ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~事後処理・決意・旅立ち~

性能チェック兼肩慣らし

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~夕方・獣人国から南に5キロメル・~


「畜生!どの馬車も護衛付きで全然襲撃出来ねぇ!」
「だから言ったんだ!せめてもう少し南下して車列がバラけた方が成功率上がるってな!」
「俺に言うんじゃねぇ!つーか手前ぇが最初ここにしよう、っつったんじゃねぇか!」


辺りが既に薄暗くなってきた頃、薄汚れた防具や歯溢れした武器を身に付けた野盗3人が今日1日の成果に嘆いていた。

彼等は大挙として自領へと帰還していく貴族連中の車列を襲おうとしたが、どの馬車も上級冒険者の護衛付きで、しかも隙間が殆ど無く進んでいた為、彼等の様な野盗達は中々手出し出来ずに嘆いていた。

彼等が居る位置から更に南下した所では、車列がバラけてチラホラと襲撃を成功させている野盗パーティも居るとか。


「お、おい!見てみろ!誰かこっちに1人で歩いてくるぞ!」

「おおっ!マジだ!」

「ははっ!天は我等を見放さなかったって訳だ!」


そんな中、薄暗くなった通りを誰かが歩いてくるのを確認し一気に沸き立つ3人。


ザスッ!

「「「え?」」」

バシュッ!

「な『ガンッ!』『ゴンッ!』」
「え『ドゴォッ!』っぶぅ!?」
「『ゴチュッ!』んぴゅっ!」


3人横並びになっていた所、ほぼ同時に何者かに襲われる形となった。

左側に立っていた野盗は下顎に強い衝撃を受けて一瞬地面から足が離れ、直後にこめかみを撃ち抜かれ、そのまま気絶。

真ん中に居た野盗は、何者かの前蹴りが思いっ切り腹部に突き刺さり、そのまま10メル後方に吹き飛ばされてそのまま気絶。

右側に立っていた野盗は、気付いた頃には何者かの肘鉄が顔面に突き刺さり、5メル程吹き飛ばされてそのまま気絶した。


ドサッ!ズガガッ!ズザザァッ!

キンッ…

「よし、奇襲成功。
″ショックムーヴァー″もちゃんと機能してるな。
一応2発叩き込んだけど、この分なら1発でも良いかな。」

(『そうだな、主は顔面強度が高ぇから複数発必要だが、コイツらなら1発で良いだろう。』)

(…何?顔面強度って…)


野盗の真ん前に転移する為にぶん投げた荒鬼神ノ化身を回収しつつ新装備の″指輪(ショックムーヴァー)″の性能を確かめるノア。

どうやら使い勝手が良かった様なので、次なる野盗を懲らしめに向かう。

所なのだがその前に


ギュッ!ギュギュッ!ギュッ!

「ロープで縛って…後はラインハードさんお願いします。」

「はいよー。『バスッ!バスバスッ!(大工が使う釘打ち機みたいなヤツ)』
固定出来たよー。(ラインハード)」

「じゃあ次行きましょう。」

ズズズ…

「はーい。(ラインハード)」


気絶させた野盗達をロープで縛り上げ、ラインハードが近くの木や岩に固定していく。
その後に獣人国から手の空いたハナやサクラ等の騎士達が回収しに来る流れである。


「さて…聞いた話では、近くの村が野盗に占領されたらしいからそこを奪還しに行くか。」

(『まずはその村周辺の野盗を潰していくのが先決だな。』)

(だね。)ダッ!


犬姫騎士団長のハナの話では、大きな野盗の集団が南部にある小さな村を占領したとの事。
なのでノアは、その村を占領していると言う野盗達に奇襲を仕掛けに向かうのであった。





~更に2キロメル程南下したとある村~


ガン…ガァン…

「はっはー!まだどっかで稼いでる奴らが居るみたいだなぁ!
ま、俺らはもう店仕舞いで″この宿″で宴の真っ最中だけどなぁ!」

「おい女共!酒持って来い!
動くんじゃねぇぞお前ら?変な真似すりゃ大事な大事な娘達がどうなるか分かってるよなぁ?」

「「「う、うぅ…」」」


とある村の中央広場には、現在村人約30人が集められ、その周りを武器を手にした野盗達が睨みを利かせて見張っていた。

野盗は全部で35人。
数で言えば村人と大差無いが、彼等の武器となりえる農具等からは大分離されているので、抵抗する事が出来ない状況である。

野盗達は村人を集めた後、見張り役とは別に家屋に侵入して食い物や酒を見付けた後、宴を開き始めた。

このまま勝手に楽しんでくれれば良かったのだが、酒を飲んで酔った輩が村の娘達に酌する様に迫り始めた。

そこからの話の展開は、ご想像通りのモノとなるのが普通であろう。


「むはぁ、はぁ、お前中々可愛いじゃん。
後で俺と遊ぼぅぜぇ…?」

「い、いや!」ダッ!

