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取り敢えず南へ編
次から別の街へ。
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~夜・屋台通り~
「あ~、眠い…」
「じゃったら寝りゃええじゃろう?(バド)」
「ヴァンディットさんの睡眠導入剤は1日1回まで。それ以上服用したら効果半減、若しくは耐性付いて効かなくなっちゃうかも知れないからダメなんだ。」
「何じゃ、その歳で薬に頼るとは不眠か、中(心)の問題か?(ロイ)」
「そんな所。
簡単な話だよ、小さな時に死に掛けた状況が夢として出てくる。
匂い、景色、感覚そのままにね。」
「ははぁ…戦帰りのモンがようなる奴じゃな。心根の強か坊でもそんな悩みがあったか。(ルド)」
「夢に見る度に思うんだ。
実は今までの事は容態が落ち着いた時に偶々見た夢の一部で、本当はまだ闘病中なんじゃないか、ってね。
だから寝る時は一気に深い眠りに入って、夢を見ずに一気に覚醒する様にしてるんだ。」
「ノア殿は常時スキルも発動しっ放しですから突然起きますものな。(クリストフ)」
「元々1人で旅する予定だったから、野宿してて枯れ葉が落ちた音でも起きれる様に訓練したものさ。」
宿で寝ていたノアが腹を空かせて街へ繰り出すと、湿気浴をしていたクリストフ、武器製作の慰労会をしていたドワーフ3人組と出会し、同じ卓に入る事にした。
当初は今後の旅程を話していたのだが、時折アクビをかますノアの様子を見た事からこの話になったのだった。
「うーむ…ただ眠らせるだけならやり様は幾らでもありますが、夢の中となると私も専門外ですな…(クリストフ)」
「まぁ今はヴァンディットさんのお陰で何とかやれてるから気にしなくて良いよ。
さ、ごはん食べよ。」
ノアとしてもどうにかしたい節はあるが、現状どうにかなっている様なので話はここまでとし、当初の目的である食事を行うのであった。
モグモグ…
「そういや坊は今後どうすんじゃ?(ルド)」
「当初の目的(教会への届け物)は既に済んでたからいつ発とうか見計らっていた所だよ。
取り敢えず明日は教会で成仏の儀を執り行うみたいだから、それを見届けてから次の街に向かおうと思ってるよ。」
「儂らも似た様なもんじゃ。
この後工房の連中に聖霊銀(ミスリル)製品の補修方法を伝授しようと思ってな。(ルド)」
「流石に聖霊銀(ミスリル)造りは一朝一夕にはいかんから無理だが、補修位ならいけるじゃろ。(バド)」
「で、翌日教会主催の成仏の儀を見て街を発とうと思っとるんじゃ。(ロイ)」
「それなら足並み揃えて街を発てますな。(クリストフ)」
「たまにはそれも良いかもね。ならその予定でいこうか。」
という事で一行は翌日に執り行われる成仏の儀を見届けた後に街を発つ事にするのだった。
~翌日・教会にて~
「『…よって、汝には次なる輪廻も安寧に過ごせるよう祈りを捧ごう…』…(シンプソン)」
スッ、スィッ…(聖霊銀(ミスリル)製の装飾が施された剣で正面に立つ霊を十字に斬る。)
『『シュァアア…』』(十字を中心に、光を放ちながら霊体が浄化されていく。)
〈…ありがとう、シンプソン。
こんな安らかな気持ちで逝けるとは思わなかったぜ。これからは空の上から家族を見守る事にするよ。〉
「…達者でな、ジェンダ。(シンプソン)」
今は亡き旧友ジェンダに向けて最期の言葉を掛けるシンプソン。
その表情は悲しげでありつつも霊となった旧友を心配させないよう、確固たる強い意志を持った力強いモノとなっていた。
キャリィンッ!(霊銀が床に落ちる。)
浄化され、光の粒子となって天に昇った後、その場には霊銀が残された。
これは霊からの願いを聞き届け、無事に達成された事を意味する。
これが霊を視る事の出来ない者からすれば、儀礼的な動作の後に何も無い虚空から突然霊銀が現れる為、そこには確かに霊なる存在が居た事を如実に表していた。
「…本日お集まりになられた霊の方々は無事成仏なされました。
