ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

これ普通だったら絶対何かのフラグになるヤツ。

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~ノアの影の中・ヴァンディットとラインハードの工房(ラボ)~


シュンシュンシュンッ!
ボゴボゴボゴッ!
トポポポポポッ…

「えーっと、ギルドからの注文品である″濃硫酸50本″と″無水アルコール60本″作製完了、っと。
指定のポイントまで運搬お願いしますね?(ヴァンディット)」ドサッ。

ギギギ…


各種薬品を詰めた箱を台車式の2頭身カラクリ人形に乗せ、指定の場所まで運搬する様に促すヴァンディット。


「ブラッツ、先導お願いしますね?(ヴァンディット)」

ウォンッ!


ヴァンディットの眷属であるブラッツが前を歩くと、カラクリ人形が追随して指定のポイントに向かっていった。


「ふーっ、大体依頼が片付きましたね。(ヴァンディット)」

「ヴァンちゃんお疲れ様。
私の作った″運搬用カラクリ人形″の調子はどう?
簡単な経路間であれば役に立つとは思うけど…(ラインハード)」

「もう大助かりですよ。
何せ、稼いだお金で買い漁った錬金器具や精錬炉を所狭しに置いた結果、いつの間にか工房(ラボ)と言うより広大な大規模工場と化してしまいましたので…(ヴァンディット)」

「この空間もいつの間にか広大になったよねー。(ラインハード)」

ゴゥンゴゥンゴゥン…


2人が居る個人空間内のアチコチには各種薬草を育てている畑や農園、蒸留設備や精錬炉、火柱の上がる塔や定期的に蒸気を噴出させている何かしらの装置、設備で犇めいていた。


「正直″○○を作る為の○○″みたいな設備が増えすぎちゃってブラッツと私だけでは手が回らなくなってきましたからね…(ヴァンディット)」


苦笑いを浮かべるヴァンディットだが、その表情は生き生きとしており、忙しいながらも充実した日々を過ごしているのが見て取れる。


「うーん、私にもっと技術や知識があれば″基板″を作って効率化を図りたい所なんだけど…(ラインハード)」

「その″基板″があると何か良い事があるのですか?(ヴァンディット)」

「他にも色々と必要な物があるけど、それらを省略して結果的な事を言うと、″私を量産出来る″わ。(ラインハード)」

「え!?そうなんですか!?(ヴァンディット)」

「うん!そして、ノア君喜ぶ!(ラインハード)」

「流石に省略し過ぎでは…?(ヴァンディット)」


その後ラインハードが大昔に読んだという書物の内容をヴァンディットに話したが、分野が違う為、内容の2割も理解出来なかった。
取り敢えず作れたら″凄い事″になるのは分かった。


「まぁ作れるとしたら最低でもウン百年位技術が進歩しないと『いや、な。この『鱗銀』っちゅう代物を見たんじゃが、これは恐ろしく精巧な″基板″じゃったもんで、興味が沸いてここを訪れたんじゃ。(バド)』何ですとぅ!?聞き捨てならない単語が聞こえましたよぅ!ヴァンちゃんちょっと外行ってくるね!とぅっ!(ラインハード)」ダンッ!

「あぁっ!ハーちゃん待って待って、私も行く!(ヴァンディット)」


そして、前話の最後に繋がる。
ちなみにカラクリ人形と共に戻ってきたブラッツは、主人が忽然と姿を消していた為慌てふためく事になった。





~『アルマ(武器屋)』店内~


スタッ!

