ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

遅いよぉっ!!

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「私達は出会い方が悪かった。
あの日あの時、少しでも互いに意思疏通が取れていれば、私がこの場所に封印される事も。
貴方は国を奪われる事が無かったかも知れない。」

「そう…じゃな…
だが過ぎてしまった事を悔いてもどうしようも無い。
失った時間を戻す事は出来ないのじゃからな。(ツェド)」

「…てっきり罵詈雑言を捲し立ててくるモノだと思っていたが…」

「先の話が真であれば、お主も儂同様巻き込まれた側と言う事になる。
その結果儂の国が″ああなって″しまった事についてお主に責任を問うつもりはサラサラ無い。(ツェド)」

「…そう…か…」

「…儂との昔話はもうエエじゃろ。
これからは未来(さき)の話をせんか?(ツェド)」

「…さき…?」

「お主達はここから発つ様じゃが、ここを発って何を成すつもりじゃ?(ツェド)」

「そもそも私は、『人類軍』掃討を目的として″造られた魔族の王【魔王】″だ。
世界線が違えど、星が違えど、年代が違えど、思想が違えど、私が居る限りやる事は変わらん。」

「…生き残った意味を考えようとは思わんのか?(ツェド)」

「これは″私個人の想い等では無く、全『魔族』にとっての悲願″だ。
中途半端では『人類軍』を窮地に追い込む為に尽力してくれた同胞、被害者、遺族3000万人にどう顔向けしたら良いのだ?」

「……」






「…ド…の。」

「…ェドど…?」

「ツェド殿!(ナサケ)」

「…ん?…おぅ、済まんなナサケ。(ツェド)」

「…先程の事気にしてるのですか…?(ナサケ)」

「…まぁ、な…
割と話が通じる相手じゃったから、もう少し上手い説得の方法が無かったかのか…とな。
普通、自然発生的に産まれ落ちる【魔王】は我欲にまみれ、不条理を振り撒く故、大して頭を捻らんでも力業で捩じ伏せれば良い。
じゃが、奴はここに来る以前から途轍も無いモノを背負わされとる。
例えそれを叶えたとて喜びを分かち合える仲間は誰1人居らん。
″『魔族』の悲願″と言っとったが、奴の中で楔となって縛られておる故、儂らが何と言ったって意地でも成し遂げようとするじゃろな…(ツェド)」

ザッザッザ…

「…こう言っちゃアレだけど、フリアダビアの偽【魔王】の幹部を相手取ってた方がマシだったかも。
私達が″こっち″に来た時は大して動揺しなかったけど、【魔王】の言う事がホントなら気が狂っちゃうかもね。(バラス)」

「…そういえばお主等は、フリアダビアでミユキと共に奪還作戦に従事しておったんじゃったな。
どうじゃ?お主等の見立てではミユキはあの【魔王】と対抗出来ると思うか?(ツェド)」

「無理ね。(バラス)」
「無理だな。(アルキラー)」
「無理でしょうね。(ナサケ)」

「まぁそうじゃろな…
勝手に喚び出されて勝手に【勇者】を冠されたミユキにはせめて自由にこの世界で人生を謳歌して貰いたかったが、更に辛い想いをさせてしまうのは心苦しい事この上ないわい…(ツェド)」


滅びの森に出来た大穴を登り、地上へと上がる【魔王】捕縛組の一行とツェド。

″【魔王】は【勇者】でないと滅ぼせない″。

という制約がある以上、本人の意志とは関係無く【勇者】の介入は必要不可欠なものとなる。

ミユキにはせめて、不自由無くこの世界で暮らして欲しいと願うツェドにとって何とも歯痒い事であった。


「そう言う意味だと、″彼″の方がこれから忙しくなるでしょうね。(ナサケ)」

「そうだな。(アルキラー)」

「ん?″彼″…?
あぁ、【鬼神】の事じゃな。(ツェド)」

「えぇ。
ただでさえ元の【勇者】以上に名が広まっていると言うのに、今回の防衛戦では全くと言って良い程に被害を出していない。
今回の【魔王】捕縛作戦は公には報じませんが、何れは知れ渡る事になるでしょう。
その時は″戦力として見られていない両【勇者】″に代わり、突起戦力として数えられる事になるでしょうな。(ナサケ)」