以上で成仏の儀を終了したいと思います。
この式を最後まで見届けて頂いた方々に感謝します。(シンプソン)」
『『『『『パチパチパチパチ…』』』』』
街の人達曰く約2年振りの成仏の儀であったが、式は恙無く執り行われたと言う。
その裏では、この教会で職務を行っていた元シスターの指導があった事は、ノア含めた街の人達も知らない事だろう。
当の元シスターは、シンプソン含めた教会関係者主催の成仏の儀を見届け、息子と共に少し街を散策した後、夫の待つウォルタメへと帰っていったという。
「無事式は成功しましたね。」
「何から何まで皆のお陰だ。
ほんの数日前の自分では到底無理だっただろう。(シンプソン)」
「ええ式じゃったぞ。
面構えがしかとした物じゃったからの。(ルド)」
「こっちも腕を振るった甲斐があるってヤツじゃな。(バド)」
「それでも私達には身に余る程の代物ですよ…(ソシエール)」
「じゃったら見合う様に研鑽を続ける事じゃな。(ロイ)」
「はは、精進します。(ヒューガ)」
式を終え、腰を下ろして一息付いていた3人の下へと向かった一行は暫し談笑。
3人にはそろそろ街を発つ事は事前に伝えており、感謝の言葉と別れの言葉を内包した会話をしていた。
のだが、3人は少し心配そうな表情を浮かべる。
何せ
「…それよりもノア殿大丈夫か?
目の下にクマが出来ているが…(シンプソン)」
「ははは、何処かで寝ますから御心配なさらず…」
結局前日に2時間程仮眠した後、一切寝ていないノアの目の下にはクマが出来、何処と無くやつれていた。
「それならこの街を南下した所にある『カステロ』に向かうと良い。
最近大掛かりな行政事業を行って何軒か保養施設を建てたらしい。(ヒューガ)」
「今のノアさんには打って付けだと思いますよ。(ソシエール)」
「おー…良いですねぇ…」
良い情報を聞いた、と少し嬉しそうな表情を示すノア。
だが、この時誰も思いもしなかっただろう、その『カステロ』という街では現在『【鬼神】立入禁止措置』がなされている事を。
その日の晩、余程楽しみだったのか冒険者ギルドに出向き、『カステロ』で新設されたという保養施設のパンフレット等を見てどの施設に行こうか楽しみで仕方無いノアの姿があったという。
「あ~、眠い…」
「じゃったら寝りゃええじゃろう?(バド)」
「ヴァンディットさんの睡眠導入剤は1日1回まで。それ以上服用したら効果半減、若しくは耐性付いて効かなくなっちゃうかも知れないからダメなんだ。」
「何じゃ、その歳で薬に頼るとは不眠か、中(心)の問題か?(ロイ)」
「そんな所。
簡単な話だよ、小さな時に死に掛けた状況が夢として出てくる。
匂い、景色、感覚そのままにね。」
「ははぁ…戦帰りのモンがようなる奴じゃな。心根の強か坊でもそんな悩みがあったか。(ルド)」
「夢に見る度に思うんだ。
実は今までの事は容態が落ち着いた時に偶々見た夢の一部で、本当はまだ闘病中なんじゃないか、ってね。
だから寝る時は一気に深い眠りに入って、夢を見ずに一気に覚醒する様にしてるんだ。」
「ノア殿は常時スキルも発動しっ放しですから突然起きますものな。(クリストフ)」
「元々1人で旅する予定だったから、野宿してて枯れ葉が落ちた音でも起きれる様に訓練したものさ。」
宿で寝ていたノアが腹を空かせて街へ繰り出すと、湿気浴をしていたクリストフ、武器製作の慰労会をしていたドワーフ3人組と出会し、同じ卓に入る事にした。
当初は今後の旅程を話していたのだが、時折アクビをかますノアの様子を見た事からこの話になったのだった。
「うーむ…ただ眠らせるだけならやり様は幾らでもありますが、夢の中となると私も専門外ですな…(クリストフ)」
「まぁ今はヴァンディットさんのお陰で何とかやれてるから気にしなくて良いよ。
さ、ごはん食べよ。」
ノアとしてもどうにかしたい節はあるが、現状どうにかなっている様なので話はここまでとし、当初の目的である食事を行うのであった。
モグモグ…
「そういや坊は今後どうすんじゃ?(ルド)」
「当初の目的(教会への届け物)は既に済んでたからいつ発とうか見計らっていた所だよ。
