ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
715 / 1,117
獣人国編~御前試合の代表決め~

食料問題

しおりを挟む
「アンタはどうにかして俺達の助けになろうとしてくれてんのがこれまでの言動で分かった。
それなりに信用出来ると見込んで頼みたい事があるんだが…(バンデイラ)」

「何でしょう?
ある程度の事は融通利かせられると思いますよ。(ジョー)」


元奴隷達のリーダーであるバンデイラからの頼み事という事で、思わず身構えるジョーだが、大体の見当は付いていた。


「人手を募りたい。
勿論誰でも良い訳では無く、それなりに腕が立ち口が堅い″人族以外″の人手を出来るだけ、だ。(バンデイラ)」

(やはりな…(ジョー))


バンデイラの要求は端的に言うと食料問題の解消であった。
幾ら以前よりも食料事情が良くなったとはいえ、殆ど0に近かったモノが0.2になった程度の事。

元奴隷4万人の内、健常者は1/10以下で、それ以外は栄養失調であったり極度に痩せ細っていたりとで、マトモに動けるのが殆ど居らず、バンデイラの悩みの種でもあったのだった。

そしてジョーが思った通り、彼ら元奴隷達はまだ人族を信用しきっていない為か、″人族以外″の冒険者と言う条件を提示してきたのである。


「無茶な要望だと言うのは重々承知しているが、こちらもまだ割り切れていない者が大半なので察してくれると助かる。(バンデイラ)」

「えぇ、心情お察し致します…(ジョー)」

(…正直打って付けの冒険者は居るには居る(勿論ノアの事)が、流石に個人でどうこう出来る問題では無い…
それにタイミングが悪過ぎる…
獣人国と海洋種との国交式典3日前で人を募って集まるとは到底思えない…
それまでの繋ぎにスロア領から食料の提供を…いや、スロア領にはこれ以上負担を掛けられない…(ジョー))


と、ジョーが考えを巡らせていると


「何かお悩みの様ですが…如何しましたか?(ナサケ)」

「あぁ、王都諜報員のナサケ殿。
…うーむ、こういった事はあなたの方が詳しいでしょうから相談に乗って貰いましょう。(ジョー)」


ふらりと諜報員のナサケがやって来て、険しい表情のジョーに話し掛ける。
対してジョーは、一応バンデイラから了承を貰った上でナサケに相談してみるのだった。





「なる程…時期を考えれば難しい話ですなぁ。
一先ず彼(ノア)に声を掛けてみては如何でしょう?(ナサケ)」

「あ、やはり彼(ノア)が筆頭に上がりますよね…(ジョー)」

「む?誰か伝手が居るのか?(バンデイラ)」

「子供獣人達の救出作戦の発起人をされた人物です。
突拍子も無い奇策を考え付く彼(ノア)なら、何か妙案が浮かぶやも知れませんからな。
急ぎの案件故、彼には私から赴きましょう。(ナサケ)」

ザヒュッ!


それだけ言うとナサケはその場から消え去り、早速ノアの元へ駆けていった様だ。





~滅びの森~


チャキ…

「なる程、それでノアちゃんに相談しに来た訳ね。王都諜報員のナサケさん?(アミスティア)」

「え、えぇ、そうなんですよ。
それよりも何故私は縛られてるんでしょうか…?(ナサケ)」

「ごめんなさいねぇ、昔からの癖で諜報員と闇ギルド、野盗を見掛けたら縛り上げて情報を吐かせないと落ち着かなくて。
だからこの前も家に来た時も捕縛したでしょ?(アミスティア)」

「…そうでしたね…そして見事に捕まりましたね…(ナサケ)」


ヒュマノを発った諜報員のナサケは、轟音鳴り響く滅びの森に到着。
全長100メルを超える骨剥き出しの巨大ワニ″ランペイジ・スカル・クロコダイル″が暴れまわる光景が広がっていた。

が、それに気を取られていたからか、あっという間にアミスティアに捕まり、縛り上げられ、首にロングソードを突き付けられながら来訪の理由を聞き出されていたのであった。


グォオオオオオオッ…ズズンッ!

「あら、丁度終わったみたいね。
ノアちゃーん、お客さんよー。(アミスティア)


全長100メルもある巨大な骨剥き出しのワニ″ランペイジ・スカル・クロコダイル″の巨体が大きくぐらつき、そのまま地面に倒れ込んでいた。



″ランペイジ・スカル・クロコダイル″…全長100メルを超す超巨大ワニ。
″ランペイジ・クロコダイル″の成熟体。
主な生息域は大陸の南側だが、滅びの森の南部、『廃都』の近く等でも見掛ける。

骨と皮が殆どな為よく間違われるが、アンデットの類では無い。
食肉としての価値は無いが、一部の【召喚】や【死霊術】等に好まれている。



立ち込める土煙が晴れると、ランペイジ・スカル・クロコダイルの死骸の近くにノアとずんぐりむっくりとした謎の人型モンスター″はっけよいのこった″が立っていた。

″はっけよいのこった″は、ずんぐりとした肉の塊に短く図太い手足がくっ付いた様な見た目をしており、耳と鼻は無く、点の様な目にでっかい口が備わっている何とも不思議な見た目をしていた。

そんな″はっけよいのこった″は、隣に立つノアに襲い掛かる事も無く、ジッと黙って地面に倒れ伏したランペイジ・スカル・クロコダイルを見詰めていた。





(…もしかして″コレ″欲しいの…?)

コクッ。


″はっけよいのこった″がランペイジ・スカル・クロコダイルを欲している様に見えたのでノアが指差す動作をすると、コクリと頷いた。


『…じゃあ良いよ?』

…ゴッツァン…のっそのっそ…

(『ホント良く分からんな、このモンスター…』)


ノアから了承を得られると、″はっけよいのこった″はのそのそと歩いてランペイジ・スカル・クロコダイルの死骸に近付き、骨と皮関係無くムシャムシャと食べ始めたのであった。



″はっけよいのこった″…謎の多い『廃都』のみに生息している謎のモンスター。
身長、胴廻り約3メルの巨漢人型ではあるが、耳や鼻、生殖器等が無く、繁殖方法や生態等全てが謎に包まれている。

だが知能は高い様で、言葉や動作を理解し、敵意を抱かなければ襲って来る事も無い。

『廃都』、若しくはその周辺の滅びの森に生息しているモンスターしか食べる事は無く、以前に生態を解明すべく上級冒険者クラスの討伐隊約30人を投入したものの、返り討ちに遭ったが誰1人殺されず、寧ろ安全な場所まで連れてったと言う話まで残っている何から何まで謎の多いモンスターである。

ハッケヨイ、ドスコイ、ゴッツァン等の奇声を発している為、それがそのまま名前になった。
肌触りは″大福″。



『あ、ナサケさん。
どうしました、こんな所で?』

チャキ。

「吐け。(アミスティア)」

「と、取り敢えず解放して頂けませんか…?(ナサケ)」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...