ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

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パシャンッ!

「あ~疲れた。」

「ねぇノア君。″海溝″エリアにはどんなモンスターが居たの?(ラビッツ)」

「私″深海″エリアからノータッチだったから何が配置されてるか知らないんよ。
ね、少しで良いからおせーておせーて?(ヤン)」

「取り敢えずデカくてビックで巨大なのばっかりでしたよ。」

「んんんっ!知りえる情報が1種類しかないっ!(ヤン)」


ダンジョン『龍遇城』から戻って来た一行。
既に外は日がとっぷりと暮れ人通りが疎らとなっていた。

開口一番ヤンとラビッツは唯一″海溝″エリアに行ったノアへ質問していたが、ノアからはあやふやな返答しか返ってこなかった。

それにはちゃんと理由があり、確かにノアは″海溝″エリアに行った…いや、″寄った″と言った方が正しいと思われる。

リヴァイアを先頭に、ノアが後を着いていく形で″海溝″エリアを進んでいたのだが、巨大な反応が周囲のアチコチにあるのだが、グリードの時と同様リヴァイアが居る事で何も寄り付かないのである。

そのまま海中散歩を楽しんだ後、海底にある熱水噴出孔の1つに入り、道なりに進んだ先にぽっかり空いた漆黒の落とし穴があるので、そこに飛び込む。

実は隠し通路となっていて、″海溝″エリアの更に下層にあるエリア、ダンジョン名にもなっている『龍遇城』兼海洋種の暮らす国『龍宮城』へと繋がっていた。

そこでは″デカい″と言うよりも″山″の様な存在が数多く待機しており、ノアを出迎えてくれたのであった。





「まぁダンジョン開放後暫くは″浜″~″海中″エリアまでしか行けないので、″海溝″エリアの情報は伏せてても良いじゃないですか。」

「…まぁそうですけどぉ…(ラビッツ)」

「うー、何その含みのある言い方凄い気になるジャン…(ヤン)」


結局″海溝″エリアの情報は引き出せず、ヤンとラビッツはモヤモヤしていると


「あ!?【鬼神】が戻ってきてるぞ!(冒険者1)」

「んえ?」

「あ、ホントだ!(冒険者2)」
「ねねね!新ダンジョンに先行で行ってたんだよね!?どうだった!?(冒険者3)」
「何か情報求む!(冒険者4)」


と、ノアの存在に気付いた冒険者達が集まって来た。
既にノアが海洋種のダンジョンに視察に行っていた事は広まっていた様で、皆一様に目をキラキラさせていた。


「その辺の詳細や出現モンスター等の情報はこちらの方が記事にしますので、そちらをご覧下さい。」

と、ラビッツの記事を勧めてみるが、それだけでは納得しない冒険者達。


「勿論そっちも見るが、先出し情報とか無いかい!?(冒険者2)」
「ダンジョンの構成とか、どういったパーティ構成で行ったら攻略が捗りそうかとか!(冒険者6)」
「誤情報が出回ってたりするから、正しい情報が知りたい所なんだ。(冒険者1)」


どうやらノアの事を知っているからか、皆興味はありつつも強く出て来ないのはノアとしても有難いモノである。

ちなみに冒険者の1人が言っていた″誤情報″と言うのは、金銭と引き換えに根も葉も無い噂程度(例:炎属性の武器が有効、【拳士】のみのパーティが最効率等)の情報を売り出す輩が2、3組程現れたらしく、模倣犯が現れまくっていて情報が錯綜しているらしい。


「まぁ別に情報規制している訳でも無いので多少は情報流しても良いかな。」

「そうですね。一応セレイアさんからも許可は得ていますし。(ラビッツ)」

「ちなみにピンからキリまで話すのは無理だけど、出回ってる誤情報を正す内容に留める、って所で良いかしら?(ヤン)」

「「「お、お願いします!(冒険者達)」」」


という訳で突発ながら街の一角で情報交換会が開催される事となった。

尚、ラビッツは仲間を呼びに行き、情報交換会の現場で記事を書くと言い出した。
どうやら人が集まってくる事を見越し、即売してしまおうと言う腹積もりの様だ。何とも商魂逞しいものだ。





「はーい、50部刷り終わりましたよー。
欲しい方居ますかー?(ラビッツ)」

「こっちに1部!」
「知り合い用に3部くださーい!」
「クランの連中に渡したいのですが、10部良ーい?」

「おいやっぱあそこの情報屋が言ったの嘘だぜ、ゴブリン何か出やしないじゃねーか。」
「そもそも世界観合わんやろ。」
「ちょ…城流クジラ出るんかい。」

「え!?″海中″エリアって所に街あんの!?
どんだけ広いダンジョンなん!?」
「ふーん、物々交換か。まぁ金の概念が無かったから当たり前か。」
「宿に温泉かぁ、彼女と行ってみようかな。」

「えー!?何この装備凄く綺麗!」
「映える映える!」
「体のラインが…絞るか…」

「ふむふむ、後に2ステージ開放予定か…」


と、ラビッツとその仲間達が編集して即即売している記事を見て各々の冒険者達が感想を述べたり、出回ってる誤情報に突っ込んだりしていた。


「なぁ、この″″浜″エリアでは足下に注意″って一文は何なんだ?
もしかして強襲型のモンスターでも出るのか?」

「まぁそんな感じ、と言うに留めておくよ。」

「含みのある言い方だなぁ…」


ある意味強襲型なのだが、″足下に注意″と言うのはモンスターの出現に関してだけではなく、足下の″珊瑚″にも注意しろ。
というニュアンスも含んでいるが、全て言うのは面白味に欠ける為、含みのある言い方に留める事にした。


「ねぇねぇ!君の肩に乗ってる半透明の猫って、もしかして記事にある″ニャーゴ″ってモンスター?」

にゃぁご?

「「「「きゃーっ!″にゃぁご″って鳴いたぁーっ!可愛いー!」」」」


女性冒険者からはニャーゴの評判はすこぶる良い。
獣人国では猫寄りの人間等も居るが、愛でようとすると下手すれば訴えられたりする為、色々と溜まっている者も居た様だ。

だがそんな女性陣には「テイムは大変ですよ」とだけ伝える事にした。

それを聞いて各々「友好度を稼がないといけないのかな~」とか「好みの餌とかあげないといけないのかなぁ」とか言っていたが、そんな事では無く、単純に″毒″であるがそれも敢えて言わない様にした。

今更だがダンジョン内で冒険者がモンスターに殺された場合、本当に死ぬ訳ではなく、ダンジョン外に弾き出されて最低半日はダンジョンに入れない仕様にするらしい。

ダンジョン内のモンスターは強敵揃いだが、設定まで難しくしてしまうと寄り付かなくなってしまうから、との配慮らしい。

なので気兼ね無くニャーゴを見付けて触れ合って、何度も毒って貰うとしよう。

と、ノアが冒険者達からの質疑応答に応じていると


「おうおうココだなぁっ!
″ウチらのシマ″で根も葉も無ぇ情報をばら蒔いてるって言う不届き者が居るのは!」

「困るんだよなぁ、誤った情報を吹聴されんのはよぉ。商売上がったりだぜ?」

「取り敢えずここの責任者出てこいや。
大分潤ってる様だから場所代はキッチリ払って貰うぞ?へっへっへ。」

(…何か来たし。)


どうやら先程冒険者達が口々に言っていた″誤情報″の出所である輩達が自ら出張って来た様だ。
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