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取り敢えず南へ編
閑話:【魔王】に関する出来事 その6
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~『南獄大陸』から5キロメル離れた場所にあるドワーフの国『フェレイロ』・海岸~
ザザァ…
「どうじゃ?あれから何か動きはあるか?」
チキチキチキ…(×8の望遠鏡操作。)
「…何ぞ縦坑から出て来とるぞ…?
四足歩行の…ありゃ何じゃ…?まるで″蟻″じゃが…あんなサイズの種なぞ、彼処に居ったか…?」
「″蟻″…?どれ、貸してみぃ!
…ホントじゃ…確かにあれは″蟻″…ん?
何か背負っとらんか?」
「…よく見えたな…確かに何ぞ背負っておる…
何かの兵器か…?」
「何にしても、この間の接触が上手く行かず、武力行使に打って出るのでは無いか…?」
「誰にも感知されない″あの奇妙な技(?)″を持っていたのにも関わらず、何もせずに消え去った【魔王】が今更武力行使すっか?」
「…答えを出すのは我らでは無い…
儂らは見たままを王に伝えるだけじゃ。」
「せやな…」
~ドワーフの国『フェレイロ』から5キロメル離れた場所にある『南獄大陸』・縦坑~
「″蟻酸燃料電池″…?(アリス)」
【そ。資源の限られている俺達にとって最も効率の良い発電手段って訳。
鉄資源は掘り尽くされているが、都合良く銅資源は結構残っているし、『蟻竜兵スプラドルダート』によって兵達は日々増加して来ている。
兵として働きつつ装備の電力を賄う為の生体燃料電池という役割も担って貰おうと言う訳さ。】
ドワーフ国『フェレイロ』との初接触から数日、【魔王】アクロスは縦坑内でせっせと″ある装置″を作り続けていた。
その″装置″は『蟻竜兵スプラドルダート』によって産み出された兵隊蟻の腹部に小さな魔石と一緒に取り付けられている。
これは【魔王】アクロスが元居た世界の技術と知識、兵隊蟻と縦坑内に残された資源から導き出した現状最高効率な発電方法であった。
蟻酸とは文字通り蟻の体内て生成される分泌物で、これを有効活用した形である。
ちなみに兵隊蟻は、この『南獄大陸』まで来る際に足として利用していたエボル・バトフライを基にしたキノコ栽培(現在安定生産)を餌としている為、滞り無く日々産み出されている。
チキチキチキ…(兵隊蟻の歩行音。)
【お、来たな?】
カションッ。カチッ。(″装置″にセットされていた小さな魔石を外し、別の魔石をセット。)
【ふむ、順調順調。
安定的に生産出来たら″精霊ドローン″作りに着手しよう。
アリス、″空の魔石″の予備はあるか?】
「はい、【魔王】様に頼まれてから日々生産しておりました。(アリス)」ジャラ…
【ははは、愛い奴め。】
「うふふ。(アリス)」
【魔王】配下アリス(アリスラニア)が取り出した″空の魔石″とは、文字通り魔力の無い魔石で、ここに魔力を充填する事で初めて価値が生まれる。
【さて、後で″浄化処理″を行っておくから兵隊蟻に取り付けた魔石と交換しておいてくれ。】
「畏まりました。
…そういえば何故1度″空の魔石″に″浄化処理″を施しているのですか?(アリス)」
【ここの世界でもそうかは分からんが、精霊はキレイ好きで怖がりだ、″浄化処理″を施さないと精霊が魔石に宿ってくれないのさ。
だからこうやって…】
ジャラ…『『『シュパァアッ!』』』(手の中に握り込んだ″空の魔石″が発光。)
【俺の背鰭に搭載されている『ヘル・クリスタル』を利用し、″擬似的な浄化処理″を施す事で精霊を宿し易くするって訳さ。】
ヘル・クリスタル…【魔王】アクロスが元居た世界の25世紀初頭、人類と魔族共同で行われた鉱山の掘削工事中採掘された未知の鉱石。
一定量の魔力を流すと広範囲に渡って魔力消失効果のある衝撃波を発する恐るべき特性を持つ。
魔力を主体としている魔族は勿論、魔法技術を取り入れ、それに伴った設備を数多く開発した人類にとっても脅威となる代物。
人類側は″軍事転用されては堪ったものでは無い″と、極秘裏に施設を強襲。
その際の暴走反応による被害の結果魔族側に多数の死者を出した。
これがもとで人類vs魔族の全面戦争に繋がったのである。
【魔力消失に伴い、魔素で構成された物質等も消失する為、擬似的な浄化作用があるのさ。
さ、講義はここまでにして交換だ交換。
蟻達に交換能力は無いからそれだけは俺達がやらんとな。】
「は、はい!(アリス)」
