ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
687 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

ご挨拶

しおりを挟む
~大通り~ 

ザワ…ザワザワ…

「ね、ねぇノア君、皆見てるよ…もしかして似合ってないんじゃないかな…?(クロラ)」

「そんな事ありませんよ。
似合っているのは勿論、綺麗格好良いですし、しっかり可愛いですよ。」

「え、へ…ふひぃ…(クロラ)」

「クロラがべた褒めされ過ぎて変な笑い声になってるわよ。(ポーラ)」


三途リバーにザリガニ捕りに行こうとしていたノアを引っ張って街へと出てきた一行だが、海洋種製のバトルドレスとあって直ぐに周りから注目の的となってしまった。

ちなみにミダレの事は宿のおばちゃんにお願いしてあるのでご安心を。

バトルドレスを構成しているのは、通常のスケイルメイルよりも光沢のある海洋モンスターの鱗を使用している為、僅かな動作で靡くドレスは、まるで陽に照らされた水面を思わせる輝きを放っていた。 

その輝きは、獣人国を訪れている貴族の目敏いご令嬢の目に直ぐ止まる事となり


タタタ…

「あ、あの貴女方?
その御召し物は一体何処で繕って貰った物なのですか?」
「その美しい輝きのドレスを是非とも入手したく…」

「「ふぇ!?(ポーラとクロラ)」」


と、目を爛々と輝かせたご令嬢方に詰め寄られ、素頓狂な声をあげていると


スッ…


「恐れ入ります、これらのドレスは私共の主より海洋種の方から贈呈された数少ない品となります。
現在入手は難しく、早くとも式典以降となりますのでご理解の程を。(ヴァンディット)」

「「は、はい…」」


普段とは違い、黒のラインが入った深紅のドレスを纏うヴァンディットは、長い銀髪を靡かせ、日除け用の黒いベールから顔を覗かせてご令嬢方に恭しく頭を下げた。

その品位ある所作と風格に、ドレスの事で頭が一杯だったご令嬢方は思わずたじろいでしまった。


「さ、流石ヴァンディットさん…(クロラ)」
「着慣れている人はやっぱり違うわね…(ポーラ)」


と、2人が感心していると


『『ペチッ。』』

「「ひゃっ!?」」

「背筋を伸ばして胸を張りましょう。
案外こういうのは堂々としていれば何て事無いものです。
ジロジロ見てくる人に対しては、「何か?」とでも言いたげな雰囲気を醸し出すと良いですよ?(ラインハード)」

「「は、はい…」」

(見た目は少女だけど流石は元女王。
人前に出る時の心構えを分かってらっしゃる。)


クロラとポーラの背中を軽く叩き姿勢を整える様に言うラインハード。
少女型の外見ながら、ヴァンディットと同じくドレス姿が堂に入っていた。

するとそこに


「やぁ【鬼神】のノア君。
それと従者のヴァンディットさんにラインハードさん。ガールフレンドのクロラさんにポーラさんご機嫌よう。(ジョー)」

「素敵な御召し物をノア君から贈られた様ですな。(ロスト)」

「「あ、ジョーさんこんにちわ。(クロラとポーラ)」」

ペコッ。(ラインハード)

「バルディック・ロスト様、ご機嫌よう御座います。(ヴァンディット)」


通りの奥から親しげに声を掛けてきたのは、バルディック・ロストを引き連れてきたジョーであった。

1人1人名を呼び、ノアに関しては二つ名を付けた上で関係性を示しているのは、恐らく周りに居る貴族に対する配慮だろう。

【鬼神】といえば″黒い二刀の少年″というのが世間での認識の為、今自分達の目の前に居るのが″現在のノア″であると再認識させている。

それと共に、自身とノア、その従者やガールフレンドの2人含めて交遊関係を持っているから″変な事は考えるなよ?″と周囲に知らしめている、とノアは考察した。

実際ノアの<聞き耳>には、周囲に居る貴族から<あれが【鬼神】!?>とか<噂と違うぞ!>等、口々に漏らしている者も居た為、事前に面倒事を潰してくれたのやも知れない。


「ジョー殿、少し失礼しますぞ。(ロスト)」


するとジョーの後ろに居たバルディック・ロストがノアの前にやって来て


「やぁノア殿、此度はゴーマンが暴走し、止める事が出来ず申し訳無かった。(ロスト)」

「いえいえ、ゴーマン男爵の執事さんが僕1人を対象にしてくれたので人的被害が出ませんでしたし、″あの程度″フリアダビアやアルバラストに比べれば何て事無いので気にしないで下さい。」

『『『ザワザワ…』』』


ノアにゴーマン男爵から最後の悪足掻きとして″殺害依頼″が出されていた事は、既に周囲の貴族達の耳に入っていたが、それを″あの程度″の一言で済ませた為ざわつく周囲。


「そう言って頂くと安心出来ます。
本当は色々と話したい事はありますが、ノア殿に挨拶したい者達が居られる様なので今回はここまでに致しましょう。(ロスト)」

「え?挨拶?」

「ノア君、君は社交界に出た事は無いだろうけど、そういった場では縁を持ちたくて挨拶回りに来る者も居るんだよ?
ちなみに君、クリスタルブルーの中級冒険者だから一応″男爵″クラスに該当するからね。(ジョー)」


バルディック・ロストの後ろを見てみると、幾人かの貴族が並んで連なっていた。
というか、手前に居る貴族は見覚えのある父娘の2人組であった。


「…やぁノア殿…先日は息子がとんでも無い事を仕出かしてしまい申し訳無かった…(ルルイエ)」

「兄がすいませんでした…(ミミカ)」

「あ、アルバラストでの…
いやいや、僕も半ばムキになって八つ当たりした所もあったので、良いストレス解消になりましたよ。」

「そ、そうなのですか…?(ミミカ)」

「息子はあの後自領に戻し、一般兵士と一緒に性根を鍛え直している。
行動力は大したものだが、しょうも無い事で腹立てられては次期領主など任せられんからな…(ルルイエ)」





~クロラ達サイド~


「ねぇねぇクロラさん、ノア君とあちらの貴族さんは何かあったのですか?(ラインハード)」

「そっか、ラインハードさんは知らなくて当たり前だね。
簡単に言うと、あちらのお嬢さんからの婚求を断った腹いせで、彼女のお兄さんがアルバラストで″ノア君討伐依頼″を出したのよ。(クロラ)」

「…何かノア君ってそんな事ばかり遭遇してない?(ラインハード)」


※そんな事ばかりです。





「そうですか、彼の処遇についてこちらからとやかく言う事はありません。
それよりも、僕に何か話したい事があるのでわ?」

「「え?」」

「盗み聞きするつもりは無かったのですが、さっきジョーさんと話している内容が少し耳に入りまして…」    

「…で、あれば話が早い。
単刀直入に言おう、我が隣領にて3ヶ月~半年以内に発生すると予想される″大規模氾濫″に是非とも参加して貰いたいのだ。(ルルイエ)」

「良いですよ。」

「過去に類を見ない程の規模が予想される故、よく考えてから…(ルルイエ)」





「「え、軽っ!?」」


ノア、″大規模氾濫″参加決定。 
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...