ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

リヴァイアさんから貰ったアレ。

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~1日半前・『アルゴダ』正門~


「門を開かれよ!隣領領主バルディック・ロスト伯爵殿が参られたぞ!(ゾネス)」

「し、私設傭兵部隊のゾネス殿だ、門を開けろ。(門兵)」

ガラガラガラ…


バルディック・ロスト伯爵とゾネス率いる私設傭兵部隊がカステロの街を発ってから1日半程経った頃、一行は綿花栽培が盛んな街、そしてミコトとシトラの目的地である『アルゴダ』へと到着した。


パタパタパタ…

「バ、バルディック・ロスト伯爵殿!
突然の来訪、如何為されましたか!?(ファマス)」

「やぁファマス殿久しいな。
いや、たまたまカステロで思わぬ出会いがあったのでな、報せに参ったのだ。(ロスト)」

「は、はぁ…(ファマス)」


門を通り街へと入り、バルディック・ロスト伯爵が馬上から降りる頃、慌てた様子でファマスという白髪混じりの男性がやって来た。

このファマスと言う男性がシトラの父親であり、ミコトを護衛として付けた張本人である。

ロストは徐にファマスの近くに寄り、小さく、だが良く通る声で話を始めた。


「息災で何よりだファマス。
実は先日カステロで貴殿の娘さんを見てな。
いやぁ、フィラ(ファマスの妻)に似てとても美人に育つであろうな。(ロスト)」

「っ!?さ、左様で…
…あっ、ロスト殿、申し訳ありませぬ、娘の事を公で出すのは…(ファマス)」


ロストの報せを聞き、とても嬉しそうにしたファマスだが、その直後直ぐにハッとなり、焦った表情を浮かべた。

すると、バルディック・ロスト伯爵の突然の訪問に集まってきていた街の人々の中に居た幾人かが、人混みを掻き分けて何処かへと向かう姿が見えた。


「あ、あの、ロストは

「ファマス殿落ち着いて聞いてくれ。
確かにシトラ嬢はカステロに居り、息災で護衛のミコトと言う者と一緒だ。
今2人は″ある人物″の保護下に居るから安心してくれ。(超小声のロスト)」

「い、いやロスト伯、今貴方様も見たでしょう?この街には得体の知れない厄介者がまだ数多く跋扈している。
その者共の多くが今よりカステロを目指す!
その″ある人物″がどれ程の者かは存じませんが、直ぐにでも派兵して保護に向かわせた方が…!(超小声のファマス)」

「ちなみにこの街で情報を流し、わざと誘き寄せる様に仕向けてくれと言ったのはその人物だ。(超小声のロスト)」

「え?(超小声のファマス)」

「心配になるのも無理は無いが、本当に安心してくれ。
何せその″人物″は先日、【勇者】軍の多くを蹴散らしたトンでもない傑物で、私にとっても″絶大な信頼を置ける旧き友人″だ。
大船に乗った気持ちで待ってくれて良い、と言えるだろう。(超小声のロスト)」

「…【勇者】軍を…え?…それってまさか…(超小声のファマス)」





~その1日半前・カステロのとある宿~ 


「えー、こちらに居るミコトさんとシトラちゃんの2人と″少しの間″行動を共にする事になりました。
ちなみに″少しの間″とは、ここから南西の位置にあるという『アルゴダ』の街までとなります。」

「「「「「よろしくお願いしまーす。」」」」」


ノアから簡単な紹介が終わると、皆が一様に挨拶をする。

ミコトとシトラの2人は、騒動冷めやらぬカステロの街から早々に離れようとしていた所をノアによって止められ、一時的に行動を共にする事になった。

シトラは南西にある『アルゴダ』という街で綿花栽培を営む豪商の娘で、宜しくない連中のやっかみに巻き込まれ病に侵され、内通者の炙り出しと治療の為に一時的に避難していた所であった。

カステロの街から早々に去ろうとしていたのは、今回の騒動が、その宜しくない連中が関わっているのではと判断しての事らしい。

そこでノアは2人を匿いつつ情報収集と状況確認の為に行動を開始するのであった。

だが、ただ待ってるだけでは都合良く情報が集まってくる訳も無いので、ノアは″ある作戦″を思い付くのだった。





キコキコキコーン♪

「『たーまてーばこー!(多目的魔力迷彩転化万能子機)』」

「…何だ、今の音は…(ミコト)」
「とても軽快なモノでしたね…(シトラ)」

「コレ取り出す度に何か鳴るんだよな…
まぁそれは置いといて、2人には今日から外に出る場合、コレで変装してからにして貰います。」

「「え?」」


ノアが取り出したのは、龍宮城でリヴァイアから貰った変装器具『たまてばこ(多目的魔力迷彩転化万能子機)』であった。


「2人がこれから表を歩く時は、″ミコトさんはシトラちゃんに″。
″シトラちゃんはミコトさん″として振る舞って貰います。」

「…?どういう事だ?(ミコト)」

「まぁ見て貰った方が早い…『チキチキチキ…』
はい、ミコトさんジッとしてて。」

「え『『ボフンッ!』』
な!?これ、は…え、煙幕!?
あ、あれ?何だこの姿は!?(ミコト)」


ノアは徐に『たまてばこ(多目的魔力迷彩転化万能子機)』のツマミを回して『10年』に設定し、ミコトに向けつつボタンを押すと白煙が発生。

たちまちミコトが白煙に呑み込まれたかと思えば、10才そこらの少女の姿となって現れたのだった。

ミコトは自身の突然の変化に慌てふためいていたのだが


「わっ!ちっちゃいミコトだ!
うわっ!可愛っ!ムスッとしてるの凄く可愛い!(シトラ)」

「お、お嬢、止め…(ちっちゃいミコト)」


見た目がちっちゃくなったミコトに興奮し、ベタベタ触ったり抱き付いたりして寧ろ楽しんでいる様子であった。




「お、『ゴスッ。』おじょ『ドスッ。』
お、お腹を、『ゴッゴッ。』叩く、痛い…(ちっちゃいミコト)」

「あ、あれ…?
ミコトの頭の上に何かある…?(シトラ)」

「あくまで見た目が変わっただけで、肉体は変化してないんですよ。
だから抱き付いたりすると違和感があるでしょうね…」


ちっちゃくなったミコトの頭をナデナデしようとしたシトラだが、丁度ミコトの腹部にあたる部分であった為、思いっ切りチョップをかます形になってしまった。

だがその一連の行動のお陰で『たまてばこ(多目的魔力迷彩転化万能子機)』の効果は直ぐに理解してくれた様子。

そしてその後シトラにも同様の事をしたのだが


「うはーっ!妹が出来たみたい!
ねぇねぇねぇねぇ!ミコトちゃん!シトラ″おねぇちゃん″って言ってみて!
″おねぇちゃん″だからね?″お姉ちゃん″はダメよ!(でっかいシトラ)」

「シ、シトラ″おねぇちゃん″、何か、怖い…(ちっちゃいミコト)」

「うははーっ!やだー!可愛いー!
可愛いねー!可愛いねー!(でっかいシトラ)」


見た目20代位になったシトラは見た目10才位のミコトを抱き締めてより一層テンションが上がっていた。

海洋種のトンでも技術力をどう慣れて貰うか心配だったノアだが、すんなり受け入れてくれてホッと胸を撫で下ろす一方、シトラの変な扉を開けてしまったのではと少し心配になるノアであった。   
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