「…ふむ…(ツェド)」ザッザッ…


ツェドは少し離れた位置に居るノアを見やり、歩を進めていった。





プスッ!『痛っ!』プスッ!『痛たた!』プスッ!『痛い!』プスッ!『痛いよヴァンディットさん…?』

「ノア様?私言いましたよね?
″縫い目が破れちゃうので激しく動かないで下さい″って。(ヴァンディット)」

『…はい、言ってました…』

「でもお母様を助ける為でしたのでこれ以上とやかく言いません。
それと普通の縫い糸では無く、″傷口を傷め難い私特製の血糸″で縫います。
今までの経験から、ノア様は後1、2回は私との約束を破りそうですからね。(ヴァンディット)」

『ぜ、善処します…』


腹部の血管を再び縫合して貰うノア。
先程縫った直後に秒で破った為、ヴァンディットは少しむくれていた。

今度は特製の血糸で縫われているので、「いつでも破って貰って構いません事よ。」

と言われたが、防衛戦も【魔王】騒ぎも終わっただろうから治療に専念します、と平謝りしていた。

そこに


「どうやら手酷くやられた様じゃな。
スマンな、加勢に行けんで。(ツェド)」

『あぁいえ…
腹に空いた穴の5/6は自分のモノなので…』

「…はぁ…?(ツェド)」


【魔王】配下イスケルダに対して行った戦法をツェドに説明したノアだが、流石に呆れられたと言う。





「お主には…助けられてばかりだな。
ミユキの事も、子供達の事もな。
ミユキにはこの間会うたから息災だとは分かるが、子供達は元気かな?(ツェド)」

『えぇ、もう殆どが健康体になってお肉をモリモリ食べれているみたいですよ。』

「…そうか…
それが分かれば思い残す事は無い。
病に臥せって国を乗っ取られ、手を離れてしまったとは言え元は儂の国じゃ。
自国から【魔王】が出て来てしまったからには、責任を取るのが儂の最期の責務となるじゃろうな。(ツェド)」

『…ツェドさん?』

「【鬼神】よ、儂はこれから老い先短い人生を【魔王】討伐に費やしたいと思う。
お主の様に若い者は、小難しい事に首を突っ込まずに人生を謳歌してくれ。(ツェド)」


ツェドの目を見ると、覚悟の決まった据わった目で話していた。
命を賭け、ミユキやノアを巻き込まずとも【魔王】を捕縛せんと心に決めている様に思われた。


『…それは『…ュルルルルル…』ん?』

「ん?(ツェド)」


そんなツェドに対してノアが返答しようとしていると、上空から何やら落下してくる音が次々と耳に入ってきた。


ドンッ!『『ズドンッ!』』ドドンッ!『『ドガッ!』』

「おっ!?何じゃ何じゃっ!?(ツェド)」


ノアや他の人達の周囲を取り囲む様に大きな岩の塊が次々に落下。

敵襲か、と各々が武器を手にし出す中、ノアは落ち着いた表情で


『大丈夫です。』

「え?」

『…正直今の今まですっかり忘れてましたよ…』


次々に飛来してくる岩を見ても動揺する事無く、ツェドや周囲の者達を落ち着かせる。

更にその直後


ゴォオオオオオオッ!

『『『ズドォオオオオオオンッ!』』』

「おいおい!これでも落ち着いてろと言うのかっ!?(ツェド)」


一際大きな岩が飛来し、爆風が発生。
辺りは暫し砂煙に包まれた。


オォオオオ…

〔『…いや、済まない…
海中と地上とで、これ程までに手続きが掛かると思っておらず、来るまでに大分時間が掛かってしまった。
もしかしてだが、もう終わってしまったか?』〕

『終わった。』

〔『…遅かったか…?』〕

『遅いよぉっ!!』


地上における初の派兵となった為、大量の申請、要請に時間が掛かった為に到着が遅れたエルダークラーケンが戦闘集団『殻壁(カクヘキ)』を連れて漸く到着。

何もかもが終わった直後だったので、珍しくノアが感情を露にしていた。





~『廃都』最深部~

「よし、それでは″羽化″を開始しろ。」

「はっ!」
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