「初めまして海洋種の店長さん!いきなり出て来て不躾だとは思いますがその手に持っている板を見せてくれませんかぁっ!?(ラインハード)」

「お、おぅ…『ピラリ。』
…というかお嬢ちゃん何処から入ってきたんだい…?(ゴア)」


見事な着地で降り立ったラインハードは店長のゴアに音も無く急速接近し、矢継ぎ早に『鱗銀』を見せて貰える様に懇願。
勢いに押されたゴアはラインハードに『鱗銀』を手渡した。


「あぁっ!素材は違いますが、この形状は正に昔書物で見た″基板″!まさかここでお目に掛かれるとはっ!(ラインハード)」


まるで長年探し求めていた財宝を手にし、喜びを露にするかの様に天に掲げていた。


「何か良く分からんが、嬉しそうなのは分かった。(ゴア)」

「痛て…あ、あの子は色々あって僕と旅を共にしている方です。」


ノアは顎を擦りながらもゴアにラインハードの紹介を行った。





「実はかくかくしかじか、この『鱗銀』あるあると、私とヴァンちゃんウキウキワクワク。(ラインハード)」

「なる程。″基板″と言う単語が出て来たので思わず飛び出してきたと。
しかもその『鱗銀』=基板を活用出来れば、薬品製作や設備の充実、効率化が取図れる。
と言う訳ですね?」

「そう言う事です!(ラインハード)」

(何で今ので通じるんだ…?(ゴア))


ラインハードは、ノアの影から飛び出してきた理由を説明。
キッチリカッチリ説明するとウン百文字になってしまうが、″かくかくしかじか″を用いればすんなり話が通るのだ。


「そもそもこの『鱗銀』には″サハギンの鱗″が使われている。(ゴア)」

「ほぉ、サハギンとな!?(バド)」
「お伽噺で聞いた名じゃな!(ルド)」
「故に希少な存在であろう?果実1個で交換では採算取れんじゃろ?(ロイ)」

「心配してくれるのはありがたいが、サハギンは特定エリアに腐る程生息していてな、海洋種にとっては地上で言う″ゴブリン枠″に該当する。(ゴア)」

「確かに腐る程居たよ…(遠い目のノア)」

「「「「えぇ…(一同)」」」」

「定期的に駆除しないと爆発的に増えるし、生え変わりの時期になると砂地を埋め尽くす程の鱗で覆われっから邪魔で邪魔で…
だが、その″サハギンの鱗″を乾燥させると表面に独特な筋が入り光沢が増す。
巨体の多い海洋モンスターの中で、比較的小型故設備等に素材を組み込み易いので基板として組み込む事にしたのさ。(ゴア)」

ガチャ。

「私達の暮らす深海は魔法技術だけでは成り立たないから、機械工学等の技術も併用しているの。
それには″サハギンの鱗″を用いた基板の使用が必要不可欠。そちらのお嬢ちゃんの力添えになるのなら1つ試しにあげてみても良いんじゃないかしら?(マーミー)」


隣の『アルマドゥーラス(防具屋)』から魚族の女性店主マーミーがやって来て『鱗銀』兼基板の譲渡を促してきた。

【技士】のドワーフ達や高位の技術を持つラインハードですら製造出来なかった基板を、おいそれと簡単に渡して良いのか?

等と考えていると


「それもそうだな。ほらよ、お嬢ちゃん。
1枚お試しで使ってみ、て…く…」

(…ん?何か時間の流れが遅く…
もしかしてまたリヴァイアさんが現れるのかな…?)


『鱗銀』を手にしたゴアの動きが徐々に緩慢になっていき、声も間延びし出した。
再びリヴァイア登場の流れになるのかな、と思っていると、予想してなかった人物が姿を現した。


〝やっほー、ノア君数日振り。(暦)〟

ガシャッ!スタッ!ガシャッ!ガシャガシャッ!


神様に付随する存在の″暦″が現れたのはまだ良い。
だが、″暦″に従者として追随する羽を生やした鎧兵が完全武装した状態で6体登場した事に、背筋に妙な寒気が走った。


「…一体何の用で現れたのですか…?
まぁ状況的に見て理由は何となく察せられますが…」


ノアは″暦″の動向に注視し、いつでも介入出来る様に体勢を整えるのであった。
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