ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

状況確認

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「ちょっと待って下さいラインハードさん!
えっ!?僕10日間も寝ていたんですかぁっ!?」

「正確には9日と11時間12分になりますのでご安心を。(ライリード)」

「ホッ、そうなんだぁ…ってならないよっ!」


驚きのあまり、思わずノリツッコミしてしまったノアは、ここに来るまでの間に感じた違和感を次々に吐露し出した。


「昨日までここら辺を埋め尽くしていた貴族や観光客がガッツリ減ったなぁ、って思ってたのはまぁ良い。
通りで宿屋のおばちゃんから払ったハズなのに「10日分の宿代は気にしなくて良いからね。」って言われたから、あれぇ?って思ったよ!
それに異様にお腹空くし、異様に体固まってるし、昨日より一気に暑くなったなぁって感じたよ!」

※10日前:25℃  本日:30℃


「あ、じゃあこんなに閑散としているのは、お祭り気分が終わって皆日常生活に戻ったからなんだね?」

「うーん…そうとも言えないんだよねぇ…(ラインハード)」

「え?」

「…一先ず防壁の上に行きましょう、見て貰った方が早いと思いますので。(ラインハード)」

「え?え?」


困惑するノアだったが、一先ずラインハードの後ろに着いていく事にした。





~ダンジョン『宝物庫』前~


「それじゃあこれから新ダンジョンマスターとしてお勤め頑張ってね、ライリード!
必要な情報は記録してあるから後で確認しといてね。(ラインハード)」

「りょーかい!新しいダンジョンマスターとしてこれから頑張っちゃうよー!(ライリード)」

(あ、これ引き継ぎ式か。)


『宝物庫』前までやって来た所で、元ダンジョンマスターラインハードから新ダンジョンマスターライリードに業務委託が行われる。
つまりここでライリードとはお別れになった。





~防壁~

テクテク…

「ここまでの間に兵士さんや騎士さん居なかったけど入って良かったんですか?」

「3日位前までは私達含めて冒険者や生産職がひっきり無しに通行してました。
今は防衛も終わりましたが、随時警戒中ですので通行を許されているんです。(ラインハード)」
 
「へぇー…え?僕が寝てる間にまた防衛戦してたの?」

「えぇ、獣人国に戻ってきてから2日後の深夜に。
恐らく廃都の滅びの森が消失した時に獣人国に向かわず、方々に散っていったモノではないかと言われています。(ラインハード)」

「大丈夫だったの?」

「数は総数の1割、朝方には2割がやって来ましたが、防衛設備は万全であった事、その時には何人もの上級冒険者が参加してくれました。
お陰でその日の夕方には終結していました。(ラインハード)」

「結構時間掛かったんですね。」

「ノア君の殲滅速度がおかしいんですよ。
廃都方面の滅びの森のモンスターは最低でも上級冒険者パーティ2組必要ですから、1体来ただけでも現場はてんやわんやでしたよ。
しかもやって来たモンスターの大半はあの強酸ムカデ、アースイーターって名前なんですって。(ラインハード)」

「あぁ、あのムカデね…」


などとノアが寝込んでいる間に発生した防衛戦について話していると、防壁上に到着。
そこでは何人かの兵士達が警戒中で、防壁の外を注視していた。

その内の何人かがノアに気付いて感謝の言葉を次々に投げ掛けてきていた。


「あっ!【鬼神】殿目覚められたんですね!」
「「「お疲れ様です!」」」
「体調は宜しいんですか!?」
「「防衛ありがとうございました!」」

「え、あ、どうも…」


感謝を述べられながらもノアとラインハードは外を見渡せる場所まで移動。
そして眼下に広がる光景を見て思わず押し黙ってしまった。

何故なら、外の地面には小規模のクレーターが幾つも空き、所々焼失、元々の獣人国方面の滅びの森も2~3割破壊されていた。

防壁の方も所々が崩れ、アースイーターが吐き掛けたのだろう酸によって溶け落ちている所があった。


「…まぁ見ての通り激戦が行われた訳なのですよ。
時間も掛けられなかったので、高火力の魔法攻撃や大砲による物理攻撃で一気に殲滅するという戦法を取っていました。
当時のノアさんよろしく、ご両親が最前線に赴いてモンスターの敵視を取っていたから出来た戦法ですね。(ラインハード)」