「だははっ!フラれてやんの!」

「おい逃がすんじゃねぇぞ、ダノパ。
追い掛けて少し″分からせて″やれ。」

「へっへぇ、分かってんじゃん…」


下卑た笑みを浮かべた野盗の1人が逃げ出した村の娘を追い掛け始めた。


「ノルン!逃げるんだ!」

「うっせぇ!黙って座ってろ!」ゴッ!

「ぐぁっ!」


彼女の父だろうか、娘に逃げるよう言った直後野盗に殴られて黙らされてしまった。





~中央広場から3軒程奥にある高床式家屋前~


「はぁ!はぁ!」ズリ…ズリ…

「こんな所に逃げ込んでぇ…
そうか、物陰でヤりたいんだなぁ、恥ずかしがり屋さんめぇ…」


野盗から逃げた娘はとある家屋の下に逃げ込んだが、直ぐに見付かってしまった。

娘は恐怖で上手く足が動かず、尻餅を付いた姿勢のまま下卑た笑みを浮かべる野盗から目を離す事が出来ずにいた。

野盗は屈んで家屋の下に潜り込もうとする。


「…ぃしょっと…なぁ痛くはしな『ガキッ!』っぐぅっ!?」





~中央広場~


ォ″ォ…ォ″ォ…

「ぶふっ!汚ぇ声で喘ぎやがって気持ち悪ぃ!
ま、コレであの娘っ子も″分かった″事だろう。」

「チッ!あの娘俺も手ぇ付けようと思ってたのによ!」

「まぁ良いじゃねぇか、手頃な娘はまだ他にも『ガサガサガサ!』『ドシャッ!』うっ、うわぁっ!?何か落ち…ダ、ダノパァッ!?」


仲間の低い唸り声が聞こえてきたかと思えば、直後に″真っ最中″であろうと思われた仲間が広場に生えていた木の樹上から気絶した状態で降ってきた。

突然の事に騒然とする一同だが、そうやって仲間に目を向けていた僅かな時間に


ヒュパッ…「『ギュンッ!』っぶぅっ!?」

ガシッ!「『グンッ!』っぎゃぁあっ!?」

ガッ!「『ギュゥッ!』っぐげげ…」


背後から首にロープを掛けられて家屋の裏に引き摺り込まれる者や、足を掴まれて悲鳴と共に家屋の下に引き摺り込まれる者。
首を締め上げられてそのまま屋根上に引っ張り上げられてしまう者等も居た。


「うわっ止『ガ『ガンッ!』」
「ぎゃぁあ『ガンッ!』」
「『ガンッ!』待『ガンッ!』『ガ『ガンッ!』」

「何だ!?何が起こった!?おい何とか言え!」


各所から悲鳴が上がるも、あまり聞いた事の無い音と共に仲間の声が途絶えていく。
野盗のリーダーらしき人物が呼び掛けるが、返答は無い。


「おい手前ぇら!今のは何だ!お前らの仲間か!?」

「し、知らない!この村にはその様な「お、おい!出て来た『ガンッ!』」

「んだと!?」


野盗等が村人達に詰問している最中、新たに仲間が襲われた様子。

大慌てで振り返ると、視界一杯に仲間の背中が迫ってきていた。


ドカッ!

「うおっ!?」

ガガンッ!ガンッ!「殺『ドカッ!』ガンッ!ザキュッ!「がぁっ『ゴッ!』ドッドカッ!


気絶した仲間の体が吹っ飛んできて覆い被さってしまう。
その間にも幾人かの仲間の悲鳴が聞こえてくるが、何が起こっているのかは一切分からなかった。


ズリ…

「ど、退けっ!
っ!?…な、何だこりゃあ!?」


覆い被さっていた仲間を退かして状況を確認すると、既に他の仲間も同様に仕留められて地面に転がっていたり、武器を残して姿を消していたりした。

残るはこの野盗ただ1人となった。


チャキ…ガランッ…

「お、おい!何処だ!出てきやがれ!
出てこないと人質が『ジャリ…』っひ!」


仲間が取り落とした剣と盾を手にして謎の存在に叫び掛けると、不意に背後から足音が。

野盗は手にしていた剣を大振りして背後に斬撃を放つ。


ガギィンッ!「ひぃっ!?」

ゴリンッ!ギギギ…


振った剣は、背後に居た謎の存在に″噛み止められ″る。
が、振り下ろされた剣を逆に盾で受け止める事に成功。

したのも束の間


ゴリッ…ゴリリリ…

「ひぃぃあぁぁあっ!何で…斬れ…」


全力で構えているハズの盾が意図も容易く両断されていっている光景に恐怖を覚える野盗だが


にゅ。

「っ!?ゆ、指!?」


斬り開かれていく盾の隙間から2本の指が飛び出してきた。


ガンッ!


そこから強い衝撃が放たれ、野盗の意識は途絶えるのであった。  
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