【魔王】アクロスに促されたアリスは、共に兵隊蟻達の魔石交換へと向かうのだった。
カコッ、カコッ、カキッ…(刀身の柄に魔石を嵌め込む。)
【アシスト、魔力充填率は?】
″SPV-B(超出力振動ブレード)の充填率は39%、魔力充填により4%の回復が見込めました。″
【即席の蟻酸燃料電池で電力回復が見込めたか。上出来上出来。
ドワーフ族との交易が見込めない現状、これを増産するしかあるまい。】
「その様ですね…
気が遠くなりそう【いや、そうでも無いぞ?】…え?(アリス)」
漸く発電手段が確保出来たとはいえ、日々増え続ける兵隊蟻に対して装置の生産力が心許ない。
アリスが頭の中で生産に掛かる時間を計算し出したのを察してか、【魔王】アクロスが声を掛ける。
【確かに兵隊蟻に搭載した燃料電池1基造るのに、最低8つのスキルを駆使しなければならないが、完成形を登録した状態で<簡略加工>を行えば、必要となるのは材料だけとなるから大幅に手間が省ける。】
「おおー…(アリス)」
【魔王】はサラリと言っているが、これはかなり異常な事で、異世界的な言葉で言えば″チート″というモノである。
実際圧倒的戦力を誇った人類軍を相手にする【魔王】アクロスにはそのレベルが求められたという事である。
この世界ではスキルや適正を多用すれど、1つの製品を素材から造り上げ販売にまで漕ぎ着けるには、幾人もの職人の手が入るモノだが、【魔王】はそれをたった1人で実行する事が出来るのだ。
謂わば彼その物が″街や国″を内包していると同義である。
今は限られた資源でやりくりしているが、それでも数世代先の技術を披露している。
もし潤沢な資源が手元にあった場合、この世界の者が誰1人造り出す事の出来ないであろう超兵器、高度技術が彼1人の手で造り出されていた事だろう。
そうなれば、未だ静観している天上の存在″神″も介入せざるを得なくなってしまう。
現在ノアの仲間として旅に同行しているラインハードもそれなりに高度技術を誇っていると言えるが、それでも数世代先ではそれが普通であると言える為、″神″も静観を決め込んでいるのである。
一部の国は違うが、世界的に【魔王】に対して介入せずに静観している現状、特に【魔王】から交易を求められたドワーフ国が監視を続けている現状は世界的な流れに沿ったモノである。
だが、″神″の視点で言えば、天上を脅かす存在へ介入する為の機会を妨げているとも言え、何とももどかしい状況なのであった。
ザザァ…
「どうじゃ?あれから何か動きはあるか?」
チキチキチキ…(×8の望遠鏡操作。)
「…何ぞ縦坑から出て来とるぞ…?
四足歩行の…ありゃ何じゃ…?まるで″蟻″じゃが…あんなサイズの種なぞ、彼処に居ったか…?」
「″蟻″…?どれ、貸してみぃ!
…ホントじゃ…確かにあれは″蟻″…ん?
何か背負っとらんか?」
「…よく見えたな…確かに何ぞ背負っておる…
何かの兵器か…?」
「何にしても、この間の接触が上手く行かず、武力行使に打って出るのでは無いか…?」
「誰にも感知されない″あの奇妙な技(?)″を持っていたのにも関わらず、何もせずに消え去った【魔王】が今更武力行使すっか?」
「…答えを出すのは我らでは無い…
儂らは見たままを王に伝えるだけじゃ。」
「せやな…」
~ドワーフの国『フェレイロ』から5キロメル離れた場所にある『南獄大陸』・縦坑~
「″蟻酸燃料電池″…?(アリス)」
【そ。資源の限られている俺達にとって最も効率の良い発電手段って訳。
鉄資源は掘り尽くされているが、都合良く銅資源は結構残っているし、『蟻竜兵スプラドルダート』によって兵達は日々増加して来ている。
兵として働きつつ装備の電力を賄う為の生体燃料電池という役割も担って貰おうと言う訳さ。】
ドワーフ国『フェレイロ』との初接触から数日、【魔王】アクロスは縦坑内でせっせと″ある装置″を作り続けていた。
その″装置″は『蟻竜兵スプラドルダート』によって産み出された兵隊蟻の腹部に小さな魔石と一緒に取り付けられている。
これは【魔王】アクロスが元居た世界の技術と知識、兵隊蟻と縦坑内に残された資源から導き出した現状最高効率な発電方法であった。
蟻酸とは文字通り蟻の体内て生成される分泌物で、これを有効活用した形である。
ちなみに兵隊蟻は、この『南獄大陸』まで来る際に足として利用していたエボル・バトフライを基にしたキノコ栽培(現在安定生産)を餌としている為、滞り無く日々産み出されている。
チキチキチキ…(兵隊蟻の歩行音。)
【お、来たな?】
カションッ。カチッ。(″装置″にセットされていた小さな魔石を外し、別の魔石をセット。)