「あ、父さんと母さんも参加してたんだ。
強かったでしょ?」

「えぇ、そりゃもう…
″あれ″を見たら、そんな両親に育てられればノア君も強くなるわ、と思いましたね…(ラインハード)」


防衛戦を見ていたラインハードは、当時の事を思い出して苦笑いを上げていた。

【神出弓士】レドリックの活躍もそうだったが、本業とも言える【殲滅剣士】のアミスティアの暴れっぷりが凄まじく、防壁にやって来たモンスターは攻め込んで来たのでは無く、2人から″逃げて″来たのではと思わせる程であった。


「父さんは遠・近どっちも死角が存在しないし、どんな状況でも冷静沈着。
母さんはねー、1対1も強いんだけど1対多の時の暴れっぷりがカッコいいんだよねー。」

(こういう時はノア君も子供なんだなー、って思えますね…)


今よりも幼い頃、何度かピクニックがてらに大規模殲滅戦に連れていって貰った事がある為、ノアは両親の暴れっぷりが目に焼き付いていると言う。

その影響からなのかは定かでは無いが、自身も現在ではそういった戦法を取っている。


「…それで何とか防衛戦が完了して2日程経過観察した後…
あ、ほらあそこに車列が見えると思いますが、貴族や観光客達が上級冒険者護衛の下出国を開始したのですよ。(ラインハード)」


ラインハードが指差した方向を見ると、幾つもの豪奢な馬車と何組かのパーティが隊列を組んで南下して行っているのが見えた。


「あ、それで上級冒険者達が出払っててこんなに閑散としてるんだね。」

「そう言う事です。
兵士や騎士さん達は必要最低数を残し、方々に散って被害状況の確認。
屋台の人達は緊張の糸が切れたのか、営業自粛している所が殆どみたいです。(ラインハード)」

「そっかぁ…じゃあ朝ごはんは適当に作るとするか…
あれ?ちょっと待って、それじゃあ新人・中級冒険者は何処へ行っちゃったの?『龍遇城(ダンジョン)』?」

「そうですね、ダンジョンが殆どだと思います。
私がダンジョンマスターだった宝物庫だったり時の迷宮だったりと、この国には3つのダンジョンがありますからそこへ向かっています。(ラインハード)」

「そっかぁ…良かった。」

「あ、クロラさんとポーラさんの事ですね?(ラインハード)」

「へ?」

「そりゃ分かりますよ、露骨に表情が緩みましたもん。
でもマズイかも知れませんよ?(ラインハード)」

「え?何が?」

「寝込むノアさんに何か言いたげに2日位付き添ってましたよ?
見兼ねたアミスティアさんが「伝言預かっておくから日常に戻りなさい。」と言ったんです。
そしたら「伝言は大丈夫です、直接言います。」と言ってポーラさんと一緒にパーティに戻って行きました。
もしかしたら…(ラインハード)」

「え?何?何…?
そんな思わせ振りな…」


ノアはラインハードが何を言いたいのか分からないでいる。


「…ノア君…前々からクロラさんから言われ続けてる事ありません?(ラインハード)」

「えぇ…?そんな事あっ…あ、あったわ…
″怪我しないで″とか″無茶しないで″とか…」

「かなーり思い詰めてましたからねぇ…
防衛戦に参加していたとは言え、今回なんか10日間も寝込んでしまったからもしかしたら…」

「ちょ…怖い事言わないで下さいよ…
…いや、確かに、何だかんだ守った試しが無かったから僕がいけないんですけど…」

「…まぁ目覚めたのは喜ばしい事ですし、取り敢えずは、私からお2人に接近して様子を窺って」


「…ノア君…?(クロラ)」(下の通りから)


「「っ!(ノアとラインハード)」」ビクッ!
 

聞きたかった声のハズなのだが、今最も聞きたくなかった声が響き、思わず身震いさせてしまった。

恐る恐る眼下を見てみるとやはりと言うべきか、当人がポーラと一緒に防壁上を眺めていた。
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