ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

この時期の風物詩

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~獣人国を発って2日後・試験街テスタ~


ミーンミンミンミンミー…
ジーワジーワ…
ァツィヨー、ァツィヨー…

「本当だよ、暑いよ。」

(『確かに今年は例年より暑いな。
だがカラッとしているからか『ムンムン』と鳴かないだけまだ良いな。』)


現在ノアは獣人国を南下し、先日中級冒険者試験を受けに来た街『テスタ』を訪れていた。

ここには試験会場の他、飲食店等も建ち並び接客系の適正持ちの実戦訓練の場も設けられており、ノアはその内の一軒の喫茶店のテラス席に1人で座していた。

春先に入った頃に村を出て冒険者となり早4ヶ月、季節は夏真っ盛り。

鬼神曰く例年よりも暑いが、湿度が低い為か、割と過ごしやすいとの事。
湿度に応じて鳴き声が変わる『変声蝉(ヘンセイゼミ)』が『ァツィヨー、ァツィヨー』と鳴いているのがその証拠であった。


(…にしても…)

(『あぁ…″今日で3組目だな…″』)


テラス席に座るノアは、遠くに見える″あるやり取り″を見て″またか″と感じていた。

その″やり取り″というのが





~道端・とある冒険者パーティ~


「ハイン、悪いがパーティから抜けてくれ。」

「えっ!?何で!?」


(まただ…)
(『まただな。』)


ノアが居る喫茶店から少し離れた場所では、男女3人組の冒険者パーティで所謂″この時期の風物詩″が開始されていた。


「何でって分からないの!?
アンタいっつもヤメテって言ってるのに″倒したモンスターに追撃″するものだからギルドで買い取って貰えなくて全然稼げないのよ!?」

「い、いや、あれはトドメを刺して…」

「首を落としているのにメッタ刺しにしているじゃないか!
もうかれこれ10回以上言ってるのに聞かないんだ、悪いが抜けて貰うぞ。」


(あー、それは無いわ…)
(『あー″後先考えない系″か。』)


どうやらパーティを抜けろと言われている男性冒険者は、モンスターを倒した後に素材がダメになる程オーバーキルしてしまっている様だ。

鬼神も先日知った事だが、これは″後先考えない系″らしい。

すると<聞き耳>にまた別の場所から声が聞こえてきた。


<お前抜けろよマジで!>

<えっ!?どうしたんだよ突然!?>


(あ、別の所でも始まった。)
(『えーっと、確かこれは″○○を隠していた系″だったか?』)


<お前″鉄製の矢″切れたつったろ?
だから俺が前線張ってモンスターの群れを引き付けてたのに何最後しれっと″鉄製の矢″乱れ射ちしてたんだ手前ぇ!>

<え?いや、奥の手を最後に出すと格好良…>

<格好良いとかそんな事言ってんじゃねぇよ!
こちとら命張ってんのにお前の自己満足に付き合わせるんじゃねぇ!
持ってんなら最初から持ってるって言えって何度も言ってんだろ!>

<って訳で、ギルドにパーティ脱退の報告済ませてきたから。じゃあね。>

<そ、そんなぁ!?>


(あれ?この″奥の手を隠していた系″って割と僕にも当て嵌まらない?)
(『主の″奥の手″はマジ物の″奥の手″だから種類は同じでも質が違う。
一緒と考えるのは畑違いさ。』)


パーティメンバーから脱退を宣告された男性冒険者は、ガックリと肩を落として項垂れていた。

この様なやり取りを獣人国を発ってから頻繁に見る様になり、今日は既に2組の″脱退・追放″のやり取りを目撃していた。

ノアはこの様なやり取りを見る事が無く驚いていたが、商人であるベイゼルと共に各地を巡っていた『商人見習い(メルカドール)』のミリアがどういう事か説明してくれた。





ミリア曰く、冒険者生活を開始して3ヶ月~半年の新人冒険者パーティに多く見られるモノで、ある意味″この時期の風物詩″であるらしい。

同じ志を持った者同士で組んだパーティだが、この位の時期になるとお互いの″粗″が大体出切ってる頃で、夏の陽気も相まって一気に爆発して各パーティで″脱退・追放宣言″が行われるとの事。

