戦終了後、ヴァモスとベレーザの下に向かって勝利報告をした後2人を祝福しようとしたらヴァモスがゴネだした。

せめて超犀野人の2人に勝ってからベレーザに想いを伝えようと心に決めていたらしく、超犀野人に負けて3位になってしまった事で先延ばしにする、と言う事をベレーザ本人の前で言っている為、ベレーザは顔を真っ赤にして照レーザとなっているのだ。


ポリポリ…

「それじゃぁさ、″今後こう言った事(ベレーザと付き合いたい、と言い寄ってくる輩)は後を絶たないだろうから、何かと忙しい僕に代わってベレーザを守ってくれ。
それでいつか自分の気持ちに整理がついたら、その時どうするか考えると良い。″という事にしておこうか。」

「え?…あ、はい!(ヴァモス)」
「は、はいにゃ!(ベレーザ)」





「と、と言う訳だから、多忙なノア様に代わってベレーザを守るのは僕の役目になったから、こ、今後ともよろしく…な…?(ヴァモス)」

「う、うん…す、末永くお願いします…にゃ…(照レーザ)」


ヴァモスは目を逸らし、ベレーザは顔を伏せつつお互い顔を真っ赤にさせてそう呟く。


「「…尊い…(ゴフゥとゴファン)」」


目の前で繰り広げられる光景に、本日1番の尊みを感じる2人であった。

ちなみに後日ヴァモスがノアの代わりにお付き合い云々に関わる御触れを出した所、ベレーザに言い寄ってくる者はピタリと居なくなり、逆にお互い困惑する事になったんだとか。

そこから更に先の話になるが、2人は街の皆から「え?付き合ってたんじゃないの?」と言われる程の期間を経て漸く身を固める事になる。

色々と経験した仲だったからか、2人は獣人国で最も仲の良い夫婦として知られる事となる。


短いですがこの辺で。   
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