ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

鬼神も知らない【固有スキル】

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「な、何ですかあの″巨大な魔石″は…!?
物凄い魔力を放っておりますぞ!(クリストフ)」

「何だあれは…
…いや、あれと同じ物を俺は見た事がある…あっ!
クリストフ殿!ノア殿を頼むっ!(ヒュージャ)」

ダンッ!

「え?は?(クリストフ)」


盛り土の様な場所に浮かぶ″巨大な魔石″に心当たりがあった様子のヒュージャは、大慌てで走り出し、携えていた剣を抜いて上段に構える。


ゴボゴボゴボ…

「おぉおおおおおおおおぁっ!(ヒュージャ)」

ゴッ!『『ゴボァッ!』』(剣の振り下ろしと同時に″巨大な魔石″から黒い液体が噴出。)

ビョルルンッ!(黒い液体が黒い腕に変化。)

「ぬっ!?『ドガァッ!』ぅぐぁあああっ!(ヒュージャ)」


噴出した黒い液体は腕を形成すると、斬り掛かってきていたヒュージャを思いっ切り吹き飛ばした。


『『ベギャァッ!』』ガラガラガラ…!


余程の力だったのか、ヒュージャは後方の廃墟に突っ込み、倒壊していた。


ガラガラ…

「ぶはっ!
クリストフ殿!あれはただの″巨大な魔石″ではない『ダンジョンコア』だ!
急いであれを破壊しないと、ここら辺一帯はダンジョンとなってしまう!(ヒュージャ)」


「な、何ですと!?(クリストフ)」

「くっ…ダンジョンの…『コア』…?
あの″巨大な魔石″がか…?」


受け身を取ったのか、瓦礫の中から転がり出てきたヒュージャは取り敢えず無事な様子。

彼の言う事が正しければ、黒い液体が湧き出している″巨大な魔石″は『ダンジョンコア』と呼ばれるものであるという。


「俺らの故郷がダンジョン化する際に同じ様な″巨大な魔石″が出現していた!
その″巨大な魔石″の出現時期は分からんが、故郷と同じであれば、大体2日~3日位でダンジョン化するだろうっ!(ヒュージャ)」

「…っ、そう言えばそんな事言っていたな…」



~タイトル『覚悟をキメる』より抜粋~


「我々3人は元々東にあるとある島の生まれで
、島が丸々一島ダンジョンと化し、孤児として各地を転々としていたのだ。
とても冒険者云々を目指す等言ってられない状態だったのでね。
色々と死に物狂いだった訳さ。(ヒューガ)」



「ダンジョン化が成されてしまえばここら一帯に甚大な被害が出てしまう!
君ですら精神的にやられたそこの悪霊と同じものがウジャウジャと出現してしまうぞっ!(ヒュージャ)」

「な、何ですと…!(クリストフ)」

「…それならさっさとアレを壊


『『『ドバァッ!』』』(″巨大な魔石″(『ダンジョンコア』)から黒い液体が瀑布の様に噴出。)

『『『『ザバァアアアッ!』』』』(<浄化>で霧散させた黒い液体が再び地面に流れ込む。)


「むぉっ!?(クリストフ)」

「ぅがっ!」


足下に再び黒い液体が流れ込み、強烈な『恐怖』『萎縮』『威圧』が2人を襲う。

特に先程黒い液体を浴びて精神的にやられたノアは、クリストフ以上に精神ダメージが入る。


「ぉ、あ″あ″あ″あああああっ!」ズラッ!

ダンッ!

「っ!?ノア殿!?(クリストフ)」


殆どの魔力を消費し、支えられていたノアが咆哮を発しながら荒鬼神ノ化身を手に『ダンジョンコア』へと駆け出す。


バシャッ!パシャァッ!

