ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~全ての始まり~

10年前、全ての始まり。~本当に全ての始まり~

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【活殺自罪】…【支配】の固有スキル。
自身がこの世に生を受けてから今に至るまでの間に積み重ねた″罪・自責の念″に囚われ(支配され)る事で、その罪の重さに見合った死を自らが選択する。

つまり、″罪の意識″が強い者程絶大な支配力に縛られるのである。



幼少の頃に起こった大爆発で家族所か想い出の記録まで全て失い、打倒人類軍を掲げて復讐の為だけに今まで生きてきたアクロスに″罪の意識や自責の念″などあるハズも無く、ツェドが放った【活殺自罪】は喰らいはすれど、ある意味不発に終わったのである。


グボッ…ズシャッ!

ビチャビチャチャッ!

「ぅぶっ!っげぇっ!」


背後から貫かれ、体内から魔力消失(マジコ・キャンセル)を諸に食らったツェドは、完全に魔力枯渇状態になった。

だがギリギリの所で意識を保っているといった所であった。

そんな状態のツェドに、出血多量の危機が迫りつつあった。


コチッ。キュゥウウン…

「hxa…hxa …(はぁ…はぁ…)
imndhtndnmmngs-mtstk…dgkrhmuhyu。(今ので殆どの魔物が消滅したか…だがこれはもう不要。)
s-barny-d…(勝負ありだ…)
anskktdhmuttagrndru…(あの出血ではもう立ち上がらんだろう…)」


【魔王】アクロスは起動状態であった『地獄門』の停止措置を取る。
周りを見渡せば、周囲を埋め尽くさんばかりに湧き出していた魔物は姿を消し、半死半生の魔物だけがその場に留まっている位だ。


 ヒュー…ヒュー…グルルル…


その内の一体は、ツェドの方を向き歩を進めていた。 
恐らく出血多量で同じく半死半生のツェドを捕食しに向かうのだろう。

出血多量で死ぬか、食われて死ぬか、どちらにしろアクロスにはどうでも良かった。


ズッ…ズリ…

「…sryrmkkhdkd…(それよりもここは何処だ…)
jnrignntnisutknnkdtnissrrtk…?(人類軍の転移装置か何かで転移させられたか…?)
kri…tkk…?dgthdkd…?(暗い…地下か…?出口は何処だ…?) 」

ガブジュッ…!

「……。」


【魔王】アクロスは周囲を見渡して外への出口を探す。すると背後では何かを噛み砕く音と湿り気のある液体が滴る音が響いた。

後ろを振り返らなくとも分かる。
捕食されたのだと言う事が。

弱々しい反応が終わりを告げたのをアクロスは感知したのであった。





「【千離同封(センリドウフウ)】。」

「e…?『ガカッ!』(え…?)」


【魔王】アクロスの背中に衝撃が走ったかと思うと、急激に力が抜けていく感覚を覚える。
アクロスには光の柱が突き立ち、その場から動けなくなっていた。

背後からはツェドの声が聞こえてきたが、先程の魔力消失(マジコ・キャンセル)の影響で意識を保っているのがやっとのハズである。

アクロスは思わず後ろを振り返ると、魔物の首を食い千切り、逆に捕食して僅かばかりの魔力を回復しているツェドの姿があった。

口からはどす黒い魔物の血を垂らし、戦闘によりボロボロになった装衣の下から覗く肌には赤黒い炎の様な模様が見えた。


「ゴホッ…悪いが貴様の様な存在を外に出す訳には行かんのじゃ。子供達に悪い影響が出たら敵わんからな。」


ツェドの足下に転がる魔物の死骸は、先程【血の盃】によって傀儡にした魔物の内の1体であった。

ツェドはアクロスによって背後から貫かれ、魔力消失を発動するまでの僅かな時間に、傀儡にした魔物に支配領域を展開させて魔力消失の影響を軽減させていた。

その後自身の下まで向かわせ、捕食する事で、僅かとは言え魔力の回復に漕ぎ着けたのである。

とは言え、魔力を回復したのは2つ目の固有スキルを発動する為でも、支配領域を展開して出血を止める為でも無く、魔力枯渇状態から脱して意識を保つ為である。


「ゲホッ…貴様を処す為の魔力も体力も正直ありゃあせん…
故に″儂自身を封印の要とする″術を施させて貰ったわい…
どうせ儂はこの国の王じゃ…最低でも50年位はこの地に居る故、封印の要としては十分じゃろ。」

「gxa!woooo!!!(がぁあっ!ぅおおおおっ!)」ギギッ!ギヂッ!


