ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
810 / 1,117
獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

ゴア命名:ショックムーヴァー

しおりを挟む
 ~大通り~


 テクテク…

「南ですか~、数百年ダンジョンの中だったから今から楽しみだな~。(ラインハード)」

「聞いた話では″妖精″が暮らす森があったり、″特殊なダンジョン″があるんですって。(ヴァンディット)」

「へぇ~、何処かに情報が載ってたんですか?」

「いえいえ、これら全部″にゃんこさん(諜報員の獣人)″の受け売りなんです。
 最近ちょくちょく逢ってましたので、そう言う話もしてたんですよ。(ヴァンディット)」

「え?そうなの?」

「あれ?ノア様こそにゃんこさんと会ってませんか?
 にゃんこさんは「ノア君に用事があったから序でに来た。」って言ってましたよ?(ヴァンディット)」

「え?えぇ…?」

「あ、ふーん…(何かを察したラインハード)」


『商人見習い(メルカドール)』のミリアと街を散策しつつ、何だかんだ一通りの関係者に会ったりして無事を伝えたノアは、再び街へと繰り出していた。

 向かう先は海洋種が経営している武器屋『アルマ』であった。

 先程店主のゴアに依頼していた装備がそろそろ出来ている頃合いだからだ。





 ~武器屋『アルマ』~

 カランコロンカラン♪

「お、来たな?
 丁度今完成した所だぜ?(ゴア)」

「やっほぃ、仕事が早いですね!」

「エルダー(クラーケン)様の素材を使わせて貰ってんだ、楽しくてしょうがねぇわ。
 …でだ、お前さんの要望に沿ったモノ、出来たぜ?(ゴア)」

「見せて、見せて!」


 ノアの要望と言うのは、近距離戦闘でも取り回しし易い非殺傷の武具を要求していた。
 これは、【魔王】配下のセルトが使っていたハンドガン″MP-G(魔力貫通銃)″を間近で見た事で自身の冒険者生活に活かそうとしたのであった。

 なのでノアは、ゴアが今から取り出すのは″ハンドガン″の様な形状であると予想していた。

 のだが


「ほい。(ゴア)」

「ぅん?…何コレ…″指輪″?」


 ゴアが差し出した手の上に乗っていた物を見てみると、ノアが思っていた″銃″の形状では無く、何処からどう見ても″指輪″であった。
 しかも2点あった。


「近距離戦闘でも取り回しし易く、非殺傷、射出。
 それらを俺なりに解釈してみた。
 取り敢えず″人差し指″と″中指″にそれぞれ装着してみな。(ゴア)」

「う、うん…」


 言われるままに指輪をそれぞれ人差し指と中指に通していく。


「でだ。
 人差し指と中指を揃えた時に、嵌めた指輪同士が接触する位置に来る様にしてくれ。(ゴア)」

「接触する位置に?『ズズズ…』こう?」

「そうそ…あ!馬鹿っ!″指先を顔に向けんな!″

『ガンッ!』「へぶっ!?」


 ノアが指先を自身の顔に向けつつ指輪の位置調整をしていると、突然顔に強い衝撃が走った。

 不可視であるハズなのに、まるでカナヅチで叩かれた様な衝撃に、思わずたたらを踏んでしまった。


「わーっ!?ノア君大丈夫!?(ラインハード)」
「鼻血!鼻血出てますよノア様!?(ヴァンディット)」

「え?え?え…?…え?今の…何…?」

「スマン…動作確認用で注入していた″衝撃″を抜くのを忘れていた…(ゴア)」


 どうやら一連の動作がトリガーとなっていたらしく、指輪の中に蓄積していた″衝撃″が指先から放出された様だ。

 取り敢えずノアは鼻血を拭いつつゴアの説明を聞く事にした。


「お前さんの防具もその指輪も、元の素材は″エルダークラーケン″だろう?
 つまり受けた衝撃を″吸収″する事が出来る。
 更に言えば、同一素材間では、″吸収した衝撃を移動させる事が出来る″のさ。
 その特性を利用して作ったのがこの指輪って訳さ。(ゴア)」