これに関して周りは誰も止める事は無い。

何ならこれを通して自分を見直して冒険者として成長する切っ掛けとなるので、見付けたら優しく見守ってあげると良いとの事。

ちなみに、市場には同様の流れを経て天下を取っていく主人公を題材にした創作物があり、似た状況になって浮かれている者も時折居るが、創作物の様な事になる事も無く、3ヶ月位で現実を見て自分を見直す事になると言う。

そこから脱却出来なかった者が故郷に戻ったり野盗に堕ちたりするらしい。




ザッザッザッ!


等とミリアが言っていた事を思い返していると、とあるパーティから追放された1人の冒険者がノアの下に歩いてきた。


「よぉ!アンタもパーティから追放されたクチだな?」

「え?いや、自分は…」


テラス席に1人で座っていたからか、ノアも何処かのパーティから追放されたモノだと勘違いして来た様だ。


「いいっていいって、俺には分かるんだ。
俺の冒険者としての勘が言ってるんだ、″俺とお前は同類″だとな。」

(これ中々に失礼じゃない?)
(『流しとけ流しとけ。』)

「で、だ。
俺達は追放された者同士でこれも何かの縁だ、″追放冒険者パーティで覇道を突き進んでみよう″じゃないか?」

(何かそんな題名の本が獣人国でも売られてたね。)
(『腐る程あったな。流行りなんかな?』)


鬼神の言う通り流していたが、パーティのお誘いが来てしまった。

なのでそろそろ断るか、と思っていた矢先


コト。

「ノア君お待たせぇ。
はい、これノア君の分の″夏季氷(カキゴオリ)″。(ミダレ)」

「へ?」←追放冒険者


ノアが座るテラス席に、女性が1人トコトコと歩いてきて色鮮やかな氷を入れた器を置きに来た。

その女性は身に付けていたローブを肩まで下げ、露出した肌は健康的な小麦色をしていた。
時期的に暑いからか、汗に濡れた髪が肌に張り付き、何とも艶かしい。


「ありがとうミダレさん。
そんなに待ってなかったよ。」

「お、おま…こんな娘とパー「「「ノア様」君」さんお待たせー!」…え?」←追放冒険者


てっきり自分と同様に追放されていた物だと思っていた冒険者が動揺を隠せないでいると、同じく″夏季氷(カキゴオリ)″を手にした一団がやって来た。


ドヤドヤ。

「すいません、色々種類がありましたので悩んじゃって…(ヴァンディット)」
「私は食べれないから氷嚢貰ってきたの。(ラインハード)」
「いやはや、氷を食べるとは面白いものですなぁ。(クリストフ)」
「す、すいません、私も頂いてしまって…(ミリア)」


と、片手に″夏季氷(カキゴオリ)″を手にしたクラン『きじん』のメンバー達が戻ってきていた。

すると、その光景を呆然と見ていた追放冒険者はというと


ダッ!

「チ、チキショー!
ハーレムパーティだったなんて騙したなぁあああああ!」

(騙すも何も自分から来ただけだろうに…
てかハーレムじゃないしね。)
(『…そのハーレムん中にクリストフも入ってんのか?』)


言われてみれば美女1人、美少女2人、キノコ1、中性的な少女が1人居るのでハーレムと言われても仕方の無い事だろう。

追放冒険者は目に涙を浮かべて何処かへと走り去ってしまったのだった。


「あれ?ノア様、今の方は…?(ヴァンディット)」

「いや、知らない人。」

「そうですか。
それでは早速″夏季氷(カキゴオリ)″を頂きましょう。(ヴァンディット)」

「そだね。」

「「「「「「頂きまーす。」」」」」」
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