【ふむ、順調順調。
安定的に生産出来たら″精霊ドローン″作りに着手しよう。
アリス、″空の魔石″の予備はあるか?】
「はい、【魔王】様に頼まれてから日々生産しておりました。(アリス)」ジャラ…
【ははは、愛い奴め。】
「うふふ。(アリス)」
【魔王】配下アリス(アリスラニア)が取り出した″空の魔石″とは、文字通り魔力の無い魔石で、ここに魔力を充填する事で初めて価値が生まれる。
【さて、後で″浄化処理″を行っておくから兵隊蟻に取り付けた魔石と交換しておいてくれ。】
「畏まりました。
…そういえば何故1度″空の魔石″に″浄化処理″を施しているのですか?(アリス)」
【ここの世界でもそうかは分からんが、精霊はキレイ好きで怖がりだ、″浄化処理″を施さないと精霊が魔石に宿ってくれないのさ。
だからこうやって…】
ジャラ…『『『シュパァアッ!』』』(手の中に握り込んだ″空の魔石″が発光。)
【俺の背鰭に搭載されている『ヘル・クリスタル』を利用し、″擬似的な浄化処理″を施す事で精霊を宿し易くするって訳さ。】
ヘル・クリスタル…【魔王】アクロスが元居た世界の25世紀初頭、人類と魔族共同で行われた鉱山の掘削工事中採掘された未知の鉱石。
一定量の魔力を流すと広範囲に渡って魔力消失効果のある衝撃波を発する恐るべき特性を持つ。
魔力を主体としている魔族は勿論、魔法技術を取り入れ、それに伴った設備を数多く開発した人類にとっても脅威となる代物。
人類側は″軍事転用されては堪ったものでは無い″と、極秘裏に施設を強襲。
その際の暴走反応による被害の結果魔族側に多数の死者を出した。
これがもとで人類vs魔族の全面戦争に繋がったのである。
【魔力消失に伴い、魔素で構成された物質等も消失する為、擬似的な浄化作用があるのさ。
さ、講義はここまでにして交換だ交換。
蟻達に交換能力は無いからそれだけは俺達がやらんとな。】
「は、はい!(アリス)」
【魔王】アクロスに促されたアリスは、共に兵隊蟻達の魔石交換へと向かうのだった。
カコッ、カコッ、カキッ…(刀身の柄に魔石を嵌め込む。)
【アシスト、魔力充填率は?】
″SPV-B(超出力振動ブレード)の充填率は39%、魔力充填により4%の回復が見込めました。″
【即席の蟻酸燃料電池で電力回復が見込めたか。上出来上出来。
ドワーフ族との交易が見込めない現状、これを増産するしかあるまい。】
「その様ですね…
気が遠くなりそう【いや、そうでも無いぞ?】…え?(アリス)」
漸く発電手段が確保出来たとはいえ、日々増え続ける兵隊蟻に対して装置の生産力が心許ない。
アリスが頭の中で生産に掛かる時間を計算し出したのを察してか、【魔王】アクロスが声を掛ける。
【確かに兵隊蟻に搭載した燃料電池1基造るのに、最低8つのスキルを駆使しなければならないが、完成形を登録した状態で<簡略加工>を行えば、必要となるのは材料だけとなるから大幅に手間が省ける。】
「おおー…(アリス)」
【魔王】はサラリと言っているが、これはかなり異常な事で、異世界的な言葉で言えば″チート″というモノである。
実際圧倒的戦力を誇った人類軍を相手にする【魔王】アクロスにはそのレベルが求められたという事である。
この世界ではスキルや適正を多用すれど、1つの製品を素材から造り上げ販売にまで漕ぎ着けるには、幾人もの職人の手が入るモノだが、【魔王】はそれをたった1人で実行する事が出来るのだ。
謂わば彼その物が″街や国″を内包していると同義である。
今は限られた資源でやりくりしているが、それでも数世代先の技術を披露している。
もし潤沢な資源が手元にあった場合、この世界の者が誰1人造り出す事の出来ないであろう超兵器、高度技術が彼1人の手で造り出されていた事だろう。
そうなれば、未だ静観している天上の存在″神″も介入せざるを得なくなってしまう。
現在ノアの仲間として旅に同行しているラインハードもそれなりに高度技術を誇っていると言えるが、それでも数世代先ではそれが普通であると言える為、″神″も静観を決め込んでいるのである。
一部の国は違うが、世界的に【魔王】に対して介入せずに静観している現状、特に【魔王】から交易を求められたドワーフ国が監視を続けている現状は世界的な流れに沿ったモノである。
だが、″神″の視点で言えば、天上を脅かす存在へ介入する為の機会を妨げているとも言え、何とももどかしい状況なのであった。
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