ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
788 / 1,117
獣人国編~国交式典・解放・擬似的大氾濫~

ゴーホーム

しおりを挟む
『父さん母さん!』

「ん?何だ?(レドリック)」
「何?ノアちゃん?(アミスティア)」

『ヴァンディットさん、ラインハードさん!』

「は、はい?何で御座いましょう…?(ヴァンディット)」
「何?何?ノア君?(ラインハード)」

『バラスさんにアルキラーさん、その他の【暗殺】の方々!』

「なーに?ノア君?(バラス)」
「どうした?(アルキラー)」

(((((((その他…(その他の【暗殺】達))))))))

「何じゃ何じゃ?急に点呼取り始めたぞ?(バド)」
「恐らく坊が何か閃いたんでねが?(ルド)」
「んだらば武器の準備ばせんとな。(ロイ)」

「えー…でも″アレ″相手にどう立ち回れば良いんだろう…(エスメラルダ)」


巨大なサナギから羽化中である、″造魔核を内蔵されたエボル・バトフライ″を見たノアは、突然周囲で呆然と佇んでいた者達へ次々と声を掛けていく。

上体だけで既に50メルを超える蝶、″エボル・バトフライ″は、翅が引っ掛かりモタついている様子。

ノアは恐らくその隙に作戦を立てているものと思われた。


『傭兵の皆さん!エルグランドさんにツェドさん!
クリストフ…は一旦保留!「へ?」
ドワーフさん方!エスメラルダさん!』

「「「ヨシ来た!」」」
「よーし!頑張るわよー!(エスメラルダ)」


唯一『保留』と言われたつかえるキノコのクリストフがすっとんきょうな声を上げる中、その後も次々に名を上げていく。

そして


『今名前を呼んだ方々!
″即刻獣人国に退避″して下さい!』

「「「「「「「「「え…?」」」」」」」」」

「よし、任せたぞノア。(レドリック)」
「怪我しない様にね、ノアちゃん。(アミスティア)」


名を呼んだ者達に対してノアが告げたのは、立てているモノと思われた立案作戦の参加呼び込み等では無く、″退避勧告″であった。

そんな中でノアの両親であるレドリックとアミスティアの2人は、アッサリと獣人国への帰路に着こうとしていた。





「…ん?と言う事は、私に対しての『保留』と言うのは『残留』という事ですかな…?(クリストフ)」

『うーん…何か漠然とだけど、クリストフは頼りになるんだよね…』


顔は無いのにウキウキした様子が見て取れるクリストフに残留を促すノア。


『だからといって皆さんが戦力にならない、とかそう言う訳では無く、″あの″【魔王】が放ったと思しきデカい蝶に対処出来そうなのが、僕ら(ノア、クリストフ、エルダークラーケン(『殻壁』含む)、グリード)位なので、その上での判断です。』


レドリックとアミスティアがアッサリと身を引いたのは、先程の魔獣化スライムに対して有効打が無かったからだ。

再び″造魔核″絡みのモンスターが現れたとなれば、下手すれば殲滅の邪魔になるのでは、との判断である。

それとノアは、獣人国に両親が居てくれれば万が一獣人国にエボル・バトフライが飛来しても、倒すまではいかなくとも迎撃してくれるハズだ、との考えである。


『『『『バキバキバキバキ…!』』』』ズルリ…


『マズイ!もう翅が出て来た!?
皆さん!思う所はあるでしょうが急いで避難して下さい!
僕らはこのままヤツの所に向かいます!
あぁそれとヴァンディットさん!また約束破っちゃうかも知れません!先に謝っておきます!』

