ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

相談事

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~再び獣人国・ラーマの館(練習5回目)~


「はい1、2、1、2、そこでくるっと回ってターン、1、2、1、2、はいすれ違い様に風魔法を掛けたら、レース持って<壁走り>!(ビルゴリラーマ)」

『『『ブワッ!』』』


本番用の色とりどりな衣装を身に纏った踊り子達は、館の主人であるビルゴリラーマの合図と共に長いレース生地を持ち、周囲の建物を足場として大きく跳躍。

彼女達の周囲には帯電防止の為にヴァモスが付与させた″氷衣纏雷″が展開。
陽光に照らされる事で光の粒がキラキラと舞い、演出の一部としても一役買っていた。


シュル『タンッ!』ルルル『タンッ!』ルル!


ベレーザは大輪の花の下にある葉の部分を担当。
緑のレース生地を巧みに操りつつ建物と建物の間を縦横無尽に駆けて葉を形成していった。


(゜゜;)コクッ。d(゜ω゜)(。。;)コクコクッ。

シュルルルルルル!


葉と葉の部分の繋ぎ目には他の踊り子達が待機しており、最終確認を終えたベレーザはレース生地を持って降下していったのであった。


「うーん!バッチリよ!
今日の練習はここまでにしてゆっくりと体を休めて頂戴!(ビルゴリラーマ)」

「「「「はーい。」」」」


動きや演出に手直しを加え、本日5回目の練習を以て終了となった。

ベレーザは本番用衣装を、ヴァモスは他の男性従業員と共に踊り子達が操作していたレース生地の片付けに向かうのであった。




~10分後~

「ドゥさん、カサグリアさん、指輪を持ってきてくれてありがとうございました。(ヴァモス)」

「いやいや、それはヴァンディット嬢に言って上げると良い。(ドゥ)」

「そーそー私達、ただ取ってきただけだしね。(カサグリア)」


片付けを終えたヴァモスは早速、ヴァンディットから余剰魔力が溜め込まれた指輪を取ってきてくれたドゥとカサグリアにお礼を言ってきていた。


「それよりもヴァモス君。
最近ノア君に会ったかい?(ドゥ)」

「え?ノア様にですか?
…えぇ、数日程前に…何かあったのですか?(ヴァモス)」

「いや、さっき会った時、以前まで感じていた威圧感とか気配の類を感じなかったのでおかしいな?
と思ったのさ。
寧ろ両親方と激戦を繰り広げていたからその中心に居るのがノア君だ、って分かった位さ。(ドゥ)」

「えぇ?(ヴァモス)」

「あ、やっぱドゥもそう思った?
何か分かり辛くなった、って言うか、良い意味で″普通″になった感じよね。(カサグリア)」


力を制御した事を知らないヴァモスやドゥ達は思い思いに考えを巡らせていたが、カサグリアはある考えに行き着いた。


「もしかしてだけど、ノア君今″スランプ″に陥ってんじゃないかな?(カサグリア)」

「「″スランプ″?ノア君が?(ドゥ)」ノア様が?(ヴァモス)」

「ノア君って忘れがちだけど、あれでも冒険者4ヶ月目になるピッチピチの15歳よ?
本当だったら同年代の娘達とイチャコラしたいハズよ。
だけど、各方面と関わりを持った事で色~んな重責を抱えた結果、今日になって弾けちゃった、って所かしらね。
ご両親と滅びの森で訓練してたのも、式典の御前試合までに勘を取り戻そうとしてたんじゃないかしら。(カサグリア)」

「「な、なる程…(ドゥ、ヴァモス)」」

※外れてはいないけど、当たってもいない。


日頃のノアの事を考えれば当て填まっていそうなカサグリアの考察に、ドゥとヴァモスはすんなりと納得してしまった。


「あ、あの、スランプから抜け出すにはどうしたら…(ヴァモス)」

「いいヴァモス君?
人がスランプに陥った時は変に気を遣わずに普段通りを装ってあげるの。
気を遣われてる事を悟られると、下手すれば余計に深みに嵌まっていっちゃうかもしれないから。分かった?(カサグリア)」

「は、はい。(ヴァモス)」

「それと、この事はベレーザちゃんには内緒にしておきましょ。
あの娘、ノア君には大分懐いてるから気を遣い過ぎて式典にも影響出ちゃうかも知れないからね。(カサグリア)」

