ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

反面教師シルヴィオ、自滅退場

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~カステロの街中心近辺~


ア″ア″ッ″!

「っ!この大声はノア殿…?
ゾネス!今の大声の発生源に向かえ!そこにノア殿は居るハズ!直ぐに立入許可を報せるのだ!(ロスト)」

「いや、でも伯爵は…(ゾネス)」

「私が居るから行って!(ガネメ)」

「おおっ!メガネ!
それじゃあ頼むよ!(ゾネス)」ダッ!

「ガネメよ!(ガネメ)」


正門に居るであろうノアの所まで向かっていたロスト伯爵とゾネスだが、速度を優先したロストの指示でゾネスが先行。

代わりの護衛はカステロの冒険者ギルドマスターのガネメが請け負う事となった。


「…それよりもガネメ、″アレ″をどう見る…?(ロスト)」

「…どうって、″巨大な黒いスライム″としか言えません…
恐らくですが、シルヴィオが適当に放り込んだクリーナースライムが異常分裂を起こして巨大化したものかと…
あの野郎、最後の最後に面倒事残しやがってぇ…!(ガネメ)」


崩れ落ちた建物の中から出現し続ける″巨大な黒いスライム″は未だその全容を明らかにしない。
ギルドマスターのガネメは、シルヴィオの残していった面倒事に悪態を吐き、頭を悩ませるのであった。





ズザッ!

「近付けばより大きさが狂っておるのぅ…(バド)」

「何と言う種のスライムじゃ…?誰ぞ知っておる者は居らんか!(ロイ)」

「「「「「「分からん…」」」」」」


保養施設の崩壊・″巨大な黒いスライム″の出現から少しして、周辺にはドワーフ含めたその他冒険者達が集まってきていた。

が、突如出現した″巨大な黒いスライム″に手を出せずにいた。

理由は勿論あり、1つは、種によってはスライムと言えども強敵となる種が居る為迂闊な攻撃が出来ない事。

2つ目は、瓦礫と化した建物の中に誰か居るやも知れない為、魔法攻撃等の広範囲攻撃や結界の類が使用出来ない為である。

これが″冒険者としての考え方″である。

だが


「お、おい!何をぼーっと突っ立っている!
私の街が見るも無惨な事になっているではないかぁっ!
たかがサイズが違うスライムであろうが!(シルヴィオ)」

「何じゃヌシは。
種が分からんのにおいそれと手出し出来んじゃろうが。(ルド)」


バルディック・ロスト伯の解任パンチを食らって頬を腫らせたシルヴィオがズカズカと現場にやって来た。

″巨大な黒いスライム″を前に冒険者が動きを見せない事に苛立ちを見せていた。

すると


ガシャッ!

「貸せ!腑抜け供がやらないなら俺の方でやってやろう!(シルヴィオ)」

「おいちょっと待

「見ておれ!(シルヴィオ)」


ドワーフからの制止も聞かず、近くの武器屋に陳列されていたロングソートを手に取ってズカズカと″巨大な黒いスライム″へと進んでいった。


「…周りに居る新人冒険者諸君、良い機会じゃからよぉく見ておけ。
種を見極めんで無策で飛び込んだらどうなるかをな。(ロイ)」


ロイは既に呆れた様子でシルヴィオを追う事もせず、周囲の冒険者への良い見本として見守る様に伝えた。





「見ておれ!スライム如き、剣で…
くそ…何だこの重い剣は…!
ふぅん!『どぷんっ!』見よ!こ『『ブシャァアアッ!』』
ぎゃぁああああああああああっ!熱ぃっ!痛ぃっっ!ぐるじ『ツルッ。』あ

『ドボンッ!』


悪態を吐きつつへっぴり腰でロングソートを振ったシルヴィオだが、″巨大な黒いスライム″の斬り口から真っ黒な強酸性の液体が噴き出し全身に浴びる。

たちまち全身から白煙が上がり、パニック状態になったシルヴィオは足を滑らせて″巨大な黒いスライム″が出てきた地下排水路へと落ちていった。


「うわぁ、よりにもよって強酸性のスライムかい…どんだけ食ったらあそこまでの個体になるんじゃ…(バド)」


ちなみにシルヴィオは、″巨大な黒いスライム″討伐後約8時間後、調査しに向かった冒険者パーティとギルド職員によって救助されたが、全身を酸で焼かれ、長時間排水に浸かっていた為、幾つもの感染症を発症。
約7週間もの間地獄の苦しみを味わう事に。

皮膚も完全には戻す事も出来ず、僅かに残っていたキッタネズミとガサガサによって恐怖心を植え付けられるのだった。





「それよりも、尚更近寄れんでは無いか…
どないすっか…(ルド)」

「相手はスライムです!
強酸物質を除去出来れば…(ガネメ)」

ズズンッ!(防壁上にノア着地。)

「それは″浄化″でどうにかなるもの!?」

「え!?″浄化″…?(ガネメ)」

「あぁそうか、その手があったな!
やったれ坊!(ロイ)」

「【鬼神】だ!(冒険者1)」
「立入禁止の【鬼神】だ!(冒険者2)」
「立入禁止だ!(冒険者3)」

「ねぇ皆その呼び方止めて!」


ゾネスによって立入禁止措置を解除された事を知ったノアが到着。
既に手は考えている様で、その両手には荒鬼神ノ化身が握られていた。


『『ズズズズ…』』(赤黒いオーラを立ち昇らせて腕を追加で2本生成。
3、4本目の荒鬼神ノ化身も握り込む。)

『【鬼哭死重奏・穢払ノ癒火】!』

『『『『ヒュボボボボボボッ!』』』』(炎の斬撃を幾つも飛ばす。)

『『『『シュボォアアアアアアッ!』』』』(″巨大な黒いスライム″炎上。)


「ちょ、ちょっと【鬼神】さん!街のど真ん中で大火災を起こすのは…!(ガネメ)」

『安心して!あれは穢れ(スライムの黒ずみ)のみを燃やす(浄化する)!
絵面は酷いけど取り敢えず見守ってて!』


瓦礫の山の中で″巨大な黒いスライム″が大炎上を起こす。
だがスライム自身には影響が無いのか特に動きを見せずにその場に止まっていた。

集まっていた冒険者達は、ノアの言葉を信じて経過を見守り、その後数分の後に





『『ぷるん。』』


「…おお…見た目だけなら普通のスライムじゃが…(ルド)」


ペチペチ…『『ぷるん。』』(ルドが手でスライムを叩く。)


ヌププ…『『ぷるるん。』』(斧の柄をスライムに刺してみる。)


「どうじゃ?(バド)」

ニギニギ…「普通のスライムじゃな。(ルド)」

「じゃあ皆突撃ーっ!
瓦礫の中の捜索があるんだからチャッチャと終わらせるわよっ!(ガネメ)」

「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」」


柄に付いた付着物を確かめ、スライムから強酸性物質が抜けた事を確認した後、ギルドマスター兼領主代理となったガネメ指示の下″巨大なスライム″掃討が行われた。

サイズは直径30メルもある巨大な個体であったものの、冒険者の奮闘により僅か2分で片が付いたのであった。
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