ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

教えてノア先生

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「えー現在も警戒中ではありますが、一先ず報告までに…
『犬姫』の方では18名の侵入者を捕縛。
『影狼』の方では37名。
流石としか言い様の無い数ですが、本日群を抜いて捕縛したのは、当初乗り気で無かったノア君の69名となりまーす。(ハナ)」

『『『『パチパチパチパチ!(『犬姫』一同)』』』』

「「「「……。(『影狼』一同)」」」」ジーッ…

「……。(気まずい…)」

(『そりゃあ、あっちは真面目に取り組んで37。
こっちは真面目にやらずに69人捕縛したんだ。
自分で″相手の仕事を奪う様で嫌″って言っといてコレだ、今回ばかりはフォローしないぞ。』)

(はい…)


警備報告を行っている間ノアはずっといたたまれない想いでいた。

普段諜報活動や暗部の任に着いている、謂わばプロの存在を大きく上回る成果を1人で出してしまったのだ。

しかも『影狼』は何も言わず、ジーッっとノアの方を見るだけなので、ノアは露骨に目を逸らす事しか出来なかった。




「すまないノア殿。」

「ひゃい!」

「あ、別に気にしないでくれ。
皆は寧ろ、何故これだけの侵入者を捕縛出来たのか興味津々なだけなんだ。」

『『『『コクコク。(『影狼一同』)』』』』

「え?そうなんですか?」


後に『影狼』のリーダーから聞いた事なのだが、メンバーの殆どが若手で実戦経験が少ない者ばかりだと言う。

スキル等も未熟である為イマイチ効率が悪いそうだ。


「それでも37人捕まえたなら上出来なのでは?」

「1人で70人近くの侵入者を捕まえた者に言われてもなぁ…(苦笑)」

「…それで、もしかしてですけど、僕にノウハウ的な物を教えて欲しい、とかですか?」

「…話が早くて助かる。
手の内を晒すのは嫌だろうが、出来ればご教授願いたい。
…可能だろうか?」

「別に構いませんよ。」

「ほ、本当か!?」

「但し条件があります。」

「…それは何だろうか…?」

「全員普段着に着替えて来て下さい。」

「「「「「「「「へ?(一同)」」」」」」」」





~路地裏のとある区画にて~

「えー、皆さんちゃんと着替えて来てくれましたね。
勿論ちゃんと理由はあります。
2~30人の黒装束が居たら流石に怪しまれるので着替えて貰いました。」


とある建屋の脇にある広場に普段着姿の『影狼』達が集まった。
ちなみに『影狼』のリーダーは通常の黒装束姿で、腰に剣を提げている。


「まぁ単純に普段着の方が街に溶け込み易いと言う理由もありますけどね。」

「ですが、武器を忍ばせられないから却ってこちらが不利になるのでは…?(若手1)」

「武器の使用はあくまで最終手段。
武器を使用しなければ無力化出来ない相手であれば、素直に仲間を呼んで対処しましょう。
リーダーさん、無手での訓練等は?」

「武器の持ち込みを制限される場を想定した訓練も一応行ってはいる。
が、あくまでも諜報活動が主である為、此度の様な侵入者捕縛を目的としたモノは行った事はない。」

「そうですか。
では試しに抜剣『シャキ『ガッ!』「ぬぉっ!?」してくれてありがとうございます。」

「「「「おおお…(『影狼』一同)」」」」


ノアが言い切る前に腰に差していた剣を抜き掛けた『影狼』リーダーだが、剣の鞘を押し込まれ、大きくバランスを崩した。


「鞘を押し込んだり引っ張ったりすると、案外簡単にバランスを崩せます。
こちらが無手だからと言って不利となる訳でもありませんよ。」

「あ、あの、それでも武器を持っていないと、何か不安で…(若手2)」


と、声を上げたのは人間寄りの狼獣人の女性であった。


「まぁいきなり無手になれ、なんて言われても無理な話でしょうしね。」スッ…


と言いつつノアはその女性に手を差し出して握手を求めた。


「あ、どうも『チャキッ。』ひっ!?
「心配であれば僕が持ってる様なナイフやダガー等を忍ばせておくと良いですよ。
通常の刀剣よりも早く抜剣出来ますし、小さいので対象にかなり接近しても気付かれ難い。」


女性が手を差し出した瞬間、いつの間にか握り込んでいたカランビットナイフの刃が手首に当てられ、僅かな悲鳴が漏れた。

反応からして全く気付いていなかった様だ。


「他に無い様であれば、次に僕流の怪しい人物の見極め方に移ろうと思いますので着いてきて下さい。」

「「「は、はい!(若手一同)」」」

「…おいお前達。
ノア殿の言う事をしっかり聞いて自分達の糧にしろよ?」

「「「はい!(若手一同)」」」


そう言って前を歩くノアに追随していく若手達。
その後ろでは『影狼』のリーダーが冷や汗をかいていた。


(…不意打ち気味の一撃を打ち込む前に防がれ、攻撃にも満たない動きでバランスを崩された…
武力があるのは今までの事で既に承知であったが、彼の本当の恐ろしさは″気配の無さ″だ。
普通、不意打ちの攻撃を仕掛けられれば少しでも″気配が揺らぐ″。
我らは暗部故、感情や気配を消す術を身に付けるべく日々研鑽しているが、彼の域に達するのは自分含めて見た事が無い…
恐らく彼がその気になれば、誰にも気付かれる事無く人を殺める事が出来るし、殺された当人ですら誰に殺されたのか終ぞ分か「どうしました、リーダーさん?」

「っ!?」ビクッ。


『影狼』リーダーが心の中で考えを巡らせていると、いつの間にか眼前にノアが立っていた。


「どうしました?行かないのですか?」

「あ、あぁ済まない。
先程テコの原理で動きを封じられたのを思い返していたのだ…」

(まただ…また気配が無かった…
馬鹿みたいな数の侵入者を捕らえられて当たり前だな…)


侵入者捕縛の要因を身をもって経験したリーダーもまたノアに促され、後に続くのであった。





~丁度その頃別の場所で~

ポンポン。

「よーし…薬品の補充完了。
特製弓と仕込みナイフの準備もヨシ、っと…(エスメラルダ)」


明日、悠のテイム候補である″ダックス憤怒″捕獲に向けて準備を進めていたエスメラルダは、お目当ての薬品が調達出来てご満悦な様子で街を歩いていた。

すると前から見知ったパーティが歩いてきた。


「おや?クロラちゃんじゃん、こんばんわ。(エスメラルダ)」

「あ、こんばんわ、エスメラルダさん。(クロラ)」

「「「こんばんわ。(ジェイル、ロゼ、ポーラ)」」」


前を歩いていたのはクロラ達であった。
どうやら様子を見るに、夜食を摂った後の様だ。


「エスメラルダさん、完全武装ですけどこれから依頼をこなして来るのですか?(クロラ)」

「いや、ちょっと明日に備えてね。
そう言えば″この間の話″の返事、まだ貰ってないけどどうだったかしら?(エスメラルダ)」

「「「「え?(一同)」」」」

「ほら、君達飲み込みが良いから″私達エルフ族が暮らす森に来ないか?″って話。
この間話したら、″ノア君に1度話してみます″って言ってたじゃない。(エスメラルダ)」

「「「「あ″っ!?(一同)」」」」

「その様子だとまだ聞いてないなぁ?
まぁ彼、いつも忙しそうにしてるし、期日までまだあるからゆっくりで良いよ。
それじゃあまたね。(エスメラルダ)」


そう言って一同に手を振りつつ人込みの中に消えていった。
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