ツェドは咳き込みながらもそう説明しつつ来た道を戻り始める。
【魔王】アクロスはその間必死の抵抗を見せるが、光の柱はビクともしなかった。


「【千離同封】は儂が死ぬか、儂が解除せん限りは解く事は敵わんぞ。ゴホッ…
逆に言えば儂が生きとる間はこの地で貴様は封印され続ける。
権限は儂にあるから儂以外には認識出来ん様にしておく…
暫し療養した後また会おう。」

「mt!krwtkksmxa!!(待て!これを解け貴様ぁっ!)」


叫ぶアクロスだが、ツェドは気にも止めずに来た道を戻っていくのだった。



【千離同封】…【支配】の固有スキル。
自分自身を封印の要とし、対象に封印作用のある光柱を突き立てる。
発動者が死ぬか自分の意思で解除しない限り解く事はほぼ不可能。

それ以外で解除する条件として、発動者以上のステータスの持ち主である事。
又は最高レベルの解除スキルを持ち合わせている事、位である。





コッコッコッ…

「ゲホッ!ゴホッゴホッ!…くそっ、目が霞んできおった。
体力を消耗し過ぎた様じゃな…」


地上を目指すツェドであったが、先程から発生し出した咳きは強さを増し、身体に異常を来してきた。

今は止まったが、出血多量であったり先程までの戦闘のダメージがここに来て目に見える形で現れたのでは、と思うかもしれないが、原因は別にあった。

ここで2話前の話を思い出して欲しい。



~タイトル:10年前、全ての始まり。~謎の存在~より抜粋~

″2759年
魔族側は人類世界から送り込まれたクローン兵400万人に″死霊術″を施した上で送り返す。
新鮮な同族の肉を求めて跋扈し、都市部に甚大な被害を出し、地獄の様相を呈す。

その際の混乱で伝染病研究所から老人、子供への感染力が強い病原菌が流出。
抗体が造られるまでの約6年に渡り侵攻が停滞する事となった。″



城の者達が行った召喚によってこの世界に喚び出されたのは、【魔王】アクロスだけではなかったのであるが、それを知る者は居ない。

なのでこれから起こる事は、偶然に偶然が重なった″結果″である。





コッ…  ォオオ…

「…何じゃ…ゴボッ!…これは…」ビチャチャッ…


ツェドが地上に戻る頃には口から止めどなく血が溢れ、意識も朦朧としていた。
だが、そんな事を気にする素振りを見せず、視界に広がる光景を見て愕然としていた。

ツェドが見たものは、魔力消失によって魔力枯渇状態から復帰出来ずに倒れ伏す奴隷の獣人達が身動き取れずに業火に呑まれる光景と、それを楽しげに酒を煽りつつただ眺めている城の者達の姿であった。

篝火の炎が広まったが、消火出来る者・動ける者が居なかった為、奴隷の獣人達が住まう区域に延焼してしまったのであった。

では何故奴隷の獣人達は身動き取れず、城の者達は自由に動けていたのか。

それは、召喚の為に用意していた押収品のハイマナポーションを″奴隷の獣人達に一切使用する事無く″城の者達だけが使用したからであった。


「…な、何をしてお『ゲホッ!ゲボッ!』
早く皆を助『ゴボッ!ゴホゴボッ!』」

ズシャッ!


火の海と化す城下に、ツェドが周りに呼び掛けようとするも、既に限界を超えていた為その場に崩れ落ちた。


「おいおい…何でここに爺が居るんだ…?」
「知るかよ、それよりも地下の召喚陣は死体だらけだ!計画がバレたんだ!」
「この爺をさっさと始末しちまおうぜ!もう死に掛けだしよ!」
「いや、待て。
この爺には多少なりとも利用価値がある。
隷属の首輪を着けて私室に縛り付けておけ。」
「血反吐吐いてるが…?」
「知らん、死なん程度に回復魔法でも撃っておけ。」
「火災はどうする?」
「構わん、どのみち更地にするつもりだったし丁度良い。動けん奴等も面倒だからついでに間引きしておけ。」

「そうだな。」







~スパルティアでの一件から数日後~

「あ~晴れて良かったわ~。
絶好のピクニック日和ね。(アミスティア)」

「森の番人の依頼も無事終わったし、謎の魔力切れも解消されたし、言う事無しだ。(レドリック)」

トテテ…

「おとうさん、おかあさん待ってよぉ…」

「あ、ごめんごめん。(アミスティア)」
「ほら、もうちょっとで頂上だ、頑張れ~ノア。(レドリック)」

「うん!…っ、コホコホッ…」


この年、治療法が一切判明しない謎の流行り病が発生。


「あら?ノアちゃん風邪?(アミスティア)」


幼い子供や老人が主であるが、発症率は2割と低い物であった。


「お腹出して寝たんじゃないか~?(レドリック)」


だが1度発症すると治療法が皆無であるとまで言われ、今日まで明確な対処法が見付かっていない恐ろしい病である。


「そんな事…ゴボッ!」ビチャチャッ!


この日、とある村に暮らす幼い男の子がその流行り病に罹ってしまったのであった。
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