ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

対″変なの″

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『『ジュゥウウ…』』グヂュグヂュッ…『『ズズズズ…』』 ズルンッ!『『『グボッ!』』』


「おいおい…ムカデの死骸まで吸収し出したぞ…(レドリック)」

「本当に手当たり次第って感じね…痛たたた…(アミスティア)」


魔獣化スライムから少し離れた所で足を折ったアミスティアの治療をするレドリック。
その間にも魔獣化スライムはノア達が討伐したアースイーターの死骸をも取り込み始めた。

すると体内の強酸に触れて白煙が上がるも、魔獣化スライムは気にする事無く吸収していく。

すると忽ち体積が増大していき、蜘蛛の腹部からはムカデの胴体が、頭部からは竜の頭、脚部は無数の人の腕へと変化していった。


「…何あれ…まるで合成獣(キメラ)だわ…
ノアちゃん大丈夫かしら…(アミスティア)」

「なーに、ノアなら大丈夫だ。
寧ろ″ああいった相手″は俺達よりも得意かも知れんぞ。(レドリック)」

「もぅ、無責任な言い草「いや、これは本心で言っている事だ。」…え?(アミスティア)」


楽観的なレドリックの物言いに、アミスティアが呆れ返っているが、レドリックは確固たる自信がある様だ。


「実はこの間、冒険者ギルドに行ってノアの戦績を見せて貰ったんだが、アイツこの3ヶ月の短期間でしばしば″特殊な奴等″ばかり相手にしているんだ。
アルバラストでは『不死竜ヒュドラ』と。
フリアダビア奪還作戦では、偽物とは言え【魔王】幹部の竜人と。
王都では例の″造魔核″を取り込んだコモン・スロア、通称『ヒュドラ変異体』。
獣人国では俺らも数回しか戦った事の無い森の番人。『時の迷宮』では【魔王】同様に時を操る存在と。
そしてお伽噺の存在とばかり思われていた『クラーケン』とは、半死半生ながら競り勝ったと聞く。
下手すれば俺達よりも″そちら″の経験は豊富だし、それらを生かして渡り合えるだけの技術は″俺達″が授けた。
何を心配する必要がある?(レドリック)」

「む、むー…そりゃそうだけど…
母親としては、いつまで経っても息子は気掛かりなモノなのよ!(アミスティア)」

「はは、まぁそれに限っては俺も同意見だが、今のノアは酷く落ち着いている。
あの状態のノアは″俺達でも手こずる″し、″彼″も居るから大丈夫さ。(レドリック)」





ザンッ!ズバッ!ゾバッ!ドバッ!

ズルンッ!『『ボコボコ…』』グボッ!

(『…なる程ね…流石は″造魔核″だ。
ぶった斬ってもぶった斬っても即座に再生して襲い掛かってくる。』)

(『王都で″造魔核″に侵されたコモンを討ち取れたのは、人間を取り込んだ事で得た″傲慢さ″を突いたから、だったな。
今回は純粋な″モンスター″のみを素体としている分厄介極まりないとばかり思っていたが…』)


ゴァアアアアアアアアッ!


(『『再生力と生命力が凶悪なだけで、脅威度合いで言えば大した事無いな。』』)


不気味な見た目へと変化した魔獣化スライムからの猛攻を迎撃中のノアであったが、思った程の脅威では無かった事に肩透かしを食らっていた。

理由としては簡単で、膨大な魔力を得て魔獣化したとは言え、元は″スライム″である。

驚異的な再生力と生命力、他のモンスターを取り込んで有用な部分を自身に反映させる特性を持ってはいるが、攻撃は単純で戦略等も無く、狡猾さも無い上、膨大な魔力を攻撃に転じる知能も無い為、対処が容易であったのだ。

普通の冒険者からすれば、前述した″驚異的な再生力と生命力″ですら脅威となるものだが、この3ヶ月、″普通じゃない冒険者生活″を送っていたノアにとって、″その程度″日常茶飯事なのである。

そんなノアを相手にした魔獣化スライムにとって不運だったのは、ノアが愛刀である″荒鬼神ノ化身″を所持していた事だろう。

荒鬼神(アラキガミ)と言う剣を、ドワーフの技術とグリードの火力でもって鍛え直した結果、魔剣同様の性能を持つに至っているのである。



【荒鬼神ノ化身専用戦技:起点技】『大喰(オオグライ)』…この武器を使用する事で、対象(生物、魔法問わず)の魔力を分解、吸収し、武器に刻まれた刻印に溜める事が可能。



つまり、膨大な魔力を保有する魔獣化スライムをぶった斬り続ける事で、刀身に魔力を充填出来るだけでなく、魔獣化スライムの魔力を枯渇させる事も容易なのだ。 

その結果


ズバッ!ドババッ!ザンッ!シュパパパパッ!ザシュッ!ズバァッ!


「お…?
何か魔獣化スライムの体が透き通って来てないか…?(プレ爺)」

「あ、ホントホント!
さっきまであんなにどす黒かったのに…(カナミ)」


ノアが繰り出す斬撃を受ける度、魔獣化スライムから魔力が抜け、代わりに荒鬼神ノ化身の刀身に魔力が蓄積されていく。

それに応じてスライムの体色が黒から透き通る黒に変化、そして明らかに先程よりも再生力が落ちていった。





~5分後~

ヒュンヒュンヒュン…シャコン!

『よし…もう良いんじゃ無いかな…?』

ぷるるん、ぽよん。


ただひたすらに斬り刻んでいたノアが徐に荒鬼神ノ化身を腰へと戻した。

ノアの目の前には、体組織を削りに削られて体積が直径1メルまで小さくした、無色透明なスライムがぷるぷると震えていた。

体が無色透明になって分かった事だが、スライム本体の″核″と″造魔核″が完全に融合していた為、魔獣化ではなく普通のスライムに戻ったとはいえ、後々悪さを仕出かす恐れがあるので処分する事となった。


『グリード、残さずしっかり食べましょうね。』

ボゴォ『ゴキュッ!』アンッ!


ノアから指示を受けたグリードがスライムの直下から飛び出し、一瞬の内に丸呑み。
″造魔核″は断片でも残すとタチが悪い為、食べ溢しの無い様にお願いした。


ゴクンッ…《…薄いですわ…》

『すっからかんになるまで魔力を吸収したからね…』


現在ノアの持つ荒鬼神ノ化身の刀身に刻まれた刻印は、4本共輝いていた。
つまり満タン状態と言う訳である。


「…わぁお…
意外と呆気なかったわね…(フィリア)」

『まぁこの剣と相棒(グリード)のお陰ですよ。
どちらも欠けてたら多分手こずってますから。』


存外アッサリと終幕した事で、周囲で静観していた暗殺者集団や両親、穴の上で待機していたヴァンディットやドワーフ達もノアの下へやって来るのだった。


~大分短いですが、次の話から章の中に含まれている『解放』編となります。~ 
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