ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~御前試合の代表決め~

気持ちはありがたいけど色々と怖い

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~滅びの森・獣人国まで30分の距離~

トボトボ…

「……。(ヴァンディット)」
「……。(ラインハード)」

『あ、あのさ、2人共?
黙ってたのは謝るから機嫌直して…ずっと無言は怖いよ…』


はっけよいのこったが去ったので、滅びの森南端から獣人国まで帰還した一行。

寿命の件をヴァンディットとラインハードの2人に話、一先ずは飲み込んでくれたのだが、帰路に着く道中2人はずーっと黙ったままであった。


『この間中級冒険者試験を受けに行った時にクロラさんとポーラさんにバレちゃったけど、てっきりその時に一緒に聞いてたと思ってたから話すのを忘れてました…』


ノアの中では、クロラとポーラに寿命の事を話した際、ノアの影の中に居たハズの2人も同時に聞こえていたと思っていたらしく、そのまますっかり忘れていたのだと言う。


「私その頃″調香師″の資格を取りに行ってたので不在でした。(ヴァンディット)」
「私その頃″魔石精製″の資格を取りに行ってたので不在です。(ラインハード)」

『あぁ…そう言えばそうでしたね、ごめんなさい…』


ずっと黙っていた2人が漸く口を開いてくれた。

何ならヴァンディットが″調香師″の資格を、ラインハードが″魔石精製″の資格を取ってくれたお陰でサキュバスのミダレの一件が解決したとも言えるのだ。


「そう言えばグリードさんも初耳だったハズですのに驚かれないのですね…?(ヴァンディット)」

ズモモ…

《わたし…うまれてまだ3かげつだからじゅみょうとかよくわかんない…》

(((あ、直視していないだけだったんだ…)))


地面から顔を出したグリードは、ノアの寿命の事を聞くと普段の大人びた口調から途端に幼児退行してしまった。

するとここでラインハードが


「あの、ノア君。」

『はい?』

「私、機兵製作をもっともっと頑張ります!」

『え?うん。』

「ノア君が寿命を迎える前に″全身義体化″出来る様に頑張ります!」

『全身ぎ…え?』



全身義体化…要はサイボーグ化の事。



「ぎ、技術力や知識がまだまだ不足していますが、ろ、6年後には各所の臓器を人工臓器に変換していって経過を見て…いよいよって時に全身義体化に着手すれば…
あ、でも難しい臓器は流石に無理ですので、外科手術の技術も身に付けた上で肺とか脳を摘しゅ『ラインハードさん落ち着いて、目がグルグルしてるから。』


ノアの事を思っての事だろうが、色々と怖い。

そして次にヴァンディットが


「ノア様…私の″眷属″になりませんか…?
そうすれば半永久的に生きる事が出来ますよ?」

『え?僕も吸血鬼になるって事?』

「あ、いえあくまで″眷属″ですので、不完全な吸血鬼です。
わ、私の血を多量に取り込めば(ジガヲウシナウカモシレマセンガ(超小声))老いる事も無く、半永久的に生きる事が出来ますよ。」

『よーしヴァンディットさん、小声で話していた部分について詳しく聞こうか。』



眷属化…吸血鬼によって血を分け与えられた存在。少量であれば歳も取るし老いるが、半永久的に生きる事が出来る。
多量であれば発狂して自我を失う事もある。
分け与える側も適切な量は分からない。