「はい。(ヴァモス)」

「なぁカサグリア…?(ドゥ)」


と、カサグリアの想像がドンドンと一人歩きしていきそうだったので、ドゥが止めに入ろうとした所


「お?(ドゥ)」
「あ。ジョーさんからだ。(カサグリア)」

「え?どうしたんですか、急に。(ヴァモス)」

「ジョーさんから呼び出しの笛の音が聞こえたんだ。
中途半端なタイミングで悪いが、俺達はこの辺でおさらばとなる。(ドゥ)」
「まぁ式典の頃には戻ってくると思うからまた会いましょう。ベレーザちゃんに宜しく言っといてね?(カサグリア)」

「あ、はい。(ヴァモス)」


そう言うと、ドゥとカサグリアの2人は足早に去っていった。


(…カサグリアさんはああ言ってたけど、ボクは恐らくノア様の事だから威圧感とか気配を抑える訓練でもしてるんじゃないかなと思う…
1つの情報だけに左右されちゃダメ、ってノア様も言ってたしな…
取り敢えずクロラさんなら何か知ってるかもだし、後で聞いてこよう。
まぁでもベレーザにこの事は黙っておこう。
言ったら「あわわわ」しちゃうと思うしね…(ヴァモス))


カサグリアの言い付けよりもノアの言い付けを守り、割と正解に近い考えのヴァモスであるが



~ヴァモス近くの木の裏~

(ノ、ノア様がスランプ…!?
あわわわ…大変なのにゃ…クロラさんなら何か知ってるかも知れないのにゃ…(ベレーザ))


しっかり聞こえていたりする。

※別に大事にはなりませんし、ただただベレーザ周りがわちゃわちゃするだけです。





~ヒュマノ聖王国~

場所はヒュマノ聖王国の正門近く。
その周辺には商隊が持ち込んだ荷馬車の中に所狭しと干し肉や塩漬け肉等の保存食、果物等が積まれていた。

これらは全てヒュマノを制圧した元奴隷達が内通者を介して依頼した物品である。

比較的健常な者達はヒュマノの連中から奪った武具類で滅びの森に足を伸ばして狩りに出、3日に1回のペースでやってくる商隊に素材を買い取って貰って食料と交換していた。

だがそれでも奴隷の数は4万近く居る為、交換して貰った干し肉を何分割かにして何とか凌いでいるのが現状である。

そんな厳しい状況にも関わらず、元奴隷達は笑みを浮かべ「前に比べりゃ断然マシだ。」と答えていた。

現在商隊のリーダーを担っているジョーは、元奴隷達のリーダーとして出張っているバンデイラと商談していた。


「エレファント・バッファローの岩皮が60。
討伐の後に何か処理等はしたかい?(ジョー)」

「血抜きをして近くの川で冷やしたが、それ以外は処理してない。
取り敢えず数を稼ぎたかったのでね。(バンデイラ)」

「上出来です。
下手に処理すれば価値が下がってしまうかも知れなかったので。(ジョー)」

「トン豚は流石に重過ぎて引き摺っちまったが、値としてはどうだい?(バンデイラ)」

「トン豚は脂肪層が分厚いのでそこまで気にしなくても大丈夫でしょう。
勿論これらも適正価格で買い取らせて頂きます。(ジョー)」

「それじゃあ剣を10本と、解熱、解毒効果のある薬草の類に頼んでおいた干し肉と塩漬け肉果実を出来るだけ交換してくれ。(バンデイラ)」

「使い物にならなくなった武具や鎧、金属類等あればそれらも交換致しますよ?(バンデイラ)」

「お、それは助かる。
食い物の類は幾らあっても足りない位だからな。(バンデイラ)」


ジョーは当初、無償で物資を差し出すつもりであったが、バンデイラ含めた元奴隷達がそれを拒んだ。

「タダより高い物はない」と一言だけ呟き、直ぐに商談に入って今回で早5回目。
そのスタンスは一切変わる事は無かった。

恐らくだが、″人″に対して心のどこかで線引きをしているのだと思われる。
10年近く虐げられてきたのだから仕方の無い事だろう。

と考察したジョーに、バンデイラから相談事を持ちかけられたのであった。   
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