「ほらね!(ヴァンディット)」


純白の身体から延びる銀色混じりの翅が巨大なサナギの中から現れた。
これが普通の蝶の身体構造であれば後は胴体を残すのみなので、飛翔するのも時間の問題と言えた。

とは言え、唐突に退避勧告を宣言された者達からは、さぞ反感を食らうモノと思われた。

のだが


「なぁんが言っちょる!こん防衛戦の頭は坊じゃろ!
なら従うのが道理っつーもンじゃ!(バド)」

「「んだんだ!」」

「言っても無駄だと思うが、無茶だけはするんじゃないぞ!(エルグランド)」

    
と、最初は驚いていたがすんなり受け止めてくれた。

そんな中


「…私の名が上がっていませんでしたが…?(ナサケ)」

『ナサケさんは王都の諜報部員ですから、情報を得ずに引き下がるのは如何ともし難いでしょうから、諜報活動に専念してくれるなら同行して貰って構いません。』

「ふむ、気を遣ってくれて助かるよ。(ナサケ)」


多少なりとも【魔王】が絡んでいる為、何もせずに獣人国に退避しては後々大目玉を食らう事は明白。

なので諜報目的での同行を許したのであった。





『『『バキバキバキバキ…ズルンッ!』』』

『『『『ピキピキピキピキ…!』』』』


『むっ!羽化しきったみたいだ!それに翅が乾く速度が早い!
取り敢えず皆さんヤツの下に向かいましょう!』

「「「おうっ!」」」ダッ!

〔『うむ!』〕ズシンッ!ズシンッ!


半透明の皮膜で形成された巨大なサナギから出てきた″エボル・バトフライ″だが、通常の蝶よりも翅の乾燥が早く、直ぐに飛び立とうとしている様であった。

するとノアが周囲に呼び掛け、残留組等と共に駆けていった。





~サナギの直ぐ近く~


『『『『パキパキ…ピキピキ…』』』』

[フーッ…フーッ…フーッ…オォオオオ…]


「よーし、取り敢えず羽化は成功したみたいだぜセルト。
あの時この″森の番人″を捕らえといて正解だったな。」

「あぁ。このデカい蝶(エボル・バトフライ)は、羽化する際に莫大な魔力を消費する。
それを補う為に″造魔核″を埋め込んだが、それでも解消されなかった。
【魔王】様が長い年月を掛けて溜め込んだ魔力を″羽化″に使う等畏れ多いからな。」


巨大なサナギの側面に機械仕掛けの杭でもって磔にされ、呻き声を上げている森の番人は、萎れ切った枯れ枝の様な体をしており、今にも朽ちてしまいそうであった。

この森の番人は、先日イスケルダが″はっけよいのこった″形態の際に捕獲したモノで、造魔核を内蔵したエボル・バトフライの羽化に用い、『廃都』からの離脱を目的としていた。

その結果、生命の危機に瀕した森の番人が、テリトリーである『廃都』中の森に溜め込んでいた魔力を自身へと流し込み、何とか生き長らえていた。

その代償として【魔王】達の思惑通りエボル・バトフライは羽化し、『廃都』方面の滅びの森が消失。

擬似的大氾濫の発生に繋がったのであった。


「んじゃあ早い所乗り込ん

『『ピコーンッ!』』


″高速で接近する存在を感知!距離は600!
 1体は1時間26分前に接触あり!″


「さっき逃げたヤツか?」

「だろうな。
だが、″1体は″と言ったから複数、そして新手の様だな。」


″高速で接近する存在を感知!距離は500!
情報を更新します!
1体は転移を繰り返して高速で接近!この存在は23分前にイスケルダ様と接触あり!
正体不明の1体は地下を高速で進み、1体は接触のあった存在と並走!
巨大な正体不明の存在は小型の存在約30を引き連れて接近中です!″


「23分前…?あのガキか!」
「待て、巨大な存在とは…?」


ノアの接近を予感して昂り出すイスケルダに対し、″巨大な存在″が気掛かりなセルトが遠方を確認する。


『『『『ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!』』』』


「…一体アレは何だ…?」


セルトの視界には、身長50メルを超える<人化>形態のエルダークラーケンが飛び込んできたのであった。 
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...