ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
681 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

休む暇が無い

しおりを挟む
ジワリ…

〝あ、ああああの!別に彼女を害しに来たとかそう言う事ではありませんよっ!?〟


時が止まった世界で突然現れた完全武装の神的存在達にノアが静かに身構える中、ノアの雰囲気を敏感に感じ取った″暦″が大袈裟に手を振ってノアを制止。
慌てて″暦″達が訪れた訳を説明するのであった。


〝今海洋種の方からラインハードさんへ″基板″と言う技術支援を受けましたよね?
実はここが″ラインハードさん自身の暦の上での転換期″となる瞬間なのです!
謂わば今この瞬間が歴史的瞬間の1コマと言えるのです。
我々はその瞬間に立ち会うべく、ここを訪れたのです。〟

「えーっと?
転換期って、良い意味でも悪い意味としても捉える事が出来ますけど、この場合…」

〝勿論良い意味で、ですよ。
ほ、ほら、以前少しお話ししたでしょう?
彼女の″先の暦の事″を。〟

「え?…あぁ、″機人族″って言う種族の長になるって言う…」



~タイトル:『終戦そして再会』より抜粋~

〝ご安心下さい。
彼女は近い将来"機人族"という種族の発起人となり、良好な関係を築くので、オーバーテクノロジーと言われる程の存在では無くなりますよ。〟



〝ザッツ、ライト!〟

「何て?」

〝あ、いやいや、何でもありません…
兎に角我々は、貴重な瞬間を目撃する為に訪れたので心配しないで下さい。〟

「こちらの完全武装の方々は?」

〝今年の新卒の者達です。
滅多に無い事ですので勉強がてら着いて来させました。〟

(゜゜ )(。。 )コクコク。(新卒達は仕事中私語禁止)

「あー!もー!びっくりしたなー!もぅっ!」ズシャッ!


一触即発の事態にならなくて安堵したノアは、思わずその場に座り込んでしまった。





〝勿論の事ですが、彼女の行く末は順風満帆なモノではありません。
機械の人間ですから人形と同じ、他者を思いやる心や慈しむ心が無い、人の形を成したモンスターだ、等と謂れの無い言葉を浴びせらりたりもしました。〟

「……。」

〝種族として名乗りを。
建国を掲げた際は、被害を出す前に適当な理由を付けて殲滅してしまおう、等多方面から声が上がったりもしましたが、世界に発信する際にある方に宣言した為、そういった動きは無くなりましたがね。〟

「ある方?」

〝君の契約獣のグリードですよ。
その時は成体になられていたグリードを前にして『友としてお願いがあります!
わ、私が今後道を踏み外したとなった時は、一思いに国ごと消し去って下さい!』と宣言した様ですよ。〟

「わぁ、すんごい宣言。」

〝裏を返せば『道を踏み外さなければ友のまま』と言う事ですから、彼女の国を滅ぼそうものならグリードを相手にするのと同義ですからね。
どの国も下手な動きを見せなかったみたいですよ。〟

「ふーん…」


現在ですら無敵に近いグリードがバックに付いているのであれば、そりゃ足踏みする事になるだろうな、と思っていると新卒の鎧兵の1人が″暦″の下へ近付き


〝″暦″様、そろそろお時間です…〟

〝あ、長居してしまいましたね。
ではノア君次は式典の時にまた会いましょう、国交樹立式典もまた歴史的瞬間ですからね。〟

「あ、はい。また。」

シュンッ!


どうやら″暦″には次の用事がある様で、新卒の鎧兵達と共に足早にその場を去っていった。


(…あれ?そう言えば″暦″さんって少し先の事しか知り得ない、って言ってた気がするけど、何でラインハードさんの今後を知ってるんだろう…
…誰かから聞いたのかな…?)