「「イヤなんですよぉ、ノア様(君)に先に逝かれるがぁ…(ヴァンディットとラインハード)」」

『気持ちはありがたいけど、最後は人間として逝かせてね…?』


半べそをかく2人の気持ちに感謝はすれど、やんわりと否定するノアであった。


「ぐす…分かりました。
逝去なられた場合、幾つか″中身″を頂きます。
いつか…いつか蘇らせて貰います。(ラインハード)」

『だから怖いって。』

「では私は″血″を頂きます、私の中で記憶と共に生き続けるでしょう。(ヴァンディット)」

『少し…すこーし重くないかな…?』

「骨を遺してくれるなんて出来た娘達だねぇ。安心なさい、ちゃーんと供養してあげるからね。(アミスティア)」

『ちょ、母さんまで悪ノリしないでよ…』

ズモモ…

《じゃあ私は主様の″ガワ″を頂きます。
国によっては″食して供養する″と言う風習もあります故、主様の事は″味として″記憶に遺していきます。》

『え?何僕、寿命迎えたらバラされちゃうの…?』


思わず床に着く自身の枕元に″道具″を持った4人が立っている光景を夢想し、身震いするノアなのであった。





と、そんな事を話していると獣人国の南門が薄らと見えてきた。
体躯の大きな獣人や、商人の荷馬車が楽に通行出来る様に普通よりも大きめに造られている物だが、その大きな門を身を屈めて通る者が居た。


~<千里眼>発動中~

『でっか。
体の造りからして海洋種の殻人だと思うけど…』

「本当。
普通他種族が<人化>した場合、人族と同じ背丈になるものだけど、体の大きな竜種何かが<人化>した場合、どう頑張っても1/100が限界だと言われているわ。
南門から出てきた者が目測で5メル位あるから、元々の大きさは4~500メルはあるというのが分かるわね。
ノアちゃん心当たり無いかしら?(アミスティア)」

『あー…今の説明聞いて門を抜けたのが誰だか合点がいったよ…
<人化>状態で会うのはこれが初めてだからちょっと挨拶行こう、紹介も兼ねてね。』


アミスティアの説明を聞いて腑に落ちた様子のノアは、門を潜り抜けた人物の下へと歩いていくのだった。





~獣人国内~


「…とまぁ、これから多くの苦難が待ち受けているだろうが、応援しているぞ。
何か相談事があれば、いつでもお声掛けをして貰って構いませんぞ。」

「は、はい。ありがとうございます!(デミ)」


スロア領の若き領主デミ・スロアに激励の言葉を掛けたとある貴族は、軽く会釈をするとその場を去っていった。


「ふぅ…これで10家目か…
ローザ、今のフューリ子爵と父との交友関係とか分かるか?(デミ)」

「元領主コモン・スロア様に関係する重要書類は王都の諜報員が全て持っていかれました故、1から探りを入れなければなりません。(ローザ)」

「だよなぁ…(デミ)」


王都での一件に際し、デミの父コモン・スロアが所有していた書類、帳簿等の一切を押収されていた。
それによってスロア領が所有している他貴族の情報は皆無に等しかった。

情報を集めるには人手、時間、資金等莫大な諸々が必要になる。
獣人国と海洋種から援助を受けて岩塩採掘に着手し始めた現在のスロア領では、まだまだ難しい課題であった。


「ご安心なされ。
私″つかえるキノコ″ことクリストフ、闇夜に紛れて隠密行動、諜報活動何でも御座れ「奇抜な見た目と真っ白ボディの特大キノコが闇夜に紛れられる訳が無いだろう…(デミ)」


肩を落とすデミとローザの後ろで決めポーズを決めつつ、そう宣言したつかえるキノコのクリストフだが、貴族との挨拶回りや、覚えなければならない事の多さに少し疲れの色が出たデミに一蹴されるのであった。
 
と、そこに


スッ…

「フューリ・スティラー子爵。
僅か一代で綿花産業で財を成した若き貴族。
善悪の線引きをしっかり見極められる方です。
他貴族から後ろ暗い話を幾つか協力する様打診された時もありましたが、調べた限り一切加担した事の無い真っ当な部類の貴族ですよ。
…まぁこの位の情報なら大丈夫でしょう。(ナサケ)」

「あ、あなたは王都の諜報員…どうしてここに…?(デミ)」


3人の直ぐ近くの路地裏から黒装束姿の王都諜報員ナサケが姿を現したのであった。
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