ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
616 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

餅は餅屋。

しおりを挟む
ワイワイガヤガヤ…

「″…という訳で返事待ってま…す。″っと…
ではこの手紙を王都の諜報部の人へ。
先程の手紙は僕の出身村に住む両親、アミスティア、又はレドリック宛で急ぎでお願いします。」

「畏まりました。
では御両親への手紙は片道2日、王都諜報機関へは最短で半日でお渡し致します。(受付嬢)」 

「それと″先程伝えた2人″はまだこの国に居ますか?」

「えぇ。朝方討伐依頼を終えて宿の方へ戻られたので直接宿に向かわれた方が良いと思います。
こちらが宿の場所になります。(受付嬢)」スッ。


冒険者ギルドの犬寄りの受付嬢から小さな紙切れを渡され、それを目に焼き付けるノア。


「ありがとうございました。
もう覚えましたので下げて貰って大丈夫です。
それでは。」

「あ、あの…(受付嬢)」

「ん?」


場所を把握したノアが冒険者ギルドを出ようとすると、受付嬢から呼び止められた。


「き、昨日の試合凄かったです!式典の日も頑張って下さいね!(受付嬢)」

「あ、ははは、どうも…」


どうやら前日行った決勝戦を見ていた様で、顔を赤らめながら激励してくる犬寄りの受付嬢。

その両隣に居る受付嬢からも度々チラチラと見られていた為、本当に獣人国では武力を重要視しているのだと再認識させられた。

褒められ慣れないノアは苦笑いしつつ皆が待つ大通りへと出て裏路地へと向かっていった。







「お、終わった様じゃな坊。(バド)」

「ギルドに用事って言ってたけど、一体どう言った事なの?(エスメラルダ)」

「1つはミユキさんを預けている場所にユウさんの情報を伝えたのと、2つ目にユウさんの今現在の情報を教えて貰う為、王都の暗部に文を送ったんです。」

「…お前さん、暗部とも繋がっとるんか…(ルド)」

「え?僕の情報なら僕に聞いてくれれば良いのでは…?(悠)」

「情報は情報でも″今現在のユウさんの立ち位置″の事ですよ?」

「え?僕の″立ち位置″?(悠)」


悠の話では、この世界に召喚された直後【勇者】では無いと言うヒュマノ側の一方的な言い分でヒュマノから追い出されたと言っていた。

だが、悠と言う存在を消す為に何かしら送り込んでいるかも知れないし、何もしていないかも知れない。

ミユキが現在生死・行方不明と言う扱いである事から同じ世界の人間だった悠の下にヒュマノ側の暗部が動き、悠を張っているかも知れない。

だが今現在ノアの<気配感知>にそう言った反応が無い事から可能性は低いが、念には念を入れてこの手の話に詳しそうでありノアと親交のある諜報部の者に声を掛けたのであった。


「まぁその気があったらドワーフの国で行動を起こしてるでしょうし、今の所可能性は低いですがね。
… それで3つ目ですが、別件でこの国に来てもらったいる方達にちょっと助言を貰おうと思いましてね。」

「「「「「助言?(一同)」」」」」

「えぇ。
それで宿泊先の宿の場所を教えて…あ、いや、あっちから来てくれたみたいですね。」

「「「「「は?(一同「やっほ~、ノア君王都振り~。」


一同、何のこっちゃとでも言いたげな表情でノアの話を聞いていると、路地裏の上方から間延びした声が聞こえてきた。

その声を探す様に皆上を見上げると、2階建て建物の屋上からこちらを覗き込んでいる影が2つあった。


「お?誰かと思ったが、フリアダビアで共に戦った夫婦(めおと)じゃなかか。(バド)」

「会うのはフリアダビア以来じゃな。(ルド)」

「はは、これでユグが揃えば当時のメンツで慰労会が出来るなぁ。(ロイ)」


覗き込んでいる影の正体は、フリアダビアで共に戦ったアルキラー、バラス夫婦であった。

アルキラーは当時見た格好である黒のロングコート姿で、バラスは黒のスーツ姿であった。

今は冒険者として活動してると言うが、格好だけで言えば商人か、何処かの国の重鎮である。


スタッ。

「誰かが私達の所在を知りたがっていたみたいだから、少し探りを入れて調べたんだ。(アルキラー)」

ストッ。

「そーしたらその相手がノア君だったから、別件の報告もあるしこっちから出向こーか、って話になったのよ~。
ドワーフのおじいちゃん達1ヵ月振り~。(バラス)」

「「「1ヵ月振り~。(ドワーフ3人組)」」」


屋上から降りつつここに来た経緯を伝えるアルキラー。同じく説明しつつ間延びした声でヒラヒラとドワーフ達に手を振るバラス。


「あの~…(エスメラルダ)」

「こちらの黒スーツの2人は…?(悠)」

「まぁ2人は知らんで当然じゃわな。(バド)」

「この2人は夫婦(めおと)で、儂らと同様フリアダビアで共に戦った者じゃよ。(ロイ)」

「そして裏で手を引いていた【魔王】の手下であるシエストラバードにトドメを刺した【暗殺】の者達でもある。(ルド)」

「「えええっ!?(悠とエスメラルダ)」」

「あれはノア君がシエストラバードを弱体化させてくれたから出来た事だよ~。(バラス)」

「確かにそうだな。
…と、思い出話に花を咲かせに来たんじゃなかった。私達に用が合って探してたんだろう、ノア君?(アルキラー)」

「えぇ。」


当時のメンツが集まったからか、自然と当時の話に入りそうになっていた所をアルキラーが軌道修正してくれた。


「何だい?
今は身を引いているけど、【暗殺】かそれに類似する依頼かな?(アルキラー)」

「ノア君なら2人まで無償でシゴトを請け負ってあげるよ~?(バラス)」

「待った待った!そんな物騒な話じゃないですって!」


不敵な笑みを浮かべて話を切り出したアルキラーであったが、変な方向に話が向かおうとしていたので慌てて止めに入る。


「あの…確か2人って異世界の方ですよね?」

『『ぴくっ。』』


″異世界″と言うワードを出した瞬間僅かに固まる2人。


「…あれ~?ノア君に私達の事教えたっけ、アル君?(バラス)」

「アル君言うな。
いや、教えたつもりは無い。別に隠す事でも無いが、何処で知ったんだい?(アルキラー)」

「盗み聞くつもりは無かったんですが、実はフリアダビアで2人の会話が聞こえちゃった事があって、その時(※)に知ってしまいました。」



※フリアダビア前哨基地編・タイトル『いるなぁ…』の中盤辺りのセリフの事



「まぁアル君が言った様に、別に隠す事でも無いから別に気にしなくても良いよぉ~。(バラス)」

「どうやらその異世界に関わる事で私達に用があるみたいだけど、詳しく教えて貰えるかな?(アルキラー)」

「はい、実はこちらに居るユウと言う青年の方、この方も【勇者】のミユキさんと同じ世界から喚ばれた方であり、ミユキさんの恋人らしいのですよ。」

「「ほぉ。(バラス、アルキラー)」」

「そしてユウさんはヒュマノに囚われている(と思っていた)ミユキさんを助け出したくて今この地に来ています。
ですが、右も左も分からないこの世界で今後どうやって生き抜いていくかがまだ定まっていない状態です。
不本意だとは思いますが、先達として何か助言とかあれば、と思って声掛けをしました。」

「「あ~、なる程ね。(バラスとアルキラー)」」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...