ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

報告

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~王城近くの広場~

ザッ!ザザッ!

「って、ここ王城じゃない。
良いの?私達がここに来ても。(アミスティア)」

「ここなら街の人は居らず、国の関係者だけですからね。
これからの話をするなら打って付けの場所です。(″動″)」

「そもそも我々がこの国を訪れたのはノア君から″人の存在を抹消する方法″を問われた為なのですよ。(ナサケ)」

「何だノア、消したいヤツでも出来たのか?(レドリック)」

「あーいや、違う違う。」


ノアはレドリックに悠と美幸の事を2人に話す。
美幸は現在フリアダビア奪還戦以降、生死・行方不明扱いとなっていて非常に都合が良い状況である。

このまま2人で姿を眩ませても良いかもしれないが、ヒュマノ聖王国によって召喚された【勇者】と言う足枷はでかい。

可能であれば美幸の死を偽装し、存在を消去出来ないものかと相談を持ち掛けたのであった。


「恐らくだけど、そこまでしなくとも良いと思うわ。
彼女がこちらの世界に召喚されてから特にこちらで何か仕出かした訳でもないし、実績も特に無い。
世界的に禁止されている異世界召喚魔法を用いて無理矢理こちらの世界に連れて来られた被害者、と言うのが今の彼女の位置付けよ。(″探″)」

「寧ろ名乗りを挙げてくれれば援助をしたいという国もある位さ。
ちなみにその中の1つに、王都も含まれているよ。(″動″)」

「何だ、僕の考えすぎだったか…」


どうやらノアが思っていたよりも美幸がこの世界で安泰に暮らしていけるだけの下地がある事を知り、安堵の溜め息を吐く。


「現在ヒュマノ聖王国は10年に渡り莫大な額のちょろまかしが発覚して国としての機能が停止している。
禁止されている【勇者】召喚を世間一般に大々的に発表してしまった結果、肩代わりや援助を申し出る国が居なくてどうにもならない状態に陥っている。
故に【勇者】ミユキの所在云々を探す所ではなくなっているから心配はいらないだろう。(ナサケ)」


ちなみにヒュマノ周辺には各国の諜報機関が24時間体制で張り込んでいる為、ヒュマノからの人の出入りすら厳しく見張りを立てていると言う。





「そう言えばミユキ殿はヒュマノに居る元国王に会いに、1度獣人国を訪れたのでしたな?(ナサケ)」

「えぇそうよ。(アミスティア)」

「…そうですか、うーむ…(ナサケ)」


アミスティアに獣人国へ来た目的を聞いたナサケは、目深に被ったフードの下の顎に手をやって考え込む。


「…10年程前に死去されたと思われていたヒュマノ聖王国の元国王が実は生きていた。
と言うのは既に御存知の様ですのでお話ししますが、王城へ家宅捜索に入った所、最上階の居室で元国王を発見しました。
歳の割りに壮健だったのですが、その部屋から離れようとしないのですよ。(ナサケ)」

「確か″隷属の首輪″とか腕輪を嵌められてるから、と言ってた様な…」


子供獣人奴隷の救出作戦時に元国王と接近した鬼神を介して得た情報を口にするノア。


「ただ解錠方法は判明しているので、直ぐにでもその場から離脱する事は可能なんです。
ですが、頑なに居室から離れようとせず、困り果てているのですよ。(ナサケ)」

「つまりその理由をミユキちゃんに聞き出して欲しい、という事かな?(レドリック)」

「話が早くて助かります。
壮健ではあっても、半壊した居室で半野宿生活をし続けているので、生き証人を死なす訳にもいかないモノで…(ナサケ)」

「ふむ…まぁ可能な限り聞き出す様に言ってみるよ。(レドリック)」





「さて、ノア君への報告がもう1つある。
昨日君が捕らえた侵入者の一団なんだが、何処の貴族の命を受けたのかが判明したんだ。(ナサケ)」


美幸の件が済んだと思っていたら、報告はまだあった。
それは前日にノアが相手した侵入者約50名からなる一団の件であった。


「え?あぁ、昨日の…」

「君の正体を知ったら皆ペラペラと素直に喋ってくれたよ。
前日の戦闘で使った物品の破片からも、その家名が彫られた物証が確認出来たから言い逃れのしようも無いがね。(ナサケ)」

「へぇ~そうだったんですか。
でも何で僕の正体(?)を知ってすんなり話す様になったんです?」


一団とは初対面だし、以前会った記憶も無い。
ノアは心当たりが無い事に首を傾げていると


「そりゃあノア、お前さんは裏と表に名が知られているからだよ。(レドリック)」

「え?何か知ってるの、父さん?」

「あらノアちゃん、新聞読んでないの?(アミスティア)」

「し、新聞?」


レドリックとアミスティアの話では、王都を中心とした広い範囲で刷られている新聞には毎週の様にノアに関する記事が出ているとの事。


「いやぁ、この間の記事は良かったなぁ。
『アルバラストにて街を救った少年の像建立!本人の了解得ず!』
どうだいアミ、2日位走ればアルバラストに着くだろうから、帰る時々にでも「わぁあああっ!?アレは見ないで!お願いだからぁっ!」


知らない間に建てられていた自分の像を両親に見られるなど、下手すれば悶絶してしまうだろう。

話が脱線したが、要はこれまでの行いの延長で得た戦績や人脈、それらを踏まえた脅威度は本人が思っているよりも高いモノである。

中には軽視する貴族連中も居るが、裏の者は情報が第一なのでその辺は敏感なのである。


「まぁ彼ら侵入者にとって不運だったのは、正体に気付く前にノア君に捕らえられた事だがな。
そしてこれが最後の報告…というかお願いなんだが聞いて貰えるかな?(ナサケ)」

「お願い…?まぁ僕に出来る事なら聞きますが…」

「それと出来ればこのお願い事はお2人にもご協力お願いしたいのですが…(ナサケ)」

「え?私達に?(アミスティア)」





~騎士団詰所~ 

「はひぃ~疲れた~…(ハナ)」ガシャ…

「相変わらず侵入者が後を絶たないわねぇ…
本当はノア君にまた手伝って欲しい所だけど、今日は街で見かけないしなぁ…(サクラ)」

「【影狼】の方はどう?(ワッチ)」

「どうもこうも…ずーっと全員警戒にあたってて休憩も取れやしない…(【影狼】1)」

「こんなのが後10日も続くのかと思うと嫌になるぜ…(【影狼】2)」


 騎士団詰所に戻ってきた騎士団長のハナは、重い騎士鎧を外すと直ぐに机に突っ伏した。

これまでに捕らえた侵入者は300人を越え、獣人国にある牢屋の既に1/3近くを埋めていた。

捕まえた侵入者共は、何処の貴族の命でやって来たのか色々と情報を聞き出すのが普通だが、それも遅々として進んでいないという。


「失礼するよ、ハナ殿。(ナサケ)」

「ほわぁあっ!?…あ、ナサケさん、お仕事ご苦労様です。
すいません、突然だったもので…(ハナ)」

「いえいえ、こちらも突然の来訪申し訳無い。
…して、捕らえた侵入者から情報の聞き取りは捗っていますかな?(ナサケ)」

「…いえ、捕縛だけで手一杯で遅々として進んでいません…(ハナ)」

「そう思って助っ人を呼んできたよ。(ナサケ)」

「ノアです。」
「ノアの母です。(アミスティア)」
「ノアの父です。(レドリック)」

「あ、これはご丁寧にどうも…じゃなくて!(ハナ)」


明けましておめでとうございます。m(_ _)m
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