「お″お″お″おおおおおっ!」

ゴボッ…

〔殺して…〕

「っ!?」


高速で迫るノアが大上段に剣を構え、一刀の下に破壊に向かうが、突然『ダンジョンコア』から先程の女性ではなく、″黒い涙を流したガリガリに痩せ細った幼女″が出現。

ノアは思わず動きを止めてしまった。


〔殺して…それできみの気が晴れるならワタシヲ『ボクヲ』ワタシタチを、『『『殺して』』』。〕

「っ、ぅ、ああ…『ドシュゥッ!』げぇあっ…」

ドシャァッ!


動きが止まったノアの首に強い衝撃が走る。
見てみると首の一部が抉れて出血しており、ノアはそのまま転倒してしまった。


〔…あら?殺ったと思ったのに…〕

「くっ…ぐぅう…」


幼女姿の悪霊が首を傾げる。
どうやら本人はノアを殺すつもりで攻撃したらしいが、ノアは無意識的に致命傷を避けた様であった。


〔まぁ良いわ。
きみは″この姿″だと攻撃出来ないみたいだしね。
何せ″昔の自分そっくり″なんだもの。
うふふ…この『コア』は壊させない…
漸くここまで漕ぎ着けたんだもの…絶対に完遂してやるわ…〕


幼女姿の悪霊は『ダンジョンコア』を優しく抱擁し、うっとりとした表情で愛でていた。





『『『ポォオオオ…』』』

「取り敢えず回復は済ませました。
魔力と体力の回復に勤しんで下され。(クリストフ)」

「あぁ、先ずはそれが先決だな…」

「<ヒール>が掛からないとは、君の適正は中々に厄介だな…(ヒュージャ)」


首をやられたノアの治療に、クリストフから提供されたヒールダストマッシュルームを使用。
何とか出血と傷の治療は完了したが、魔力の回復がまだな為、それに専念する事に。


「では私は時間稼ぎに向かいますぞ。(クリストフ)」

「俺もだ、子供に先陣を任すのとやられっ放しは御免だ。(ヒュージャ)」


クリストフが『時間稼ぎ』と言っている辺り、ここまで規模の大きい悪霊に対して決定打を持っていない事を、暗に示しているものだと思われる。


「待ってろ…直ぐに…戻る…」

『『ババッ!』』(2人が悪霊の下へ。)


ノアからの言葉を聞き終える前に2人は悪霊の下へと向かっていった。





(…とは言ったものの、こちらに手があるかと言われればあまり無い…
赤熱状態の荒鬼神ノ化身で焼き斬れると思うがあの規模では…
あとは【龍神邪火】で広域的に焼く…くそっ、剣1本分ですら魔力が溜まってない…
ここから溜めるのは骨だぞ…
というか、俺に″アレ″が攻撃出来るのか…?
悪霊と分かってて斬り付けにいって体が硬直してしまったアイツを…)


ノアは悪霊の殲滅方法を模索しつつ、そもそも今の状態で攻撃自体行えるのか自問自答する。


カタカタ…

(…確かに悪霊の″あの姿″は昔の俺と同じ姿だ…
今でも夢に出ては魘されているというのに、目と鼻の先に立っていたらこれ程までに自身の自由を奪うか…)


荒鬼神ノ化身を握る右手が僅かに震えている。
悪霊を斬る。と少し想像しただけでこれだ、実際に斬れるかどうかすら怪しいだろう。


(昔に比べたら強くなったと思ったんだけどなぁ…
ハハ…鬼神も何とか言ってくれよ…)

(『……。』)

(ん?鬼神?)

(『ん?あぁ済まん、聞いてなかった。』)

(んだよぉ…)


中に居る鬼神に呼び掛けるノアだが応答がない。再度呼び掛けると我に返った様に返事を返してきた。


(こんな時に無視なんて酷いんじゃない?)

(『いや、済まん。
″俺の知らない【固有スキル】″の『取説』を読んでたんだ、どうやらこの状況を打破出来る代物らしいからな。』)

(は?)
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