「あ、つまり僕の防具に蓄積された″衝撃″を指輪に移動させて、指を指した方向にその″衝撃″が放たれるモノなんですね?」

「そういう事。(ゴア)」


 実は似た様な事は既に話に出ていて、王都で戦ったヒュドラ変異体(コモン・スロア)を完全に殲滅させる為、防具に衝撃を最大限蓄積させた上で全解放させた必殺技『エルプシオン・ヴォルカニカ』と仕組み的には同じである。

 その後、あまりにも危険であった為、威力を大幅に抑える様に処置して貰い、『リベラ』として放出出来る様にはなったが、イマイチ使い所が無かった。

最近では、専ら蓄積させた衝撃を魔装鉄甲に移し、ブースター代わりにする等してノアやラインハードが活用している位のモノであった。

それを″非殺傷でありながら近距離戦闘″に使える様にしたのがこの″指輪″であった。


「でも普段使いし辛くないですか?
常時装着していたら今みたく暴発しないですか?(ラインハード)」

「一応衝撃を放出するには条件があるんだが、今のは一連の動作が全て条件に合致してたんだ。
衝撃を放出させる条件はだな…(ゴア)」



~指輪に充填された衝撃を放出する条件~

・指輪同士が接触している事。
・指をピンと真っ直ぐ伸ばしている事。
・指先の延長線上に対象が居る事。

である。



「あ、確かに条件が全部合致してましたね…」

「そりゃ暴発しない様には努めてたが、まさか一発で条件を満たすとは思わんかったぞ…(ゴア)」

※皆も銃口は自分や人に向けない様に注意しようね。


その後ゴアと握手してみたり、手を振ってみたり、どの程度の指の角度で衝撃が発射されるのか、など一通りの確認をするのであった。





「…で、指輪に衝撃の装填をする時は、身に付けてる防具に指輪を接触させると蓄積されている衝撃が指輪に移動する。(ゴア)」

コッコッ…

「こんな感じで良いですか?」

「衝撃の装填量は指輪に施した装飾を見てくれれば分かるハズだ。
装填されていれば装飾が発光し、装填されてなければ光を失い、黒色になる。(ゴア)」


指輪には極小サイズの宝石が埋め込まれており、明るい店内でも淡く光っているのが窺える。


「装飾…あ、コレですね。
ひぃ、ふぅ、みぃ…全部で18の装飾が光っているという事は、18発衝撃を撃てる訳ですね?」

「そういう事。
まぁ始めの内はこまめに装填する事だ。
勿論防具に衝撃が吸収されてないと装填もクソも無いから、敢えて敵の攻撃を食らうか、自分で防具を殴って衝撃を蓄積させるかのどちらかをすると良い。(ゴア)」


冒険者からすれば、相手から攻撃を貰わないのが最善であるのだが、この指輪を用いるとなれば、敢えて被弾した方が良いという普通では考えられない運用方法となるのである。


「ちなみに、″指輪同士が接触するごとに放てる″代物だ。
つまりは″どちらかの指を動かして都度都度接触させればその速度で連射が可能″って訳だ。
まぁその辺は実戦で試してみるのが一番だろうな。(ゴア)」

「そうですね。
もう少ししたらこの国を発つので、その時にで

『『『バタバタバタ!』』』←外から

「ハナァ!また南部の通りと村で野盗集団が現れたってぇ!(サクラ)」

「またぁっ!?誰か手の空いてる者は居ない!?(ハナ)」

「居ないわよ!別の件で出払っちゃっててどうしようも無いわ!(サクラ)」


と言う会話が外から聞こえてきた。


「……。」

「……(ゴア)」

「…。(ヴァンディット)」
「……。(ラインハード)」
しおりを挟む
感想 1,253

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...