取り敢えず明日は教会で成仏の儀を執り行うみたいだから、それを見届けてから次の街に向かおうと思ってるよ。」
「儂らも似た様なもんじゃ。
この後工房の連中に聖霊銀(ミスリル)製品の補修方法を伝授しようと思ってな。(ルド)」
「流石に聖霊銀(ミスリル)造りは一朝一夕にはいかんから無理だが、補修位ならいけるじゃろ。(バド)」
「で、翌日教会主催の成仏の儀を見て街を発とうと思っとるんじゃ。(ロイ)」
「それなら足並み揃えて街を発てますな。(クリストフ)」
「たまにはそれも良いかもね。ならその予定でいこうか。」
という事で一行は翌日に執り行われる成仏の儀を見届けた後に街を発つ事にするのだった。
~翌日・教会にて~
「『…よって、汝には次なる輪廻も安寧に過ごせるよう祈りを捧ごう…』…(シンプソン)」
スッ、スィッ…(聖霊銀(ミスリル)製の装飾が施された剣で正面に立つ霊を十字に斬る。)
『『シュァアア…』』(十字を中心に、光を放ちながら霊体が浄化されていく。)
〈…ありがとう、シンプソン。
こんな安らかな気持ちで逝けるとは思わなかったぜ。これからは空の上から家族を見守る事にするよ。〉
「…達者でな、ジェンダ。(シンプソン)」
今は亡き旧友ジェンダに向けて最期の言葉を掛けるシンプソン。
その表情は悲しげでありつつも霊となった旧友を心配させないよう、確固たる強い意志を持った力強いモノとなっていた。
キャリィンッ!(霊銀が床に落ちる。)
浄化され、光の粒子となって天に昇った後、その場には霊銀が残された。
これは霊からの願いを聞き届け、無事に達成された事を意味する。
これが霊を視る事の出来ない者からすれば、儀礼的な動作の後に何も無い虚空から突然霊銀が現れる為、そこには確かに霊なる存在が居た事を如実に表していた。
「…本日お集まりになられた霊の方々は無事成仏なされました。
以上で成仏の儀を終了したいと思います。
この式を最後まで見届けて頂いた方々に感謝します。(シンプソン)」
『『『『『パチパチパチパチ…』』』』』
街の人達曰く約2年振りの成仏の儀であったが、式は恙無く執り行われたと言う。
その裏では、この教会で職務を行っていた元シスターの指導があった事は、ノア含めた街の人達も知らない事だろう。
当の元シスターは、シンプソン含めた教会関係者主催の成仏の儀を見届け、息子と共に少し街を散策した後、夫の待つウォルタメへと帰っていったという。
「無事式は成功しましたね。」
「何から何まで皆のお陰だ。
ほんの数日前の自分では到底無理だっただろう。(シンプソン)」
「ええ式じゃったぞ。
面構えがしかとした物じゃったからの。(ルド)」
「こっちも腕を振るった甲斐があるってヤツじゃな。(バド)」
「それでも私達には身に余る程の代物ですよ…(ソシエール)」
「じゃったら見合う様に研鑽を続ける事じゃな。(ロイ)」
「はは、精進します。(ヒューガ)」
式を終え、腰を下ろして一息付いていた3人の下へと向かった一行は暫し談笑。
3人にはそろそろ街を発つ事は事前に伝えており、感謝の言葉と別れの言葉を内包した会話をしていた。
のだが、3人は少し心配そうな表情を浮かべる。
何せ
「…それよりもノア殿大丈夫か?
目の下にクマが出来ているが…(シンプソン)」
「ははは、何処かで寝ますから御心配なさらず…」
結局前日に2時間程仮眠した後、一切寝ていないノアの目の下にはクマが出来、何処と無くやつれていた。
「それならこの街を南下した所にある『カステロ』に向かうと良い。
最近大掛かりな行政事業を行って何軒か保養施設を建てたらしい。(ヒューガ)」
「今のノアさんには打って付けだと思いますよ。(ソシエール)」
「おー…良いですねぇ…」
良い情報を聞いた、と少し嬉しそうな表情を示すノア。
だが、この時誰も思いもしなかっただろう、その『カステロ』という街では現在『【鬼神】立入禁止措置』がなされている事を。
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