ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

レドリックとアミスティアの交渉術

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~取調室~

バンッ!

「貴様は何処の貴族の手の者なんだ!」

「ハッ!何度も言っているだろ、俺らはそもそも諜報員等では無く只の観光客だと。」

「黒い装束纏って足音立てずに<聞き耳>立ててる6人組が只の観光客な訳無いだろうが!
正直に言った方が身の為だぞ!」

「どうするってんだ、拷問でもするか?証拠が無ければ国際問題となるぞ?」

「ぐっ、この…」


捕らえはしたものの、主となる貴族の情報が聞き出せず、取調べ担当の『影狼』メンバーは苦い顔をする。

捕らえた侵入者の所持品や装束からは手掛かりとなる物は見当たらなかった為、後は侵入者の証言だけが頼りなのだが、彼らは一切口を開かず、捲し立てる『影狼』を嘲笑する始末。




「この…さっさと「待った、私がやろう。」…え?あなた方は…?」

「レドリックと言う冒険者だ。(レドリック)」

「王都の諜報員だ。(ナサケ)」


侵入者を問い詰める『影狼』を制したのはレドリックであった。


「助っ人を呼んできた。彼は敏腕だよ。(ナサケ)」

「は、はぁ…」


諜報員ナサケの薦めで『影狼』メンバーとレドリックが交代する事となった。





ギシッ…

「やぁ侵入者君初めまして。(レドリック)」

「敏腕なんだってなぁ、おっさん。
悪いが話す事は無いぜ?」


担当をレドリックに変わっても尚侵入者の態度は変わる事は無い。




「お前はウルシュア領の手の者だろ?(レドリック)」

「「「「「「!?(侵入者一同)」」」」」」


レドリックが一言言い放った言葉に固まる一同。


「な、何を言って「ウルシュア領は紅茶の茶葉の生産地として有名だ。
君達の装束からは微量だが茶葉の香りがする。
時間にして約3日は匂いを抜いた様だが、俺の<芳香感知>から逃れる事は出来んぞ?(レドリック)」

「し、知らん知らん!領があるのは知っているが、ウルシュアと俺達は関係無い!」


あっという間に所属の領を言い当てられた侵入者だが、まだシラを切る様子。

すると背後で待機していた諜報員ナサケの方に向き直ると


「諜報員さん、ウルシュア領では何かやましい話はあるかな?(レドリック)」

「私の知る限りでは無いな。(ナサケ)」

「それなら今すぐ仲間を呼んでウルシュア領へ向かってくれ。
ウルシュア・ディーンの私邸、隠された地下2階の部屋に裏帳簿があるハズだ。
俺の知ってる限り過去12年に渡る金の「ま!待て!」


レドリックの発言を遮る様に、目の前に座る侵入者の1人が叫ぶが


「ウルシュアの事は知らないんだろ?
なら今の俺の発言は他領での話に過ぎない。
そうだろう?(レドリック)」

「くっ…!!」





~取調室近くの部屋~

「父さん中々エグい事するね。
″口を割らないなら自領のもっとデカい案件を世間にバラすぞ″なんて…」

「レドは【神出弓士】の適正通り神出鬼没でしょ?見た目的にも武器を持っていないし、市民や商人を装って色んな領に潜入しては持ち前の″カンスト感知スキル″を駆使して各領の暗部を白日の下に晒してきたのよ?
こう言った時には結構役に立つモノよ?(アミスティア)」


部屋で待機するノアとアミスティアの耳には、恨み節を吐きつつ情報を吐き出す侵入者各位の声が聞こえていた。


<悪いアミ、ちょっと来てくれるか?(レドリック)>

「あら、ちょっとご指名が入ったから行ってくるわね?(アミスティア)」ギッ…


<聞き耳>を通してレドリックから呼ばれたアミスティアは席を立ち、廊下の方へと出ていった。





~再び取調室・2組目~

ダンッ!

「貴様の顔は覚えたぞ!
ここより解放された後、必ず貴様の所在を明らかにし、仕返しを『ガチャッ。』「失礼するわよー。気性の荒さは相変わらずね、ツェイ領の暗部さん。(アミスティア)」

「誰だ貴様は!」


アミスティアの入室に怒気を強くする侵入者。


「5年前にツェイ・ドゥーハから送られてきた私兵400人を返り討ちにして無理矢理和解してやった【殲滅剣士】と言ったら分かるかしら?(アミスティア)」

「せ、【殲滅剣士】!?き、貴様があの…!?」


 アミスティアの発言を聞いた直後、今まで喚いていた侵入者が恐れ戦く。

5年間、冒険者を引退した【殲滅剣士】のアミスティアだったが、貴族のツェイ・ドゥーハから腕を見込まれて指名の依頼が入った。

だが、内容の割に報酬がかなり悪く、レイドパーティでの討伐が必須なレベルの相手であったが、少人数での依頼であった事からかなり安く抑えたかった感が否めなかった。

直ぐに依頼を突っぱねたアミスティアとレドリックであったが、ツェイ・ドゥーハからの返事は″矜持を汚された″と言う訳の分からない理由で送り込まれてきた私兵10人であった。

当時まだ幼かったノアを熊獣人のマドリックに預けた2人は、ツェイ領のツェイ・ドゥーハのみに狙いを定めて真っ正面から襲撃。

ツェイ・ドゥーハは私兵400人を投入したが、呆気なくツェイの私室に押し入り、無理矢理和解へと持って行った。

ツェイ自身も″割に合わな過ぎる″という事で″一家には二度と関わらない″と念書を書かされた上で強制的に和解させられた。

尚、この一件は領内で箝口令が敷かれ、ツェイ・ドゥーハ家の力は元の3/4にまで落ち込んだと言う。


「仕返し結構。
けど仕返しがツェイ領のモノと分かったら、今度こそぶっ潰してあげるから覚悟しなさい?(アミスティア)」

「…あ、うう…
い、今の発言は取り下げ致します…」

「じゃ、正直に話すんだな。(レドリック)」





~再び取調室近くの部屋~

(5年前のアレ、そう言う事だったんだ…
″ちょっと出掛けてくる″って言って翌日には帰って来たけど…)

(『代わりに荷馬車一杯の菜種油(ツェイ領の特産品)を運んで来てたのはそう言った理由でか…』)


5年越しに両親不在と大量の手土産の理由を知ったノアなのであった。


「ノア君のお父さんとお母さん、凄い勢いで侵入者の取調べを終えてくれて助かるよ~。(ハナ)」

「『影狼』達も見学して今後の参考にしてるみたいだよ。(サクラ)」

「でも流石に今日だけですよ?
2人も一応予定はありますから…」

「「うっ…(ハナとサクラ)」」


流石にこれから後10日間毎日取調室に足しげく通って侵入者の情報を洗いざらい聞き出すのは無理では無いが、その為に2人が獣人国へやって来た訳ではない。

それは重々ハナやサクラ、『影狼』達も分かっている様で、苦い顔をしていた。


ガチャッ。

「それなら良い案があるわよ?(アミスティア)」

「「ほ、本当ですか?(ハナとサクラ)」」

「えぇ。侵入者が居なくなる訳ではないけど、それなりに効果はあるわよ。(アミスティア)」

「えぇ良いの母さん?そんな簡単に言っちゃって…」
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