「れ。(ゴア)」

「わぁっ!ありがとうございます!大切に使わせて貰いますね!(ラインハード)」

「その代わりと言っちゃなんだが、出来上がったら俺にも見せてくれ。何が出来るのか興味があるしな。(ゴア)」

「はい、勿論です!
見て下さいノア君、親切なゴアさんに基板を『ポンッ。』ほぇ?(ラインハード)」


時が再び動き出し、ゴアから基板を受け取ったラインハードは、嬉しそうにはしゃぎ、ノアに見せ付けていると、突然頭を撫でられた。


ナデナデ…

「…これからも頑張って下さいね。」

「え、えへへ、どうしたんですかノア君…?
悪い気はしませんけども…(ラインハード)」

(良いなぁ…(ヴァンディット))


訳も分からず頭を撫でられて少し困惑気味のラインハードと、それを羨ましそうに眺めるヴァンディットであった。





~『アルマ』店外~

(…他種族がいっぱい…
何の話してるんだろう…?(ラビッツ))

(…和やかな雰囲気…入り辛い…(ヤン))


取材を終えて戻ってきたヤンとラビッツだが、中の状況が読めず、外でただ呆然としていた。





シュピッ!

「ではノア君!私はこれより三日三晩7時間睡眠を心掛けつつ開発に没頭しますので、用がある時は気兼ねなく声を掛けて下さい!(ラインハード)」

ズズズ…

「あまり根を詰め過ぎない様にね。」


『鱗銀(基板)』を手に、良い笑顔のラインハードは手短に声掛けをした後ノアの影の中に戻っていった。





~大通り~

「そう言えば良かったの?
お爺ちゃん達も『鱗銀』目的で来たんじゃないの?」

「んにゃ。
どちらかと言えば、海洋種の技術力に驚かされて訪れた、と言った方がええの。
あの素材の大きさで配列の精密さ、精緻さ、どれを取っても一級品、まるで芸術作品じゃ。(バド)」

「ふふふ、新しい技術を知れると言う事は何とも嬉しい事じゃ。(ロイ)」

「それよりもええんか?
″コレ″は坊が手に入れた代物じゃろ?(ルド)」


ルドとバドの背中には、ノアがダンジョンで手に入れた『地爆豪鎚(ジバクゴウツチ)』が背負われていた。



地爆豪鎚(ジバクゴウツチ)…″深海″エリアボスであるポセイドン第三形態が顕現させる事が出来る3メルもある巨大な魔鎚。

打撃箇所から半径3メルに及ぶ<衝撃波>が付与され、その類いの内部機構が備わっており、これはあらゆる耐性を突破する。



「僕は接近型の超攻撃的戦術、一撃よりも手数で勝負だからハンマーはちょっとね…
それよりか普段からハンマーを使い慣れてるお三方の方が良いと思ったんだ。」

「ほぅ…
…なぁ坊よ。くれる、と言う事は″魔改造って(イジって)″良いって事じゃよな?(バド)」

「ん?イジる?
バドさんもエフェクト付けるの?」

「いや、″魔改造る(イジる)″。(バド)」

「…まぁ構いませんよ。
扱い易い様にいじって貰って下さい。」


後にノアは、″イジる″の意味をもう少しちゃんと聞いとけば良かったなぁ、と反省する事になるのだった。





「「「それじゃあ、またの。(ドワーフ達)」」」
「ばーい。(エスメラルダ)」

「はい、また。」


何故か妙に良い笑顔でドワーフ達はノアの下を去っていった。


(さて、取り敢えず宿に戻って軽く寝「やぁっ!」…え?)


殺害依頼→ダンジョン視察と大忙しだったノアは、宿に戻って軽く休むか、と考えていると通りの奥から悲鳴が聞こえてきた。


タンッ!


もう既に反射的にと言って良い程の動きでその場から駆け出したノアは、悲鳴の出所へと向かう。

通りを進むと、肥え太った男性が薄着の女性の手首を掴んで何やら要求している様であった。


ガシッ。ポンッ。スッ。

「ちょっと何やってるんですか?」
「はい、そこまで。(アミスティア)」
「女性相手に何やってるんだい?(レドリック)」

「ひょえ!?(男性)」


ノアは肥え太った男性の手首を掴み、アミスティアは冷え入りそうな声と共に肥え太った男性の真横に立ち、レドリックは肥え太った男性の真後ろに立って睨みを利かせる。

すると肥え太った男性の対面に居た薄着の女性が


「あ、ああっ!?ノア君ちゃね!?
あぁ、怖かったんよ、助けてありがとぅ!(ミダレ)」

「え?…ミダレさ『ガバッ!』うわっぷ!?」


数日前、中級冒険者試験の際に会ったサキュバスのミダレが体を震わせながらノアに抱き付いて来たのであった。
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...